危機の世界史

  • 文藝春秋 (2021年2月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784163913353

作品紹介・あらすじ

破局はいつもすぐそこにある――。

新型ウイルスのパンデミックという事態を、世界中の誰が予期していただろうか。
しかし過去を見直せば、人類の歴史は文明の崩壊、強力な疫病、核戦争の脅威といった、破滅への曲がり角でいっぱいだった。

1億ダウンロードを誇る人気ポッドキャスト『ハードコア・ヒストリー』の語り手である著者は、古今東西の危機の時代を自在に往来し、人間と文明への疑問を投げかける。

大恐慌時代のアメリカや、軍隊国家時代のスパルタに生きた人は、平和で安心な時代の人よりも「タフ」だったのか?

紀元前1200年頃に青銅器文明を滅ぼしたのは、「海の民」の侵略か、それとも気候変動と干ばつだったのか?

史上空前の大帝国だったアッシリアが紀元前600年頃、あっという間に終焉を迎えた理由は何だったのか?

西ローマ帝国が「野蛮な」ゲルマン民族に滅ぼされた結果、文明は後退したのか、それともゲルマン人に引き継がれただけなのか?

14世紀のペストや、1918年のスペイン風邪のパンデミックが人類社会に及ぼした影響は、現代で再現されるのだろうか?

核開発競走やキューバ危機を経て、我々は核を制御する理性を身につけているのだろうか?

終末はどのように訪れるのか、恐ろしい時代は人間性をどう変えるのか。
ポッドキャストのパーソナリティならではの自由な語り口と、古今の資料に裏打ちされた意外なストーリーで「危機」という視点から再構成されるキャッチーな歴史読み物。コロナ後の世界の見方を変える一冊です。

みんなの感想まとめ

人類の歴史における危機とその影響を多角的に探求する一冊で、文明の崩壊や疫病、戦争の脅威がどのように人間性を形作ってきたのかを考察しています。著者は、過去の出来事を振り返りながら、現代社会の状況を新たな...

感想・レビュー・書評

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  • 人気Podcasterによる初著書。
    専門家ではなく、"歴史オタク"と自認する素人だが、"ベスト歴史podcast"を受賞するなど、評価は高い。

    本書の核となる視点は次の2点。
    「人類は千年以上、自分たちの能力が失われたり、後退したりするなどと真剣に考えることはなかった」。
    テクノロジーが後戻りすることなんてないし、一時的な退潮や停滞はあっても、社会・経済・文明が崩壊することはないと信じきって生きているが、間違いだ。
    ローマの勢力が退潮した百年後のブリテン人たちのように、祖先よりもむしろ後進的な時代を生きることもありうる。
    現代人の我々も、前にもっと素晴らしい時代があったと回顧する暗黒時代を生きる人々になるかもしれないのだ。
    凋落はゆっくりと長い時間をかけて起こるとは限らない。
    青銅器時代の終焉はローマ帝国の消滅よりも悲惨かつ唐突で、これによりミケーネ・ギリシャ文明は消え失せ、エジプトではファラオの偉業も忘れられた。
    人類史上初めて、暗黒時代に一気に引き戻す最終兵器をつくりあげた現代は、世界戦争によって、人類の文明はものの数時間で後退するだろう。

    もう一つの視点は、我々がこれからも理性的かつ人道的な行動をとり続けられるかというもの。
    暗黒時代に引き戻すのは戦争ばかりではなく、天変地異や自然災害もあれば、パンデミックもある。
    致死率90%で次々と都市が壊滅していった黒死病の流行のように、無差別に命を奪う病気への恐怖によって、社会は容易にめちゃくちゃになる。
    パンデミックで死亡率が高まれば、前の信念体型は捨てられ、マイノリティは迫害され、乱交・強姦・強盗・殺人と何でもありの修羅の時代に逆戻りだ。

    疾病に限らず、善良で倫理的な人びとがいつのまにか大惨事に与してしまう例は他にもある。どんな非道なことでも、よい考えに思えてしまうのだろう。
    ダイナマイトを発明したノーベルも、この兵器の威力を見れば、恐怖にたじろぎ、軍隊は解散するだろうと考えていた。
    第二次世界大戦で都市空爆を指揮し大惨事を引き起こす作戦を立案した軍人たちも根っからのサディストではなかった。
    むしろ自分は命を救っていると思っていたのだ。
    長く泥沼化し、死者の数が増え続けると、何より悪いのは戦争が長引くことで、戦いを短くし、多くの命を救えるなら、非道な空爆や原爆も許されると考える。
    それが限りなく戦争犯罪に近いとは考えない。
    我々の命も、つまるところそのような非道な決定や悲惨な事件の延長線上に生まれているのだと気づいた時、どう感じるだろうか?

    著者自身の歴史に対するスタンスは、以下の通り。
    歴史の変化も、ただの違いを、進歩だ退歩だと決めつけるのはバイアスによっている。
    この先、もしも読むことが重要でなくなったために、識字率が低下したら前より暗黒時代に生きているとはならないだろうし、個人の幸福レベルも結局は環境に合わせて順応するものだ。
    現在の基準なら児童虐待同然の環境で育った多くの昔の子供たちを考えてみればいい。

    進歩という考えのバイアスに囚われたまま歴史を学ぶのはもったいないことだ。
    歴史は遠い惑星への旅に似ていて、同じ人種であっても、文化的にはエイリアンと考えてよく、謙虚に振り返りながら、現代の危機に対処するしかないのだろう。

  • 読みやすかった

  • 2021/02/25発行。

    原題は「The End is always near: Humanity vs the Apocalypse, from the Bronze Age to Today」(2019)。

    [目次]
    序文 終末はいつもすぐそこに

    第一章 厳しい時代が強い人間をつくるのか?
    戦争や窮乏、疫病で苦労した世代の人はタフになり、平和な時代の人は軟弱になる? スパルタ人やメディア人が没落したのはタフでなくなったから? では現代の西洋人は? 危機の時代がもたらすものを考えてみよう

    第二章 子どもたちの受難
    歴史を通じて育児環境は向上してきた。鞭、幼児労働、性的虐待……昔の育児法を知るとぞっとする。だがそれは過去の歴史にどう影響したのか。虐待されて育った子どもが作った社会は、危険なものだったのだろうか?

    第三章 青銅器文明崩壊の謎
    人は自分の社会の終わりなど想像できないが、過去には様々な文明が盛衰を繰り返してきた。エジプト、ヒッタイト、ギリシャの青銅器文明が崩壊した「史上最大の謎」を追ってみよう。それは現代にも起こりうるのか?

    第四章 アッシリアの罪と罰
    強大な軍事力をもち、栄華を極めたアッシリア帝国の巨大都市ニネヴェはあっという間に陥落し、忘れ去られた。記録からは、あまりに暴虐なその支配が見えてくる。超大国が滅びる過程は、現代でも教訓となるだろうか

    第五章 ローマと蛮族のめぐる因果
    超先進巨大国家、ローマ帝国は「野蛮」なゲルマン人に滅亡へ追い込まれた。だが、やがてシャルルマーニュが開いた神聖ローマ帝国は「野蛮」なヴァイキングに悩まされることになる。歴史では因果がめぐることがある

    第六章 パンデミックの序章
    過去には、現代では想像もつかない疫病の大流行があった。西欧の人口の約半分が死んだ黒死病、短期間で一億人を殺したスペイン風邪。疫病が大きく変えた昔の社会を知ることは、パンデミックに揺れる世界に不可欠だ

    第七章 生きるか死ぬかの核時代
    人類は常に争ってきたが、核の登場で戦争は文明自体を滅ぼしかねないものになった。無差別爆撃の始まりから広島・長崎まではあっという間だった。冷戦とキューバ危機で核戦争を回避できたのは人間の徳の進歩なのか

    第八章 地獄への道
    大惨事をあえて起こしたい人はいない。それでも英独は無差別爆撃を応酬し、米国は原爆を投下してなお東京を空爆した。地獄への道は、善意で舗装されている。危機がいつもわれわれの中にあることを忘れてはいけない

    あとがき
    謝辞
    訳者あとがき
    参考文献
    索引

  • コロナ禍を予見したかのようだが、出版はコロナ前。冒頭にあるように、歴史を振り返れば、現代の状況がより広い視野で見えてくるかも、という思いで読む。超大国の崩壊、数々のパンデミック、集団移動、そして、戦争。世の中は数々の危機を経験してきたことを改めて思う。歴史を学ぶ意義はここにあるのかもしれない。

    第1章 厳しい時代が強い人間を作るのか第2章 子どもたちの受難(最近まで児童虐待同然の中で環境で子どもが育ってきたこと)第3章 青銅器文明の崩壊の謎(社会は必ず進歩する?発展と凋落を繰り返す?今は、世界がつながっている為、局地的な暗黒時代でなく、全体的かもという指摘は響く。)第4章 アッシリアの罪と罰(超大国の滅亡。内戦と軍事力の過剰のせいでは?)第5章 ローマの蛮族をめぐる因果第6章 パンデミックの序章 第7章 生きるか死ぬかの核時代
    物理学者アーサーホリーコンプトン「人間は大急ぎで徳を高めねばならない。」第8章 地獄への道

  • 個々の章が小気味よく展開され、かつジャーナリストらしい書き振りもおもしろく読みやすかった。Podcastをしている人なので、構成もより受け手に寄り添ったものだなあという印象を受けた。

    人類の歴史において、進化と退化は相対的なものであり、その時代に生きる人だけでなく、のちの世代の評価も得てこそと感じた。映画「猿の惑星」の引用が何度か出てくるが、猿からみた人間の愚かさを指摘するようだ。

    アッシリアの苛烈な政治とその報いの部分は発見があった。第二次大戦の指摘もなるほどと思う箇所がいくつか。近代以降は理性を大事にする傾向が強まっているが、人間は感情の生き物なのだと再認識した。

  • 【コロナに揺れる今こそ過去の危機に学べ】文明は常に滅亡の危機にさらされてきた。青銅器文明、ローマの崩壊からキューバ危機、そして黒死病の記録が現代人に教えるものとは。

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