乱都

  • 文藝春秋 (2020年10月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (304ページ) / ISBN・EAN: 9784163912790

作品紹介・あらすじ

【戦国最大の激戦地「京都」をめぐる「仁義なき戦い」!】

「都には魔物が棲んでいる」
応仁の乱から室町幕府の終焉まで、
裏切りと戦乱の坩堝と化した京に魅入られ、
果てなき争いに明け暮れた
7人の男たちの生きざまを描く連作集。

「黎明の王」……遊女腹と蔑まれて育った畠山義就が最初の戦国大名となるまで。
「天魔の都」……修験道にのめり込む奇人・細川政元はいかにして絶対権力を握ったか。
「都は西方に在り」……西国の「大器」・大内義興が混迷の京都へと引きずりこまれる。
「凡愚の見た夢」……天下を取った凡愚・細川高国の栄光と破滅。
「華は散れども」……法華一揆に参加した商人の平三郎が見た戦場の地獄。
「雲上の剣」……己の力で幕府の権威を取り戻すため剣豪将軍・足利義輝が都の魔物に挑む。
「夢幻の都」……流浪の果てにも失わなかった最後の将軍・足利義昭の意地。

感想・レビュー・書評

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  • 『都には、魔物が棲んでおりまする』

    京を舞台に、戦国時代の始まりから秀吉時代の始まりまで数々の武将たちが敗れ去った敗者の物語を描いた連作集。

    当時の天下人とは京都を中心にした五畿内のこと。中でも人々は京都を手中にすることに躍起になる。そのためならどんな奸計も謀も暗殺も、時には血を分けた兄弟や子供を道具に使うことも厭わない。なぜそれほどまでに人は京に取り憑かれるのか。

    とは言え、この作品に登場する人々全てが天下人を目指しているわけではない。
    第一話の畠山義就は天下を取るためではなく乱世で戦うことそのもの、その中心に自分がいることに快感を得て、敢えて応仁の乱を長引かせている。
    第二話の細川政元もまた『己のすべてを掛けて戦える相手が現れてくれた』ことにこの上ない喜びを感じている。
    第三話の大内義興にいたっては『覇者たる器ではない』と自覚し『大内の家が安泰』であることことを第一と考えている。

    しかし第四話の細川高国は『屈辱と忍耐の末に手に入れた、天下人の座』に最後まで執着する。なぜそれほど京を諦められなかったのか。その理由は彼の死の間際に明らかになる。
    第五話は視点を変えて、一向門徒に対抗する法華宗信徒の武器商人・椿屋平三郎。戦のおかげで商売が潤う一方で自らも戦う彼が見た現実とは。

    第六話はまた視点を変えて第十四代足利将軍・義輝。『形ばかりの幕府を立て直し、天下に静謐をもたらすを宿願とし』ていた彼だが、真に彼が望んでいたことはそうではなかったことに、これまた死の間際に思い至る。

    そして最終話は足利家最後の将軍義昭。信長のおかげで将軍として入洛したものの、その信長のせいで都を追われた。この最終話では最後まで信長憎しでいたのにその後の終章ではまるで瘧が落ちたようにサバサバと自分の状況を受け入れている姿が興味深い。

    京の都が戦乱の舞台になりつづけたのは、京に魔物が棲んでいるからなのか、それとも魔物に取り憑かれた者たちが集まってくるからなのか。
    ある者は自ら京を去り自領へ帰り、ある者は京で命を落とし、ある者は京で敗れ逃げていく。そして一時期京を、天下を取った者がいたとしてもその者はまた誰かに討たれ退けられ、新しい天下人が生まれ、また去っていく。
    まさに諸行無常の世界。
    天下人への野心を持ったから敗れたり殺されたりした者もいれば、逆にそうしたことに興味を持たないゆえに殺された者もいる。個人的には細川政元は面白い人物だった。

    終章で細川幽斎(藤孝)がなぜ明智光秀の謀反に加担しなかったのかという答えが興味深い。足利将軍は戦乱を引き起こすだけの存在だったのか。
    京が政の中心でなくなった時にやっと京の平穏が戻るという皮肉な結末。しかしそれから数百年後の幕末、再び京は戦乱の舞台になる。京は忘れ去られた方が良いのか、注目された方が良いのか。
    コロナ前の観光客過多な状況を考えても、程よいバランスというのは難しい。

  • 応仁の乱から室町幕府の終焉まで。
    都の魔物に魅せられた、戦国時代の男たちを描く。

    前の話の登場人物が、次の話の視点人物になる、リレー形式でつながっていく連作短編集。

    寝返ったり、反撃したと思ったらまた敗走したり。
    状況が目まぐるしく変わる、複雑な時代。

    視点人物を変え、細かく区切って描かれていたので、比較的わかりやすかった。

    一方、話が短いせいか、史実(=戦状況)を追っている感があった。

  • 2024/10/2読了
    〈応仁の乱〉から室町幕府の終焉までの、100年余りの経過の中で、京の都に翻弄された男たちの物語×7編。各エピソードの主人公はそれぞれ異なるが、次のエピソードでその後が語られており、各話が緩やかに繋がっている。前話で覇権を握った者も、次話では一代、せいぜい次代で失脚・滅亡する様が(あっさりと)記され、まさに『驕れる者は久しからず』の世界であった。権力亡者どもが、相争って殺し合うのは勝手だが、それで街は焼かれ、略奪され、貧乏くじを引くのは庶民である。唯一、市井の人を主人公にした『華は散れども』では、戦争で人生を狂わされ、破滅していく様を読んで、胸が苦しくなった。

  • 室町〜戦国時代の魔の都、京都に魅入られた将軍、武将、商人などが章ごとに主人公となり、京都を巡る戦いの歴史が繰り広げられる。その構成も面白いし、それぞれ、正直マイナーな主人公たちを使いつつ、室町後期から戦国時代の複雑な各武将の関係性を、わかりやすく描いているので、鎌倉〜室町の小ぶりな展開なのに複雑という、ありがちなつまらなさを感じないで読み進むことができる。願わくば、最後物語としてのひと盛り上がりがあると尚良かった。

  • 連作短編集。畠山義就、細川政元、大内義興、細川高国、法華宗門徒の椿屋平三郎、足利義輝、足利義昭。
    応仁の乱から始まる京都をゆるがす戦乱を描く。

  • 室町時代の終焉の応仁の乱後の京の都を舞台にした次期政権争い、この混沌とした後で世に言う戦国武将が闊歩する下剋上時代に突入するが、この狭間の話は馴染みが薄く身内同士の争いで登場人物の関係性も難しく頭に入らない。畠山家、細川家、山名家、足利家、大内家、三好家。。。何が何だか??似たような名前が多過ぎ。。この関係性を把握するには何度読み返せば良いのか。。諦め。。

  • 応仁の乱から室町幕府の終焉まで、約100年にわたって戦乱が打ち続いた京都――。
    その「乱都」を舞台に、戦によって人生を大きく狂わされた7人の男たちを主人公にした連作短編集。

    各編の主人公は、畠山義就、細川政元、大内義興、細川高国、法華宗徒の商人・椿屋平三郎(彼のみ架空の人物)、足利義輝、足利義昭といった面々。
    将軍、大名、市井の商人と、それぞれ異なる立場から見た戦乱が描かれる。

    一編目の主人公が二編目でも重要な登場人物となり、二編目の主人公は三編目にも登場……というふうに、ロンド形式が取られ、各編にそれぞれ連関がある。
    そのため、全体を通読すると〝京都戦乱史〟という趣になる。人の心を狂わせる魔物が棲むという京の都が、本書全体の〝主人公〟とも言えるのだ。

    権謀術数渦巻き、裏切りが平然と横行し、我が子の命さえ政争の具とするような、ドロドロした争いが次々と登場。すがすがしさやあたたかさなど薬にしたくもない、なんとも血なまぐさい歴史小説だ。

    刀と弓矢で生身の人間同士がぶつかり合う戦の場面も、すごい迫力で綿密に活写される。ある種の「アクション小説」としても楽しめるのだ。

    7編それぞれ面白いが、とくに、天文法華一揆(1532年)を描いた「華は散れども」は独創的な秀作だと思った。戦国時代に京都で起きた仏教勢力同士の宗教戦争を、戦に参加した一信徒の立場からリアルに描いている。
    現代人が思い描く仏教のイメージを大きく覆して、衝撃的だ。

    また、細川高国を描いた「凡愚の見た夢」では戦を描きつつも滑稽味を強調するなど、一編ごとに工夫も凝らされている。
    上質な連作短編集である。

  • 応仁の乱から義昭追放までの難解な期間を様々な人物を通して語られており、大変面白く、一気に読了した

  • 知らない人ばかりで頭に入らなかった。勉強不足痛感。

  • 都に魅入られた者たちの物語。畠山義就から足利義昭まで。
    一本の筋が通っていて、面白かった。

  • 筆力あるとは思うのだが、昔の歴史作家に比べたら物足りないなさがある。 途中で挫折した。戦ばかりで単調。
    オムニバス集だから掘り下げが短い。長編を読んだら違うのかな。

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著者プロフィール

天野純希
1979年生まれ、愛知県名古屋市出身。愛知大学文学部史学科卒業後、2007年に「桃山ビート・トライブ」で第20回小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2013年『破天の剣』で第19回中山義秀文学賞を受賞。近著に『雑賀のいくさ姫』『有楽斎の戦』『信長嫌い』『燕雀の夢』など。

「2023年 『猛き朝日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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