李王家の縁談

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163914664

作品紹介・あらすじ

皇族華族の内面をこれほど正確に描ききった小説は
読んだことがない。傑作である。――歴史学者・磯田道史


いつの時代も、高貴な方々の結婚問題はむずかしい――
梨本宮伊都子妃は、娘・方子女王の結婚相手探しに奔走していた。なかなか身分の釣り合う婿が見つからないのだ……。
方子女王が皇太子妃になる道が潰えた今、方子がみじめな思いをしないように、一刻も早く、良縁を見つけてやらなければならない。

聡明で率直、そして行動力に溢れた伊都子妃は、誰も思いつかなかった方法で、娘の方子女王を〈皇太子妃〉にする道を見つけ出すが……。そのために乗り越えなければならない課題は、伊都子妃の想像を越えるものだった。

高貴なる人々が避けては通れない縁談を軸に繰り広げられる、ご成婚宮廷絵巻が幕を開けます。

感想・レビュー・書評

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  • 梨本宮伊都子様の日記を元に、皇族方の結婚や、時代に翻弄される様が伊都子様目線で、書かれた作品。

    伊都子の娘、方子は、皇太子裕仁親王妃の候補者と噂されていた。
    ところが、ある日、久邇宮良子女王に、皇太子妃が、内定したと聞いた。

    我が娘を「選ばれなかった娘」にする訳にはいかない。どうしても、皇太子妃発表までに、方子に縁談を・・。

    白羽の矢を立てたのは、何と、韓国の純宗皇帝の弟で、日本留学中の李垠。
    彼なら、方子に惨めな思いをせることはない…と。

    娘の幸せを願った縁談であったが、いつのまにか、巨大な訳の分からない物に操られようとしていた。
    しかし、もう、後戻りは出来なかった。

    皇族としての矜持を持った、一人の女性が「格」を慮った、縁談へ取り組む。

    そして、時代は、終戦へと向かう。

  • 友人が、読んでみて、と渡してくれた本。

    明治維新で天皇が表舞台に戻り、宮家が急速に増え出した時代の話から始まる。

    その中で生きている、梨本宮 伊都子の目を透した、生活や、考え方、価値観など。

    自分の14歳の長女、方子(まさこ)を、日本在住で、お飾りではあるが、朝鮮王朝の後継者で有る、王世子との縁談をまとめる。
    その駆け引きが、驚き。

    結婚の為の、嫁入り道具を選ぶ話や、三木元の宝石や、ティアラまで用意する。

    王世子と方子は結婚後、生後間もない息子を連れ、朝鮮に顔見せに出かける。
    しかし、そこで息子を毒殺されてしまう。

    国際関係の為の殺し合いは、いつの時代でも、容赦無い。

    皇室、皇族方の、明治から戦争を挟んで昭和までの変遷など、遠い世界の話ではあるけれど、親子の愛情や悲しみは、共通である。

    久しぶりの、林真理子さん、ベテランの貫禄と、女性の心理、流石ですね!

  • 林真理子氏の作品は今までに2作しか読んでいない。
    本書は友人が貸してくれて、内容をよく知らないまま読み始めたのだが、私はこの史実や姻戚関係やらを全く知らなかった。

    初めの数ページの皇室・皇族・華族の名前と、途中から出てくる李王朝(も本書を読むまで全く知らなかった)の人達の名前が、ふりがなの無い時には難しくて読めない。

    う〜ん、こういう話かぁ。
    興味が湧かなかったが、次に別の友人にこの本を渡す約束になっているためと、本書の主人公である伊都子さんは、私が数年前に読んで感銘を受けた『黒鉄の志士たち』(植松三十里著)の佐賀藩の鍋島直正の孫だとわかったため読み進めた。

    しかし、この主人公伊都子さん(実在した人物であり、本人が大量の日記を残している)の高慢さと贅沢三昧な暮らしぶりに、私は主人公のことを最初から最後まで好きになれなかった。

    と同時に、現在のあの結婚とダブるダブる。
    それもあって、読んでいて益々腹が立つ。
    あの結婚でも省庁からの支出や実家からの多額な援助だけでなく、そうか!皇室や各皇族からの多額なお祝い金(元をただせば、それ全て庶民の税金)が渡っているということを、否が応でも想像させられてしまう点において、林真理子氏すごいな。
    (しかも大金が動いても、相続税・贈与税・所得税なんて免除なんだろうな、現代においても。振込手数料なんてのもかからないんだろうな。)

    本書においては明治・大正・昭和初期という時代に、主人公以外の皇族・華族も高待遇で欧州に1年以上新婚旅行に行っているし、本書以降の足跡を調べてみると皆さんなかなかの寿命の長さである。
    (あの時代に85歳でもすごいけれど、95歳くらいがザラで、102歳とか…)

    あれやこれやで、下々の者(私)としては、やっかみしか出てこない。
    (そんな中、本書にはチラッとしか出てこない宗正恵さんの「その後」は、調べてみると悲惨であった)

  • 梨本宮伊都子妃については、不勉強で知らなかったため、女王の李王家との縁談など、当時の皇族や華族の結婚には『こんな事があったのか!』と興味深く読めました。
    ただ、事実を淡々と描かれているだけのように感じる部分もあり、林真理子さんらしい物語の部分がもう少しあったら良かったなとも思います。

  • タイトルを見て、朝鮮王朝の小説かと思っていた。
    韓流ドラマはあまり見ないけれど、評判の本で、やんごとなき方達の縁談ということに興味がわいたので手に取ったら・・・日本の宮家のお話だった。
    真理子さん・・・タイトル・・・

    梨本宮伊都子妃(なしもとのみや いつこひ)の日記が元になっている。
    大正四年、伊都子の長女・方子(まさこ)は、明治天皇の皇孫・裕仁のお妃争いで、父親・守正の兄・久邇宮邦彦の娘である良子(ながこ)に敗れる。
    すでに世間では、お妃候補は方子か良子かと取り沙汰されており、良子に決まったと発表されれば、方子は「選ばれなかった人」と報道されてしまう。
    その前に、然るべき人に嫁がせなければ、と伊都子は奔走した。
    行き着いた先が、日韓併合で(人質として?)来日している、朝鮮の皇太子だった。
    日本の皇族に準じる扱いを受け、本国での経済力もある。
    伊都子としては、娘の嫁ぎ先として少しでも条件のいい殿方を・・・と望んだだけだった。
    だがその後の国際情勢は・・・

    8月は戦争物を読もうとなんとなく決めていたが今年は読めなかったと思った。
    でも、この本もそのあたりを別の視点で見た物語として捉えることができるのではないかと考えた。

    幕末近くまで、宮家は四つしかなかったということだ。
    それが明治になってから宮家が増え力を増した。
    それを阻止しようと、伊藤博文や山縣有朋らが定めたのが「皇室典範」だ。
    この物語は、明治から昭和の敗戦に至るまでの、宮家の盛衰を描き切ったと思う。

    思えば、明治維新から昭和の敗戦まで、日本は根拠のない自信と勘違いの夢の中にいた。
    その後の変化はまた急なものであった。
    結びが良い。
    新しい時代を感じさせる。

  • 明治~昭和の皇室内のあるドキュメンタリーとして読んだ。
    我が国日本はアジアの長兄であり、支那、朝鮮はその恩も忘れ云々と語り、自らを雲の上の人と称し、下々の平民は傅くのが当然、そういった選民主義のセリフが中心となっている。こうやって現代に至ってるんだなぁ~。
    平成、令和と皇室は様変わりしてきているので、この伊都子妃殿下が評したら、どんなお言葉になるのやら…

  • 面白くて数時間で読んでしまいました。
    文藝春秋、昨年1月号から今年4月号まで
    1年4か月もかけて連載していたのに
    すみません。

    林真理子さんはやっぱり凄い。
    こんな、時代も価値観も全く違う女性「伊都子」を
    まるで自分のことのように軽快に描いているから。

    ただ、セレブの描写は、やっぱり林真理子さん。
    理解できるんでしょう。
    舞台、食事、おしゃれ……。

    そして、出版業界のことはわかりませんけど、
    全員実際にいた人物で、まだ生きている人もいるし
    遺族もたくさんいますよね。
    「林真理子さんが書くなら」とOKが出たんじゃないか?
    ↑これは私の憶測です。

    こんな昔(大正~昭和)の人たちなのに
    とても生き生きとしていて。
    結局アメリカに行ったりして!
    小室さんと眞子さんに幸せになってほしいなと
    改めて思うのでした。

  • 私の上の世代では、李王家にせよ愛新覚羅家にせよ、政治の犠牲になったお気の毒なお姫様という認識だったらしいです。主人公は梨本宮伊都子さんでした。現代の自由恋愛による結婚だって一筋縄ではいかないのに、貴族の縁組はそれはたいへんでしょう。まして歴史の動乱にさらされて、過酷な運命をひとりひとりが背負っていたのです。膨大な資料にもとづく小説はこの作家の得意とするところ。戦後の行く末を読んで、なんだか高貴なお方も気の毒だなと思いました。豪華な宝石やクラウンやローブデコルテも、この精神を支えるために必要なのでしょう。

  • 李王家のことがメインに書かれているのかと思っていましたが
    主役は梨本宮伊都子妃。

    戦前の皇族などに知識がない私は
    平民では理解しがたい価値観に驚きますが
    その立場しか知らない伊都子妃にとっては無理からぬことだったのでしょうか。
    戦後は苦しい立場になったようですが
    御主人様の軍事恩給?などで好きな歌舞伎など見てのんびり暮らされたとういような情報もありました。

    本書最後の伊都子妃の日記を読むと
    こういう方たちの目が注がれる中に飛び込んでいらした美智子様もさぞかし大変だったと想像できます。

    李王家のことについてはほとんど知りませんでした。
    韓国と日本の関係は過去にさかのぼって知らなくてはいけないことがたくさんあるのてすね。

  • 最近、林真理子が図書館予約数上位に3冊(本書、奇跡、8050)食い込んでいて、全部読んでみたものの、いったいどの読者層に受けているのか謎。60歳以上?この本は歴史小説寄りの読みやすい史実本という印象で大正~戦後(直後)あたりまでを梨本宮伊都子妃目線で書かれていて色んなことが知れたので楽しかった。娘の方子さんが日本に連れてこられていた李王家の方と結婚する。小説には書かれていなかったが、難しい立場のこの夫婦が、それなりの一生を送れたようで安心した。
    外国を知っている伊都子妃でも、戦争、アジア支配に対する考え方が肯定的で盲信って恐ろしいなぁと感じた。また、当時日本のお金持ちは欧米に行っても金持ちとして通用するくらいだったろうから、その空気感が感じられる独特の話だった。

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著者プロフィール

1954年山梨県生まれ。日本大学芸術学部を卒業後、コピーライターとして活躍する。1982年、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を刊行し、ベストセラーとなる。86年『最終便に間に合えば』『京都まで』で「直木賞」を受賞。95年『白蓮れんれん』で「柴田錬三郎賞」、98年『みんなの秘密』で「吉川英治文学賞」、13年『アスクレピオスの愛人』で「島清恋愛文学賞」を受賞する。18年『西郷どん!』がNHK大河ドラマ原作となり、同年「紫綬褒章」を受章する。その他著書に、『葡萄が目にしみる』『不機嫌な果実』『美女入門』『下流の宴』『野心のすすめ』『愉楽にて』『小説8050』『李王家の縁談』『奇跡』等がある。

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