お嬢さんと嘘と男たちのデス・ロード ジェンダー・フェミニズム批評入門
- 文藝春秋 (2022年6月29日発売)
本棚登録 : 580人
感想 : 26件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163915609
作品紹介・あらすじ
貞淑という悪徳、“不真面目な”ヒロインたち、
不条理にキラキラのポストモダン、
結婚というタフなビジネス……
「男らしさ」「女らしさ」の檻を解き放て!
注目の批評家が贈る〈新しい視界がひらける〉本
・ジュリエットがロミオにスピード婚を迫った訳とは?
・フェミニズムと優生思想が接近した危うい過去に学ぶ
・パク・チャヌク映画『お嬢さん』の一発逆転!〈翻案の効用〉とは
・『マッドマックス』の主人公がもつケアの力と癒やし
・「マンスプレイニング」という言葉はなぜ激烈な反応を引き起こすのか……etc.
閉塞する現代社会を解きほぐす、鮮烈な最新批評集!
感想・レビュー・書評
-
著者が商業誌やウェブメディア、映画や舞台のプログラム、文庫や海外文学翻訳書の解説など様々な媒体に寄稿した批評をテーマ毎にまとめたもの。
著者が自分で述べているように、収録されている論考は全てフェミニスト批評がベースとなっているが、各論考は短めなので気軽に読むことができる。
取り上げる題材は映画や音楽、文学など多岐にわたるが、やはり著者の専門分野であるシェークスピアが一番面白かった。
パンチライン
「音楽の才能がないレッド・ツェッペリン」
なるほどサイアクだ。
追記
取り上げられていた『アナと雪の女王2』と『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』を観た。『アナ雪2』に対する著者の「(この結末が)本当に面白くてポジティブなのか」という問いには激しく同意。『ハーレイ』に関しては、「難しく考えずにただ楽しめば良いんじゃない?」と感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者とわたしの好きな映画とかはあまり重ならないと思うのだけれど、それでも、さまざまな映画について、フェミニズムやジェンダーの観点からの批評が丁寧にわかりやすく書かれていておもしろかった。
流行ってるのにわたしが興味もてなくてスルーしている映画でも、え、こんな内容なのか、こんな観点で見られるのか、やっぱり見てみなくては!?と思わされたり。(たとえば「マッドマックス怒りのデスロード」「ワンダーウーマン1984」「ハーレクインの華麗なる覚醒」「アナと雪の女王2」とか)。
あと、長々しいタイトルもおもしろい「レオナルド・ディカプリオとガス・ヴァン・サントのせいでグザヴィエ・ドランと私の人生はメチャクチャになった」と「私たちは帝国だったんだけど、とはいえ私はストームトルーパーにすらなれないかもしれない」の、ファン心理とかファンダムみたいな話がなぜかすごく興味深くておもしろかった。どちらもテーマとなっている映画をわたしは見たことはなく(スターウォーズさえ、大昔に1作くらい見ただけ)、だから具体的になにが書いてあるのかもよくわかってないかもしれないけど、それでも。なにかをものすごく好きっていう人や話が好きなので。このくらい、人生を狂わされるくらいなにかをものすごく本気で好き、っていう人が、著者のように研究者になれるんだろうなーと思う。わたしみたいに普通になにかが好き、とか、かなり好き、とか、ファン、くらいじゃ、そこまではいけないんだよねと少々悲しく思ったり。 -
ジェンダー・フェミニズム入門とあるけど、エッセイ的な書き方で取り付きやすいけど、教養的な知識を下敷きにしないと、ややしんどかった。
批評の先に見えてくるものに、辿り着きたかったけど、やや挫折。
タイトルすごくいいのに。 -
映画や音楽をフェミニズム的に批評するとこんなにも新たな視点が得られる
好きなものは自分が選ぶわけじゃなく、自分がその対象から"選ばれた"のだ、という文章が印象的。この選ばれた責任感が全体に通底してて、作品への深い愛につながっている -
初読
批評ってやっぱり面白いな…と改めて興味を持った次第。
ソフィア・コッポラの「マリー・アントワネット」も
2006年当時、リアルタイムで映画館で「あれっ…」と肩透かしをくったような、期待外れのような、でも何がどう…とモヤモヤしながら観たので
こちらのポストモダンでピンタレスクという評と
そして私には全然読み解けない筈の80年代ロックの引用との解説で、鮮やかに完敗ぶりを自覚。
一方、パク・チャヌクの「お嬢さん」と「荊の城」の翻案の妙についてはだよねー!とハイタッチしたいような同意
抑圧から逃れようとし、美の画一化に加担したくないと思いつつも年齢や体型によって好きな服を着れない、と思うことに関して
自分で自分を抑圧してるのでは?と内面に問うてみる
下りは完全に"わかる"
私はさえぼう先生よりもっと手前、偏見と意地悪が多く、模範的な体型でなくとも好きなドレスを着て楽しんでる人に対しては「いいね」なんだけど、
楽しくなさそうだとか完成度が余りにも低いと感じるとう〜んとなるジャッジメント目線も正直ある。
これは確かに「何故そう思うのか?」は忘れない方が良さそう。 -
すごく良かったし、北村さんのファンになった。わたしは「ジェンダーよくわからん」みたいなタイプなのだが、本の中では専門用語あるけど喩えが上手くて、ジェンダー論がわかりやすく載ってた。
軒並み映画を題材にしてたので、映画をよく見る人はもっと楽しめそう(わたしは映画を全く見ないので)。
斯くいうわたしはフェミニストになるつもりはないけど、ジェンダーでの論点は知っといて損はないと思った。 -
前作「お砂糖とスパイスと爆発的な何か」の頃から気になってはいたものの、なにぶんこれまでに観た映画は片手で足りるという人間なので手を出しかねていたが、今回初読み。
「お嬢さんって何だよ、バカにしてんの?」というのがひっかかっていたが、映画のタイトルだったのね。大変失礼いたしました。
前述のとおり映画も観なけりゃグラムロックも聴かない、著者との共通点はスラッシャーだということくらいで取り上げられている作品もほぼ未見だったが、期待どおり非常に面白く読んだ。
本題の批評もさりながら、リアルタイムの・最先端のフェミニズムについて日本語で手軽に読める点が非常に貴重。ガラパゴス日本にどっぷり浸かった手合いには、あるいは「いちいち細かい」「うるさい」と思えるかもしれないが、この島国を一歩出た世界はいまや「そう」なっているのだと知るべきだ。
また、その論考に上京後の華麗な経歴と同じくらい影響を与えているのが「地方の共学校で女子として生き(させられ)たこと」で、著者の書くものに独特の陰翳を与えている。個人的に大変興味深く、ときに痛ましく読んだ。
2022/9/12〜9/17読了 -
前作のような映画中心の批評を期待していたら、思っていたよりも英文学に関する批評が多い。マッドマックス、自分は絶対見ないだろうと思ってたけど、今すぐ見たい気持ちになる。
-
あらすじ(Googleより)貞淑という悪徳、“不真面目な”ヒロインたち、 不条理にキラキラのポストモダン、 結婚というタフなビジネス…… 「男らしさ」「女らしさ」の檻を解き放て! 注目の批評家が贈る〈新しい視界がひらける〉本
・ジュリエットがロミオにスピード婚を迫った訳とは?
・フェミニズムと優生思想が接近した危うい過去に学ぶ
・パク・チャヌク映画『お嬢さん』の一発逆転!〈翻案の効用〉とは
・『マッドマックス』の主人公がもつケアの力と癒やし
・「マンスプレイニング」という言葉はなぜ激烈な反応を引き起こすのか
……etc. 閉塞する現代社会を解きほぐす、鮮烈な最新批評集!
さえぼう先生のはやっぱり読みやすくて面白いですね。
みたことある映画の批評はなるほど確かにと思えるし、未鑑賞のものはみてみたいと思える。
あとがきにも書かれていたけど、昔よりもジェンダー・フェミニズム観点での批評、レビューが身近に見られるようになったし(自分がより関心を持つようになったのも大きいけど)、それに対してものすごい剣幕で突っかかるおじさんたちもよく見かける。今までそういう観点での意見は黙らされてきて、公に出てこなかったのかもしれないね。意識せずとも、より広くこういう観点での映画や本の見方が一般的になるといいな。
以下、引用
そこで私がフェミニストとして、そして研究者としていつも思っているのが、歴史が良いと言ってくれる側はどっちなのか考える、ということだ。今、自分の考えが周りの人にどう評価されるかを考えてはいけない。未来の人が自分をどう思うか考えねばならない。 キング牧師は生前、アメリカの白人たちから全く好かれていなかったし、多くのフェミニストや自由のために活動した人々もそうだった。今嫌われても、歴史が良いと言ってくれることは何かを考えてそれを優先するのが、学問や自由に仕える者の責務だと思う。歴史を学ぶことの醍醐味のひとつは、歴史に対して恥じない道は何かを考えられるということだ。それがうまくいくかはわからないし、結局考えた末にバカな選択肢をとってしまうこともあるかもしれない。しかしながら、未来のことを全く考えずに選ぶよりはずっとマシだ。(p.39-40)
→歴史を学ぶ意義と今何を主張すべきか。この考え方大事。
日本語で「歴史修正主義」というと、ホロコースト否定論など歴史上の出来事を政治的意図のもとに歪める動きを指すことが多いが、歴史修正主義というのは本来、新史料の発掘や再解釈によってそれまでの歴史観の刷新をはかる、健全な歴史学の営みを指す言葉だった。(p.91)
→ネガティブな意味しか知らなかった!そうなんだ!
自分が男であることをのびのび楽しむのは別に悪いことではないし、伝統的に男らしいとされている特質で、いわゆる暴力的な「有毒な男らしさ」ではない、誰にとっても美徳と思えるような特質はいくつもある。大事なのは、男の子が均質な集団ではなく個人差がとても大きいことを認識しつつ、男性であっても「優しさや慈しみの気持ち、豊かな表現力や傷つきやすさを見せること」(三二七頁)は全く問題がないのだと示すことだ。(p.128)
→だいぶ前に読んだ『ボーイズ』これそうだよね。勘違いされやすいし、変にどうせ男性が全部悪いですごめんなさいみたいに捻くれる人いるけど、重要なのはここだと思う。
本稿では結婚をタフなビジネスとしてとらえている小説を二作、紹介したが、著者は結婚というのは現在でもビジネスだと考えている。別に愛し合っている人間同士が一緒になるのに、法的なお活は必要ない。契約としての法的な結婚が必要になるのは、税金とか、子どもの養育とか、財産の相続とか、お金や身分保障のためだ。こういう十九世紀の小説に描かれた物語は遠い昔のことのように思え、財産のために結婚するなどというのは過去のものに思えるかもしれない。でも、実は我々もリジーやシャーロットやエスターのように、日々、お金のために結婚しているのである。結婚はロマンティックなものではない。今も昔もビジネスだ。(p.178-179)
→激しく同意。。 -
-
フェミニスト批評で注目を集める批評家による批評集。海外文学や映画をジェンダーの観点から鋭く切り込み、作品の新しい見方を提示してくれる。批評の面白さを体感できる一冊。
-
はーー面白かった!すぐに『お砂糖と〜』も借りた
-
北村さんはTwitterで時々お見かけしていたものの書籍は初めて読んだが書きっぷりが非常に面白かった。とても聡明で深く思考する方なのだろうということが文章から感じられた(学者なので当たり前か)。本書は文芸、映画にまつわるエッセイのような感じで、知らなかった作品も半分以上あったが見てみたい・読んでみたいと思った。ウィキペディアの男子文化の話はさもありなん。ロミジュリをジュリエットの名誉の観点で読むのはなるほどと思ったし、その流れでヴィクトリア朝文学のハッピーエンドとしての結婚を、なんとかヒロインにとっての抑圧的要素を取り除こうとしていると言う話も言われてみれば確かにと思った。物語をただ受容するだけで無く、こんな風に批評できたら面白いだろうな。もっといろいろ見て、読んで、感じて学びたいと思った。
-
映画を中心に舞台や小説などの作品を題材に、フェミニズム的視点から書かれた批評集。
➤ 私は近年になってフェミニズム的要素を取り入れてアップデートしようとしている中年男性。本書に書かれているような視点がようやくすんなりと受け入れられるようになってきた。それでも、男性間性暴力と「男らしさ」に関する考察とか、ウィキペディアや『スター・ウォーズ』のファンダムが男性優位な構造になっていることなど、初めて聞くこともたくさんあって勉強になる。
➤ 「結婚というタフなビジネス」の章で度々出てくる、「結婚は家父長制に基づくビジネスであり、女性にとっては不利で抑圧的にならざるを得ないが、いろいろなプロット要素を動員して、ヒロインの結婚から抑圧的な要素を取り除こうとした」という考察は、なるほどと思った。これはヴィクトリア朝の小説の話だが、マシになったとはいえ本質的には今も続いている。
➤ 映画『SKIN / スキン』で、青年ブライオンが白人至上主義団体を脱退するために必要な「全身のタトゥーをすべて消す」ための費用を寄付した匿名の女性の話が出てくる。この個人的な見返りを求めない女性の行為について、「おそらくこの寄付者女性が求めている見返りは、社会からもう少しだけ人種差別がなくなることだ」という考察がなされていて、なぜか少し感動した。自分もこの女性のようにありたいと思ったのかもしれない。 -
【紙の本】金城学院大学図書館の検索はこちら↓
https://opc.kinjo-u.ac.jp/ -
【オンライン読書会開催!】
読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です
■2022年11月3日(木)14:30 〜 18:00
https://nekomachi-club.com/events/b7d15733862d -
映画、小説を批評したくなる。
ジェンダーやフェミニズムに関連する作品を観て、読み、深めるきっかけになる1冊。
ジェンダー・フェミニズム批評入門というタイトルをつけるなら、これらの批評方法についての解説が欲しかった。 -
Twitterで有名なsaebouさんの著書なので読んだ。私も映画ファンだが、文学、特にブロンテ姉妹三人やジェーン・オースティン、ミドルマーチと結婚のあたりは特に面白く読んだ。このあたりの古典、読むと結構面白いのだ。
批評は自分と観点が同じでも違ってもいい、批評としての切り口が読みどころ。「いつも同じことを書いている」としてもフェミニズム視点での文学や映画の批評は少ないのが実態。「同じこと」を書き続けてほしい。
著者プロフィール
北村紗衣の作品
