ギフテッド

  • 文藝春秋 (2022年7月12日発売)
2.81
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784163915722

作品紹介・あらすじ

第167回芥川賞候補作にして、『「AV女優」の社会学』『体を売ったらサヨウナラ』などで知られる鈴木涼美の、衝撃的なデビュー中編。歓楽街の片隅のビルに暮らすホステスの「私」は、重い病に侵された母を引き取り看病し始める。母はシングルのまま「私」を産み育てるかたわら数冊の詩集を出すが、成功を収めることはなかった。濃厚な死の匂いの立ち込める中、「私」の脳裏をよぎるのは、少し前に自ら命を絶った女友達のことだった――「夜の街」の住人たちの圧倒的なリアリティ。そして限りなく端正な文章。新世代の日本文学が誕生した。

みんなの感想まとめ

母と娘の関係を深く掘り下げた作品で、重い病に侵された母を看病する娘の姿を通じて、複雑な感情と和解の過程が描かれています。タイトルの「ギフテッド」は、母から受け継いだ美しさや傷を含む「贈り物」としての意...

感想・レビュー・書評

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  • 第167回芥川賞候補作品。

    タイトルの「ギフテッド」は、「天賦の才能を持つ人」という最近流行りの意味で使ってはなさそうだ。
    「娘にのしかかってくる母の重さ」を皮肉的にギフテッド(贈られた)と言っているのかな。

    母の死を通しての「ダメな母Xダメな娘(by吉田修一さん)」の和解を描く。
    和解というか許容?そこまで行かないか?
    娘は母を受容するくらいまではできたのかもしれない。
    いずれにしても少しだけ救いはある。

    母が娘に贈ったのかもしれない最後の詩。
    この詩が…
    深いようなそうでないような。
    意味があるようなないような。
    ただ、極めて文学的だ。
    本作品はこの詩にたどり着くための小説、と言えるのかもしれない。

    母と娘の微妙な距離感がもやもやと心に残る。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    母は娘に、自分が生きられなかった女性としての誇りある生き方を望んだ。ギフトされたものは一見最低のものに見えて、母にとっては最高のギフトであった。


    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    第167回芥川賞候補作にして、『「AV女優」の社会学』『身体を売ったらサヨウナラ』などで知られる鈴木涼美の、衝撃的なデビュー中編。歓楽街の片隅のビルに暮らすホステスの「私」は、重い病に侵された母を引き取り看病し始める。母はシングルのまま「私」を産み育てるかたわら数冊の詩集を出すが、成功を収めることはなかった。濃厚な死の匂いの立ち込める中、「私」の脳裏をよぎるのは、少し前に自ら命を絶った女友達のことだった――「夜の街」の住人たちの圧倒的なリアリティ。そして限りなく端正な文章。新世代の日本文学が誕生した。

    ⚫︎感想
    母に火傷させられ、隠すため腕に刺青を入れている娘。それだけ読むと、一見ひどい母親に思うが、実はそれは長い目で見たとき、母なりに娘を守るためであった。自分の体に値段をつけ、産み育てるしかなかった母は、娘がそうならないようにしたのだった。それが母から贈られたギフトだった。

    物語として過不足なくとてもよくまとまっていた。母は生き方という大切なことを言葉で語らず、娘に傷をつけるという形でのこした。そして最後まではっきりとは語らない。ドアの比喩がとても文学的だった。母は生き方そのものが詩のようで、娘にとってはわかりづらく、翻って娘の心情は丁寧に表現されていて、本当によく練られた作品だと思った。


  • 芥川賞候補作

    いつもながら賞と関係する小説は、
    どうにも難しく複雑に感じられて
    読み進めるのに骨が折れます。
    ーーーーー
    17歳で母親から逃れるように家を出て
    歓楽街で一人暮らす主人公。

    余命宣告された母親と暮らす戸惑いと、
    わだかまりから到底埋めることのできない
    ギクシャクとした雰囲気と深い溝。

    幻覚と妄想が混在する思考に、母と友人の
    死が絡まってなんとも言えない仄暗さと
    行き場のない息苦しさが淡々と続く。

    単純明快の対極にある難解さ。

  • さすが芥川賞候補。難しいです。
    作者の感性や価値観を読んでいくという感じ。
    分かるような分からないような。

    それが芥川賞の作品だろうから完璧に理解しようとは思いません。

    美しい娘が母のように美しさを武器に生きることにならないよう
    身体に傷を付けてあげるという行為をしたのか?
    それをもとにギフテッドと題名したのでは。

    美貌もギフトであり、母からの傷もギフトである。

    そのひとつのコンプレックスが
    行動を思いとどまらせてくれることがあるというのは
    私自身もよく分かるので、
    たしかにギフトといえばギフトだな、と。

    芥川賞の作品って、考えすぎると難しくてなかなか先に進まなくて考えないで読むと訳が分からない。
    Googleで解釈を調べても良いのだけど
    それをすると作者に対して失礼なような。。。
    とにかく難しいです。

  • 遅れてきた大型新人こと、鈴木涼美さんによる小説デビュー作。
    小説でもエッセイのようにあの独特の素敵な長口上があるのかと思いきや、わりに淡々とした情景描写が重ねられてゆく落ち着いた文体でした。
    夜の歌舞伎町で働く娘のもとに、病に冒された母親がやってくるというストーリーで、もちろん違うのは分かっているけれど、やはりどうしても著者本人と重ねてしまうところはある。
    束の間の夕暮れを愛して詩をかくような母親をもつと、娘は大変なんだろう。
    死そのものよりも、もうペンを持つことさえままならず、詩をかけないうちに無抵抗に死んでしまうというのは、悲しいと思った。

    ──ドアがパタリとしまりますよ。
    ──ドアがしまるとき、かいせつは いりません
    ──できれば、しずかにしまるといい。

  • 暗い内容なのに引き込まれてしまうのはなぜだろう。

    主人公は夜酒を提供する店で働いていたが、余命わずかの母と共に過ごす時間をとるために退職。友人の自殺や失踪、自らの生い立ち、ホストとのやりとりなどが、細かい情景とともに語られる。気持ちが落ち込んでいるときは避けたい内容だが、言葉の連なりがストンと落ちてくるような表現方法は秀逸だと思う。主人公の思いがそのまま文字になって現われている。

    要となるのは主人公の腕に残る火傷のあと。普通に考えれば虐待にほかならない母親の行為。しかしこれが究極の愛情だと思わせる流れに、すさまじさを感じた。

    読み終えたら、もうそのまま閉じてしまいたい。そんな読後感である。

  • 死に向かって弱っていく母の面倒を見ながら、自分と母とのこれまでについて振り返っていく純文学らしい文章のお話だった。過去に母からタバコの火を押し付けられてできた痕を刺青で隠していることと、死にたいといつも言っていた友達が本当に死んでしまったところが印象に残った。

  • 直近の芥川賞候補作。
    MXテレビのバラ色ダンディに出演された作者鈴木さんを観て手に取る。元日経新聞記者であり、元AV女優でもあった方。

    性風俗や水商売についての社会学的考察を纏めた文庫本や新書がすでに数冊刊行されているとのことだが、文芸作品から拝読。

    未婚まま母親がひとり産み育てた女性が主人公。彼女は歓楽街に住み働く。まるで自分を諦め半分以上捨ててしまったような日常。
    しがみつかない、おいかけない。

    母子家庭に育った彼女と母親との社会的には許されない異様な関係性のなか、彼女は弱り切った母親の最期を看取ることを拒まない。ただし完全に受け入れているわけでもなく、感情は排されている。

    単純化した毒親作品に陥りがちなところを事の善悪を排して抑制的に淡々と描ききる筆致に驚き。

    また、女性が同性である風俗に身を置く女たちに対してありがちな安易な同情や憐憫を微塵も感じさせず、一定の距離を持ち続ける様もお見事。
    当然侮蔑も嫌悪もない。ただただ淡々と。

    読み手に委ねる勇気があるのだろうな。こう読まれたいという書き手側の姑息な意図は感じず。

    死に往く母親について私ならば母親という大人への怒りと弱り切った高齢者を憎む自分への嫌悪で、自己否定しまくりなのだろうなと置き換える。読み手に一任の感覚。

    鈴木さんが「普通」の世界から若干振り切っている女性たちを侮蔑の念なく、客観的に描ききる視線は作者自身の経済力と知力の豊かさがあるからだろうなと想像。
    でも決して上からではないところが興味深い。

    振り切っちゃってる女性ならば金原ひとみさんの方が私は好み。止めたいのに止まらない。そこにあるひりひりした感覚が癖になるのだよなあ。

    偶然にも鈴木さんと金原さんの親御さんたちはアカデミアで翻訳関連の専門家らしく。言語IQが高い系統なのね。

    • naonaonao16gさん
      ごはんさん

      おはようございます!

      金原さんに通ずる作風や(おそらく)育った環境などの文言が、すごく気になり、コメントさせていただきました...
      ごはんさん

      おはようございます!

      金原さんに通ずる作風や(おそらく)育った環境などの文言が、すごく気になり、コメントさせていただきました!
      レビュー拝見しながら、金原さんの、感情的なのに淡々とした登場人物を思い出しました。
      別の作品で鈴木さん気になっていたので、こちらも要チェックですね!
      素敵なレビュー、ありがとうございました^^
      2023/03/28
    • ごはんさん
      naonaonao16gさん
      コメントありがとうございました。
      「共感」とか「寄り添い」などが吹っ飛ぶ作品だと思います。
      バサッとドラ...
      naonaonao16gさん
      コメントありがとうございました。
      「共感」とか「寄り添い」などが吹っ飛ぶ作品だと思います。
      バサッとドライに描ける鈴木さんは金原さんとはまた雰囲気が違いますが、興味深かったです。
      金原さんよりも味付けが乾いている印象でした笑。

      読みながら私自身が何に怒っているのかが見えた気がします笑。
      2023/03/28
    • naonaonao16gさん
      ごはんさん

      淡々と描かれているだけに、自分の価値観(怒りのポイント、何が許せないか)が浮き出てくるってことなのかな、と推察しました。
      これ...
      ごはんさん

      淡々と描かれているだけに、自分の価値観(怒りのポイント、何が許せないか)が浮き出てくるってことなのかな、と推察しました。
      これたぶん、共感できる作品を描くよりずっと難しい気がします。
      来月休みが多いので、単行本をわんさかゲットして家で静かに読もうかと画策中…
      この作品もノミネートさせていただきます!
      レビューありがとうございました!!
      2023/03/28
  • 夜の繁華街で働く25歳の「私」。病で死を待つ母。自殺した娼婦。実夫。とある一人の男・・・。繁華街の明るさの裏にある自分の体に商品価値をつけるという事実や生と死など、表と裏を「鍵」「扉」の音をキーポイントに表現されているのだと思う。
    自分の体に商品価値をつけることを嫌った母は、同じ繁華街で生きる「私」に何を伝えたかったのか?「鍵」を使って「扉」を開け、「扉」は「鍵」がないと開かないように、様々なことが表裏一体なのだと思う。噛み砕くのが私には少し難しかったけれど、その分、色々な捉え方があるなと思った 

  • 歓楽街の片隅で暮らす、ホステスの私は、重篤な状態に陥った母を持つ。死に場所を探すような母から、私の部屋に移らせて欲しいという願いを受け入れる私。死に近づく母を見守る私は、常々「死にたい」と呟いており、少し前に自ら命を絶った一人の少女のことが脳裏によぎるー

    少しずつ母の理想とは異なる成長をしていく娘に対し、口うるさく注意せず見守るのは。娘の腕に火傷を贈り、体の価値を減らしたのは。最後まで娘と共に時間を過ごしたいのは。産んでよかったと心から思うのは。
    夜の世界で暮らす私の描写がリアリティ溢れる美しい文章だからこそ際立つ、母の愛情。
    「わからないことを、わかっちゃダメだ」
    「わかることだけを、わかりなさい」
    母が残した娘に対する愛情が言葉へと姿を変え、確かに伝わる。

  • 好みの作家ではないけれど、芥川賞ノミネート作品だったため気になっていて読んでみた。文体も言葉遣いも特に好きでもないが、読みやすかった。ラスト詞で終わるところが良い。

    主人公は母に火傷を作られたりもして疎遠だったにも関わらず、望まれれば母を自分の住まいに滞在させたり、連日病院にお見舞いに行ったり、甲斐甲斐しくて、主人公の気持ちや主人公と母との関係がよく理解出来なかった。

    特に、こういう関係の母親に、晩年の死ぬ間際「あなたにもっとしてあげられることがあった」だの「煙草はやめなさい」「わからないことをわかっちゃダメだ」「わかることだけを、わかりなさい」などと言われたらその場で帰ってしまいそうだ。

    抜粋
    p.88 八百万は嫌な緊張感があっても、二百万は持ち歩ける。二百万の入った封筒を持ち歩く女はこの街に腐るほどいる。死にたいと言う女の数と大体同じくらい。

    p.118
    ーもうすぐ夜がやってきます
    ーいいですか?


    ードアがパタリとしまりますよ。
    ードアがしまるとき、かいせつは いりません
    ーできれば、しずかにしまるといい。

  • 一気読み。
    何気なく手に取って読み始め、チラッとここをのぞいてみるとここでの評価が低かったのであんまり期待しないようにと自分にブレーキかけながら読んだけど、とても好みの文章だった。
    命が尽きる前の淡々としたやりとりが胸にくる。
    作者の経歴からもう少しあけすけなドギツイものかと身構えていたけどそんなこともなかったし、直接的な表現でないのがわかりにくいと捉えられたのかもしれないが、逆に私はそこが好きだった。

  • 芥川賞候補らしい作品。

    しかし、なかなか親子の機微に同調できなかった。
    ドアの音と動き、それらにいろいろな想いが含まれているのだろうが、難しすぎた。

  • 生きる世界が違う、育った環境で人は全く別の人間として生きる。今の私を形作る物それは私自身に関わってくれた、全ての人達から与えられたギフテッド。作品に所々書かれている重い扉。その向こう側とこちら側。私は気付かぬ内に行きつ戻りつしているんだろう。

  • この作家、気になる。

    娘と母、そして父。
    複雑な関係、複雑なコミュニケーション。
    世の中にはいろいろな家族がある。

  • 芥川賞候補作だったので、いつもは読まないジャンルだが、手にとってみた。
    淡々と描かれる日常描写と主人公の心情。
    ここから、何かを感じ読み解きたかったが、私の感受性が鈍いのか? あまり心が動く事はなく、よくわからないまますぐに読み終わってしまった。

    「わからないことを、わかっちゃダメだ」
    「わかることだけを、わかりなさい」
    読後、主人公の母の言葉に、うなずいてしまった。

  • 鈍く重く虚しい。読めば読むほどしんどい。を通り越し、感情が死んでいくようだった。できれば目を逸らしていたいことばかり。

    「ギフテッドはタバコの跡のことに違いない」という書評を聞いたが、私はそうは思わなかったのでそんな見方もあるのかと驚いた。母が持っている(と思い込んでいるだけで実際には無い、先天的な)才能のことだと思った。
    作品の主人公は絶対にこの語り手だが、彼女の心を支配する主軸、つまりこの話の主役はずっと母だ。
    自分には才能があると信じて死ぬまでプライドを守る母の姿は、とても愚かで滑稽に見えてしまう。しかしそんな彼女だからこそ持っている、生命力のようなものがある。別に素敵なものではない。人間らしく、無様。でも、彼女がギフテッドだったら絶対に持てなかったものだ。
    ギフテッドじゃないのにギフテッドぶることを生涯やめなかった。母親であることよりも芸術家であること・魅力的な女であることを迷わず選んだ。一心不乱にもがいて見苦しく生きてきた。だからこそ得られた謎のエネルギー。はっきり言って幼稚だし、自分勝手で迷惑極まりないのに、なんだか見捨てられない、謎の圧力。これを確かに持っていた。

    でもこの圧力を生命力をエネルギーを、感じ取ってあげられたのは、娘とあのおじさんの2人しかいない。生涯を通してたったの2人だ。これは普通に生きる人間としては十分な数だが、たくさんの人に認められるべき才能がある(はずの)人間にしてはあまりにも少なすぎる。
    なぜこんなに少ないのか。
    ギフテッドじゃないからだ。
    たくさんの人を惹きつけることなんかできない。そんな才能ないのだということをありありと見せつけてくる。
    この、世間にとっての存在感のなさと、対照的に娘らの中では大きすぎる存在感との対比が、とても虚しくて、沁みてくるものがあった。

    また、最後にくる「わからないことを、わかっちゃダメだ」「わかることだけを、わかりなさい」という言葉、そして最後の詩がとても印象的だった。全体的に暗〜い夜の空気の中で圧倒的に目立っていた。効果的な明暗対比になっていて、迫力があった!
    ほとんどひらがなで書かれているのが、無垢を演じる母の白々しい輝きを思わせる。あるいはもう命が絶える直前の弱々しさかもしれない。どちらにしても儚く、同時に揺るがない芯のようなものがある。
    この母や、彼女が発する言葉を、美しいなんて言いたくないし、思わない。でもこの話の中で圧倒的に真っ白に光っている。自分のために生きてきた母が、死ぬ前に娘のための母親であろうとしたから、光って見えたのかもしれない。ずーっとずーっと発光したがっていたのに、求めなくなった瞬間にだけ光れたのだとしたら、かなりの皮肉である。
    さらに主人公の姿はその光のせいで見えなくなっていき、最後には読み手の視界から消えてしまった、と感じた。主人公がだんだん消されていく新しい読書体験に圧倒された。
    母は、才能で自ら光ることも、娘を照らすことも、どちらもできずに死んだことになる。望んだことを何にも叶えられなかった。それどころかむしろ娘に呪いを残していて、これからも娘の中に存在し続ける。母がい続けることで、娘の中に娘自身はいなくなる。なんとも辛辣な話だ。

    まばゆくハッピーなレモンイエローの装丁、併せて本文の広めの余白には、中身に似合わない余裕のある明るさを感じる。暗さ倍増。これもまさに内容との明暗対比で、うまい!母に似合わない黄色のパジャマのよう。
    母と子が不穏に混じり合う装画を見ると、タバコの件はやはり母子の繋がり(あるいは呪い)の証なのだろうか。親が子どもを自分の一部と思ってしまうことの恐ろしさたるや…!

    主人公は、止められてもまだタバコを吸っている。母が死ぬ前に断ち切ろうとしたのにそれでもやめないのだから、自らすすんで繋がりという呪いをかけているのね。母の思い通りになんかしないということが、母の呪縛が解けないという結果に繋がる。そう思うと娘も娘で何も思い通りにいっていないんだな。
    それでも最後は、ああ、失ったなあ、と、静かに死を感じた。とても良い終わり方だと思った。

    関係性を主人公の感じ方・受け取り方で表現していたりとか、色んな面で、技巧的にすごく上手な作家さんだと思った。
    ただ、今の私にとっては、重苦しさが甲高い音でキンキン鳴らされているような感じがずっとしていて、辛かった。風景の長い描も、暗さを積み重ねるだけで、新しく心を動かすことはほとんどできなかった。この空気に飲み込まれないように慌てて読み終えた。本質的なところをもっと深く探りたい気もしたが、そんな余裕は持てなかった。
    私には合わなかったけど、おもしろい作品だった。

  • 買ってもらうのではなく、売りつけることを選んだ、きれいな顔と身体をしていた母。

    五体満足だが人に見せたくはない身体を与えられた私は、パチンコ屋・居酒屋・飲み屋で働いてきた。男の世話にはなってない。

    行方を晦ます人、自殺する人、生真面目に風呂屋で働く人。色々。

    母は散り際に言い残した「自分のコントロールの及ばぬ範囲のものに惑わされるな」という旨の教え。これは腕を焼いたことの後悔の現れだったのか、或いは人が抱える矛盾・複雑さの表現だったのか。

  • 芥川賞候補になったやや自伝的要素も組み込んだ鈴木涼美さんの処女小説。

    ギフテッドが才能があるというよりも、母親につけられた火傷によって、あるところで踏みとどまったという意味でギフトであったということを示しているとのこと。
    そういう意識がなく読んでしまっていた。

    身体の商品化、母と娘の関係、について拡がりがありそうな小説だが、読み手を選ぶかもしれない。

  • テーマは好きなものではないが、次作に期待。

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著者プロフィール

鈴木涼美

作家。1983年東京都生まれ。慶應大環境情報学部在学中にAVデビュー。その後はキャバクラなどに勤務しながら東大大学院社会情報学修士課程修了。修士論文は後に『「AV女優」の社会学』として書籍化。日本経済新聞社記者を経てフリーの文筆業に。書評・映画評から恋愛エッセイまで幅広く執筆。著書に『身体を売ったらサヨウナラ』『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』『ニッポンのおじさん』『JJとその時代』、『往復書簡 限界から始まる』(上野千鶴子氏との共著)など。

「2022年 『娼婦の本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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