光のとこにいてね

著者 :
  • 文藝春秋
4.08
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本棚登録 : 1594
感想 : 41
  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916187

作品紹介・あらすじ

『スモールワールズ』を超える、感動の最高傑作


たった1人の、運命に出会った


古びた団地の片隅で、彼女と出会った。彼女と私は、なにもかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。でもなぜか、彼女が笑うと、私も笑顔になれた。彼女が泣くと、私も悲しくなった。
彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていながら、一瞬の幸せが、永遠となることを祈った。
どうして彼女しかダメなんだろう。どうして彼女とじゃないと、私は幸せじゃないんだろう……。


運命に導かれ、運命に引き裂かれる
ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語

感想・レビュー・書評

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  • あなたには、『結珠ちゃんに出会って、わたしの人生が本当に始まった』、というような人との出会いを経験したことがあるでしょうか?

    この世には数多の人がいて、数多の人間関係があります。そして、その全てにそんな関係が始まる起点となる瞬間があったはずです。そんな始まりは学校での出会いかもしれません、会社での出会いかもしれません、そして、街中でのほんのちょっとした触れ合いの中に始まったものかもしれません。人と人との関係性の始まりというものは、思った以上に偶然という場合も多いものです。

    そして、そんな風にして始まった人と人との関係は単に長い時間を共に過ごせば良いというものでもありません。もし時間だけが全てであるのなら、大人なあなたの最も大切な人は、今日もあなたの前の席に座る会社の同僚ということになってもしまいます。『ふたりで体験した時間は夢みたいにきらきらしていた』。そんな言葉の先に紡がれる関係性というものは時間の長さだけではない、もっと別の何かによって培われていくものでもあるのだと思います。

    さて、ここに『果遠、校倉果遠』、『小瀧結珠、七歳、小学二年生です』、『果遠ちゃんは何年生?』、『結珠ちゃんとおんなじ』、『そうなんだ』と交わした言葉の先に繋がっていく二人の女の子が主人公となる物語があります。母親に連れられて出かけた先の、ある『団地』で偶然に出会った二人の女の子。『次の週の水曜日も、結珠ちゃんは5号棟にやってきた』と、続いていくその日常の中で関係を深めていく二人の女の子。しかし、そんな二人の別れは唐突に訪れます。

    この作品は、偶然に出会った二人の女の子が、その後の人生において、出会いと別れを再び経験する物語。そんな出会いと別れの繰り返しの中に、お互いがお互いの存在を強く意識していくのを見る物語。そしてそれは、『七歳の時も十五歳の時も、今も、彼女は一瞬で私の目を奪う』と、やがて大人になった二人がお互いの存在の大切さに気づく物語です。

    『二年生になってGWを過ぎた水曜日の放課後、ママに『突然「一緒に来なさい」と』言われ『制服のまま車に乗せ』られたのは主人公の小瀧結珠(こたき ゆず)。そんな結珠は『「団地」っていうの。ママの知り合いのおうち』と説明された『「504」という札以外は何もないドアの前』にママと立ちます。インターホンを押し、しばらくすると『知らない男の人が顔を覗かせ』ました。『鍵くらい掛ければ。不用心だよ』と『スプーンやナイフにくっついたいちごジャムみたいな声』で言うママに『こんな部屋から何盗るんだよ』と返す男。『ぼさぼさの髪や無精ひげや充血した白目』の男に『怖くて足がすく』む結珠。『ご挨拶しなさい』と言われ、名を名乗ると『ちっせえ声だな、ちゃんと食わしてんのか』と言う男。そして、ママは『ここでやることがあるから、降りた階段のところで待ってなさい。三十分くらい』と言うのに『ボランティア?』と訊くと『そう』と答えるママと『けたたましく笑』う男。仕方なく一階で待つ結珠は、『向かいの棟の』五階のベランダに『手すりから大きく身を乗り出している』女の子を目にします。『何をしようとしているの?』と思う結珠は、『目があった瞬間』『両手を目いっぱいに伸ばし』ます。そんな時、『おでこにぽつんと何かが当た』りました。『指で拭うと』『指先が赤くなっている』のを見ている中に、女の子はベランダからいなくなってしまいます。やがて、『ごめんね』『びっくりして、鼻血出ちゃった』と現れた女の子は校倉果遠(あぜくら かのん)と名乗りました。
    視点が変わり、『わたしの唯一の友達は隣の家の「きみどり」』、『お隣には女の人がひとり住んでいて』、そんな女性が飼っているインコを勝手に『きみどり』と呼ぶ『わたし』。女の人が『よく遊びにくる男の人と怒鳴り合ったり』して、ベランダに鳥籠が出された時、仕切り越しに『きみどり』と会えることを喜ぶ『わたし』。そして、今日も『きみどり』を観察していると下に『ぽつんとひとりで立つ』女の子がこちらを見ているのに気づきます。『わたしに向かってまっすぐに両手を伸ばし』ているのを見た時、『きみどり』が『「アイタイヨォー」と鳴』きました。それに驚いた『わたし』の鼻から『鼻血』が出て下へと落ちていくのを感じます。『いけない』と思い、大急ぎで階段を駆け降りた『わたし』は、『ごめんね』『びっくりして、鼻血出ちゃった』と言い、校倉果遠と名乗りました。すると、『小瀧結珠、七歳、小学二年生です』と答えた女の子。結珠と果遠の運命の出会い、そして、別れ、再びの出会い。不思議な糸で結ばれた二人のそれからの四半世紀に渡る物語が描かれていきます。

    2022年11月7日に刊行された一穂ミチさんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、先月も寺地はるなさんの「川のほとりに立つ者は」を発売日に一気読みしてレビュー済みです。ただ、一穂さんのこの作品は単行本で460ページもあり、流石に平日に読むには二日かかりました。秋は新米が美味しい季節ですが、読書の秋には小説も新作がやはり良いですね!このキャンペーン、やみつきになりそうです(笑)。

    さて、そんなこの作品、「別冊文藝春秋」に2021年5月号から2022年9月号に一年以上に渡って連載されてきたものです。”運命に導かれ、運命に引き裂かれる ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語”と内容紹介にうたわれる通り、二人の女性が等位の主人公を務め三つの章にわたってそんな二人の四半世紀の人生の歩みが描かれていきます。読みどころは幾つかあると思いますが、私がまず魅かれたのは、頻出する比喩表現の数々です。特に印象に残ったのが文字だけの小説の上で『声』を巧みに表現していく部分です。主人公・結珠は母親の声音の変化を聞き分けて、そんな母親の心を読み解いていきます。二つのシーンを取り上げたいと思います。まずは、9歳の結珠が、母親に連れられて『団地』に暮らす男の部屋を訪れる場面で母親が男と話す時の『声』をこんな風に表現します。

    『パパやお兄ちゃんと話す時とも、スイミングのコーチや宅配便のおじさんと話す時とも違う、スプーンやナイフにくっついたいちごジャムみたいな声だった。べとっとへばりついて残ってしまう甘さ』。

    母親から、男の部屋で『ボランティア』をすると言われ、外で一人待たされる幼き結珠。当該シーンでは、具体的な記述は登場しませんし、結珠も中で行われていることは理解していませんが、大人な事情がぷんぷんする不穏さが十二分に伝わってきます。そんな甘い『声』の表現が別のシーンではこんな風にも表現されます。『その日のママは、第一声から違った』という、その『声』。

    『いつもの声色が鉱物だとすれば、マシュマロ。ココアに入れればとろけるほどふわふわとやわく甘い』。

    ネタバレに直結するためどんなシーンかは伏せますが、母親にとってとても喜ばしいことが分かった、そんなシチュエーションで母親が出す『声』です。『いちごジャム』も甘そうですが、ココアにマシュマロが入っているって、想像するだけでお腹いっぱいになりそうです。しかし、こちらも読者の想像力を見事に掻き立ててくれる表現であることには違いはありません。文字の上で『声』を表現するのに、なんと味覚を刺激する!という一穂さんの表現手法。なんとも絶妙な描写だと思いました。

    そんなこの作品は、上記した通り、二人の女性が等位の主人公を務めますが、ここで、一穂さんから私たち読者に向けたこの作品のメッセージを引用させていただきたいと思います。

    “ちっぽけな、女の子ふたりの、「ただそれだけ」の物語です。問題提起も世情の反映もなく、とても個人的な、ちゃちな鍵の掛かった日記のようなものだと思って下さい。 そこに教訓や有益な示唆はありませんが、「何かがあったような気がする」とうっすら感じてもらえたら嬉しいです。”

    “ちっぽけな、女の子ふたりの、「ただそれだけ」の物語”と言い切られる一穂さん。しかし、一方で”「何かがあったような気がする」とうっすら感じてもらえたら”とまとめられている通り、私も読後に何か後を引く印象が残りました。物語は主人公となる結珠と果遠の二人に細かく視点を切り替えながら展開していきます。そんな視点の位置がわかりやすいようにそれぞれの視点に切り替わる冒頭にはそれぞれ”花”と”羽”のアイコンが記されています。ということで、この切り替えの数があまりに多いことから、こういうのを見ると数を数えなければいられなくなる さてさてとしては章ごとにその数を数えてみました!簡単な内容紹介と共にご紹介します。

    ・〈第一章 羽のところ〉: 7歳の二人、結珠が母親に連れられ赴いた『団地』で、果遠と運命の出会いを果たし、そして唐突な別れが描かれる物語
    → 結珠視点: 6、果遠視点: 6

    ・〈第二章 雨のところ〉: 15歳の二人、高校一年、S高でまさかの再会と別れを経験する二人の物語
    → 結珠視点: 8、果遠視点: 7

    ・〈第三章 光のところ〉: 29歳の二人、大人になった二人がそれぞれ全く予想しなかった未来の姿で再会、そして…
    → 結珠視点: 14、果遠視点: 14

    単行本460ページという分量があるとはいえ、55回も視点が交互に切り替わるというのはかなり多い印象です。その切り替わりは交互に切り替わりながら時間が進んでいくという手法をとりますが、注目すべきは最初の結珠と果遠の運命の出会いを描いた場面です。上記もしましたが、ここだけは全く同じシーンをそれぞれの立場から見る視点で順に描かれます。二人が等位の主人公であることを示す意図もあってのことと思いますが、同じ光景を二人がそれぞれの立場からどう見ているのかを具に見る場面でもありなかなかに印象深いものがあります。これから読まれる方にはこの冒頭からの展開にも是非ご期待ください。

    そんな物語は、お互いを強く意識し合う結珠と果遠の三つの章に渡った三度の出会いが描かれていきます。『団地の公園は私たちだけの秘密基地になった』という幼き日の運命の出会い、それは七歳という年齢なりの幼さの中にあるものです。しかし、幼いからこそ強いインパクトを持った事ごとというものは逆に強く心に刻まれてもいきます。『わたしに両手を広げてくれた結珠ちゃん。週に一度、短い間だけおしゃべりできる結珠ちゃん』という果遠の想い。『ママも知らない、果遠ちゃんという内緒の友達が今の私にはいる』という結珠の想い。そんな二人の運命の出会いを印象深く表現する一穂さんの絶妙な筆致もあって、読者は思った以上に、鮮烈に幼き二人の出会いが心に刻まれていきます。そこに訪れる初めての別れ。

    『そこの、光のとこにいてね』。

    そんな言葉の先にある別れ、書名の由来ともなるこの言葉は読書前に見ていた書名から受けた漠然とした印象が、白く眩しく、神々しい光を感じさせてくれるものに変化もしていきます。そして、そこには二人の間に繋がる絆の存在も見えてきます。物語は、そんな二人のそれからを章ごとに描く中に、その繋がりの意味を見せてくれます。そんな物語では、最終章で、三度目の出会いを果たした結珠の果遠を見る感情がこんな風に描かれます。

    『七歳の時も十五歳の時も、今も、彼女は一瞬で私の目を奪う』。

    『ずっと果遠ちゃんに会いたかった、でも叶わなくて、もう一生会えないだろうと諦めていた』という結珠の果遠への強い想いの先にある、言葉にできないその想い。こんな想いへと昇華していく二人の関係性、それが三つの時代に渡って描かれていくこの作品。それは、確かに一穂さんのおっしゃる通り、”ちっぽけな、女の子ふたりの、「ただそれだけ」の物語”と言えるものなのかもしれません。また、そんな再会を”出来過ぎ”という見方で切って捨てることもできるでしょう。しかし、そこには”「ただそれだけ」”だからこそ感じる、人と人との繋がり、言葉で説明できない繋がりに心を鷲掴みにされるような感覚に包まれる瞬間を感じる物語があったのだと思います。最後にそんな感覚を痛切に感じさせる一文を引用しておきたいと思います。ある場面で、結珠のことを思ってくれる友人に対して、逆に結珠の中に沸きあがる思いを赤裸々に表現するものです。

    『私は、ひどい人間だ。わかろうとしないで、と叫びたかった。私のことを知ろうとしないで。踏み込まないで。あなたが入る余地はない。本当の私を知っているのは、世界であの子だけでいい』。

    このような感覚、残念ながら私には経験がありません。また、もしかすると男性には感じられない感覚であり、女性の方が共感度の高いものなのかもしれません。600冊の小説ばかりを読んできましたが、こんな結論を感じることはあまり記憶になく、これから皆さんがお書きになるこの作品のレビュー、特に女性の皆さんがお書きになるレビューに引き続き注目させていただきたいと思います。

    『私だって知りたい。どうして果遠ちゃんはいちいち私の胸を苦しくさせるのか』。

    幼き日に運命の出会いを果たした結珠と果遠がその後の人生に再開と別れを見るこの作品。そんな作品では美しい比喩表現の数々で彩られた物語の中に、全く異なった境遇の元に生きる二人の女性の四半世紀の物語が描かれていました。まさしく”毒親”という言葉で表現される大人たちが主人公たちを苦しめる様を見るこの作品。それぞれに訪れるさまざまな苦境の中に、今の世の生きづらさも感じさせもするこの作品。

    とても繊細に描かれる心の機微の描写の中に、何もかもが正反対でいて、だからこそ惹かれ合う二人の想いが静かに浮かび上がるのを感じた、そんな印象深い作品でした。

    • さてさてさん
      hiromida2さん、ありがとうございます!
      そう言っていただけてとても光栄です。一穂ミチさんというと、BL作品で有名な方、「スモールワ...
      hiromida2さん、ありがとうございます!
      そう言っていただけてとても光栄です。一穂ミチさんというと、BL作品で有名な方、「スモールワールズ」が本屋大賞第三位になった方というくらいの知識しかなく、でも女性作家さんコンプリートの野望を抱く(笑)さてさてとしては気になる作家さんの一人でした。今回、この「光のとこにいてね」が新作で出ると知って、それが起点になりました。ただ、平日に460ページの単行本を読んで、土曜日に間に合わせるのは結構焦りました。初読みの作家さんって怖いですよね。どんな作風か分からないので、レビューの想定もできなくて。また、ブクログ上もそうですが、他のサイトもレビューがほとんどなくて、他の皆さんが読まれてどう思われたかという方向性もまだ存在しない、そんな中での新作のレビューは本当にドキドキします。また、先行レビューは他の方が”読みたい”に登録されるか、パスするかの材料の一つにもなると思うので後者を決める人が続出したら、一穂さんにも申し訳ないですし。なので、hiromida2さんからコメントをいただいてホッとしました。少しは役割が果たせたかなと。
      また、(懲りずに)新作探しをしたいなと思います。
      どうもありがとうございます!
      2022/11/16
    • hiromida2さん
      やっぱり、さてさてさんってスゴイです₍˄·͈༝·͈˄₎◞︎ෆ⃛̑̑ෆ⃛
      流石です!初読みでこんなレビューかけるんですから。
      尊敬の眼差し( ...
      やっぱり、さてさてさんってスゴイです₍˄·͈༝·͈˄₎◞︎ෆ⃛̑̑ෆ⃛
      流石です!初読みでこんなレビューかけるんですから。
      尊敬の眼差し( •ॢ◡︎-ॢ)-♡︎
      新作探しですって!(๑˃▿︎˂๑)
      私は女性作家さんの本なら、さてさてさんの本棚に
      探しに行きます!それが私の新作読みになるんです♪
      (୨୧•͈ᴗ•͈)◞︎こちらこそ、ありがとうございます♡︎
      2022/11/17
    • さてさてさん
      hiromida2さん、
      いえいえ、私は読書を始めたのが遅いのでようやく昨日600冊です。hiromida2さん、レビュー数でもその倍以上...
      hiromida2さん、
      いえいえ、私は読書を始めたのが遅いのでようやく昨日600冊です。hiromida2さん、レビュー数でもその倍以上でいらっしゃるのですごいです!年間に160冊ほどが限度なのでhiromida2さんに追いつこうと思ったら、あと四年はかかる計算。でもその頃にはhiromida2さんはもっと先に行かれているでしょうから、やはりこのボリュームはすごいなあと。多彩でいらっしゃるし。私ももっと幅を広げなければと思うんですが、ホラーだけは夜にトイレに行けなくなっては困るので読めないし…とかどうしても手に取れない作品もありますし。なかなか難しいですね。
      hiromida2さんからいただいた↑の可愛い顔文字を見て新年のレビューを準備しなければと思い出しました。起点をありがとうございます!
      今年も残された日数も少なくなりましたが悔いなき読書&レビューの日々を送れればと思います。
      よろしくお願いいたします。
      2022/11/17
  • この作品はお互いに惹かれ合う二人の女性の物語です。

    小瀧結珠(こたきゆず)と校倉果遠(あぜくらかのん)はお互いに小学校二年生、7歳の時に出会い友だちになります。
    けれど果遠は「光りのとこにいてね」と言っていってしまいます。

    そして結珠は高校一年、15歳の時果遠に再会します。
    果遠は結珠の通うS女子高校に編入してきた特待生でした。
    そしてまた果遠は母親に連れられて夜逃げをし、ある日突然転校していってしまいます。

    そして、10年以上。
    結珠は小学校の教師を休職し、藤野素生と結婚しています。
    引っ越し先の家の近くのスナックで偶然、結珠は果遠に再度出逢います。
    果遠も消防士の海坂水人と結婚して娘の瀬々がいます。

    ー光りのとこにいてね、という言葉で私を縫い止め行ってしまったあの子。

    ー私は、ひどい人間だ。わかろうとしないで、と叫びたかった。私のことを知ろうとしないで。踏み込まないで。あなたが入る余地はない。本当の私を知っているのは、世界であの子だけでいい。

    ー何もいらないんだ。と私は思った。お菓子もココアも居心地のいいお店も。一緒にさえいられれば、他には何も。でもそのたったひとつが、いつだって私たちには難しかった。

    ーいつかまた、約束もなく会えるのを楽しみにしてる。次は三十年後とかかな?

    ー光りのとこにいてね。




    以下、個人的な打ち明け話なので、ご興味がない方はスルーしてください。




    私も1度だけ同性を好きになったことがあります。
    誤解のないように言えば私は同性愛者では全くありません。
    間違えたのです。
    小学校六年生の時、転校先の小学校で隣りのクラスの女子生徒を男子だと思い好きになってしまいました。
    中学も同じでしたが、また隣のクラスにしかなれませんでした。
    でも、彼女は何度もクラスが変わっても、休み時間になると私のクラスにやってきたのです。
    彼女は、中学校にスカートではなくスラックスを履いて登校してきていました。
    その時は昔だったので、そんな言葉はなかったのですが、今になって思えば彼女は性同一障害だったのではないかと思います。
    小学校の時はサッカースポーツ少年団に入っていたし、中学ではバスケ部で、運動神経がもの凄くよかったです。
    私のことも、名前を教えたことはないのに○○ちゃんと下の名前で気軽に呼ばれたときは驚きました。
    彼女は周りに友だちを作るのが非常に上手く、男子からも女子からも好かれる人たらしだったと思います。

    でも、私にはちょっとした自惚れがあります。
    私は、自分の大人しかった性格のせいで彼女と親しく口をきいたことがそれほどありませんが、今考えてみると、彼女の本命は私だったような気がするのです。
    彼女は何度クラスが変わっても私のいるクラスにやってきました。そして私が絵を描いていれば「○○ちゃん、何描いてるのみせて~」とかちょっとちょっかいをかけていってしまうのです。
    私の中3の時の転校で彼女とは何の連絡もとれなくなり、私と彼女には再会なんてロマンティックなものはありませんでした。
    ただ、大学卒業後、新卒で私は大手企業に就職したので、同期に中1の時の同級生がいて、彼女と私の話が流出したことがありました。何で今ごろそんなと思いました。
    でも、結珠と果遠のように偶然再会しても(あるわけないけど)今だったら、私は今の生活を手放すことはしません。
    でも、この作品を読んでいる間中、彼女のことをとても懐かしく思い出していました。

    私も彼女には光のところにいてほしいと思います。

    結珠と果遠は女性は男性より弱き故に強く惹かれ合いお互いを選んだような気がします。

  • 歳を取るとどうしても色々なところにガタがきますね

    まぁ人間の身体なんて消耗品ですからね
    誰しも痛いところや調子の悪いところ出てきますよね
    目だったり、耳だったり、内蔵だったり、肌だったり、髪の毛だったり
    で、私の場合は肩なんです
    ここ2ヶ月くらずっと痛いし上がらないし24時間常にサロンパス貼ってます
    右はなんともないんだよね

    『ひだりのここが痛てーの』なんちて

    さて『光のとこにいてね』です

    まずは時間の流れ方についてちょっと触れたい
    この前読んだ『砂嵐に星屑』は連作短編ということもあってか全体が小気味よいテンポで進んでいきましたが、今作はガラッとかわってゆっくりとのんびりと時間が流れて行くような気がしました
    凄い不思議なんです
    本作は章と章の間で何年もの時間が進むのに唐突感を感じないんですよね
    ページをめくると二人の主人公があっという間に年齢を重ねているのに凄く穏やかな時間が流れてる
    なんでだろう
    時間の動かし方が上手い作家さんだなー
    ファイナルファンタジーに出てくる時魔道士やな

    ほい、では本編
    いや二人の主人公の関係性…ぜんぜん分からんかったw
    親友とかってのとはぜんぜん違うよね
    うーん「女の子は休み時間になぜか連れ立ってトイレに行く」の延長線上にある関係性のような?これもぜんぜん違うか
    でも、今作は出てくる人全員、男女問わず理解できない考え方の人が多かったかな

    たったひとつ分かったこと、というかたぶんそうなんだろなって想像ついたこと
    この二人の関係性が理解できる人にはこの終わり方もしっくり来るんだろうな〜ってこと

    もちろん私はしっくり来ませんでした

    異様さ異質さで最後まで押し切ってきたなーって
    誰しも持っているそういう部分を過剰に引き伸ばして苦しさを味あわせておいたくせに、あんまりスッキリさせてくれんのねって思いました

    • ひまわりめろんさん
      良かったーこれでわしもやっと成仏できそーとはならないからな!
      良かったーこれでわしもやっと成仏できそーとはならないからな!
      2022/11/20
    • おびのりさん
      もののけ退散⁉︎
      この前、源氏物語講座で、散米(うちまき)って米撒き散らして、悪霊退散するの習ったよ。
      後は、弓矢をビュンビュン鳴らすとか。
      もののけ退散⁉︎
      この前、源氏物語講座で、散米(うちまき)って米撒き散らして、悪霊退散するの習ったよ。
      後は、弓矢をビュンビュン鳴らすとか。
      2022/11/21
    • ひまわりめろんさん
      げげっ、散米は俺苦手なんだよな〜
      弓矢ビュンビュンはけっこう平気なんだけど…ってどこのなにのけ担当やねん!
      げげっ、散米は俺苦手なんだよな〜
      弓矢ビュンビュンはけっこう平気なんだけど…ってどこのなにのけ担当やねん!
      2022/11/21
  • 最初に出会ったのは、7歳のときだった。
    古びた団地の下には、手を広げたその子がいた。
    2人は、まったく違う環境で育ったにも関わらず仲良くなった。
    だが突然いなくなる。
    次に会ったのは、高校1年のとき。
    時計さえ読めなかった私に教えてくれた彼女と同じ学校に行きたくて頑張った。
    今度は、母の都合で突然の別れ。
    それから10年以上の歳月が経ってからの再会。

    この2人の関係をなんというのだろうか。
    ともだち、親友というものでもない。
    もっと尊い、唯一無二のような存在。
    誰に代わることもできない相手。

    お互いに惹かれながら一緒に過ごすことなく、運命の悪戯のように引き裂かれる。
    それでもまた巡り会う。
    それも運命だろう。
    運命の人というのだろう。
    別れのときに何気なく言った「光のとこにいてね」
    魔法のような煌くことばのようで…
    光を探すとそこで待っている存在。

    こんな相手に出会ったことがない。

  •  本書は、二人の女の子の出会いと別れの物語で、7歳、15歳、29歳での二人が、交互に視点を変えて描かれています。
     二度の引き裂かれた長い空白があっても、二人の過去の記憶は薄れず、加えて、著者の年齢相応の設定・描写が巧みで、読み手に時間の隔たりを感じさせません。

     この二人の濃密な関係を何と呼べばよいのでしょうか? 親友? 心友? 真友? 同志? ソウルメイト? いずれも微妙な気がします。でも、なぜだか感覚的に惹かれ、自分に〝光〟を与えてくれ、寄り添っていたい存在…なのでしょうね。
     ただ、幼少期の感覚・記憶が、薄れたり変化したりせずに保たれるものなのか? 人は基本忘れる生き物だし、過去を美化し良き思い出に書き換えてしまうのが普通で、現実的には特異なことではないか、とは思ってしまいます。
     それでも、物語にどっぷりと浸かり、グイグイ引き込まれる要素が散りばめられています。経済格差問題、毒親(特に母親の抑圧)、上辺だけの友人関係、結婚等々。空白の間の出来事も明かされながら、二人の四半世紀の人生を突き付けてくるようです。

     読了後、えーっ! こう終わるのー? という思いもありましたが、三度目の出会いの中で互いに力をもらい、また新しい一歩を踏み出せるまで成長できたんだと無理矢理自分を納得させました。
     最後は皆んなが自分で自分の進む道を選択したんですね。これだけ長い間寄り添い続けられる存在の有り難さを、つくづく感じました。

  • 子どもは親を選べません。だから、あの子のようになりたいなぁという気持ちが自分にもありました。大人になってからは、他人をうらやむことも。そんなときは、じゃあ家族を全部交換してもいいか?!なんて想像することで諦めがつきます。

    幼少期の暮らしぶりは怖く、震えました。そんな中でも必死に行きようとする主人公の二人に、がんばって生きてほしい!と声をかけたくなります。やはり、子どもが小さいうちは親が近くにいてほしい。

    会っていない間が成長なんだと思いました。そして、見えないときも光のところにいて欲しい。
    2022,11/18-20

  • 「ほんの数回あった彼女が、人生の全部だった」

    古い団地で七歳の少女二人の運命的な出会いで一章が始まります。
    この第一章がわたしにはちょっと衝撃と言うか…
    目の前に映像が溢れ出すそんな感覚。

    置かれた環境の全てが違う二人。
    けれどたったひとつ同じものがあった…
    今でいう《毒親》 なんですね(-_-)
    この第一章、小学二年生の間のたった30分ほどの秘密の時間、それも数回…

    子どもの頃って自分の育つ環境が全てで、親の言う事がその子どもの世界なんだと改めて感じました。
    何かちょっとおかしいな?と薄々気づいてはいるけど
    でもお母さんは好き…この二人も相手がそんなふうに母親を思っているんじゃないのか?と気づいてしまいます。その気づきによる感情が子どもにはわからない。憐れみなのか?自分と同じだという喜びなのか?

    もの凄く繊細な感情をこんなに上手く表現できる事にただただ驚き引き込まれてしまう。

    この二人の出会い、別れ、再会…四半世紀の物語は
    心に響く人、理解出来ない人、評価が別れると思います。

    ただ一穂ミチ大好きなわたしとしては

    雨の日の小さな映画館で二人の人生を観ているような
    切なくも美しい物語でした(u_u)
    ただ母親の映像は、脚と背中のみ…顔の映らないジワジワとしたキミの悪さを感じました笑

    それにしても一穂さんの作品は雨のシーンが絶妙ですね〜
    他の作品にも雨が良く登場するんだけど、ホント使い方が上手いというか…表現のセンス?空気感?最高!

    新たな一穂ミチが見れた一冊でしたよ。

    物語に登場したちょっと気になるあの人…
    初版限定版にはあの人のスピンオフがショートストーリーとして付いてます♪
    これがまたグッとくるのよ(〃ω〃)

    一穂ミチnoteで検索してみてください!
    この二人の掌編を読むことが出来ますよ〜!





    • みんみんさん
      カドブン冬フェアの100冊ですか笑
      もしやうっかり手を出してはアカンやつ( ̄▽ ̄)
      京極恐るべし!
      嗤う伊右衛門は映画になったやつね!
      カドブン冬フェアの100冊ですか笑
      もしやうっかり手を出してはアカンやつ( ̄▽ ̄)
      京極恐るべし!
      嗤う伊右衛門は映画になったやつね!
      2022/11/30
    • おびのりさん
      カドブン!
      今読み終わりましたよ、土瓶さんの熱弁。
      実は巷説1冊目は読み終わりましたよ。
      構成がわからなくて、最初は、一緒に騙されました。頑...
      カドブン!
      今読み終わりましたよ、土瓶さんの熱弁。
      実は巷説1冊目は読み終わりましたよ。
      構成がわからなくて、最初は、一緒に騙されました。頑張ります。
      東京のお岩稲荷、縁切り神社なんですけど、一度行ってきました。
      肝が太くなりすぎたんじゃなーい!感性が鈍っただけだーい。
      2022/11/30
    • 土瓶さん
      カナブン?
      おびのりさん、読むの早~い。
      そんなに早く読んでるとひまわりめろんさんみたいって言われますよ。
      ……別にいいのか。
      巷説...
      カナブン?
      おびのりさん、読むの早~い。
      そんなに早く読んでるとひまわりめろんさんみたいって言われますよ。
      ……別にいいのか。
      巷説百物語。いかがでしたでしょう。
      レビューをお待ちしておきまっす。

      ん? 縁切り? 切ったら次は結ばなきゃね^^

      感性が鈍るより、肝が太い、の方が聞こえがいいじゃないですか(笑)
      もう、極太ですよ。極太((((oノ´3`)ノ
      2022/11/30
  • かけがえのない人との出会い、別れ、そして再会を描いた作品で、読了後には自然と親友との出会いに思いを馳せていました。そして、離れていても人と強く繋がっていることが出来ると思わせてくれる、そんな優しい作品であったように思います。

    文章表現と心理描写がとても繊細で、2人の主人公の視点から物語が描かれており、2人の繊細だけど太い関係性が沸々と伝わってきました。

    途中、主人公たちの境遇に打ちのめされそうになるけれども、それがあったからこそラストが光り輝くように思いました。

  • 女性二人の関係よりも私には毒親に育てられた二人の人生の乗り越え方の方が響いた。親は選べないけど、そこを乗り越えられる二人を応援したいと思う。

  • 幼い時に出会った結珠と果遠。特別な愛情を感じ合い出会いと別れを繰り返す。
    「光のとこにいてね」というタイトルが、まさに相手を純粋に思う気持ちを表していて素晴らしい。
    主人公の二人にスポットライトをあてると、切なくとも美しい物語なんだけど、周りの家族の気持ちが気になって仕方なかった。どうやって折り合いをつけるんだろう。

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著者プロフィール

BLを主題とした作品を多数発表。2008年『雪よ林檎の香のごとく』でデビュー。劇場版アニメ化もされ話題の『イエスかノーか半分か』。2021年『スモールワールズ』に収録されている「ピクニック」が第74回日本推理作家協会賞短編部門候補作品、『スモールワールズ』で第165回直木賞候補になる。

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