- Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163914619
作品紹介・あらすじ
父と娘の“名探偵コンビ” 好評シリーズ最新刊!
出版界で起きる「日常の謎」に挑むのは、体育会系文芸編集者の田川美希と、抜群の知的推理力を誇る高校教師の父親――。
実家の掘り炬燵で繰り広げられる父娘の会話から、大岡昇平、古今亭志ん生、小津安二郎、菊池寛ら各界のレジェンドをめぐる「謎」を解き明かす……人気シリーズ第3弾。
【本書で描かれる6つの謎!】
■「大岡昇平の真相告白」
『武蔵野夫人』という題名に「夫人」と付けたのは誰か。編集者か、それとも……。
■「古今亭志ん生の天衣無縫」
“自由人”は表向きの姿? 「蚊帳売りの詐欺師」のエピソードから志ん生の意外な一面が明らかに。
■「小津安二郎の義理人情」
小津映画の原作者としても知られる作家・里見弴。しかし、原作と映画があまりに違うことに気付く。
■「瀬戸川猛資の空中庭園」
評論で鋭い著作を残した瀬戸川。彼が学生時代に書いた映画の評論と映像を比べて明らかになった事実。
■「菊池寛の将棋小説」
異色の作品で出会った江戸時代の棋譜の謎。先崎学九段と室谷由紀女流三段が読み解いていくと……。
■「古今亭志ん朝の一期一会」
落語「三軒長屋」のCDを探す未亡人が本当に聞きたかった音とは。音源を探って見えてきたのは……。
感想・レビュー・書評
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文芸の謎解き小説かな?
短編連作で6篇。
北村さんの疑問点を小説に借りて研究発表したような作品ですね。
中野お父さんは北村さんの分身で、野球や将棋、落語、映画、近代文学を話題にして日頃の謎を解明していく物語です。
正直、羨ましい本だと思います。大学の講義まではいかなくとも、こんなマイナーな疑問で小説が出せるのは北村さんならではかも。
ちょっと誰も読まないと思う本を駆使して謎を解明していくのは好事家ここに極まれりの感がありますね。
好奇心が大勢な為に嬉しく読み進めました。
このシリーズは円紫シリーズの延長だと思って読んでいます。円紫さんから逸脱した感はありますが!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中野のお父さんの本の知識量が、ただただすごい。主人公の美希が持ち込む問題を、本の知識で解いていく。美希の言ったワードからいくつもの関連本を自分の書庫から出してくる。お父さんの書庫ってどうなってるのか見てみたい。
読んでると今話題になっている事とリンクしてるな、と思う箇所がいくつかあった。
『大岡昇平の真相告白』 読んでて真っ先に思い浮かべたのが、週間誌と芸人さんの問題。はじめは気になって週刊誌を続けて読んでたけど、飽きて読むのやめてしまった。"これって書き手によって読み手に与える印象がだいぶ変わる"という事に気づいたから。
『小津安二郎の義理人情』 原作とドラマや映画では話が変わるみたいな箇所があるんだけど、まさに今起こってる事だ。ドラマを毎週楽しみに観てた。なのに、一月に入ってから揉めてる事を知り、それに続いて原作者の訃報。ショックだった。私は漫画を読んでないので原作がどうだったのか分からないけど、原作者の思いを知り悲しくなった。
あとは、私が印象に残ったのが、『瀬戸川猛資の空中庭園』。人の心を動かすのは人それぞれ違う、という事に改めて気付かされた。自分が面白いと思っても友達は「そう?」というのはよくある。押し付けてはダメだと思った。
「古今亭志ん朝の一期一会』が一番好きだな。亡き夫を思う妻にジーンときた。謎を解いたお父さんは素晴らしい。
全体的に私には難しかったです。
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オール讀物2019年9,10月号大岡昇平の真相告白、11月号古今亭志ん生の天衣無縫、20年6月号小津安二郎の義理人情、11月号瀬戸川猛資の空中庭園、21年2月号菊池寛の将棋小説、3,4月号古今亭志ん朝の一期一会、の7つの連載短編を2021年11月文藝春秋から刊行。シリーズ3作目。文芸探偵を自認する北村さんらしいお話。今回は興味を惹かれる話がなくて楽しめませんでした。残念。
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中野のお父さんシリーズ。
編を重ねるにつれて、かなりマニアックに。
今回は落語と将棋の話題で、ちょっとこれらに疎い私には少々難しかった。
「大岡昇平の真相告白」がいちばんわかりやすく、面白かったな。 -
文宝出版(ぶんぽうしゅっぱん)で編集者を務める田川美希(たがわ みき)と、中野にある実家の、博識なお父さんとの交流を描く、第三弾。
高校の国語教師をしているお父さんは、恐ろしく博識で、また、稀有な書も含むたくさんの本を持っている。
今までは、美希が謎を持って帰り、お父さんが安楽椅子探偵を務める、その過程で豊富な知識が披露される、という運びだった。
今回は、謎解きよりも、文献を詳しくあたった研究を発表されている気がして、小説というより学術書を読んでいるような印象だった。
個人的に、落語も将棋も嗜まないので、なかなかに読了に至るまでがキツかったが、最後の一編は、謎解きらしいオチのある作品、良い雰囲気で終わった。
小説や落語の、本当の原典はどこにあるのか、原作と映画や小説、落語との関係はどうなっているのか、といった話題が多かった気がする。
一部アレンジから連想の連想・・・と次々に別の作品が出来上がって行った面白さも語られる。
現代だったら、誰か一人が類似点を発見したりネットで何か見つけたりしたら、即、「見たことある!」「そっくり!」「パクリ!」と拡散されて大炎上、なんて展開になるかも知れない。
通信の手段が文書しかなかった昔の不便は、逆に趣深いものでもある。
また、録画がなかった頃の映画、現代でも舞台や寄席は、その時一回限りの感動であり、大切な思い出。
この時節ならではの、パンデミックでエンタメの空間を共有できないことの残念さも描かれている。
ここ最近の小説には、大体コロナのことが書かれている。
後の世になって、この頃の小説はね・・・などと語られるようになるのだろう。
『大岡昇平の真相告白』
『古今亭志ん生の天衣無縫』
『小津安二郎の義理人情』
『瀬戸川猛資の空中庭園』
『菊池寛の将棋小説』
『古今亭志ん朝の一期一会』 -
シリーズ3作目なんですね。
知らずに初めて読みました。 -
中野のお父さん、3作目。本だけでなく、落語や映画も名探偵だった。「オール讀物」連載のものなので、後半の作品はコロナの中の日常も反映している。
やっぱりすごいお父さんだ。 -
中野のお父さんシリーズ第3弾。
中堅編集者の美希と元高校教師のお父さんの知的で暖かい交流が再び。
小さな出来事が広く深く思いもよらないところへと繋がっていく楽しさがこの作品の醍醐味。
大岡昇平から始まり、古今亭志ん生、小津安二郎、菊池寛など知らない作品やエピソードが満載。
途中難しくなってくると、のほほんとした美希の性格やユーモアに救われながら最後まで読み通せた。
感じ入ったのは、演奏も、落語も、レコードやCDでは感じられない唯一無二のその場の空気というものがあること。そこにいた観客が演者と一体となって作品を作り出しているのだということ。
本当に好きなものは、直に足を運んで生で聞くに限るとしみじみ思った。
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【収録作品】大岡昇平の真相告白/古今亭志ん生の天衣無縫/小津安二郎の義理人情/瀬戸川猛資の空中庭園/菊池寛の将棋小説/古今亭志ん朝の一期一会
ミステリといっても、本にまつわるあれこれがテーマ。様々な本が出てくるが、しれっとご本人の著書も挙げられているのが楽しい。「お父さん」はまさに著者ご本人と思えてしまい、会話部分はすっかり著者の声で脳内再生される(対談やサイン会に伺ったことがあるので)。
それにしても博識だなあ。本どころかそこから派生する様々なことに興味が及び、深掘りされているのにただただ感心するばかり。