ドキュメンタリーの舞台裏

  • 文藝春秋 (2022年11月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784163916293

作品紹介・あらすじ

『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』『ぼけますから、よろしくお願いします。』……
話題作の数々はこうして生まれた。
第一線監督の明かす実践的制作術。
作り手をめざす人、現役のテレビ・映画人、そしてドキュメンタリーを愛するすべての人たち必読!
「大島新のこの等身大の自伝は、自身の制作過程を丹念に辿りながら、むしろそこには自らを鏡にした映像制作史が映し出されている。同じ時代を彼とは少しだけ違う場所で生きて来た私にとってはそのことが大変興味深かった。ファインダーの外側を捉える目を持つ彼は、きっと生来のドキュメンタリー作家なのだろう。」(是枝裕和氏=映画監督)
「圧巻は是枝裕和、森達也、原一男のドキュメンタリー界の先達3氏を評した部分でした。大島さんが彼らをどう評するのかはもちろん、大島さんが彼らと対峙した時にどう評されたのかを知ることができたのは、僕にとって大変面白いものでした!」 (上出遼平氏=テレビディレクター)

みんなの感想まとめ

ドキュメンタリー制作の舞台裏を深く掘り下げたこの作品は、監督自身の反省や制作過程を通じて、映像制作の魅力と難しさを伝えています。特に、名監督たちとの対峙や彼らへの評価を通して、業界のリアルな一面が描か...

感想・レビュー・書評

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  • 映画を見て、書籍を手に取る。
    監督による反省の振り返りと、ドキュメンタリーの制作現場について語られている。
    何か一本でも、この方の作品を見たことがないとなかなか楽しめない出来上がりだと思う。

    名監督の元に生まれ、コネでテレビ局に入社。その伝で作品を撮る。
    正直に語ってるのは素晴らしいが、どうしてもそのイメージ以上のものが文章から出てこない。
    ドキュメンタリーといえど、個人の作品であり、製作者の解釈に左右される。
    それを見る側は、より強く持たなけれならない。

  • ドキュメンタリーの舞台裏

    著者:大島新
    発行:2022年11月30日
    文藝春秋

    図書館でたまたま見つけて借りたのだが、タイトルから一種の暴露本系かと思えたが、全くそうではなかった。大島新は、2浪して大学に入り、1留年して卒業、1995年にフジテレビに入社、1999年、29歳で退社し、フリーのドキュメンタリー番組ディレクター、映画監督、プロデューサーとなった。言わずと知れた大島渚監督の長男であり、年収1千万円を放棄してフリーになった最も大きな理由の一つが、あの偉大な監督大島渚の息子であるという肩身の狭さだった、と書いている。

    本人にしたら苦しかったのだろうが、一度、そういう身になってみたい。

    最初からドキュメンタリー志望だった。ADからスタートしたが、通常では考えにくい1年目に企画が通って、自らのドキュメンタリーを撮影、オンエアすることができた(オンエアは翌年1996年6月)。しかし、その後はバラエティを含めた他のディレクターもしなければならなくなって、ローテーションでやむを得ないことは分かってはいるが、ドキュメンタリーにこだわってフリーになった。子供も2人いて、年収600万円を目指したが、そのためには仕事を選ばずドキュメンタリー以外の仕事もこなしていった。

    フリーとして、そして設立した制作会社「ネツゲン」の社長として、「情熱大陸」「課外授業ようこそ先輩」「ザ・ノンフィクション」などで活躍。映画としては、「シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録」「園子温という生きもの」をはじめ、香川選挙区での小川淳也候補(議員)を追った「なぜ君は総理大臣になれないのか」では、キネマ旬報ベストテンの文化映画第一位などを獲得、ドキュメンタリー映画としては異例の3万7000人超の観客動員を得ている。その後には小川淳也の対立候補である現職自民議員・平井卓也候補を追った「香川一区」が公開(2022年年末)され、賛否両論の大きな反響を呼んだことは記憶に新しい。

    ドキュメンタリーの作り手は、「腰の低いオレ様野郎」というタイプが多いと著者は書いている。この本の内容も、厳(いか)めしいものに思えてしまうが、読んでみると著者がフジテレビに入ってから、やめてフリー、そして会社経営者として、どういう仕事をしてきたかを、優しい語り口で展開する内容に少将面食らう。ドキュメンタリーや映像制作のことをあまり知らない人にとっては、入門書としても読めるので、学生などそちらを目指している人にもお勧めの「お仕事本」かもしれない。

    テレビにおけるドキュメンタリー番組の制作手順
    ・企画:通るか通らないか。「なぜ、いま、その企画なのか?」という言葉が飛びかう
    ・撮影前の入念なリサーチ(勉強):その期間だけでいいから、取材対象について世界一詳しくなれ!
    ・撮影:ドキュメンタリーの場合、現場クルーは多くて4人、少ないと1人
    ・編集①:ラッシュと呼ばれる撮影素材を見ることから始まる。見ながら、スクリプトという内容を書き起こしていく作業。フィルム時代は放送時間の3~5倍の撮影が許される範囲、今では200倍なども珍しくない。たくさん撮る人、少ない人、ディレクターにより違う
    ・編集②:ディレクター、編集者で構成の打ち合わせ→編集第1稿。編集ごとに短くしていく。
    ・プレビュー(民放)、試写(NHK):仮ナレーションを書き、仮テロップを入れ、プロデューサーチェックを受ける。最大の難関、喧嘩もあり。
    ・オンライン編集(尺が決まるまでの編集はオフライン編集):テロップ入れ、エフェクト加工、色調整など
    ・MA:ナレーション録り、音楽、効果音入れ
    *バラエティにはアイデア出し専門の「構成作家」がいるが、ドキュメンタリーではプレビューに参加して意見をいい、編集が決まったら尺にあわせてナレーション原稿を書く「構成作家」がいる。民放にはいるがNHKでは見ない。
    ・MIX作業:現場収録音、ナレーション、音楽、効果音の4種類を音量調整して混ぜる

    **********

    1995年、ソニーから発売されたVX1000というデジタルビデオカメラのクオリティが高く、そのまま放送で耐えうるものとなり、家庭用ハンディカメラ感覚で使えるようになった。

    テレビのドキュメンタリー番組には、「構成もの」と呼ばれるジャンルがあり、過去の出来事について、アーカイブ映像や活字資料をふんだんに使い、関係者の証言インタビューなどをおりまぜながら表現する。

    プロデューサーとディレクターとの間で意見の食い違い。時にキレてしまうことも。しかし、制作者間のトラブルよりも、さらに深刻な問題が生まれることがある。局のプロデューサーの意見にディレクターが抵抗できず、番組の方向性が実際に取材したものと乖離してしまい、被写体からクレームを受ける結果になること。

    バラエティなどでは派手な効果音もつけるが、ドキュメンタリーでも視聴者にほとんど気づかれない効果音をつけることがある。鳥の声を足す、夜の繁華街の景色に救急車の音を足す・・・

    フリーになり初めて請求書を書いたのは、15分のミニ番組演出で、20万円だった。

    興行収入(劇場のチケット売上げ)の50パーセントが劇場取り分。残りが「配給収入」で、その20~25パーセントが配給会社の手数料、残りが配給元の収入となる。

    脳内のセロトニントランスポーター(不安遺伝子)が、欧米人に比べて日本人は多い(一説では世界最高レベル)ため、それが勤勉さにつながる一方、生真面目過ぎてうつなどになりやすい傾向にある。

    「なぜ君」の完成版を森達也監督に送ると、応援してくれる内容の感想に「大島さんもわかっていると思うけど、ラストが違うと思います」と書かれていた。小川候補が高松の自宅で(選挙区での)落選を受けとめる無言のシーンがラストだったのを、急遽、コロナのことを付け加えたラストにした。2020年6月公開の映画で、これでいいのか、という点を指摘されたと思ったため。尺が116分から119分になった。

    「香川一区」の撮影で、30分だけ平井卓也候補(初代デジタル大臣確実だったが不祥事で消えた)へのインタビューが認められた。2021年8月。その時は「なぜ君」について、「タイトルがキャッチーでいい」「政治は映画にしづらい題材なのに、よく映画化した」「(観た人が)政治に関心を持つことは良いこと」とほめてくれた。しかし、その後、10月に選挙があると日程が決まり、選挙戦になると、街頭演説やツイッターで「私は観てないがあれはPR映画、相手候補のコマーシャルだ」「あんなことが許されるなら、全国の国会議員が映画を作る」と強く批判し始めた。

    フジテレビのドキュメンタリー「NONFIX」に、10年ぶりに是枝裕和監督が帰ってきた。2005年。シリーズ憲法が企画され、是枝監督は第9条を選んだ。なお、森達也監督は第1条の天皇制を選び、結局、フジテレビとの折り合いがつかずにおりている。大島新は、是枝監督の9条をテーマにした「忘却」は、よく放送できたなあと思っている。両論併記は一切せず、人気絶頂の政権(小泉純一郎)にも刃を向けた内容だった。なお、当時はまだ人気監督ではなかった。

  • 何故この本を手に取ったのか、読み終わっても思い出せないけど。。
    ドキュメンタリー好きの私には前半は★3だったけど、なぜ君、香川1区の辺りはとても面白く、★4に格上げw
    映画も観てみよう。

  • お父様の大島渚氏とは、仕事の話をしたことはほとんどないそうだ。
    でも、〈カメラマンは運動神経がいい人がいいよ〉という教えを残したとか。
    多くを語らなくても的確な答えを与えてくれる。
    印象的な話だと思った。

    P86
    ドキュメンタリーを作る場合、〈どんなことを『恥ずべきこと』と思うかが一致していないと、うまくいきません〉

    ドキュメンタリー映画の制作話など
    興味深く読むことができた。
    おもしろかった。

  • 自分と向き合い、自らを掘り下げること。
    人と向き合い、ドキュメンタリーに編み上げること。
    全く違うようでいて、根は同じと感じた。

    仕事でインタビュー取材に携わることになったこともあって大変参考になった。

    著者は大島渚さんのお子さん。
    自分と同い年だったのか。
    大島渚さんのご子息で、あの時代のフジテレビだったらまぁやっかまれたり、コネ入社と陰で馬鹿にされたり大変だったろうなぁと思う。
    そうしたことも、振り返って冷静に文字にできるくらい、時間が経ったんだな、とも思った。

    少し前、フジの同年代の社員さんと会ったとき、「こんなことになるとは夢にも思わなかった」と言っていたのを聞いて、30年という月日は思いもかけない変化をもたらす年月なんだな、と改めて思った。
    あの輝いていたフジがこんなふうになってしまうとは。


    「命じられたわけではなく、自分で選んでやっている。嫌なら断ればいい」「仕事にははっきりと値段がつく」この2点がフリーの良さで、自分には合っていると感じました。p81

    「どう切り取るかは」は、ディレクターによる被写体の解釈です。ディレクターは取材者であると同時に表現者でもあります。(中略)取材が始まる前もしくは取材の初期に、自分なりのテーマを決めて撮影に臨むことが重要です。p88

    「右手に花束、左手にナイフ」
    相手に敬意をもって接することはもちろんですが、大切なのは、その人のどういう部分に興味をいだいているか、取材者自身の考えをきちんと伝えることだと思っています。(中略)「この人にだったらどこを撮られ、どう表現されても構わない」とまでなれば、最も良い状態と言えるでしょう。そうした関係を築いた上で、今度はナイフです。これは、批評性と言い換えてもいいと思います。(中略)やはり現場で、自らの言葉で、その人への疑問点をしっかりぶつけることです。p89

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  • SERENDIP2023115掲載 

  • 【第一線監督の実践的制作術】『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』……話題作の舞台裏をすべて明かす。ドキュメンタリーを愛するすべての人たち必読!

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