平成史 昨日の世界のすべて 1989-2019

  • 文藝春秋 (2021年8月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (560ページ) / ISBN・EAN: 9784163914114

作品紹介・あらすじ

小泉純一郎から安室奈美恵まで――平成育ちによるはじめての決定版平成史が誕生した。気鋭の歴史学者として『中国化する日本』で脚光を浴び、その後、双極性障害による重度のうつの経験をもとにした『知性は死なない』で話題を集めた著者が、「歴史学者として著す最後の書物」と語る、渾身の一作。昭和天皇崩御から二つの大震災を経て、どんどん先行きが不透明になっていったこの国の三十年間を、政治、経済、思想、文化などあらゆる角度から振り返る。新型コロナウイルスによる政治・社会の機能不全の原因も、「昨日の世界」を知ることで見えてくる。

感想・レビュー・書評

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  • 以前にも岩波ジュニア新書『10代に語る平成史』(9784005008780)という本のレビューにも書いたけれども、「結局さ、平成ってどんな時代だったん?」と自問した時に、なんか上手く答えられないんですよね。ガッツリ平成育ちなんですけども。
    何となく元気で明るくおちゃらけたイメージがあるっちゃあるんだけど、一方ですごく息苦しかったというか濃い影が差しているというか、ジっと見ちゃいけないものの横でシレッと遊び続けていたというか、そんなように身体と心がバラバラのまま過ごし続けていたのがわたしの平成時代だったかな、と。いま振り返れば、だけど。

    そんな平成という時代30年を、平成育ちの歴史学者が語りあげた大著。

    まずもって納得がいったのは「「成熟」のモデルを喪った子どもたちの時代としての、「平成」」(p48)という、「父たるモデル」(p33)を喪った子どもが‘それっぽいこと’をやり出し始めたのだという点。ここでいう父とはソ連邦と昭和天皇という左右の支えとなっていた正に大黒柱。父を喪った子どもたちによる護憲と改憲の論争はやがて「戦前と戦後の「断絶」」(p116)を顕にし、平成末期の頃には「なんら思想性のない、「劣化戦後」への回帰」(p470)へと至る。

    もう一つ胸に残ったのは、平成が大きな転換を迎えたのはいつか?という問い。与那覇先生は「1997年であり、2016年です。」(p472)と挙げておられます。前者はアジア通貨危機により「いまの世の中は根本的に狂っており、次になにが起きるかわからないという恐怖感に覆われ」(同上)た年であり、後者はドナルド・トランプ大統領誕生という「「既成秩序の全否定」への欲求が、現実の政治に溢れ出」(p480)し反知性主義の台頭と国際秩序の崩壊が亢進した年であります。もちろん、国内の出来事として一連のオウム真理教関連の事件や東日本大震災という出来事はありますが。

    言ってしまえば、平成は思想・文化・政治etc.あらゆる分野で過去ないし他者との断絶が広がった時代。

    過去を見つめ返すことに意味なんてないのか。いわんや自分が生きていた時代をよ。否、そんなことはないと頭のどこかで感じているからこそ、わたしは『平成史』という類いの本に惹かれるんだろうな、と思っている。

    書き口が少々悲観に寄っている節があるので、そこはめいめいが見極められたし。まあ、嘆きたくなる事ばかりが起こっているといえばそれはそうなんだけど。


    1刷
    2024.8.10

  • 【オンライン読書会開催!】
    読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です

    ■2021年11月15日(月)20:30~22:15
    https://nekomachi-club.com/events/9684a33c3ea9

  • 平成史と銘打たれてはいるが、扱う分野は論壇、政治、サブカルの3つに限られるので、そこに興味のない読者はひょっとしたら置いてきぼりにされるかもしれない。特にその年の物故者の思想を世相に絡めて論じるスタイルは、これだけ続けて読まされると、亡くなるタイミングという単なる偶然を無理やりこじつけているように感じられ、どうにも白けてしまった。
    平成は歴史が無効になった時代との認識は部分的には理解するが、であればまさにこうした文系趣味の語り口こそ、どうでもいいものとして真っ先に遺棄されるだろう事も付言しておきたい。

  • 平成…。折坂悠太さんの「平成」と併せて読むと虚無感が倍増する。事実の羅列にも関わらず閉塞感に満ち満ちているのは、平成の時代の真実を言い得ているからだろうか。昭和は光と影のコントラスト強い時代。平成は影が闇(病み?)になった時代。令和はどう総括される時代になるのだろう?

  • @

  • 平成一桁ガチジジイとしては読むしかないなという心持ちで読んだ。

    浅田彰って堀江貴文とか古市憲寿とおんなじようなカテゴライズで最初は売れてたんだっていう極めて雑なまとめだけど、妙に納得感あった。
    最後の「ボールを投げない人」批判が一番ぶっ刺さる。最近の歴史修正主義とのやりあいでもやたらと古い史料がこれが1次史料だとか、この映像も1次史料だとかやっててどちらも不毛。

  • 若手の元歴史研究者による平成通史。

    自分は昭和60年生まれで、平成はリアタイしたことになります。
    当時の世相を研究者の立場からして俯瞰して記述しているわけですが、知らないことや気づかなかったことだらけでした。

    与那覇さんの本を読み上げたのはこれで2冊目ですが.文体や言葉選びがとてもかっこいい。
    歴史観については全く真反対の立場ですが、面白く読めました。

    つくる会の話とか、自民党政権の話とか、批判的につづるとこんなテイストになるんだなと思いました。

    平成についての歴史書をもっと読んでみようと思った。

  • 昭和天皇崩御からふたつの大震災を経て、先行きが不透明になっていった日本の30年間を、政治、経済、思想、文化などあらゆる角度から振り返る。『PLANETS』メールマガジン連載に加筆・修正し書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40284595

  • 序 蒼々たる霧のなかで
    第1部 子どもたちの楽園
    第2部 暗転のなかの模索
    第3部 成熟は受苦のかなたに
    跋 歴史がおわったあとに

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC09300657

  • 1年ごとに振り返っているが、政治とおおまかな文化の説明しかできていないので盛り上がりに欠ける。

  • 平成の出来事史、人物史として眺めるには良く調べて書き込まれていて面白いが、作者の目指すところの統一的歴史観というには程遠い編集でした。

    団塊世代が泣いて崇拝したインテリな論壇という鎧を着たポマード臭い世界観と、Twitterの200文字で世界を動かす現代との世代間格差を強く感じました。

  • 平成の通史。
    メディアの時代だったと論客視点から思う。
    いろいろ振り回されたからこそ、覚えているような人物や出来事は記憶の中にある。
    一言でまとめきれない30年間だったと読んでいて感じた。

  • 書評はブログに書きました。
    https://dark-pla.net/?p=2663

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/763731

  • 東2法経図・6F開架:210.77A/Y82h//K

  • 久々にジャンル的にもカロリー的にもこういうの読んだなと。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京大学教養学部卒業。同大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。専門は日本近現代史。2007年から15年にかけて地方公立大学准教授として教鞭をとり、重度のうつによる休職をへて17年離職。歴史学者としての業績に『翻訳の政治学』(岩波書店)、『帝国の残影』(NTT出版)。在職時の講義録に『中国化する日本』(文春文庫)、『日本人はなぜ存在するか』(集英社文庫)。共著多数。
2018年に病気の体験を踏まえて現代の反知性主義に新たな光をあてた『知性は死なない』(文藝春秋)を発表し、執筆活動を再開。本書の姉妹編として、学者時代の研究論文を集めた『荒れ野の六十年』(勉誠出版)が近刊予定。

「2019年 『歴史がおわるまえに』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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