善医の罪

  • 文藝春秋 (2020年10月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (408ページ) / ISBN・EAN: 9784163912783

作品紹介・あらすじ

彼女は善意の名医か、患者を殺した悪魔かーー。

クモ膜下出血で意識不明の重体で運ばれてきた、横川達男。彼の手術の執刀医の白石ルネは、これ以上の延命治療は難しいと、本人の意志もあり治療を中止することを決意する。横川の苦しむ様子に耐えられなくなった家族は同意し、白石は横川を尊厳死に導いた。
数年後、白石が記したカルテと、立ち会った看護師のメモが食い違っていることが告発される。そのメモによると、白石は患者に筋弛緩剤を静脈注射したというのだ。事態は病院中を巻き込んだ大問題になり、やがてマスコミがかぎつけることに。白石を名医だと感謝していた横川の遺族は考えを変え、彼女を告訴することにした。
一体どこで歯車がくるってしまったのか。外科医に鬱屈を抱える麻酔科医、保身にはしる先輩外科医、女性としてルネに劣等感を感じる看護師。
様々な立場の者たちの思惑が重なり合い、事態は思わぬ方向へと転がることにーー。現役医師が圧倒的なリアリティで描いた、スリリングな医療小説。

感想・レビュー・書評

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  • 読了感最悪(個人意見)。
    まず、主人公のルネがとても鈍臭くて、イラっとさせられた。
    あとはまあ、さしてなんの驚きもなく憤りながら読み終えた。
    事象や業界は違えど、本当に一部少数のクレーマーというか
    モンスターな人々がまるで世界の代表者かのように振る舞ったり、
    ネトなどで匿名になったとたんに、偉ーモードになったり
    金銭がからんだとたんに弱者ぶったりとか
    弱者は正義みたいな風潮とか
    不愉快な事例を
    見ることが多くなってきたのと、
    今作に取り上げられた件の端々にそういうのを思い出さされて
    非常に鬱々とした気分になった。
    個人的な意見だが、確かにヴィランな医師や教師や政治家など
    世に”先生”と呼ばれる職業の人もおるだろうが、
    モンスターのターゲットになるのは往々にして、
    クオリティの高いサービスを提供する人材であることもある。
    ま、色々あるだろうが
    前途有望な人材の心をくじくような世の中になりつつあるな、とは
    感じるねぇ。
    ていうか、”善意”ってもつと危険とすら感じずにはおれない。
    道端で倒れてる人を助けようとして、
    その人が亡くなったりしたら訴訟起こされたりとか、
    その対象の人はともかく、そこにヴィランな家族がいたらアウトって、
    恐ろしい世の中やとおもわんか。
    騒いだもん勝ちか?
    勝ちって人から金銭をせしめることなんか?
    となると、なにもしないのが一番ってことになってくる。
    サイダーハウスルールのホーマーのセリフを思い出す。
    "To do nothing. It's a great idea, really. Maybe if I just wait and see long enough, then I won't have to do anything or decide anything, you know? I mean, maybe if I'm lucky enough, someone else will decide and choose and do things for me."
    まあ、本書の内容とは離れてしまったが、
    私がもしこの患者と同じ状態になったなら
    尊厳死、安楽死を選択したいが、
    こんな事件があったり、
    一部の迷惑なヒトたちのおかげで
    尊厳は得られなくなっていくのだろうかと思った。
    注意:超個人的な読書感想文ですので、ご了承ください

  • 久坂部羊さんの小説はいつも考えさせられます。
    医療裁判の難しさ、人の気持ちの難しさ。
    でも、誰しも自分を守ろうとするのは仕方ないかな?

    医療現場が現実には大変な状況になっています。
    正にこのお話の様な終末期についての判断をしなければならない場面も多いのではと思います。
    患者が自分の親だったら自分はどうしたかと考えました。

  • 患者にとっても家族にとっても無益な延命治療を中止する──。その決断を下すことが医師にとってどれほど大変なことかと思う。ぼくたちは「医者は病気を治すのが当たり前、死にかけた人を救うのが医者の義務だ」そんなふうに考えていないか? だが、本当に患者に必要なことはなにかを考えたい。意識もなく、機械によって生かされている状態を、その人は望んでいるのだろうか、と。本書は苦渋の決断を下した女医が受ける理不尽な仕打ちを描く。登場人物はステレオタイプでわかりやすいが救いはなかった。 

  • 私も延命治療はしてほしくないなぁ。

  • 久しぶりの久坂部羊の小説
    今まで読んだ久坂部羊の小説も凄かったでが、この作品も凄く考えさせられるストーリーでした。
    尊厳死がテーマになっており、それに関しては日本は法律的にまだまだ未熟なのだと思わざるを得ないと感じましたが、必ずしも尊厳死が正しいわけでもなく、安易に容認されればマイナス面もあり凄く難しい問題だと思いました。
    しかし、登場人物の病院幹部やスタッフの性根の悪さが腹立たしい限りで、悪意ある証言が集まれば冤罪が簡単に成立されていく事や、検察が事実を追求するのでは無く有罪にする事しか考えずに事実と異なるストーリーを展開し、裁判長がそれを事実と判断する裁判の怖さを感じました。
    事実に基づくフィクションらしいですが、事実が湾曲されても、判決を言い渡した裁判長の考えが事実になってしまう法律の怖さもありました。
    医療訴訟に関わる人達は読むべき小説かもしれません。

  • 人の嫌な部分。本気で腹が立つ

  • 自分の患者が心肺停止で運ばれた。
    元々延命治療を望んでいなかったことを知っている主治医は彼を尊厳死させるが、3年後に裁判沙汰になり、検察の欺瞞、病院の体裁に翻弄される。

    実際の日本の医療現場では、救命の可能性が低い患者の呼吸不全で人工呼吸器の装着を控える(withhold)ことはよくあるが、既に装着した人工呼吸器を尊厳死を目的として中止する(withdrawal)ことは実際の日本の医療現場では殆どない

    日本では尊厳死が当たり前という価値観も法律すらないので、あえてこれを主題にしたのは意義深い


    ドラマや小説によくあることだが、登場人物をキャラ立ちしようとし過ぎて、現場のリアリティが少しなくなっている。少し設定の詰めも甘いと感じてしまうのは自分がまさに救急医療の現場にいるからか。

  • 面白い。善意でやったこと、医学的にも正しいことをやってるのに、人間の欲に落とし入れられてハラハラドキドキの展開に。ありがちなテーマをより深いミステリーに仕上げて面白かった。

  • なんかモヤモヤする!医師は、本人や家族の証言や、大事な決め事は全て録音でもしておかないと、殺人罪で有罪になってしまうじゃん!白石医師が甘いと言われればそれまでで、後の人はお金や保身、嫌がらせばかりで、追い詰められるだけの展開に、もう気分だだ下がり…。リアリティがあるのだろうが、悪い奴がのさばって罰をうけないのは納得できない。

  • 久々に久坂部先生。 今回のテーマは、延命治療と尊厳死の問題。 それにしても、ルネの周囲の自分の欲と保身のために事実をねじ曲げて生きていこうとする胸くそ悪さに辟易してしまいました。
    川崎協同病院で実際に起きた症例、事件を元に、医師によって描かれた小説です。
     医療現場ではそれに近いことが起こっているということなのでしょうか。また、 裁判の場面の進行には唖然とさせられました。

  • 医師の世界は怖いね・・
    尊厳死も安楽死も認められたら
    年金やら医療費問題が一気に片付くと思うけど
    高齢政治家が居なくならない限りは
    認められることはないんだろうな。

  • クモ膜下出血で意識不明の重体で運ばれてきた、横川達男。
    彼の主治医の白石ルネは、横川が、身近な人を苦しみ凄惨な見た目になって死んで行ったのを、自分はああなりたくない、と日頃から訴えていたのを聞いていた。
    横川の苦しむ様子に耐えられなくなった家族は同意し、白石は横川を尊厳死に近づけるべく、逝かせようとした。ところが予想外に、チューブを外したところ苦しげな声を出したため、うろたえ、対処法を先輩にも相談し、ミオブロックを点滴で使用する。
    新人ナースが、点滴を静脈注射と誤記したことから、殺人事件では?と発展していく。

    どこにでも居そうな保身に傾く人間、損得ばかり考えて動く人間、言ったことを翻す人間…
    人間不信に陥ったルネは、近づいてきた週刊誌の記者に救われた思いで思いのたけをぶつける。
    それは悪意を持った記事に置き変わっていた。


    裁判になる時弁護士をつけるのは知っていたが、この場合、患者側につく弁護士と、医療者側につく弁護士といるのは知らなかった。

    正しいだけでは裁判は勝てない。
    判決とは、裁判とは、尊厳死、安楽死とは。
    ここ数年の話題ワードがちりばめられ、考え方は色々だけど、私たちがしっかり死に向き合って考える時が来ているのだろう。

    自分は身内を失った時、良い主治医に恵まれたから、医療不信はないが、人を失うだけで十分に辛いのに、それ以上に医療不信にもなったら、人生滅びてしまう。
    難しい問題だが、今後の課題だろう、特に長寿すぎる日本では。

    実際に起こった話をベースにしてはいるが、読んでない人はぜひご一読を!!

  • 読み応えのある一冊だった。
    そして、いずれ自分にも訪れる「死」についても考えさせられるいい本だった。
    延命治療、尊厳死、安楽死…。
    保険証の裏面に臓器移植について自分の希望を書く欄があるが、この欄を活用して延命治療などに対する希望も書くようにすれば、この本のテーマである延命治療などへの取り組みも少しは改善されると思うのだが…。

    「現実を知る者がこちを開かなければ、状況は変わらない。誤解されても、誹謗されても、私は自分の信じる道を主張し続けます。」白石ルネが語る最後の一言は重たい。

  • 医者だって一人の人間なのに、勝手に神様扱いして神様じゃないと分かった途端手のひら返しして攻撃する人達はなんなの?個人的に白石ルネが気に食わないという理由だけでハメた大牟田、特に一番堀田がゴミクズカス下品で気持ち悪すぎて憤りを覚えた。周りの人を信用しすぎな白石ルネにもちょっとイライラしたけど、結局金だの権威だのばかりで一人の人間に何もかも押し付けるどころか貶める大人たちが本当に嫌。ネタさえあれば誇張して平気で嘘を書くマスゴミ、話をでっちあげる検察もクソ。これが実話を元にしてるとかほんと胸糞悪い。

  • クモ膜下出血で意識不明の重体で運ばれてきた男性。すでに脳死状態であったため延命治療を中止し尊厳死へと導いた執刀医の白石ルネ。数年後、彼女は殺人罪で告訴される。延命治療と尊厳死、家族と医師が考える看取りの在り方。とても重いテーマで読んでいても苦しくなる。「誰もが死を拒絶することは出来なくて、せめてそれを穏やかにするのが医師の務め」という言葉が心に残る。悪意にまみれた人間が多くて辟易する。

  •  この本を読むきっかけですが、実は、司馬遼太郎記念館会誌を創刊号から読んでいますが、最新号で、久坂部 羊の「講演録」が掲載せれていて、医者である著者の作品も紹介されていました。
     で、今回借りたのは「まちライブラリー@東大阪文化創造館」なのですが、担当者に久坂部 羊の本を探してもらい、出会ったのがこの本だったのです。
     医者である著者のほんなので、主人公は、オランダ人の母と、日本人の父を持つ女医という設定でした。
     読み出して、なぜオランダ人の母なのかという疑問はすぐに解けました。テーマが「安楽死」「尊厳死」マターだったからでした。
     話は、主人公が、図らずも「安楽死」「尊厳死」にかかわる「死」に関わってしまいます。
     そこからは、主人公のまわりの人間の思わぬ行動、「妬み」「僻み」を起因とする色んなアプローチ、それへの対処が、いわゆる世間のどこにでも起こりそうな設定で展開されていきます。
     読み手としては、ハラハラドキドキするような展開にいじいじさせられます。そこらへんの書きぶりは上手いと思いました。
     医学界、法曹界、マスゴミ、経済界などなど、現代の日本の状況が的確に描かれていました。
     最終版、予断と偏見に満ちた裁判官の理不尽な判決に対し、少々打ちのめされますが、「善医の罪」が、「罪」でなくすため、今後戦っていく展望で締めくくられていました。
     今の日本の現状では、「安楽死」「尊厳死」マターをしっかり法制化しないまま、厚生労働省の一定の指針・慣習でやり過ごしているようです。
     オランダを始め、しっかり法制化していても、結局人間のすることですので、完璧とは行かないですが、やはり、きちんと議論して、国会で「法」を作り、お医者さんが安心して医療に携われる法環境の整備が求められます。

  • 川崎協同病院事件だー

  • ヒロインのイメージが脳内に浮かばない

    そのままエンディングまで読んだものだから、感想が上滑りしそうだ。

    現実感があるものの、なぜか私にはスッキリしない終わり方は少し期待はずれかな。むしろ、現実感があるだけに、他の登場人物が悪い意味で実在しそうに感じてしまう。

  • 一気読みしたくなる物語の展開が良い!
    人が死を迎える事の難しさ、本人と周りの人たちの想い!

  • 実際の事件をモデルにした医療小説。冒頭の横川の尊厳死を描く場面は、医者でもある作者の真骨頂でもある。とてもリアルで、その現場で眺めているかのような感覚を覚え、手に汗を握りながら読んだ。

    本小説のテーマは安楽死であり、安楽死が認められていない状況下では自分の希望通りの最期を迎えることができない、想像を絶する悲惨な最期を迎える可能性がある、医師が罪に問われる可能性がある以上積極的な医療行為が行われない可能性があるといった問題を提起している。また裁判の描写を通じて、医療と法律の問題も描いている。超高齢化社会を迎えようとしている日本は、これらの問題にもっときちんと向き合うべきだと考えさせられた。

    安楽死の問題を考える際、我々は患者側・その家族の側の視点で思考することが大半だ。一方でこの小説を読むと、医療行為を施す医師の側の感情、思考、葛藤がリアルに伝わってくる。「白衣の輪郭がぼやける」という表現に代表されるように、安楽死の問題については医師もまた大きな迷いや葛藤を抱えているのだろう。一方の視点からのみ考えてはならないことを強く認識させられた。

    読み進めていく中でもう一つ気になったのは、横川の死が個人的なものでなくなっていく過程である。
    死は人生の終幕であり、本来は個人のものなのである。しかしながら、登場人物の多くがそれぞれの思惑に沿って横川の死を少なからず利用しているように思え、嫌悪感を覚えた。横川の尊厳を傷つけているのはルネが行った医療行為ではなく、死後利用しようとしている側なのではないか。横川の妻の、「ほんとうはどうしてほしかったのだろう」という言葉はとても重く、尊厳を傷つけられないためには一人ひとりが「自らの最期」について少なからず考えておく必要があるのではないかと感じた。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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