紙の梟 ハーシュソサエティ

  • 文藝春秋 (2022年7月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (376ページ) / ISBN・EAN: 9784163915647

作品紹介・あらすじ

ここは、人を一人殺したら死刑になる世界――。

私たちは厳しい社会(harsh society)に生きているのではないか?
そんな思いに駆られたことはないだろうか。一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。過剰なまでの「正しさ」を要求される社会。
人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪う社会のいびつさを拡大し、白日の下にさらすのがこの小説である。

恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。

被害者のデザイナーは目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?――「見ざる、書かざる、言わざる」

孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる――「籠の中の鳥たち」

頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?――「レミングの群れ」

俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ――「猫は忘れない」

ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった――「紙の梟」

みんなの感想まとめ

人を一人殺したら死刑になるという厳格な法律が支配する世界を描いた物語は、深い思考を促す衝撃的な短編集です。物語を通じて、加害者や被害者の背景を考えることが求められ、単純な判断がもたらす恐ろしさが浮き彫...

感想・レビュー・書評

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  • 『1人殺したら死刑』という法律になった日本社会を描いた作品。
    どんな理由でも、死刑。
    こうなった時、いったいどうなるのだろうか?法律になったとたん、他人事になり、死刑についての思考は停止してしまい、加害者・被害者の背景や理由など、真剣に考える人はいなくなってしまうのかもしれないね。
    誰かが、幼い子供を守るために正当防衛で人を殺したら?
    それが、もし自分や自分の家族だったら。それでも、『こんなやつ、死刑』と軽く言えるのだろうか?
    絶対言えないなぁ。恐ろしい世界だ。

    • yosshiさん
      いや〜この法律が適用されたり怖いですね!!もし「実は冤罪でした」「真犯人を庇って」とか、現実には判決が出るまで時間かけるような事件でも即死刑...
      いや〜この法律が適用されたり怖いですね!!もし「実は冤罪でした」「真犯人を庇って」とか、現実には判決が出るまで時間かけるような事件でも即死刑にされる可能性がありますよね!
      2026/06/13
    • ブック・ラ・りえさん
      そうなんですよー。即死刑なので1人殺すも2人殺すも同じだ、と考える殺人犯が出てきたりしますよね。
      そうなんですよー。即死刑なので1人殺すも2人殺すも同じだ、と考える殺人犯が出てきたりしますよね。
      2026/06/13
  • 人を一人殺したら死刑になる世界。
    その世界に身をおいたとき、人々はどういう感情を持つのだろうか…。
    それを軸にした内容の5編の中・短編集である。

    表題となっている「紙の梟」は、まだ人間味のある愛情の残った内容であったが、「見ざる、書かざる、言わざる」は、最初からインパクト強めで驚愕しかなかった。

    「籠の中の鳥たち」は、暴漢に襲われた友人を助けようとした為に殺人を犯してしまう。
    彼らが別荘で過ごすあいだに次々と殺される理由を辿ると…

    「レミングの群れ」は頻繁するいじめに自殺するといじめの首謀者が殺害される。
    犯人の動機は、一人殺して死刑になる為。
    複雑で意味のない連鎖に思えたが、ラストに正体がわかる。

    「猫は忘れない」は、上手くいったかに思えた復讐が捕まったあとに復讐ではなくなったと知った真実に愕然とする。

    読み応えのある一冊だったが、短編はあまり好きではないなぁ。

  • 人ひとり殺したら「死刑」
    そんな法律になった日本…
    このルールは単純であり日本国民に歓迎された…

    「死刑」に賛成、反対と言う感情が揺さぶられる作品ではありました。

    「死んで詫びる」「腹切り」「仇討ち」
    吉良を討ち入りした赤穂浪士がヒーローだと考えるのは当たり前…悪を成敗して何が悪い?
    日本にはそんな感情があるし…復讐する気持ちわかるよね〜とか(u_u)

    この作品の世界は、とにかく相手が死んでしまったら死刑です。
    殺意のあるなし関係なく、事故だろうが、正当防衛だろうが理由は関係ないのです…恐ろしい。


    話が進むにつれてこの「一人殺したら死刑」の弊害が出てくるのですよ。

    あ〜そうなるよね〜日本国民ってそう言うとこあるもんね…と冷めた気分になる作品でした。

    自分は死刑についてどう考えるか…
    ここにはっきりレビューしたらどうなる?

    そんな意見に総攻撃し、多数派に属することを是とするのが日本人…
    この作品を読んで死刑について考えてみよう!
    そんなメッセージ性の強い作品でした。

    そんな貫井さんは死刑廃止論者かな?


  • 人ひとりを殺したら死刑になる世界の物語。

    短編集になっているのだが、特に深く想像することなく読み始めた。そして、1話目でかなりの衝撃を味わった。人ひとりを殺したら死刑になる世界を甘く見ていた。というより、全く想像が足りていなかった。ある程度覚悟をしつつ2話、3話と読み進めるのだが、まだまだ甘かった。どれだけ恐ろしい世界になるのだ。まるで人間味を感じないかのようだ。いや、人間味があり過ぎるのか?衝撃が強くて、しっかり考えるより逃避したい気分になる。たしかに曖昧な判断はなくなり、人を殺した罰の軽重はなくなる。しかし、思考することがなくなるか極端になり、どこにも救いがないように思える。考えることを放棄したら、正義は社会正義に即する。社会正義を盾にすれば、自己欲求の発散もまるで正義かのようになる。これは現代でも当てはまるか?そうか、だからこの物語の世界は現実と突拍子もなく違うとまでは感じなかったのか。ああ、だとすれば、どちらの世界も結局恐ろしい。

    短編集になっていることで、少なくとも各話数分の可能性が描かれていて、それぞれにどれも衝撃的だ。なるほど、そういう意味ではこれは短編向きなのかもしれない。

    「見ざる、書かざる、言わざる」と「レミングの群れ」はいつまでもザワザワと心に残りそうだ。反面、「紙の梟」は一番穏やかに心に残る。

    以下は各話の帯紹介より

    「見ざる、書かざる、言わざる」
    被害者のデザイナーは、目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目にあったのか?

    「籠の中の鳥たち」
    孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる。

    「レミングの群れ」
    頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?

    「猫は忘れない」
    俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ。

    「紙の梟」
    ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった。

  • いかなる理由でも人ひとりを殺したら死刑になる世界で起きる4つの短編+表題作の中編のあわせて5つの物語

    めっちゃ良かったしめっちゃささった!

    この作品を読むまでは人をひとりでも殺したら死刑でいいんじゃないかと思っていたけど浅はかな考えだったと思いしらされた。

    この本を読んでる時に、ながら聞きで殺人事件のニュースが流れてきたことがあり、その時無意識に(犯人死刑や…)ってふと考えてる自分がいて、リアルと混同することがありました。
    さすがに、正当防衛の殺人までは死刑にしてはいけないと思うけど、それくらいリアリティのある、ありえる物語だなと感じた。



  • 見ざる、書かざる、言わざる
    籠の中の鳥たち
    レミングの群れ
    猫は忘れない


    紙の梟

    人を一人殺したら死刑になる日本が舞台。

    命を奪ったら命で償うものなのか。

    元の生活ができなくなる程の苦痛を与えても、
    命を奪わなかったら死刑にはならないのか。

    敵討ちや復讐で人を殺した場合も死刑なのか。

    復讐したが冤罪であった場合はどうなのか。

    人を殺めた事実を悔やむことなく、
    罪を償わす命を奪うだけで良いのか。

    非常に重いテーマでしたが、
    考える大切な時間をもらった気がします。

  • 扉に「これは、人ひとりを殺したら死刑になる世界の物語である」とあり、5つの物語が書かれている。随分非道な殺人をしたなと思えるのに、懲役刑だけの罪だ、などの報道を読むと、軽すぎると思うことがある。目には目を、でいいではないか?と思ったりすることがあるのだが、この物語では、殺せば死刑、と決まった社会はこうなるかも、という物語。それが「ハーシュソサエティ」。いやはや、一筋縄ではうまくゆかない人間社会を貫井氏は描きだしたものだ。


    「見ざる、書かざる、言わざる」小説推理2011.12月号
    両目と両手指と舌をやられた社長。そう、命に別状はなかった。なので犯人は死刑にはならないのだ。

    「籠の中の鳥たち」オールスイリ2012
    大学の写真サークルのメンバーが別荘で合宿。風景を撮っていたメンバーの女性が何者かに襲われそばにいた男子学生は思わず石を投げるとその男は死んでしまった。これでは助けたのに死刑になってしまうと、学生たちは男を埋め、事件を葬ったが、今度はまた一人殺された。その真意とは。

    「レミングの群れ」つんどく!vol.1
    自分の息子がいじめにあっているようだ。だが、ほどなくいじめた生徒が何者かによって次々殺される。なんと、自殺できない者が、殺せば死刑になると殺しているのだ。これが全国に広まり・・ 最後のオチがさらにブラック。

    「猫は忘れない」つんどく!vol.3
    姉を殺したあいつを俺は殺した。だが・・

    「紙の梟」別冊文藝春秋2021.9月号、11月号
    恋人の紗弥が無残な姿で殺された。そこから自分の知らなかった紗弥の姿が・・ 


    2022.7.15第1刷 図書館

  • 人一人殺したら、必ず死刑になる世界の連作集。そんな世界だから起こる様々な事件。
    Ⅰ部は面白かった。
    Ⅱ部は、死刑廃止論が絡んできて、事件もよくわからなかったし、なんだかいまいちでした。

  • 【収録作品】見ざる、書かざる、言わざる/籠の中の鳥たち/レミングの群れ/猫は忘れない/紙の梟

    表題作の登場人物、ホームレスのヤマさんの言葉に共感する。「世間」の声は、余計なお世話だと思う。人に石を投げるのを正当化できるほど立派な生き方をしている人は、石を投げないだろう。笠間の冷静さが好もしい。

  • 2023.1.7
    "人一人殺したら死刑"という日本を共通の舞台にした五つの短編。「このルールはわかりやすく、市民に歓迎された」という、そんな日本だ。

    のっけから凶悪過ぎてギョッとする
    その「ギョッ」は最後まで続く

    短編だけど読み応えあり。

  • 短編とは思えない満足感
    見ざる、書かざる、言わざる
    籠の中の鳥たち
    レミングの群れが面白かった
    こんな世の中を経験したんじゃないかってくらいリアルだった

  • 極刑賛成派。でも、人を1人殺したら死刑となると こんなふうな世の中になるなんて……自分の想像力の無さに嫌気がさしました。

  • いやはや、凄いものを読んでしまった!私的には、確実に貫井さんのベスト5に入ります。
    文体としては、いつも通り読みやすく、むしろ淡々としてクールともいえる感じで、スラスラ読んでしまいますが、実は重いのです。だって、”人ひとりを殺したら死刑“って…一見シンプルなように感じそうだけど、いや、そうではない。人が人を裁く限り、歴史が知る通り、冤罪もあるし…。この作品の凄いところは、そんな法律があったら何が起きるのか?という想像力が凄いのだ。いろいろ考えさせられました。

    今時のネット社会なら、さもありなん、という部分も怖いし、日本人独特の考え方という部分も、非常に分かりやすく描かれている。

    そういえば、題名は忘れてしまったけど、ずいぶん昔、若い頃に読んだ、筒井康隆さんの短編で「家族を殺された人達が、自らその犯人の死刑を行う」という話があり(そういう法律になってる世界)その家族の帰り道での言葉が今でも心に残っています。

    ちなみに…短編の1つ目『見ざる〜』は、私、再読でした。おそらく、どこかのアンソロジーに入ってたのではないかな?
    『レミング〜』の連鎖を怖く思いながら読んでいて、ラストで思わず「うぐっ」と唸りました。やられた。『紙の梟』の弁護士のセリフだけ一部…。
    ーーーーー
    「殺人を犯したら死刑という判断は、確かにわかりやすい。目には目をという発想は、受け入れやすいですよ。でもそれは、ただの思考停止だ。(中略)考えることを放棄したら、人は人でなくなるんですよ」
    ーーーーー
    このレビューをアップするのも、ネットなわけだから、私個人の死刑制度に対しての考え方は述べません。でも、たくさんの人がこの作品を読んで、想像力を持つことが大事なんじゃないかな〜と強く思いました。傑作です!

  • 貫井徳郎の最新作を読了しました!本編は、貫井作品らしい内容で、人を1人殺せば無条件で死刑になるという制度が成立した仮定での日本で起こる殺人事件を扱った短編集で、どの物語も死刑の是非を問うような微妙な事件を扱った話ばかりで、なかなか深い内容の作品でした!
    自分自身も死刑に対して考えさせられる内容の読み応えのある作品でした!

  • 死刑の是非を問うテーマだけに重い内容だったが、短編だったので、するすると一気読み。
    同じテーマなのにどれも違った味わいがあった。

    「籠の中の鳥たち」は密室殺人ミステリー風で、推理小説の面白さ。
    「レミングの群れ」は特に最後が圧巻。ゾッとするような結末だった。

    「紙の梟」は宮部みゆきの「火車」を思わせる展開。読後感は辛く無くてよかった。

    許せない、と思うような事件はたくさんあるが、
    死刑にすれば済むほど単純では無い。
    人を呪えば穴二つ。自らも無傷ではいられない。
    罪を背負って生きて行く事の方が過酷な罰なのでは、とも思う。
    難しい問題。

  • 人を一人でも殺したら、必ず死刑になる国となってしまった日本が舞台。
    短編4作に表題作である中編1作、計5つの事件を追体験しながら、罪とは何か、推定無罪、日本と欧米の違い、いじめ、報復、正義、SNS等々、我々は死刑制度を通して現代社会のあり方を哲学する事になるだろう。
    大人の道徳をミステリーを織り交ぜながら描いた良作。
    『自らの正しさに疑いを持たない人には、どんな言葉も無力だ』

  • 人を一人でも殺せば死刑になる世界。それを前提とした短編集。前半の短編集はその制度を悪用する者、死刑になりたくないからギリギリの犯罪を犯す者、結局死刑は犯罪抑止にならないのかと考えさせられる。後半は中編で、死刑制度に一石を投じるような作品だった。犯人が犯した犯罪に後悔を感じているなら許してあげようという精神。

  • 本当に読みながらたくさんのことを考え、
    学び、うなずき、たまに意義を感じた。

    私はずっとどんな理由であれ
    人が人を殺してしまったなら死刑になるべきだと思っている。
    いや、思っていた。か

    1人殺人で死刑になったら自殺したい人が他人を殺めるかもしれない。
    1人殺人で死刑になったら自暴自棄になってその後何人も殺人を犯してしまうかもしれない。
    冤罪も怖い。

    この作者は死刑反対者なのだろうか。
    いろいろ言いたいことも死刑がダメなこともわかった。

    それでも私は死刑制度は必要だと思う。
    ただ、1人殺して死刑を望むのは間違っていたのはわかったけど。

    とても面白かった。
    最初、短編だと思い読まずに図書館に返そうかと思ったけど
    ちゃんと読んで良かった。

  • Amazonの紹介より
    ここは、人を一人殺したら死刑になる世界――。
    私たちは厳しい社会(harsh society)に生きているのではないか?そんな思いに駆られたことはないだろうか。一度道を踏み外したら、二度と普通の生活を送ることができないのではないかという緊張感。過剰なまでの「正しさ」を要求される社会。人間の無意識を抑圧し、心の自由を奪う社会のいびつさを拡大し、白日の下にさらすのがこの小説である。

    恐ろしくて歪んだ世界に五つの物語が私たちを導く。

    被害者のデザイナーは目と指と舌を失っていた。彼はなぜこんな酷い目に遭ったのか?――「見ざる、書かざる、言わざる」

    孤絶した山間の別荘で起こった殺人。しかし、論理的に考えると犯人はこの中にいないことになる――「籠の中の鳥たち」

    頻発するいじめ。だが、ある日いじめの首謀者の中学生が殺害される。驚くべき犯人の動機は?――「レミングの群れ」

    俺はあいつを許さない。姉を殺した犯人は死をもって裁かれるべきだからだ――「猫は忘れない」

    ある日恋人が殺害されたことを知る。しかし、その恋人は存在しない人間だった――「紙の梟」



    一人でも殺したら、死刑という架空の設定ではありましたが、リアルすぎだなと思いました。近い将来、もしかしたらあってもおかしくないと思うくらい、昨今の実情を交えつつ、人間の心理を深く抉っていて、他人事ではないとも思ってしまいました。

    人を殺したら死刑ということで、死ななければ良いという意味合いから瀕死の状態でも死刑にならないのか?
    いじめによる自殺は、加害者は罰せられるのか?

    など死刑をめぐる拡大解釈がえげつないなと思いました。よくそんな解釈ができるなと恐怖すら感じてしまいました。

    物語の構成は二部に分かれています。第一部では、全4編の短編集、第二部では中編が1編書かれています。
    第一部では、死刑を肯定する側としての心理描写が描かれています。

    怨恨やいじめ、復讐など相手を殺したい人達の心情が、ミステリー仕立てで楽しめるのですが、どの作品もあっと驚かせるような展開になっています。
    特にいじめをテーマにした「レミングの群れ」が衝撃過ぎました。合間に殺人者の視点が登場するのですが、メインとどう融合していくのか。後半はどんでん返しが待ち受けていて、ラストの展開に戦慄が走りました。

    どの話も色んな方向から死刑に対する問題提起がされていて、考えさせられました。特にここでもそうですが、「レミングの群れ」が印象的でした。いじめによる自殺から始まる殺意の連鎖反応に究極のいじめ撲滅にはなる一方で、人間の倫理観が問われるなと思いました。

    果たして、死刑で全てが終わるのか?十人十色、様々な人達の心情を知ることができました。

    第二部では、第一部とは違い、死刑を否定する人側を中心に描かれています。殺された恋人は一体誰なのか?
    調査をしていくうちに驚きの展開だけでなく、感動要素もあって、第一部で味わったギスギスした雰囲気とは違った空気感を味わいました。表題作の「紙の梟」が、どう作品に関わっていくのか。わかった瞬間は、切なさや感動が込み上げてきてグッとくるものがありました。

    また、罪を償うためにも、生きて償っていく姿勢で立ち向かう姿が印象的でした。その裏側では、数えきれないネットからの誹謗中傷など今でも通ずる要素が多くあり、一瞬架空ではなく、現代だと思ってしまいました。

    単なるミステリー小説ではなく、読み終えてもずっと考えさせられる作品になっていて、ある意味答えに困る作品でもありました。

  • 架空の世界とは思えないほど生々しい。
    人の罪を許すことは難しく、寛容さを失くした世界は息苦しい。
    思わず身震いしてしまう。
    人ひとりの命を重く受け止めた結果の厳罰化が、人の命や尊厳を軽くしてしまう矛盾。
    簡単に片付く方に流れてしまう思考も理解できるからこそ怖い。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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