ナインストーリーズ

  • 文藝春秋 (2021年6月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784163913933

作品紹介・あらすじ

満足? 後悔? 愉悦? 絶望? 
人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。
長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、
定年間近の独身男の婚活、
還暦過ぎの女友達二人、
かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。
乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。

時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。

感想・レビュー・書評

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  •  外国での仕事・暮らしが絡んだ中年男女の恋愛、離婚、再婚など、9話が収録。著者、乙川優三郎さんは房総が一番のようですがw。「ナインストーリーズ」、2021.6発行。第2話「1/10ほどの真実」、第3話「闘いは始まっている」、第8話「あなたの香りのするわたし」がお気に入りです。

  • ホテルの上階は音も絶えて、そろそろ若い人たちが睦み合う時間であったが、亜希子はもう来ることのない海を眺めるために部屋の明かりを消してみた。曇天なのか月も星もなく、海原は暗く澱んでいたが、薄明かりの眼下に白い波が寄せているのが見える。すぐ近くで同じ海を見ている男を感じながら、彼女は終わったことにいくらかの寒さを覚え始めた。このあてどない地点に立つまでの長い長い軌道の虚しさを、それぞれの窓から見つめることに意味があるとしたら、そうして始まるらしい二つの自我の蘇生だろうと思った。そのことに男もなにがしかの意味を見出してほしい、と願わずにいられなかった。

  • また、読み終わりたくない時間があっという間に過ぎてしまう。なんでなのかな。話自体は九篇あるうち、もの珍しいのはそれほど多くないのだけれど。しかも、それぞれの登場人物から見れば悪いばかりではない終わり方なんだろうけど、話としてのハッピーエンドではない話も多いしな。でも逆に、これからのことを考える話ばかりだから、それぞれの読後感は悪くなくて、眠いはずの帰路の電車の40分余り、全く寝なかった。

  • 図書館で借りた本。
    乙川さんは、ずっと名前だけは知ってたけど読んだことがなかった作家さんです。
    子どもたちが二人とも自転車に乗れるようになったので、図書館によくでかけるようになってます。
    その時にふと目についたものを借りるようにしているのですが、今回はこちらでした。
    赤い表紙に、ナインストーリーズというタイトルだけ見て借りました。
    とっても端正な文章で、岐路に立った男女の物語を色少なく、陰影深く描いた作品集でした。
    読んでいるとお酒を飲んでいるような、ゆったりと揺られているような心地になって本当に気持ちよかったです。
    夫が膝の皿の靭帯を切ってしまい、その病院で読んでいたのですが、時間を忘れて読んでいました。

  •  語り口の巧みさは、この人の現代小説の持ち味。
     ほろ苦さ。その味付けから外れない。
     そこは魅力ではあるが、無い物ねだりしたいところでもある。

  • 【Entertainment】ナインストーリーズ / 乙川優三郎 / 20220101 / (3/922)/<198/161633>
    ◆きっかけ
    日経書評
    ◆感想
    ・男女の間の機微の描写が秀逸。いつかこんな物語を書いてみたい。

    ◆引用
    なし

    ナインストーリーズ 乙川優三郎
    さまざまな中高年の男女がさまざまな人生を生きる9つの物語だ。後悔と断念と諦観。人生の黄昏(たそがれ)を生きる姿と思いにどんどん引き寄せられていく。心に染みる作品集だ。

  • 「毎日顔を合わせている夫婦が私より幸せとは限らないわ、お互いの欠点に触れて憎み合ったり、夫婦をつづけるために大事なものを犠牲にしたり、そんな十年ならひとりでいる方がましでしょう」p26

  • 歳を重ねれば、人に疲れも見えてくる。その戸惑い、戸惑いに流れてくる冷たい風。
    そんな風があちこちに吹く九つの景色が書かれている。

  • 現代小説へと舞台をギアアップした氏の短編9編。
    何れも人生黄昏期を迎えた男女の来し方行く末を偲びやかな辛口であったり、乾いた文体で・・あたかも俯瞰する視点で見つめている。

    あれ、乙川さんって・・直木賞だったよねと思うほど、最後の作品は芥川賞っぽく、それを読む私も・・あれ?(芥川賞系は合わないので)

    同じテイストばかりでだれないと言えば嘘になるが、職種、設定の多様さは筆のの冴えを見せる。
    「安全地帯」「海の~」は昨今、一番よくありそうな話・・男は自分一人では帳尻を成功へは持って行けない。
    「六杯目~」はなかなかでこのラスト、さ―て丁か゚半か
    筆者の生活スタイルから「都会の人生」が前面に出ているのはやむを得ないが、登場する人物・・男女ともに「知り合い」であっても「友達になりたくないか」という臭いばかり・・翻る自分も同類かと鼻白んで。。

  • 満足? 後悔? 愉悦? 絶望? 
    人生の黄昏を迎えるとき、人は自らの来し方をどう捉えるでしょうか。
    長く別居して年一回の対面を重ねる夫婦、
    定年間近の独身男の婚活、
    還暦過ぎの女友達二人、
    かつて交際していたアイドル歌手同士の再会……。
    乙川さんの新作は、誰の身にも起こり得る人生模様を端正な文章で紡ぎます。

    時代小説から現代に小説の舞台を移してからも大佛次郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞、島清恋愛文学賞など数々の評価を得ている筆者による9つの物語。

  • 「これはあなたの物語です。」
     と帯だか表紙にある(図書館で借りたのでそれは付いてなかった)。
     登場人物の年齢は、40以上、定年前後からそれより上。確かに、年代的には「あなた」と言われた範疇にドンピシャだ(苦笑)。

     9つの中高年の男女の物語が綴られている。
     どれが良かったというと、「あなたの香りのするわたし」、「くちづけを誘うメロディ」「闘いは始まっている」あたりか。
     人生の折り返し(60前後は、まだ折り返しと思っている)を迎えた男女が、次のステップを模索する話が多い。
     「あなたの~」は、夫に先立たれた女性が、娘を気遣って再婚を躊躇っているが、娘のほうがとうに親離れしてて逆に背中を押されるという微笑ましい話。
     「闘いは~」は、50代の独身男性がバーテンダーのシングルマザーを口説き落とそうと、あれこれ親切を働くが、それをテコにして女性はさらに羽ばたいていく。どちらも50代半ばあたり、まさに同年代。
     「くちづけを~」は、年齢的には少し上だが、いや、年齢は超越してる。そうきたか!と膝を打つので、読んでのお愉しみということで。

     概して女性がしっかり者で、自分の人生をブレることなく歩いている、あるいは、再び歩き出すという物語が多いのは、時代の求めだろうか。
     日本を捨てて向かったパリで、宝飾デザイナーとして才能を開花していく嫁をなんとか日本に連れ戻そうとする夫は、
    「帰国を目標に生きることは、今すぐ帰るのと同じことです」
     と、ケンモホロロだ(@「1/10ほどの真実」。
     仕事で外国暮らしの長い商社マンの夫に三行半を突き付ける嫁は、「たとえこれから苦労して泣くことがあるとしても、つまらない一生を悔やんで終わるよりはましであった。」と覚悟を決めて動じない(@「海のホテル」)。

     まぁとにかく男性としては、粗大ゴミとして放り出されないよう、この作品群の男性の行動を反面教師にして、身を引き締めていこうと思った。

    「人は生きたように死ぬ」

     後悔なきよう、しっかり生きていこう。

  • 短編の時は特に、各タイトルが秀逸。
    しかし、どれもなかなかに辛い話。5と8話は幸福感があるか。1と7話が好き。
    何時もの如く、女は強く、男は流されていく。
    人と人の心のすれ違いを描いているだけなのに、なぜこんなにも格調高く感じるのか。
    とは言え、似た感じのものが増えてきているのは、少しつまらない。

  • 初出 2019〜21年「オール讀物」
    タイトルどおりの9つの短編集。

    昔からこの人の文体が好きだ。
    こなれて静かですんなり入ってくるのに、表情を持つ言葉が記憶に残る。
    9人の初老か老年の主人公たちも、またそのような感じがする。

    フランスに行って宝飾デザイナーとして成功した妻に、帰国を懇願するが拒否される定年間近の本のデザイナー。
    ヘッドハンティングに関わった女性ホテル支配人に、気になっている女性バーテンダーを紹介したら、引き抜かれてしまった業界紙の記者。
    放埒な生き方をして負債を残して死んだ義兄の葬儀で、若いときに紹介された義兄の会社の女性事務員に再会する工場を定年退職した男。
    親の残した豪邸に一人で住みに続ける浮世離れした元令嬢を、定期的に見舞う老後を生き生きと暮らす女。
    若い頃密かな交際をマスコミに騒がれて消滅した元歌手で女優に墓地で再会して、ライブバーで一緒に歌うのを「まるで生きていることのように思」う(?)ジャズバー専属歌手。
    夫婦で市役所を定年退職後、ゆとりはあるが味気ない生活に高校の同級生との交流という新しい楽しみができた途端、人間ドックの再検査中に脳梗塞で倒れた男。
    婚活で知り合った未亡人が、いい人だが物足りなくなると思い別れるつもりでホテルに誘った(が、深みにはまるらしい)文芸出版の編集者。
    商社マンの夫を出張先の外国で亡くして働きながら娘を育て、付き合っている男に求婚され、看護師の娘が男と生きていこうとしているらしいことで決心する女。
    長く海外勤務して留守を続け、自分を家に縛るだけの商社マンの夫に離婚を迫り、家を出る妻。

    どれも感動の熱いストーリーではないが、じんわりと染みこんでくる。

  • 苦い過去を抱え、長くはない未来を前にして、ままならいない現状にある男女が下す決断や人生のケジメ、あるいは突然と去来する気づきを描く9編のショートショート。
    通りの向こうで一変した彼女に無言のエールを送るシーンや、娘のシャワーの音を聞きながら追想に耽る母親の姿など、物語はどれも余韻に富んでいる。
    さすがに9編もあると、持てる引き出しはすべて開き、お馴染みの設定、知的で本と酒を愛す高等遊民ぽい、房総半島ラブな男女がやっぱり出てくる。
    雑誌掲載の初出年月から見て、現下のコロナ禍に直面する様々な男女の話を読みたかった。

  • 大人、いや、大人と呼ぶにはかなり歳をとった男女の(もしくは女性の)物語が9篇。
    良い人も、ちょっと憎たらしい人もいるけれど、みな一様に言葉遣いが丁寧でそれだけでも読んでいていい気分になる。
    いろんな出会いと別れを繰り返して、新しく生き方を探してみたり、ゆっくり沈んでいったりする人たちの愛おしい物語。

  • 晩年を迎えた男と女の来し方行く末を美しい文章で、時に甘く、時に辛辣に描く9つの短編。
    若さの青さと苦さを描いたサリンジャーの短編集と同じタイトルながら、それとは対照的なのが面白い。

    安定を捨てきれず、人生の後半に差し掛かってなおぐずぐずと逡巡する男に対し、あまりに強く身軽な女性たちの姿が印象的。
    そんな女性を見て、恥ずかしくない自分でありたいと思う男あり、今更自分を変えられないと現状に踏みとどまる男ありとバラエティに富む9つの物語。

    特に好きなのは「闘いは始まっている」と「くちづけを誘うメロディ」。前者は前に進む清々しさを感じ、後者は珍しい設定ながら、しみじみとした味わいがある。
    もちろん、嫌な感じの男も女も出てくるけれど、それもまた人生。乙川さんの文章で彩られると、全てが文学的になるのが素敵。

  • 人それぞれでいいか。

  • 【芸術選奨受賞の名手が紡ぐ、9つの物語】日本とパリに住んで年に一度の逢瀬を愉しむ夫婦、若い頃に破局した男女アイドル歌手の再会など、人生の黄昏模様を端正な筆致で描く。

  • ここにある9つの人生が、その黄昏の切実さが、私のすぐそばを流れている。
    前だけを見つめて走り続けていられる時間の尊さよ。
    いくつも超えてきた山を、渡ってきた谷を、進んできた岐路を振り返ったときふと、不安に思うことがある。
    これで正しかったのだろうか、と。
    これが私の選んだ道なのか、あの時、夢見た未来なのか。

    もしあの時目の前にあった別の手を選んでいたら、もしあの時、もし…

    いくつも浮かぶ「もし」を、何度も繰り返す「もし」を自分の中に取り込んで私たちは歩いていくのだ。
    今日踏み出す一歩が、昨日の一歩を塗り替えていく。
    一筋縄ではいかない男と女。ままならないその人生の、乙川優三郎が描くモノクロの世界を面白いと思える自分の人生を思う。

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著者プロフィール

1953年 東京都生れ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞。97年「霧の橋」で時代小説大賞、2001年「五年の梅」で山本周五郎賞、02年「生きる」で直木三十五賞、04年「武家用心集」で中山義秀文学賞、13年「脊梁山脈」で大佛次郎賞、16年「太陽は気を失う」で芸術選奨文部科学大臣賞、17年「ロゴスの市」で島清恋愛文学賞を受賞。

「2022年 『地先』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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