- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163915456
作品紹介・あらすじ
絶対王政時代の17世紀ヨーロッパ。オランダは王を戴かず、経済の力で大国になった。海洋貿易、軍事、科学技術で世界を牽引し、文化・芸術も大きく花開いた。
「他国では王侯貴族や教会の占有物だった絵画が、フェルメールの生きた十七世紀オランダでは庶民の家の壁にもふつうに飾られていました。
フランス印象派より二世紀も先に、庶民のための芸術が生まれていたのです」(あとがきより)
フェルメール、ハイデンの風景画からは市民の楽しげな暮らしが見て取れる。
レンブラント、ハルスの集団肖像画は自警団の誇りと豊かさを、
ロイスダールの風車画はオランダ人の開拓魂を、
バクハイゼンの帆船画は東インド会社の隆盛と経済繁栄を伝える。
ヤン・ブリューゲル二世はチューリップ・バブルに熱狂した意外な一面を描き、
ステーンが描く陽気な家族からは、人々の愉快な歌声まで聞こえる。
フェルメールが生きたのは、こんなにも熱気あふれる“奇跡の時代”だった。
人々は何に熱狂し、何と闘い、どれほど心豊かに生きたか――15のテーマで立体的に浮かび上がる。
『怖い絵』著者・中野京子が贈る《名画×西洋史》新シリーズ誕生!
絵画40点フルカラー掲載。
2022年開催『ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展』で来日中の『窓辺で手紙を読む女』の修復前後の絵も収録(「手紙」の章)。
本書を読むと、美術展の楽しみも倍増です!
感想・レビュー・書評
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表紙の絵に惹かれて手に取ったのですが
思いがけず、素晴らしい発見の詰まった本でした。
中野京子さんの分かりやすくリズム感のある文章。
絵画を通して17世紀のオランダの黄金時代が紐解かれます。
オランダが スペインのハプスブルク家の所領から独立した様子が
ユーモアたっぷりに描写されていて、つい笑ってしまいます。
《しつこく金をせびり続けるストーカーから
やっとのことで自由になれた。
完全に手を切るまで実に80年が費やされた!》
これ、最高!
そして、カラーの見開き2ページで展開される数々の絵画。
その歴史的意味はさることながら、
背景や床、テーブルの上に描かれた小物たちの解説が楽しい。
例えば、フェルメールが描いた『地理学者』。
彼が羽織っている上着は日本の “丹前” で、
オランダ東インド会社が長崎の出島を通して仕入れたものだと。
造船技術に優れ、海洋貿易で他国を抜きんでていた
当時のオランダの様子をうかがい知ることができます。
常々疑問に思っていたことが二つ解明されました。
一つは、大塚美術館で観た『真珠の耳飾りの少女』のこと。
「えっ?!」と
びっくりするくらい小さな絵だったのです。
オランダには画家がたくさんいて、
庶民の顧客のために小さな絵を薄利多売をしていたのだとか。
納得です。
二つ目は、”go Dutch” (割り勘)という表現。
なぜ オランダ人(Dutch)?と疑問だったのです。
《絵の発注にも集団自画像という方法で割り勘にした》
オランダ人のシビアな金銭感覚が解説されていて
ストンと腑に落ちました。
オランダという国の特異な魅力がたくさん詰まった作品。
この本一冊で、絵を観る楽しみが何倍にも膨らみました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
中野京子さんの絵画読み解く本。
もう何冊も中野さんと絵画で旅をした気分になれたので、この本もそんな期待をしながら読みました。
とても細部まで絵を楽しめて、びっくりするとともに今までの見方が残念だったと思うもの。
中野さんの解説はより楽しむヒントとして、その土地ならではのこと時代の流れや背景や宗教も教えてくださるので勉強になるしより深く絵を見られる。
最後に現代に出来た「サンクン橋」が紹介されており、絵画とは違った驚きがありました。
この本の絵画は他の著書よりは少なく感じましたが、絵の数よりらオランダという土地とその時代に生きた画家たちのギュッと詰まったプレゼント箱の様だと感じました。 -
中野京子さんの本40冊目です。
これだけ読んだ自分、面白いからいいけど
中野京子さんは次から次へとよく執筆し続けたなぁと。
ほとんど世界史と絵なので、
もう尽きてしまうのではないかと思うことしばしば。
しかし今回、新しい形を発掘!
このシリーズ、次は
『クリムトと黄昏のハプスブルク』を予定しているそうです。
楽しみ!まだまだ、ずっといけそうですね!
さて、この本確かにフェルメールは多いけど
他の画家の作品もたくさんあり
どれも2ページにわたって披露されているので
非常に見やすく楽しめます。
またこの時代の年表、オランダと日本並べてあるのが
とても面白いですね。
オランダがハプスブルク家の所領となった年
日本では応仁の乱が終わっています。
オランダ東インド会社(VOC)設立のころ
関ケ原の戦いと江戸幕府創立です。
デルフトで火薬庫が爆発(直後の絵の掲載あり)の3年後、江戸で明暦の大火
隅田川に両国橋がかかった翌年
フェルメールが名作『デルフトの眺望』を手掛けています。
この時代のオランダと日本との歴史
とても好きなので、わくわくしながら読みました。
ただ一方で、ほぼスペイン・ハプスブルク家の所領となったところから始まるのですが、スペインとオランダの関係はロシアとウクライナを彷彿させるのです。
私はハプスブルク家も大好きで、戦争とかいっても頭の中では何となくフィクションになっていました。
でも今回はロシアによるウクライナ侵攻を目の当たりにしているので、いままでとは違います。
〈オランダにしてみれば、異様にしつこく金をせびり続けるストーカーから、ついに、とうとう、やっとのことで自由になれた、という思いだろう。完全に手を切るまで、実に80年が費やされた!〉
80年!?
なんとかならないものでしょうか。 -
フェルメールなどの1650年頃の絵画を通して、絵や画家の解説だけではなく、当時の人々がどのような暮らしをしていて、どのような世界情勢で…というのを説明されています。レンブラントと徳川家光は同世代の人で2歳違い(レンブラントは1世代下)。鎖国時代の貿易相手オランダに思いを馳せ、絵がまた面白くなりました。
去年の7月に催された『フェルメールと17世紀オランダ絵画展』を観に行く前にこの本を読んでいたら…と、後悔してしまいます。 -
17世紀のオランダの文化、生活、暮らし、戦争、事件などを40点近い絵画とともに、細部まで説明されている。
絵画なんてお金持ちの家にしかないと勝手に想像していたら、昔のオランダでは、庶民の家にも飾られていたらしい。オランダ人の間では、「人生の目の歓び」として絵を飾ることは当たり前だったらしい。素敵だなと思う。
うちは名画はポストカードでしか飾れないけど、うまく描けている子どもの絵は額に入れて飾ってある。これも目の歓び?
昨年、フェルメールの「窓辺で手紙を読む女」の修復後の絵を美術館で見る機会があり、この作品も本の中で触れられていたので、興味深く読んだ。
修復前の余白がある背景も、修復後の画中画が現れた背景もどちらも好きだけど、フェルメールの思いが詰まった本来の作品(修復後の方)が大事にされていったらいいなと思う。
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絵画から読み解いたオランダの歴史と風俗。
フェルメール、レンブラント、パルス、ロイスダール、バグハイゼン、ブリューゲルなどの代表的な画家の絵画を取り上げて、オランダの歴史や事件、オランダ人の気質などを学ぶことができる。 絵として描かれたものには、画家の意図や象徴が隠されており、見る人はそれを理解しなくてはいけない。 時代背景や登場人物などの知識があって、初めて絵の深読みができる。 この本では、オランダの歴史とともに、絵に込められた意味をやさしく解説されていて色々勉強になった。 質素で堅実な感じがあるオランダ人だが、意外にギャンブル好きだったり、商取引や科学に長けていたり、当時から先進的な考えを持つ人が多かったらしい。 絵画も盛んに取引され、多くの作品が出回ったが、現代まで残っているものは少ない。 それだけに現代でも見られる絵画が、時間を経て生き残った名画と言われる由縁である。日本が江戸時代にオランダに門戸を開いたわけがわかるような気がした。 (オランダ絵画には宗教色がほとんど感じられない)絵画の謎解きが味わえて歴史の勉強にもなる本だと思う。 -
オランダはフェルメールだけでなく、デステイルまで私は大好きです。江戸時代にオランダだけが西洋国で唯一鎖国中に貿易を許された国。
ネザーランドと言われた低国。小国であっても将来住みたい国の一つ。 -
とても読みやすい。絵画の解説もわかりやすいし面白い。特に「父の訓戒」という絵の解説は、以前YouTubeでも見たことがあったので印象深い。
絵の解説も楽しいが当時のオランダの姿に驚いた。 -
多くの知らなかった絵画との出会いがありました。絵画の描かれた背景を知るのは楽しい。
オランダと言えばチューリップですがチューリップパブルの話は特に面白く読みました。
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これを読んでからフェルメールとオランダ美術展に行けばよかった…
著者プロフィール
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