ミス・サンシャイン

  • 文藝春秋 (2022年1月7日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163914879

作品紹介・あらすじ

僕が恋したのは、美しい80代の女性でした…。大学院生の岡田一心は、伝説の映画女優「和楽京子」こと、鈴さんの家に通って、荷物整理のアルバイトをするようになった。鈴さんは一心と同じ長崎出身で、かつてはハリウッドでも活躍していた銀幕のスターだった。せつない恋に溺れていた一心は、いまは静かに暮らしている鈴さんとの交流によって、大切なものに触れる。まったく新しい優しさの物語。

吉永小百合、推薦。
「彼女は亡くなり、私は生きた」
鈴さんの哀しみが深く伝わって来ました。
作家の故郷への思いを
私は今、しっかりと受け止めたいです。

みんなの感想まとめ

心の奥深くに触れる物語が展開されます。大学院生の一心は、伝説の女優である鈴さんのもとで荷物整理のアルバイトを始め、彼女の過去と向き合うことで自らの人生を見つめ直します。鈴さんはかつてハリウッドで活躍し...

感想・レビュー・書評

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  • 引退した伝説の女優、今は80代の和楽京子(鈴さん)の元で、資料の整理のアルバイトをすることになった大学院生の一心。
    戦後、日本はもとよりアメリカでも活躍した大女優ではあるが、若い一心からしたら、上品で綺麗なおばあちゃんでしかない。
    でも、全盛期の和楽京子の作品を観返すうちに、鈴さんと親しくなり人間性を知っていくうちに、一心の気持ちに変化が訪れる。
    自分の心の中にいるのは、和楽京子なのか?鈴さんなのか?

    一心が和楽京子の映画を観ている場面では、和楽京子の演技が細かく描かれていて、戦後のモノクロの映画を実際に何本も観た気分になります。
    その映画と鈴さんの当時の実生活、そして一心の今の心情が重なって、なんともドラマチックな構成になっています。

    どんなに特別な人も普通の人なのだということ、あんなに激しく恋をしたり悲しんだりした経験があるからこそ、今の平凡な毎日が幸せだと感じられるということ、そんなことを教えてくれる物語でした。

  • 昭和の大女優で80代の和楽京子の家にちょっとした力仕事などのアルバイトにいった大学院生の岡田一心と和楽京子こと鈴さんとの心の交流のお話。

    和楽京子は昭和の最期の映画女優です。離婚歴がありますが、独身です。京子が持っているふてぶてしいほどの色気こそが、時代の求める「女」といわしめた大女優です。

    一心は鈴さん(京子)に「いっくん」と呼ばれ可愛がられます。
    一心は桃ちゃんというはっきりしない恋人ができますが、すぐに振られてしまいます。
    一心は鈴さんと一緒に軽井沢の別荘へと旅行します。
    そこで一心は50歳も年上の鈴さんに自分が恋をしていることに気が付きます。



    以下、完全にネタバレしているのでこれから読まれる方はお気をつけください。


    和楽京子の出演した映画のセリフに
    「恋心というのは嫌われたくないと思う気持ちであると。そして愛するというのは嫌われてもいいという気持ちではないだろうかと」というのが出てきます。

    鈴と一心がほのかな恋心だけで恋愛関係にならなかったのはお互いに嫌われたくなかったからではないかと思います。
    でも一心が握った手を鈴は80代の老いた手で握り返してきたのです。
    鈴には嫌われてもいいと思う気持ち(愛)があったのかな。なあんて思ってしまいましたが。

    でも一心は思います。
    日本の観客はもとより世界中に和楽京子に出会った人がいるのだと。

    鈴さんと過ごしたあの時期だけずっと観客席にいるはずの自分が大舞台に立っていたような。あの時期が一心にはとても輝いて見えるのだ。
    ー本文より

    一心には一愛(いちあ)という9歳で亡くなった妹がいて、鈴には佳乃子というもうひとりの私といえるほどの親友を亡くしているのが二人の心を繋げたのでしょう。

  • 「ミス・サンシャイン」
    一見するととても華やかで晴れやかなイメージの呼び名。
    けれどこの呼び名にまつわる本来の意味を知った時、明から暗へと突き落とされた。

    戦後の日本映画を代表する名女優"和楽京子"。
    華々しい経歴の持ち主で、まだ敗戦の色濃かった昭和初期の日本を、正に太陽のように明るく照らした女優の一人。
    そんな伝説的女優と出逢った大学院生・一心。彼目線の"和楽京子"は、映画の中だけでは知ることの出来ない魅力溢れるチャーミングな女性"鈴さん"だった。

    昭和の大女優と令和を生きる平凡な若者との接点なんて無さそうに思えるけれど、彼女の主演作の映像を観ることにより二人の距離は徐々に縮まっていく。
    「男なんか、もう信じるもんか」
    「あたしが幸せか不幸か?そりゃ、あたしが自分で決めるわよ」
    「食べることは生きること。生きることは食べること」
    「人ってね、失敗した人から何かを学ぶのよ」
    彼女の放つ生々しい言葉の数々と、歳を重ねて自然と積み上げられた穏やかな包容力は、どんどん一心を魅了していく。

    「ミス・サンシャイン」
    こう呼ばれる度に、悔しさをひた隠しにし涙を堪えながら観客の前で堂々と演ずる"和楽京子"。現実から決して逃げることなく胸張って生きる彼女の生き様は、混沌とした令和の時代を生き抜くためにも必要なことかもしれない。

    "和楽京子"みたいな女優さんは昭和にはたくさんおられた気がする。令和の今、こんな「呼吸するみたいに演技する」女優さんが少なくなってとても寂しい。

  • 引退した大女優・鈴さんが歩んできた映画人生と彼女の生き方に触れたことをきっかけに、自身と向き合い前に進んでいく主人公。

    2人がそれぞれ大切に思っている過去が、微妙に重なり合う構成が見事。ただ映画史を振り返る場面で実際の俳優や映画がでてきて、頭が混乱しました。

  • 吉田修一さんはある人物の人生譚を扱うのが本当に上手い。
    読み終えたときにいろいろな感情を掻き立てられた。
    これはぜひ映画化して欲しい。 ★4.0

  • 昭和の大女優と言えば誰だろう。映画の時代はよく知らないけど、原節子、八千草薫、草笛光子、高峰秀子、田中絹代、京マチ子などなど。この小説の主人公ほど世界的な活躍をした人はいないかもしれないが、いろいろな女優さんを思い浮かべながら、片方の主人公の一心くんとともにその魅力に惹かれていった。何と優しさにあふれた小説だろうか。昭和から令和まで生きていく中で、自分も昔を懐かしむ気持ちに浸っていた。
    しかしこの小説のテーマはそんなことではなかった。この物語の主役として生きてきた昭和の大女優、和楽京子は長崎で被爆、その時一緒にいた親友に対する思いを映画スターの立場から伝えたい、そうしたことを心の支えにして活躍してきた女性のある意味強い生き方を示そうとした。優しいお話だからこそ、平和への気持ちが心に強く刺さっている。

  • 鈴さんが、こんなおばあさんになりたいと思わせるとても素敵な女性で、その生き様を描くのかと思いきや、後半、それだけでなく、長崎の原爆のこと、心から大切な存在との別れも描いた物語なのだなと分かる。

    一愛、佳乃子ちゃんとのエピソードはとても切なく、グッと引き込まれた。「さみしい」と一年間毎日、日記に書き続けた一心の父のエピソードとか…。

    人はみんな、さみしさを抱え、胸の中心をゆっくりと押して深呼吸して、いなくなった大切な人のことを思い出しながら生きていくしかないのだろう。
    大きな喪失を経験した人には、より染み渡る本だと思う。

  • 柔らかく強く届く一冊。

    捲るページ。心地良いそよ風を感じた瞬間、鈴さんが心に舞い降りた。
    それぐらい映画女優と青年の束の間の人生時間の物語は心にスルッと入り込み、鈴さんが纏う柔らかさあるスッと澄んだ空気に魅了された。

    一心のその時々の人生岐路にリンクするかのような鈴さんの女優人生が何度も柔らかく包み、言葉が強く届き、心のツボを優しく刺激してくる。

    光も影も一心同体。

    共に生きる意味。

    人との心の重ねを得て、得ていく自分の呼吸。

    全ての言葉の奥の奥までを深く吸い込み、仕舞って鍵をかけたくなる衝動に駆られた、忘れ得ぬ作品。

  • 教授からの紹介で、昭和の大女優・和楽京子のもとでアルバイトをすることになった、一心。
    そこではさまざまな出会いと経験をして……。

    気さくな鈴さんと、周りの人間のやり取りが、さっぱりしていて清々しかった。
    現役を引退し、おだやかで静かな暮らしも心地いい。

    物置の整理や、周囲の人間との会話から知る、和楽京子の思い出話。
    大女優としての功績だけでなく、人柄が出るエピソードなど、女優の姿も、魅力的。

    最後に明らかになる、鈴さんの想いには、ぐっとくる。

    宣伝文句的には恋愛小説なのかもしれないが、恋愛以外の部分に惹かれた。

    カバー写真が、作品にぴったりだった。

  • よかった。すごくよかった。
    ひょっとして鈴さんや、鈴さんが出演した作品が本当に存在するのではないかと検索してしまった。

    どこを読んでも心の中を清流が流れたかのような気持ちになったが、
    失恋した一心の胸に手を当てて、寂しいときはここをあたためるように言う鈴さんが特によかった。

    胸にぽっかり穴があくとはよく言ったもので、
    誰しも寝ても覚めても悲しみで胸がひゅーひゅーすることがあるでしょう。
    そんな時に鈴さんのように、多くを尋ねず、多くを語らず、人から温かさを感じられたらされたら涙が出そう。
    私もいつか同じような手当てを誰かにできたらと思う。

  • 一心と鈴さんの間には言葉では表せない何かがあったのでしょう。
    それは彼らが失った大切な人、大切な人の人生、大切な人の言葉。
    結局、人は人の温もりを求めるんだろうな。
    膻中というツボには寂しさが詰まってる。それを溶かすのは人の指先から伝わる体温なのだろう。
    私には一心が鈴さんに抱いた想いは本当に恋心だったのか分からない。ただその想いを言葉にしてしまった時点で魔法は解けたような気がして、一心は僕ちゃんだなぁと思ってしまった。
    一心はやっぱり伝説の女優「和楽京子」に魅せられた観客の1人だったのだろう、と。
    この小説の主人公は和楽京子だったと私は思う。

    aoiさん、いるかさん、松子ちゃんとのみん読。冬の部はaoiさんの選書でした。「僕が恋したのは美しい80代の女性でした。」という帯の紹介文に恋愛小説かなと思って読み始めたけれど、むしろ一心の恋愛は僕ちゃん……と思ってしまうほど幼い印象を持ってしまい、でもその奥にはもっと深いものが詰まっていて、その対比というか、落差というか、そういったものが大きくて、うーむと唸ってしまった。
    素敵な小説をありがとう!

    • 地球っこさん
      こちらこそ、ありがとう!
      一心の恋愛は表向きで、その裏には大切な人の死、戦争など深く考えさせられるものが秘めてたなと思いました(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ...
      こちらこそ、ありがとう!
      一心の恋愛は表向きで、その裏には大切な人の死、戦争など深く考えさせられるものが秘めてたなと思いました(⁠ ⁠ꈍ⁠ᴗ⁠ꈍ⁠)
      2026/02/15
    • いるかさん
      地球っこさん

      素敵なレビュー ありがとうございます。
      確かに一心の気持ちは愛ではなく恋のような気がします。
      違いは責任を伴うか、そ...
      地球っこさん

      素敵なレビュー ありがとうございます。
      確かに一心の気持ちは愛ではなく恋のような気がします。
      違いは責任を伴うか、それとも気持ちだけなのか、、
      その中には尊敬みたいな人として魅せられている部分はあるような?気もします。
      恋も愛も痛みが伴いますね。
      とても幸せな時間でした。
      ありがとうございます。
      2026/02/15
    • 地球っこさん
      いるかさん、愛と恋について素敵なコメントありがとうございます(⁠◍⁠•⁠ᴗ⁠•⁠◍⁠)
      何も考えずに読めばサラリと読了してしまうけど、実は奥...
      いるかさん、愛と恋について素敵なコメントありがとうございます(⁠◍⁠•⁠ᴗ⁠•⁠◍⁠)
      何も考えずに読めばサラリと読了してしまうけど、実は奥深いものがちゃんとあって。
      aoiさんのおっしゃる通り、後からじわじわくる物語でした〜
      2026/02/15
  • 大学院生の岡田一心のアルバイト先は、昭和の大女優
    「和楽京子」のマンションでの荷物整理だった。

    80歳を過ぎていても彼女は、とても魅力的で、お婆さんなのにお婆さんに見えなくて…
    親しみやすくて、明るくて…
    一緒に居てても心地良い存在。

    いつものカフェで、パソコンを開き「和楽京子」の古い映画を再生する。
    たびたび、映像のワンシーンに目を奪われ、釘づけになり、彼女の演技に感動する。

    そのうちにカフェで気になる彼女と親しくなり、付き合い出すものの、結局はおもいっきり振られてしまう。
    そんな悩みも鈴さんには、相談するのだが…

    次第に鈴さんといる毎日が、楽しくて…。
    これは、何だろう…。
    この気持ちは、何だろうか…と。
    年齢を考えると恋とはいえないのか、いえるのか。

    決して激しい恋愛を描いているわけではないのに、場面場面で静かな愛情が、流れているような感じであった。
    鈴さんは、優しくて強い人だと感じた。




  • 本作を読み始めてまず思ったのが、中心人物である一心くんの優しくてほんわかとした雰囲気が『横道世之介』シリーズの世之介を彷彿とさせるということですね。

    でも、その一心くんよりも元女優である鈴さんのほうに心が傾いていきながら読み進めていたように思います。これは読者がこの二人のどちらに年齢が近いか、ということによるのかもしれません。

    作中に登場する映画名や監督名は吉田さんの架空の設定ではあるものの、日本の映画史の変遷をたどることができるところも面白く読むことができました。時々、大女優が実名で登場するところなんかも。

    そして大事なのは、長崎の抱える戦争の傷跡と苦悩が描かれているということでしょう。一心くんも鈴さんも作者の吉田さんも、みな長崎出身なのですものね(そういえば横道世之介も…)。

    とはいいながらも、そんなに重々しい印象を受けなかったのは、登場人物が一様に目の前の現実を諦観しながらも、ひたむきに生きようする姿を描いていたからではないかと思うのでした。

  • 図書館本

    初っ端の一文。

    そうか。何がいい人生かって、自分で決めていいんだな。

    これって素敵。
    吉田修一さんは長崎の人で、この本の鈴さんたちもそうで、
    それがなんだか良かったなぁ。
    大女優の鈴さんと、一心くん。
    年をとっても人としての魅力は、人を惹きつける。

  • 一心くんの恋心のくだりは置いておくとしても、とても好きなお話だった。和楽京子の華やかな世界と鈴さんとしての日常の対比も心模様も、佳乃子さんのことや亡き一愛ちゃんに対する思いもみんな丁寧に読み込めた。
    原爆の悲しいお話も含めて想い出を紐解く展開に惹き込まれた。

  • 国民的、いや世界的大女優である50も年上の女性と、倉庫整理のアルバイトとして出会った一心。
    一心が生まれるずっと前の彼女の作品を観つつ、一般人としての鈴さんとの交流が描かれている。
    鈴さんの人生は魅力的である。そして鈴さん自身も魅力的である。さすが吉田修一さん。魅力的なキャラクターを描く天才だ。

    鈴さんの人生の中で親友とのエピソードは読んでいて涙が止まらなかった。
    関東出身の私にとって長崎も広島もあまりに遠い。原爆のことは大昔の出来事になってしまっている。でも、長崎も広島も、どんなに時が経っても、世代交代しても原爆のことを心の奥底にずっしりと抱えているのだな…
    長崎出身の吉田修一さん自身もその一人なんだな…
    長崎、広島の人とそれ以外…ではなくて、被爆国である日本人として本来抱えていないといけないものなのだと恥ずかしく思う。
    被爆したことは、鈴さんの人生の中の一瞬だ。それに囚われて不幸でいたわけではない。だけど、なかったことにはなるわけのない事。この小説の中でのその辺のバランス感覚がすごいと思った。

  • 主人公である大学院生の岡田一心は、伝説の映画女優「和楽京子」こと(鈴さん)の家に通って、荷物整理のアルバイトをしている。鈴さんは一心と同じ長崎出身だった。前半は、ハリウッドでも活躍していた鈴さんの女優史みたいな体を取ってある。そこに挙げられた数々の映画はさすがに著者が映画通と思わせる。架空の監督や作品が並び、どれが実在したものなのか分からなくなるほど。
    中でも和楽京子がフランスのカンヌ映画祭で女優賞と千家監督が作品のグランプリをダブル受賞した架空の『竹取物語』が興味を引いた。
    吉田さんが仮想したオリジナルなのだろうか? それとも本当にあるのだろうか?読後も気になった。『竹取物語』本来の慈愛溢れるおとぎ話感を排除して、リアリズムで平安の世に生きた男や女たちを描いたものに転化されていた。育てた老父母は輝夜姫(かぐや)を強引に貰い受けようとする郡司を惨殺したり、輝夜が京の都に住む殿上人の求愛を退けて野武士と出奔する。輝夜が残してきた老父母を思い「誰も悲しませずに生きていくことはできるでしょうか?」と涙する。それを聞いた野武士は「悲しいとはなんじゃ?」「こうしてあなたといることでございます」「ならば、悲しいとは自分の思い通りになるということか」と笑って答える会話が切ない。その後野武士はイノシシに襲われ命を落とし、一人残された輝夜は尼になったというストーリーだった。
    「いい映画女優ってね、呼吸するように演技するのよ」も名言だ。
    被爆で鈴さんは親友の林佳乃子と一心は妹を亡くしているが、佳乃子と妹は申し合わせたように「私たちは早死にするからといって不幸な人生ではなかった。周囲に愛され十分幸せだったことを忘れないで」と、言残している。胸に響く言葉だ。鈴さんに寂しい時には、胸の窪んだところ“膻中(だんちゅう”を押さえて深呼吸をしなさいと教えてもらった。
    一心が鈴の訃報を知り、仕事の場でささやかな良心的な行動をして物語は閉じられる。きれい事だけでは生きていけないと分かっていても、鈴が亡くなった日だけでも理想に生きてもいいんじゃないかと・・・。

    本作に関する吉田さんのロングインタビューは↓
    https://bessatsu-bunshun.com/n/n8fbf21fe97f8

    • おびのりさん
      こんにちは。この機会に、他のみなさんのレビューも拝見してきました。竹取物語に着目している方は、ブグログではいらしゃらなかったです。さすが、し...
      こんにちは。この機会に、他のみなさんのレビューも拝見してきました。竹取物語に着目している方は、ブグログではいらしゃらなかったです。さすが、しずくさん♩
      この作品を読んでないので、ミスサンシャインは、この女優さんを表現しているので良いのかしら?そうすると、太陽と月の対比から着想しているかもしれませんね。
      今回、三冊竹取物語を読みましたが、静岡県の富士市もかぐや姫伝説を持っており、街おこし的にも使っています。そこのホームページの伝承では、国司と結婚しています。その後富士山に昇天してしまうのですが。現実的な感じですよね。
      竹取物語自体は、各段落に言葉遊びのオチも用意されており、滑稽譚でもあるようです。でもやはりメインは、不老不死への考え方かなと思うようになりました。かぐや姫は月の住人で帰る時、不老不死の薬を飲みましたので、美しいまま時を過ごしていくのだろうと思います。しかし、人は、希望がない不老不死を望む事はしませんでした。この作品の女優さんも、美しいままですが不死ではなかったのですが、残された作品の中では、不老不死をかなえているのではと思います。
      竹取物語のパロディは、多いですけど、野武士と駆け落ちは、激しいですね。^_^
      2023/07/06
    • しずくさん
      早速、読んで頂きありがとうございました。

      >竹取物語自体は、各段落に言葉遊びのオチも用意されており、滑稽譚でもあるようです。
      >メイ...
      早速、読んで頂きありがとうございました。

      >竹取物語自体は、各段落に言葉遊びのオチも用意されており、滑稽譚でもあるようです。
      >メインは、不老不死への考え方
      >竹取物語のパロディは、多いですけど、野武士と駆け落ちは、激しいですね
      おびのりさんの解説を聞いて、小説に描かれているフランスのカンヌ映画祭でダブル受賞した『かぐや姫』とは、吉田修一さんが書き下ろしたオリジナルかぐや姫版だろうと確信しました。今まで通り一遍に思い込んでいたかぐや姫より妙にリアリティがあり、好感を持てたのでした。

      おびのりさんがブクログに紹介されている3冊の竹取物語を読むともっと理解できる気がします。

      おまけにもうひとつ、かぐや姫でお付き合い下さいませんか。
      こちらのブログに2012年アジアグラフアニメーション部門で入選した作品を紹介しています。題はimmortal bamboo (老竹)で、『竹取物語』をベースに現代的な解釈を加えた情緒豊かな7分35秒の短編ラブストーリーです。https://amegasuki3.blog.fc2.com/blog-entry-553.html
      3年前のレビューですが、久しぶりに観ると、竹は不死の薬と本作では言ってあり、所謂”不老不死”とは微妙に違うのだろうかと疑問を持った次第(笑)。さまざまに想像の翼を拡げていくのは楽しく興味を沸かせます!

      追記
      そちらのブログのコメントで”月の満ち欠け”が不老不死だったと納得したと書いたのは、たまたま翌日に観た映画の題名が『月の満ち欠け』で生まれ変わりをテーマにしていて、タイトルが腑に落ちたという意味合いでした。
      『博物館の少女』でも不老不死問題が取り上げてあったのも思い出します。昔から権威あるものが最後に欲しがるものは不老不死のお薬! 手にして飲んだ瞬間、限りない永い暮らしがさほど待ち望んだものではなかったと気づくのでしょうね。
      長々とお付き合い下さいましてありがとうございました。
      2023/07/07
    • おびのりさん
      「老竹」鑑賞させていただきました。
      美しい作品でした。
      かぐや姫が希望していた未来かもしれません。
      帝には、不老不死の薬を飲んでもらいたかっ...
      「老竹」鑑賞させていただきました。
      美しい作品でした。
      かぐや姫が希望していた未来かもしれません。
      帝には、不老不死の薬を飲んでもらいたかった、いつか会える日が来る事を願っていた。古典にもそのような雰囲気があります。
      人間は、叶わないかもしれない夢だけでは、不老不死は過酷ですよねえ。
      私は、全く関係ないところで、「時をかける少女」の映画で、未来から来た少年を忘れさせられたにもかかわらず、大人になっても何かを待つ原田知世さんを思いだしていました。^_^
      自分では、探さない作品を見る事ができて、楽しかったです。
      また、どうぞよろしくおねがいします。
      2023/07/07
  • 映画「国宝」を観て本を読む前に、初めて吉田修一さんの作品を読むのに選んだのがこの一冊。往年の大女優と大学院生との心のつながりやそれぞれの人生は、淡い恋愛物だとかフィクションの世界だとか言いたくない程作者の力量を感じてしまった。突っ込みどころの多いフィクション小説もあって好きになれないと思っていたが、自分が自然に受け入れられたのに驚く。吉田修一氏すごいかも。

  • 往年の大女優の資料整理や周りの人達の話などから浮かび上がる華やかな女優の活躍。そしていろいろな思いも抱えていたことも。ひとりの女優の生涯をこんな表現の仕方で物語にするなんて、なるほどなーと思いました。

  • 昭和の大女優、和楽京子【本名:石田鈴】の家でアルバイトをすることとなった大学院生、岡田一心。

    戦後、日本映画を席巻するようになる女優たち。京子はそれまでの社会的価値観を破壊し、肉体を晒し、「アプレ女優」という言葉を世間に浸透させた。
    その時代時代に愛される女優の眼。
    カメラの前で肌をあらわにしながらも、逞しさ漂う佇まいと、目を奪われる神格化されたような美しさと凄まじさ。
    時代を照らすような輝きをもつ一方で、憂いを含み、男のためではなく自分のために生きる女の生き方に、ふてぶてしさすら垣間見える。
    時代が「女」を求めていたのだと知った。

    主演女優でありながら七輪で魚を焼き、それを皆に振る舞うといった当時の女性の扱いも、
    夜の撮影スタジオでのハリウッドスターとのロマンチックな恋愛も、
    和楽京子の、いや鈴さんの口から聞かされる昔話の数々は、その時代を知らない若い一心の心に色鮮やかに描かれる。
    日本的な美しさのすべてを切り取り、詰め込むようにして魅せられていく。

    五十以上も年の離れた女性に恋心など抱くはずがないと語ってはいるが、うまく説明のできない高揚感や、彼女がそこにいることの安心感。眠れない夜に話していたい相手。
    スクリーンの中の彼女に恋をした一心の目の前にいるのは、数十年後の彼女の姿だ。
    銀幕の彼女と、今こうして微笑んでくれる彼女とは一体何が違うのか。
    若かりし頃の野性味混じる色香も、年月を重ね完成された人間としての味わいも、すべては彼女の歩んできた人生の一幕であり、嘘偽りのない彼女そのものだ。
    暖炉の火のように笑う彼女を前にして、心を溶かさないでいられる術はない。年月のほかに説明できるものは見つからない。
    恋心に戸惑う一心に、好奇の目を向けようとは思わなかった。

    「ミス・サンシャイン」
    華やかに愛らしく響くハリウッドでのキャッチフレーズが象徴する揶揄に負けまいと胸を張り、本物のサンシャインとなっていく彼女はやはり美しい。
    光とも影ともなりうる人生に向き合う方法を教えてくれた彼女の人生もまた、フラッシュに照らされた光と影を持ち合わせていた。
    脳裏に蘇る「忘れたい」過去や、無意識に記憶の外に押し出していた思い出。
    その正体のもつかけがえのなさに心が揺さぶられた。
    誰かの人生の軌跡を辿ることで、自分の人生から涙をこぼすように溢れ出るものがある。
    かつての銀幕スターと現代の大学院生という
    現実味のない二人の交流は、わずかな期間であっても確かに存在した。
    そのことがただただ嬉しい。
    彼女の歩んできた人生と、一心がこれから歩んでいく人生の先にあるものが、どこかで交わっていることを願いながら、時代の移ろいをただ僅かに寂しくも思った。

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著者プロフィール

一九六八年、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。一九九七年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、デビュー。二〇〇二年『パーク・ライフ』で芥
川賞を受賞。二〇〇七年『悪人』で毎日出版文化賞。ほか、『パレード』『横道世之介』『さよなら渓谷』『平成猿蟹合戦図』『路』『怒り』『森は知っている』『犯罪小説集』など著書多数。ANAグループ機内誌『翼の王国』での短編小説とエッセイをまとめた書籍に『あの空の下で』『空の冒険』『作家と一日』(木楽舎)がある

「2017年 『最後に手にしたいもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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