完全読解 司馬遼太郎『坂の上の雲』

  • 文藝春秋 (2022年3月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784163914886

作品紹介・あらすじ

月刊「文藝春秋」2021年1月号から5月号にかけて短期集中連載された「司馬遼太郎『坂の上の雲』大講義」に、新たに書き下ろしたコラム、人物事典、関連年表、詳細な脚注などを追加。昭和の「国民文学」と呼ばれた司馬氏の代表作を、令和の読者も楽しめるように完全読解した決定版。筆者の佐藤優氏と片山杜秀氏は、現代きっての読書人。歴史への洞察も深い。この両者が丁々発止、司馬作品に切り込んでいく。平成以来、沈滞を続ける日本社会に、もう一度、明治の清新な風を吹き込む1冊です。これから『坂の上の雲』を読もうという読者はもちろん、何度も読んだという読者にも、新鮮な作りになっています。本書を読んだ後、書棚からもう一度、『坂の上の雲』を取り出してみてはどうでしょうか。明治が、昭和が、そして近代日本の姿が甦ってくることでしょう。

みんなの感想まとめ

作品は、司馬遼太郎の名作を現代の読者に向けて深く掘り下げる解説書であり、著者たちの対談を基にした豊かな内容が特徴です。彼らは、作品の美点や弱点を冷静に分析し、読者に納得感を与えるアプローチを取っていま...

感想・レビュー・書評

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  • 四国旅行に行く前にドラマ『坂の上の雲』DVDを見ました。
    まだ第三部は放映されていなくて第一部第二部だけですが。
    当時のレビューを読み返したら
    「第三部が放映される12月がくるのが楽しみでたまらない」
    と書いているのに、それっきり見ていない自分…。

    気を取り直して、昨年文藝春秋に連載された
    佐藤優さんと片山杜秀さんによる「司馬遼太郎『坂の上の雲』大講義」の単行本化
    非常に楽しく読みました。

    もちろん戦争には反対。
    でも私は日露戦争に関わった当時の皆さんを尊敬しています。
    だけど、だからダメなんだ、
    だから第二次世界大戦という大失敗を引き起こしてしまったのだ。

    現在ロシアによるウクライナ侵攻が問題となっていて
    『坂の上の雲』には通じるものがたくさんあります。
    この本ができたのは侵攻直前でしたので、
    その件には全く触れていませんが。

    〈「面白いのは、ロシア人”防衛戦争”にはめっぽう強いことです。」
    「確かに、ナポレオンやナチスという手強い敵を撃退しました」
    「ロシアでは、ナポレオン戦争は「祖国戦争」、第二次世界大戦は「大祖国戦争」で、ネーミングからして”防衛戦争”です。
    逆にアフガニスタン侵攻やプラハの春といった”侵略戦争”では、踏ん張りが利かない。だから日露戦争でも負けた」〉

    私はウクライナ侵攻もロシアは負けるだろうと
    希望を持ちました。

    〈当時の日本からすれば、朝鮮半島は《大陸からうける日本列島への圧力を緩衝するための安全用のクッション》として存在していました〉
    〈要するに、日本が最も恐れたのは、《朝鮮半島が他の大国の属領になってしまうこと》〉
    〈《日本は、その過剰ともいうべき被害者意識から明治維新をおこした。統一国家をつくりいちはやく近代化することによって列強のアジア侵略から自国をまもろうとした。その強烈な被害者意識は当然ながら帝国主義の裏がえしであるにしても、
    ともかくも、この戦争は清国や朝鮮を領有しようとしておこしたものではなく、たぶんに受け身であった》〉

    現在のロシアも、それに似ているのではないでしょうか?
    そして結果として敵を増やしています。
    コロナでグローバル化停滞となったように思われましたが、
    再び各国が団結しようとしている、ロシアのおかげで。

    だから、もうロシアには戦争をやめてほしい。
    私には祈念することしかできません。

  • 司馬遼太郎の「坂の上の雲」は、私の一番好きな本の一つです。(もっとも読んだのは大昔ですが・・・)
    その本を月刊文藝春秋で、佐藤優と片山杜秀の対談で取り上げていたものが出版されたので、どんな対談か楽しみにして手にした次第です。

    この「坂の上・・・」は筆者(司馬遼太郎)が、第4巻のあとがきで「この作品は、小説であるかどうか、じつに疑わしい」述べているように、通常の小説ではない。
    通常の長編小説の延長線上で見れば、構成上の破綻があるし、その点では失敗作といえるかもしれないが、司馬の作品の中では「竜馬がゆく」に次いで人気が高く、累計で2000万部近く売れています。
    何故かと言えば、読んだ人なら分かりますが、小説にグイグイと引き込まれて、のめり込んで行きます。司馬の筆力の賜物です。

    また一方で、この本は司馬の作品の中でも一番物議を醸している小説です。本文の中で「乃木将軍」を愚将と痛烈に批判したことで、保守論客であった福田恒存から猛烈な批判を浴びたり、更に戦後歴史学の主流であった「講座派マルクス主義」と明治時代の認識に差があることで批判を浴びています。
    近年は、前述のマルクス主義の戦後歴史学に批判的であった「自由主義史観」の言論人が、司馬作品、中でも「坂の上・・・」を「国民の正史」として見だしたことも論争が大きくなった原因のようです。
    司馬とは関係のない所で、作者の意図しない方向へ進んでいるのは、読者として違和感を覚える次第です。

    さて本題に入ります。構成は、以下の通りです。
    序 章:今なぜ「坂の上の雲」を読み直すのか
    第1章:乃木希典と東郷平八郎
    第2章:夏目漱石と正岡子規
    第3章:明石元次郎と広瀬武夫
    第4章:日清・日露戦争と朝鮮半島

    本著を読み終えた全体的な感じは、佐藤優の得意な「インテリジェンス」の分野に話が傾きがちで、「坂の上・・・」から外れた論点が多いように感じました。
    まあ、佐藤優が登場してくれば、そちらに話が行くのは、出版社の思惑通りなのかも知れませんが・・・。

    個別には、佐藤優が「日露戦争の白兵突撃はその後のヨーロッパでは模範とされ、第一次世界大戦の肉弾戦に繋がった」と述べているのは、大きな誤りで、彼はインテリジェンスの専門家であるが、戦史は門外漢というのが分かった。
    この分野の専門家である永井陽之助によれば、「日露戦争には欧米諸国から多くの観戦武官が派遣されたが、その報告書は、敗戦国ロシアの後の赤軍とドイツ参謀本部を除いては、大半は本国では、無視され紙屑として捨てられた」
    何故なら「極東の『猿』の戦闘などなんの参考になるかと、当代一流をもって任じていた戦略家たちは、頭からバカにしていた」そうだ。
    ただドイツ参謀本部は膨大な資料を作成し真剣に検討したが「将来の大規模な欧州戦争について結論を引き出すには、冒険に過ぎる」とした。
    203高地は巨大なコンクリートに覆われ、周囲は遮蔽物もなく鉄条網に囲われた城塞であった。さらに最新式の機関銃や多くの砲弾が飛び交う修羅場と化し、世界最初の大規模な近代戦が行われた戦場であった。
    これらの欧米各国の日露戦争(特に203高地の死者の多さ)を観戦した結果が反映されることなく、第一次世界大戦への悲惨さに繋がって行く。
    司馬は乃木への批判とは別に、乃木が傷つかないように密かに指揮権を取り上げ、日本軍の窮地を救った天才戦術家の児玉源太郎を描きたかったのだと思う。

    一方、佐藤優が「坂の上・・・」は、ロシアの日本専門家の必読書というのは驚いた。
    理由は、日本における「反露感情」がどのようにして醸成されているかを知るための材料だというが、これにも違和感を抱いた。「坂の上・・・」では、反露感情を醸し出すのとは反対に、日露戦争は南下するロシアに対しての祖国防衛戦争とは言っているが、個々にはロシア軍の司令官のクロパトキンに、好意的な見方をしているように、反露感情を醸成するような本ではないと思う。

    本著は、全体的に、「坂の上・・・」の主題については違和感を抱く場面が多々あるが、むしろ本論から外れたところで面白かった。

  • 今だから断念したシリーズを再読してみるか!広瀬神社にもお参りしたし

  • 音楽評論よりも、本業の著作「未完のファシズム」で興奮させられた片山杜秀氏が、このところ新刊が相次ぎ、いったい何人のゴーストライターを抱えているかと思わせる佐藤優氏との共著でこの本の出版案内を見かけたので「坂の上の雲」を再読した上で読み終えた。
    結果的には再読直後に手にしたのが正解であった。

    お二人の対談を文章化したものに加え、要所要所にそれぞれが眺めのコラムというかエッセイ風のものを差し込み、言い足りなかったところを補足している。

    司馬遼太郎を手放しで礼賛することなく、「国民文学」としての司馬遼太郎の美点と、ある意味弱点となってるところを冷静に見て取っているあたりが、読んでいて納得感が大きい。

    巻末には文庫本の各巻に分けた充実した年表、それに主要人物事典が百頁弱掲載されている。(ジャーナリストとして名前の書かれている人は、佐藤優氏の協力者?)

    読後(または再読後)、記憶も鮮明なうちに手に取るのがおすすめ。

  • 「坂の上の雲」解説本の体。「坂の上の雲」も司馬作品も読んだことがない方が、読んでみたくなるかはよくわかりません。私は高校の時に読みましたが「坂の上の雲」も「竜馬がゆく」も司馬代表作とはとても思えず、国民小説かと言われれば・・・という感じ。確かに日露戦争開戦までは面白いんだけど、新聞連載らしい全くまとまっていない小説。なのでもう一度読んでみようとは全く思わなかったが、この対談で書かれている内容は作品関係なく、なかなか面白い。「司馬史観」とまで言われるように、如何に司馬作品が良い意味でも悪い意味でも歴史解釈に影響を与えているかがよくわかる、という意味では優れた解説本。

  • 文藝春秋掲載で噛み合いが良すぎるこの2人、面白い読み物になるのは当然ではある。

    「国盗り物語」は好きだけど、「坂の上の雲」も「菜の花の沖」も読んでいない(観てもいない)者としては、「読んだ気になれる」のも大変に結構でございます。

  • 【令和に甦る「国民文学」の力!】不朽の名作、司馬遼太郎『坂の上の雲』を、現代きっての読書人、佐藤優と片山杜秀が完全読解! 令和に甦る「国民文学」のすべて。

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著者プロフィール

1960年1月18日、東京都生まれ。1985年同志社大学大学院神学研究科修了 (神学修士)。1985年に外務省入省。英国、ロシアなどに勤務。2002年5月に鈴木宗男事件に連座し、2009年6月に執行猶予付き有罪確定。2013年6月に執行猶予期間を満了し、刑の言い渡しが効力を失った。『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―』(新潮社)、『自壊する帝国』(新潮社)、『交渉術』(文藝春秋)などの作品がある。

「2023年 『三人の女 二〇世紀の春 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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