Phantom

  • 文藝春秋 (2021年7月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784163913971

作品紹介・あらすじ

外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、
生活費を切り詰め株に投資することで、
給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。
恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、
とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。
そのアップデートされた物々交換の世界は、
マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。

やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、
華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。
金に近づけば、死に近づく。
高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。
羽田圭介の新たな代表作。

みんなの感想まとめ

資本主義の中で生きる人々のリアルな姿を描いた物語が展開され、特に生活費を切り詰めて投資を行う主人公の思考や行動が、読者に強い共感を呼び起こします。主人公の華美は、金銭的な自由を求める一方で、恋人の直幸...

感想・レビュー・書評

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  • 主人公華美のように、「このお金を何パーセントで運用したら」とばかり考えて、お金をうまく使えない人は結構いるのだろう。日本でも投資がだんだんと一般化してきたし、正直言って私もそう考えてしまうこともある。
    お金を増やす(投資する)のは、あくまで(人生を豊かにするための)手段であって、それが目的になってはいけない、と再認識させられた。
    全体としては「浅い」という印象。ムラにはまってしまう心理や時代背景などもう少し深く突っ込んで欲しかった。傭兵になる心理なども。
    個人的には人に勧めようとは思わない。で、星は2つ。

  • 生活費を切り詰めて積立NISAや高配当株投資をしている人に刺さりそうな物語。

    複利5%の運用益暗算がやたら得意だったり、身近な出費を複利5%運用の将来価値と比較したり、夜中のある時間になると真っ先にニューヨーク市場の動向が気になったり、友人との交際費をケチったことでその後誘われなくなったりと、やたらリアルに描かれていて怖くなる。

    NISA貧乏民やオンラインサロン民を斜めから覗き見ている感じで日常描写ほど気になって読んでしまうお話でした。後半の展開はなんじゃこりゃ。

  • これを羽田さんが書いてるんだよなぁって思いながら読んでる

    華美の中身、思考が読み始める前(あらすじ等読んでたとき)とは大きく異なっていて、一気に親近感だった

    客観的な思考、
    “大衆”を出し抜きたい、しかし自分も“大衆”でしかない

    コスプレイヤー素敵だ
    最初から華美の口から描写があった背が高いとか肩幅があるとかのレイヤーさんに向いてそうな骨ストスタイルはここに繋がっていたのか

  • 初羽田さん作品。思っていたより読みやすかった。

    前半の平凡な日常とは裏腹に、後半が破茶滅茶でハラハラさせられる展開だった。

    将来のために、今は少し無理をしてでも貯蓄する。
    将来のことは考えず、お金に執着することなく今を楽しんで生きる。
    お金だけではなくて、例えば仕事とか食事とか、生き方そのものに当てはまることだと思う。
    どちらが正しいとか、そうすべきだとかは決められない。欲張りだけど、私は将来のことを考えつつ今を楽しむ生き方を選びたい。

    「紫外線を避けること以上の究極のアンチエイジングは、今を生きるということだ。今を未来に先送りしても、その未来でなにもやらないのなら、意味がない。今やっていることは、今しかできないことだった。」


  • Phantom/羽田圭介

    初めての羽田圭介さんの小説を読みました。

    先ず題名に惹かれたのですが、想像とは違う角度からタイトルの理由かわ分かり驚きました。
    主人公が、命の価値やお金で買えるものの
    意味を考えた印象的な場面でした。

    主人公の華美と恋人の直幸は、共に
    年収200万円台の恋人同士。

    価値観には大きな違いがあり、それが顕著化して
    きていたが、どこか惰性で関係を続けていた。

    華美は昼は真っ当な食品会社の事務員で、
    夜は米株取引にのめり込みむトレーダー。
    お金の稼ぐ事に執着し、人間関係も金銭に換算する。

    直幸は年齢と共に容姿という武器も薄れ、
    お金ではなく信頼を通貨の代わりと考える
    情報発信者の末(スエ)に傾倒してのめり込む。

    二人の考え方の溝はどんどんと深まり、
    心地良かった関係には次第に歪んでいく。

    人にとって必要なものは何か。
    今すべきお金の使い方はどんなか。
    今を充実するために必要なものは何か。

    合理的でドライなだけの思考から、
    人との関係の必要性にも秤のバランスが
    触れていく過程を見た気がします。

  • 配当システムを作ろうとする女性とシンライを貯めようとする男性(彼氏)の対比が面白かった。

    女性はシステムのために貯めたお金を使うことをしたけれど、男性の方は結局シンライ社会からは逃れられなかった。



    最後に、特に印象的だったのはここ(長い)

    自分は直幸を、胡散臭い集まりから取り戻し冷静にさせようとしたわけだが、よく考えてみれば就職活動がうまくいかず日本で満たされていなかったという動機からの自己実現として、何の思想もないまま他国での聖戦に参加し人を殺してきた人達の方が、よほど怖い。

    それまで、この元傭兵の知人を頼っていたのに、ここで急に冷静になれる主人公が良かった。
    一歩引ける視点って大事だよな、とあたりまえの感想。

  • 投資関連よくわからず少々齧っているからか華美の心情、理解できてしまう。
    対して、直幸のオンラインコミュニティもどきに傾倒していく現実も存在している。

    と、現実世界をデフォルメしているものの、忠実に描いている問題作とみた。
    そして本質的には昔も今も同じ過ち、思想が繰り返されるということか。

  • 端的に言えば、「投資」と「カルト宗教」をテーマにした物語。
    序盤で好き嫌いが分かれそう。
    自分は今年の4月から投資を始めたこともあって、この話が強く心に響いた。
    主人公・華火が生活を切り詰めてまで投資にのめり込んだり、浪費や貯金だけにとどまる人たちを見下したりする姿に、どこか未来の自分を重ねてしまいそうになった。こんな32歳にはなりたくないと純粋に思わせてくれる。

    終盤のカルト宗教の展開は、正直なくてもよかったかもしれない。けれど、華火が全財産を失うような結末にならなかったのは救いで、どこか安心した。読み終えたあと、「自分もこれからの投資生活を頑張ろう」と前向きな気持ちになれた。

    一番印象に残ったのは、
    「85歳のおじいさんがロールスロイス・ファントムで軽自動車と衝突し、若者の命を奪ってしまう」というニュースのシーン。
    「お金をケチらず丈夫な車に乗れ」ってメッセージにも感じるけど、自分はむしろ資本主義の冷たさみたいなものを突きつけられた気がしてゾッとした。

    全体を通して投資の本質と生き方について考えさせられるいい作品だったと思う。

  • お金に対する考え方、価値観がリアルに描写されていて面白い。
    軽自動車とロールスロイスの対比、中古の低温調理器具で食中毒、高速バスなど命(健康)に関わる出費をケチった時のデメリットは大きい。
    お金を稼ぐ力がなく、運用でのみ増やしていくと、貯蓄が減る不安が大きく中々切り崩せなくなる。
    作中に描かれているダンロップおじいさんは、実家の父親を見ているよう。
    お金を使うことで『今』を生きることができるもいい言葉だった。
    投資をしつつ、出すところはしっかり出して楽しまなければ損と、考えさせられた。

  • 【雑感】
    ・エンタメ小説かな?と思い手に取ったが、割と純文学的な読後感。
    ・ラストで華美さんが月額会員制サービスに目覚めるシーンはポカンとしてしまった。笑 微妙に論理構造が分からなかったが、小説ってそういうもんだよなとも。
    ・お金がどうこうや時間がどうこうは恐らくこの作品の本丸ではなく(違ったらすみません)。「私たちはみな自分の価値観に溺れて視野狭窄になっちゃいがちだから気をつけようね」「借り物の言葉で生きると大変だよ」がそうなのかな、と。なるべくそうならないよう広めに視野を持とうと心がけているつもりだが、他人事ではないと感じる描写も多く、良い意味でお説教をされている気分になった。
    ・資本主義はくだらない!的な言説には多少共感するところも無くはないが、結局「今とちょっと先の未来を無理なく幸せに生きる」というゴール設定をすると、上手く資本主義をプレイする方向に倒すことになるよねと。

    【印象に残ったシーン】
    ・「自分は約一万三〇〇〇円をケチったあまりに、友人たちからの信頼を失ったと華美は思った」
    →友情も、健康も、何かしらの喜びも…お金を使わないことで決定的にロストすることってあるよねと。
    ・「被害を受けているときは…自分に足りないところがあり、埋め合わせるための…気づくのだ。自分は不当な扱いを受けた、と。」
    →…そうだね。
    ・「影響力の中毒性は、お金で得られる満足より大きい。」
    →私は会社で管理職をやったり学生時代キャプテン的な何かをやったりしたことがなく現状ピンとこないものの、その分いざそれを味わうとトリップしてしまうかもとビビった。
    ・「彼ら彼女らと同じように…自分は大衆ではない、という洗脳は近頃解けてきた。」
    →市井の皆様を"大衆"と呼び自分より下に置けるほど肝座ってはいないつもりだが、自分の中にいる"人より多少は色んなもの知ってるし視野広いぜ!"的な傲慢さに向き合わされた気分になってゾワっとした。
    ・「「集団」「自己批判」で検索すると…似たようなことをやっている集団に直幸は今、身を置いている。」
    →私が人生で感じてた違和感はこれだなと。昔勢いのあるベンチャー企業にいた時よく自己批判的なものを促されてたような気がするが、自己批判って他者から言われてするものじゃないし、それするとあっという間に病んだり変なものにハマったりしちゃうよねと。自己批判との付き合い方は本当に難しい…。

    【まとめ的なもの】
    ・「ある程度若いうちに一定お金稼いで楽しい思いしつつ、貯金もちゃんとしよっと!」という気分になった。転職活動頑張ります。

  • 株式投資に没頭するOLの設定は面白かったが後半の今カレ奪還計画は盛り上がりに欠けた。経済的豊かさと心の充足の対比がテーマだったのだろうが、どっちつかずになってしまった印象。

  • 羽田さんの本を初めて読みました。
    面白い本を書く方なんだと思いました。

    主人公の人柄、生活行動が細かく描かれていて、
    素晴らしい。

    起承転結で言うと 『転』がなかなか激しく、
    これが小説って感じです。

    楽しめた一冊でした。

  • 紫外線に当たらず将来のシミを減らすか、今しかできないサーフィンをするか。
    長期投資をして画面の中の数字を大きくするか、使ってお金の恩恵を受けるか。

    私も美容も投資も好きなので、だいたいずっと、わかるわかる、あるあるーと思いながら読めました。
    『朽ちていく肉体は所詮、経験を得るための道具にすぎない。その年齢でしかできない経験をひとつひとつ拾っていきながら、朽ちていきたい。』
    ってフレーズにとっても共感。
    多分主人公も私も損したく無いタイプ。

    途中イケハヤやオウムの話も出てきてちょっと大きな事件も起こるけど、そこまでハラハラさせられることはなく、だいたいずっと主人公が内省してる感じ。
    信頼も、お金も、この世に確かなものなんて無いよねぇ

  • 一万円を年利5%複利で運用していくと一年後、二年後、十年後いくらになるかをいつも考えてる投資に傾倒する華美。友人の結婚式2次会代で得られる友情と、その費用を投資に回して得られる将来的な利益を天秤にかけて後者を選んでしまい、友情を失ってしまう。
    投資の先に得られる利益はどれだけの価値があるか。お金の使い方の良し悪しとは。
    投資やら資産運用やらが礼賛される世の中に対する問いに対して、自分ならどう答えるだろう。


  • 株式投資は将来の成長に期待する投資だ。
    だが、溜め込まれた資金は不確実なものである。

    現在において、大事なものにお金を投じることは、自己満足感、充実につながる。

    また、お金を支払うことは信頼されることでもある。
    無意味な浪費は良くないが、自分相手が納得していることならば、資本主義社会において重要なことだ。

  • 主人公は32歳の工場労働者。250万の年収しか無いが、資産運用しており、5000万円を資産形成してその配当で同額を作り出す(分身と呼ぶ)のを目標にしている。そして些細な節約のために友人関係を壊してしまう(お祝儀をケチって結婚式に行かず、その日に男といるところをSNSにあげてしまったりして)。同じ歳の彼氏と同棲しているが、彼は彼で主人公とは正反対の気質を持っており、彼女の吝嗇な部分をちくちく批判しながら自分は思い出作りにせっせと金を使うタイプ。私も資産運用はしているので、彼女の発想に共感を持ちつつも、いやあ行き過ぎだよねというのは彼氏にも一理あるよねと思いながら読んでいくと‥終盤はあっと驚く別展開だったりする。面白かったですよ。

  • 何週間かかけて読んだけど、たまに情報が飛ぶように感じたのは実際そうなのか、あえて断片的に描いているからか。

    事務員とトレーダーの日々からコスプレイヤーのキャラクター、
    彼氏がどんどん思想に傾倒していく様子は想像したくないけどある意味リアルでしかも末がやっているサロン的な商法は今も本当にあるだろうし

    それを後半で繰り返しと冷静に批判してるのも
    この小説の「書き手」としての立場が表れるような
    どこか冷静に読み進められる要因となってよかった

  • 将来の配当金生活を夢見る、低所得層の30代独身女性が主人公。一方、その恋人は「お金より体験が価値」という宗教じみた活動にのめり込んでゆく。

    目先の出費を出し渋るあまりに友情を失ったり、惣菜を溢して汚れてしまったバッグや車の片付けに時間を奪われたり、痛々しくて妙にリアル。

    それでいて、主人公が目指す資産をクリアしている年上投資家たちの倹約生活談はどこまでも貧乏くさく、生活保護を受けている人たちと何が違うの? という……

    主人公も、その恋人も、極端なだけで“間違いとはいえない”“けど、そのままはしんどい”という生き方だった。人生の主体は自分であるはずなのに、お金に振り回されている現代人の物語。

  • 悪くない。悪くないけど薄い。
    (ページ数も内容も薄い)

    投資とカルト教団の話。

    私は投資もやってるし、宗教は全く興味がないので野次馬的に楽しく読めました。

    スラスラ読めたからつまらなくは無いのだが、エンタメ的にピンチとかなくてやや平坦な気がします。

    あとネタバレなんだけど傭兵が出てきてちょっと興ざめ。

    テーマは面白いけど、もう少し頑張れ!って感じでした。

    特にオススメはしません。

  • アラサー特有の思想が固まり出して、他人を否定してしまう日常からお話は始まります。
    主人公は配当で、お金を増やしていき、いつしかそれが自分の代わりにお金を稼ぐ分身と認識するようになる。

    配当で増やしているのに、途中から急に、利ざやで増やす意気込み含み損を抱えたり、ニューヨークに想いを馳せて気持ちが大きくなったり、でも日常は守銭奴のような生活を送る日々

    中盤は、主人公と彼氏の思想が二十代後半からの思想の強いショート動画を流し見してるような内容で、うわべだけのないように読んでて痛々しく辛いまであります。抱えてる問題をうまく表現していると思う。しかし読者の自分の感情が起伏するってことは、読んでる自分にも思い当たることがあるのかなんて考えたりしながら、頑張って読みました。

    終盤、緊迫感のある場所に潜伏するのですが、連休最終日にふと数時間でニューヨーク市場が開くことに想いを馳せることで、力が沸いてくるのには笑いました。

    最後数ページで、この作品を主人公の中で納得させる内容がまとまってます。主人公がお金を使うことで、使ったことに後悔しない人生が続いていくんだろうなと思える作品でした。

    主人公の心理描写は素晴らしいと思いました。観葉植物のところとか。

    積読チャンネルのあらすじを聞いて、株式投資をしている主人公という事で読みました。FIREの先の絶望を積読チャンネルで解いていたのが面白くて読みました。おしまい。

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著者プロフィール

1985年生まれ。2003年『黒冷水』で文藝賞を受賞しデビュー。「スクラップ・アンド・ビルド」で芥川賞を受賞。『メタモルフォシス』『隠し事』『成功者K』『ポルシェ太郎』『滅私』他多数。

「2022年 『成功者K』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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