ある愛の寓話

  • 文藝春秋 (2023年1月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784163916439

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

愛の多様性をテーマにした本作は、人と人ならざるものとの心の交流を描いた短編が収められています。著者は、愛することの尊さやその対象の違いがもたらす感情の深さを、甘く優しく、時には官能的に表現しています。...

感想・レビュー・書評

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  • 『毎日話しかけていると、ぬいぐるみがただのぬいぐるみじゃなくなっていって、本当にわかり合えているような気がしてくるんです。モノにも命が宿るっていうか』。

    “物にも魂が宿る”。日本には古来より神道の”八百万の神”という存在の先に、どこにでも神さまがいるという考え方が自然と根付いています。もちろん、日本にもさまざまな宗教があり、必ずしも神道のみ信じるという方々が全てではないでしょう。しかし、そういった信教という次元を超えて、”物にも魂が宿る”という考え方は、幼い頃から多かれ少なかれ私たちの中にあるように思います。

    そして、物を大切に想う心は、物を生み出すことを貴いと考え、そこに日本ならではの職人の存在を生み出してもいます。世界各国にさまざまなことで追いつかれ、追い越されてもいるこの国の現状にあって、誰に言われるでもなく、まるで本能のように物を大切に想う心を持ち続けることは、もしかするとこの国に残された最後の砦を守る力になるのかもしれません。

    さて、ここに、そんな物を含めた”人ならざる者”と”人”との交歓に光を当てた物語があります。”猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓”を描くその作品。そんな物語の中に性愛や戦争が描かれてもいくこの作品。そしてそれは、この作品は、”物書きを名乗るようになってちょうど三十年”と語る村山由佳さんの”デビュー30年記念作”というメモリアルな物語です。
    
    『ねえ、先生。先生 ー ですよね?ほんとうのことを教えて下さい。何を聞かされようと取り乱したりしませんから』と懇願するのは主人公の『私』。答えを聞かされ『そうですか。やっぱり、進んでいますか』と言う『私』は、『どうして、大切なひとのことを覚えていられないんでしょうね』と自らの『病気』のことを思います。『私はきっとこの先、絶対に忘れたくない大切なことまで忘れていってしまう』と思う『私』は、『先生』に『今日は、折り入ってお願いがあるんです』と切り出し『私の生きてきた道筋』を聞いて欲しいとお願いします。『ああ、ありがとうございます』と受け入れてくれたことのお礼を言い、『何から話しましょうか』と語り始めた『私』は、『まずはこの子を紹介しなくちゃいけませんね』と『名前は、〈エル〉』というカエルの『ぬいぐるみ』について語り始めました。『この子と出会ってからほぼ半世紀たつ』という『エルを連れて帰ってくれたのは父でした』。『一人娘の私にとても甘』いという父親が買ってくれたエルを『初めて目と目が合った瞬間から特別』だと感じた『私』は、『ありとあらゆることをエルに打ち明け』慈しんでいきます。そんな中、急死した父親。それ以後もエルを『ぬいぐるみがただのぬいぐるみじゃなくなっていって、本当にわかり合えているような気がしてくる』と大切にする『私』はやがて大人になり就職します。しかし、今でいう『ブラック企業』で働く中に『心身に変調を来』し、退職した『私』。そして、母の勧めもあって欧州へと旅に出た『私』は、エルと共に『写真を撮りながら呑気に買物』をする中にカメラのひったくりにあってしまいます。そんな時、逃げるひったくりを追いかけカメラを取り返してくれた日本人男性と『なぜだか不思議なくらい意気投合した『私』は、彼が『エルに対する私の想いを馬鹿にしなかったこと』を『何より嬉し』いと思います。『エルを一緒にレストランへ連れていった時』、『エルのために』『椅子を引いてくれた』という彼。『ああ、私はこのひとと一生を共にすることになるんだな』と『私』は、彼が『運命の相手である』と確信します。そんな始まりの先に付き合っていく二人とエルのそれからが描かれていきます…という冒頭の短編〈晴れた空の下〉。この作品のコンセプトをカエルの『ぬいぐるみ』という”人ならざる者”に見る好編でした。

    2023年1月10日に刊行された村山由佳さんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、凪良ゆうさん、辻村深月さん、そして寺地はるなさん…と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを積極的に行ってきました。そんな中に、涙なくしては読めない「天使の卵」シリーズ、主人公の奈都が”官能”の快楽の世界に身を委ねていく様がこれでもかと描かれる「ダブルファンタジー」、そして直木賞受賞作「星々の舟」など数々の感動作を届けてくださる村山さんの新作が出ることを知って、発売日早々に手にしたのがこの作品です。

    そんなこの作品の内容紹介には、こんなことが記されています。

    “村山由佳 デビュー30年記念作品 原点回帰にして到達点。猫、犬、馬、人形など、異質な存在との交歓によって導かれるカタルシス、圧倒的な熱量をはらんだ作品集です”

    今年59歳を迎えられる村山由佳さんは、1993年に代表作である「天使の卵」で小説すばる新人賞を受賞、はや30年という歳月が流れたことになります。そんな村山さんの”デビュー30年記念作”と聞くと記念碑的な大作を期待したくもなります(本音を言えば感動長編を期待していたのでちょっと残念…)が、そこに村山さんが刊行されたのは内容紹介にある通り”異質な存在との交歓”を描く短編集でした。それぞれに全く繋がりのない七つの短編から構成されるこの作品ですが、まずは、そんな不思議世界を彩る短編の中から私が特に気に入った三つの短編をご紹介しましょう。

    ・〈グレイ・レディ〉: 『アメリカ東海岸』の『ナンタケット』という『小さな島』で『世界で最も美しいかごとして』『わたしは生を享け』たと語るのは『ナンタケット・バスケット』の『わたし』。『今や〈かご界のエルメス〉とまで言われるほど希少で高価』という『わたし』は、『ボストンの裕福な家のマダム』に『買い求め』られます。『これはママのだいじだいじ。たからものだからね』という『日本のことば』が『優しく響く』『良い人たちのもとへ来た』と思う『わたし』は彼女と『東京の街』へと訪れます。そんな中『卑怯な盗人』に連れ去られる『わたし』…。

    ・〈乗る女〉: 『フェリーを苫小牧で下り』『日高自動車道』を車で走るのは主人公の さとみ。『このあたりは日本有数の競走馬の産地』という土地に立ち『二十年以上も前』『車ではなく、馬という相棒の背に乗って』『草地を自由に疾駆していた頃』に想いを馳せます。『東京の短大を出て、札幌にある健康食品メーカーを選んで就職し』『父娘ふたりの暮らし』から脱出した さとみ。ある日『競馬が大好きな女性の先輩』と牧場へと出かけた さとみは幼い頃の乗馬の経験から馬と再開したことを喜び『わたしと馬との間を裂く者はいない』という感覚に囚われていきます…。

    ・〈訪れ〉: 『自身の歩んできた道筋を何かのかたちで残しておきたい』という『人たちの手助け』、『簡単に言えば〈自分史〉代行業』をしているのは主人公の高野麻里。そんな麻里はある日、『息子二人と娘が相談の上で父親の〈自分史〉を依頼してきた』という当事者の光石禄郎という老人の家を訪ねます。『娘の、京子です』と迎えられた麻里は『すでに九十代の半ば』という禄郎と対峙します。自らのことを『アタシ』と語る禄郎は、『アタシは、光石家の次男坊として… 東京の大森町で生まれました…』と自らの人生を語り始めます。

    七つの短編はいずれも『オール讀物』の、2020年3・4月号〜2022年2月号に掲載されたものですが、いずれも上記した内容紹介にある通り”異質な存在との交歓”という側面に光が当てられます。” 幼い頃から、〈人〉と〈人ならざる者〉との交情を描くお話に強く惹かれた”と語る村山さんは、”皆と遊ぶよりもひとり空想に遊ぶことを好み、人間よりも動物や人形やモノとの触れ合いに慰めを見出していた当時の私にとって、物語の中で展開される種を超えた交わりはたまらなく魅力的だった”と続けられます。そんな村山さんの”種を超えた交わり”を味わえるのがこの作品の醍醐味です。

    その側面が最もかっ飛んでいるのが『毎日話しかけていると、ぬいぐるみがただのぬいぐるみじゃなくなっていって、本当にわかり合えているような気がしてくる』と『カエル』の『ぬいぐるみ』にエルという名をつける主人公が登場する〈晴れた空の下〉です。大人になっても『食事も、テレビを観るのも、旅行するのも』、『風呂にも入れてました』とエルを特別な存在として思い続ける『わたし』の物語は、狂気一歩手前とも言える展開を見せますが、その舞台背景に気づいた瞬間、読者は切ない、あまりに切ない感情に包まれます。また、〈グレイ・レディ〉では、まさかの視点が登場します。『その島で、わたしは生を享けました。世界で最も美しいかごとして』という主人公は『〈かご界のエルメス〉とまで言われるほど希少で高価なナンタケット・バスケット』というまさかの『かご』視点!の物語です。世の中には猫視点、犬視点など動物視点の物語は時々ありますが、無機物視点は主人公がまさかの”わりばし”に視点が移る今村夏子さん「木になった亜沙」、”雪うさぎ”と”雪だるま”に視点が移る村山早紀さん「コンビニたそがれ堂 奇跡の招待状」くらいしか思い浮かびません。しかもこの作品の『バスケット』は、生まれた時から『かご』である点がさらにかっ飛んでいます。『かご』の人生、否、”かご生”を描く物語、この短編のまとめ方も極めて秀逸だと思います。そして、最後の短編〈訪れ〉ではこの作品が村山さんの”30周年記念作”であるという点を強く感じさせる内容になっています。それこそが、『自分史』のための老人の語りを主人公が訊く中に語られていく戦争を描く物語です。『召集令状が届いたのは十月です』、『我々新兵は、船と列車で延々と運ばれて…』、そして『戦車がぎりぎりまで近付いてくるのを待って、八キロ爆薬を抱えて飛び出し…』と語られていく戦時下の物語は、それまで読んできたこの作品の雰囲気感を一気に変えていきます。これは、直木賞受賞作でもある「星々の舟」と同じ体裁とも言えますが、その語りの壮絶さには村山由佳さんという作家さんの作家としての原点を強く感じさせてくれました。

    “物書きを名乗るようになってちょうど三十年 ー。原点回帰という以上に、〈自分ならざる者〉へ生まれ直すための新たな出発点”

    この作品の位置づけをそんな風に語る村山由佳さん。私たちが、村山さんという作家さんを思い浮かべる時、性愛と戦争を描く物語を避けて通ることはできません。この作品では、そんな二つの側面に、”〈人〉と〈人ならざる者〉との交情”という村山さんが幼い頃から惹かれていたという村山さんのまさしく原点とも言える世界が描かれることで村山由佳さんという作家さんの魅力の全てが描かれていました。主人公たちの”人ならざる者”への強い想いに、村山さんの筆の力が強い説得力を与えていくこの作品。最後の短編〈訪れ〉に描かれた戦時下を描く物語に、これぞ村山さんを感じるこの作品。

    デビュー30年を迎えた村山さんの今後のご活躍にますます期待が高まるメモリアルな短編集でした。

  •  愛のカタチは多種多様です。人どうしの他、本書には〈人〉と〈人ならざるもの〉との愛の有り様を描いた短編が6つ収められています。村山由佳さんの作家デビュー30周年記念作品とのこと。

     ところで、幼少期の子が、人形・ぬいぐるみ・毛布などへ執着するのは、母親から離れ自立していく成長段階の一部で、社会性が身についていくに連れて、その物への依存は薄れていくそうです。
     もし大人になっても依存から抜け出せないとしたら…。だとしても、一概に病的とも言えない面もある気がします。何かに執着することで、ストレスの軽減、孤独感の緩和、安心感の醸成など、心理的効果を得ている人もいると思うからです。

     6編とも、登場人物たちにとっての、生身の人間よりもっと深く自分を理解し慰めてくれる存在があります。大概の人は、大人になるに連れ忘れていく打算や妥協のない魂の交流。村山さんは、これらを甘く優しく、時に官能的に描きます。

     タイトルの英題は「Love Stories」なのに、『ある愛の〈物語〉』とせずに、〈寓話〉とした意図を考えてみました。
     寓話は、人間に教訓を与えるような短い話で、擬人化した主人公が多いはず…。本作で擬人化された主人公は一編(籠)で、その籠の良さや価値をほとんどの人間は分からないんですね。他の設定は少し違いますが…。

     村山さんは、人ならざるものでも人との間で通じ合えるでしょ?と、直接書かずとも、比喩として魂の交歓の対象の本質を考えさせようと寓話的表現にしたのかな? その問いかけの答えは、優しく穏やかで確信をもった一編一編そのものです。

  • 私が読んだ、村山由佳氏の作品49冊目。
    彼女が描く、外国の情景や、そこに居着いた人々の営みが好きで、読み続けた。

    この作品も、はじめは「ちょっと違うかなぁー」と思いながら、ページを進めて行くうちに、やっぱり、ひき込まれて行った。

    ━━幼い頃から、〈人〉と〈人ならざる者〉との交情を描くお話に強く惹かれた━━

    と、あとがきに書かれているように、この作品も、
    そんな6遍の物語が書かれている。

  • 読書備忘録822号。
    ★★★★。

    去年1月の村山作品。
    村山さん、同い年だからなんとなく親近感を感じるんですよね。笑

    あとがきに書かれていましたが、幼い頃から<人>と<人ならざる者>の交情の物語に強く惹かれていたそうです。
    村山さんの育った環境なんて知る由もありませんが、動物、人形、モノとの触れ合いに慰めを見出していたとのこと。
    この短編集の多くもそんな感じです。笑
    作家になって30年。原点回帰という以上に<自分ならざる者>に生まれ直すための新たな出発点になる作品とのことですので、次作が楽しみです!

    「晴れた空の下」
    若年性認知症になった女性が、お医者様???に昔話を聞いてもらっている。
    「ねえ、先生。エルの話を聞いて。」それは小さい頃父親が海外出張で買ってきてくれたぬいぐるみ。カエルのエル。彼女とエルの交情と、最愛の夫との消えゆく記憶の物語。

    「同じ夢」
    ミュージシャンの男と付き合っている女。
    バンドメンバーがオーバードーズで死んだ。彼が飼っていた犬のジョンを引き取った男。
    女は男の部屋で「美女と野獣」を観ている。
    最終的にジョンは女に引き取られる。「ねえ、同じ夢を見ようね。絶対に王子様なんかにならないでね・・・」
    オス犬と女性の交情。

    「世界を取り戻す」
    母であり妻である女性。そして、女性誌の副編集長でもある。受験を控える息子の悩み。何にでも文句を言う反抗期の娘。夫との距離。疲れた・・・。
    動物病院の取材。飼い主に捨てられた、いつ死んでもおかしくない老猫と出会い、引き取る。昔飼っていた猫と被る・・・。
    わずか1週間の猫との交情。そして彼女はスッキリクッキリした世界を取り戻す!

    「グレイ・レディ」
    アメリカ東海岸の小さな島ナンタケット。頻繁に霧に包まれることからグレイ・レディと呼ばれている。そこで作られる手編みのバスケットはナンタケット・バスケットと呼ばれる。バスケットが主人公。笑
    巡り巡って出会った、日本のインテリアショップオーナーの女性とバスケットの交情。

    「乗る女」
    幼い頃母を失ったさとみ。母亡き後、父から束縛された。束縛から逃げるために北海道に。そこで馬に出会った。乗馬中の事故で大けがをして北海道を離れた。
    自分の娘も自立し、数十年ぶりに再び北海道へ。最愛の馬との交情の為に。

    「訪れ」
    自分史なるものの代筆を営む高野麻里。
    高齢男性、光石禄郎の自分史作成を依頼される。
    太平洋戦争終戦からのシベリア抑留。労働の最中に負った怪我で診療所に。
    そこで出会った看護師のマリア。1度だけの激しい情事。
    時々マリアとの情事の夢を見る。夢から覚めるとマリアが夢で噛みついた部位に聖痕が浮かぶんだ、と。
    自分史は満足のいくものに仕上がり、禄郎は旅立った。棺に入った禄郎の手には交情の跡が。

    まあ、マジョリティの自分からすると、若干危ない世界ですけどね。
    寓話なのでファンタジーです。楽しめました!

    • ゆーき本さん
      わたし一回り下だ(´▽`*)
      早生まれだから執念深い巳年だけどね
      わたし一回り下だ(´▽`*)
      早生まれだから執念深い巳年だけどね
      2024/05/03
    • shintak5555さん
      若すぎくんですやん!
      まだ子供だったんですね。ユウキさま
      若すぎくんですやん!
      まだ子供だったんですね。ユウキさま
      2024/05/03
    • ゆーき本さん
      (•@•⑉)バブー
      (•@•⑉)バブー
      2024/05/03
  • 「ある愛の寓話」村山由佳著|日刊ゲンダイDIGITAL
    https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/318666

    恋愛文学の第一人者が、ポストコロナ時代のエロティシズムの到達点へ――『ある愛の寓話』(村山由佳) Book Talk/最新作を語る | インタビュー・対談 - 本の話
    https://books.bunshun.jp/articles/-/7727

    『ある愛の寓話』村山由佳 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163916439

  • あらゆる愛のお話が詰め込まれています。
    その対象が仮に人間ではなく更に命がなくても、大切に思う気持ちがどれだけ尊いことかを教えてくれる作品でした。
    何かを愛することは愛されることよりも幸せな事なんだと感じる一冊でした。
    個人的に好きだったのは、「晴れた空の下」と「グレイレディ」かな。

  • 人と人ではないものとの「愛」の話。
    大切にしているものやペットなどいる人には特に沁みる短編集だと思います。

    言葉を交わすこともなくても、二者の間に確かにある感情って「愛情」なのか、なんなのか適切な表現は人それぞれだと思います。

    自分はモノにこだわるのってダサいと思っていたこともありますが、全然そんなことない!むしろ情が深くて素敵だと思えます。

  • 色々な「愛」の形がテーマの短編集。
    自分には全く愛を感じないであろう物に対して、強烈な愛情を向けている主人公もちらほら。
    でも不思議と嫌な気分にはならず、素直に読めた。
    「世界を取り戻す」が一番好きだった。

  • 本棚整理中に出てきた読了本の一冊。

    寓話 
    寓話って、こういうストーリーなんだな
    と不思議な気持ちで感動しました。

    比喩される対象に愛を捧ぐ寓話。
    犬も猫も馬、ぬいぐるみなどなど。
    対人間でなくても、同じように愛情を持ち、生きていく。
    なめらかで、流れるような文章力も魅力でした。

    他作品も読んでみたいです。

  • 「人」と「人ではないもの」の情の交わり

    カエルのぬいぐるみ
    病の猫
    バスケット

    記憶

    村山由佳さんは男女の恋愛を
    爽やかに、時に大胆に、甘く描くイメージ

    この短編集は
    様々な村山由佳さんが楽しめた

    「世界を取り戻す」が大好き
    あきらめた世界に病の猫が希望をくれる
    凄く素敵な作品だった
    あきらめないこと
    いつでも世界はかわること
    いつでも世界は変えられること
    を教えてくれた

  • 愛とは何かを考えさせられ、「愛とは自由である」ということを感じさせられる、そんな「人」と「人でない存在」との寓話集6篇。シンプルな作品名で明確なイメージが湧かないままページを捲り、そのメッセージの深さ、愛することの温かさや美しさに心を震わされる。ぬいぐるみ、犬、猫、かご、馬、聖母と、愛する主体も客体も人に限らない。生きものに限った話でもない。もっと自由に考えていいし、そういう愛のかたちに気付けるようになれば、もっと豊かで色鮮やかな人生に繋がるはずだという確信も得られた。

  • 一話読み終えて少し涙を流す。その繰り返しでした。派手さはないですが心に染み渡るお話です。
    読めて良かった。

  • 村山由佳デビュー30周年記念作品

    村山由佳が「人」と「人ならざる者」の愛を描いた短編集、と聞いてかなり激しいものを想像して気合を入れて読み始めたのだけど、いい意味で予想を裏切られたね。
    第一章、「晴れた空の下」で切なさの極致に。幼い時、いつも抱いて寝ていた大事な友達のような人形が自分にもあったな、と。消えゆく記憶の中で、その友だちとの思い出を「担当医」に語る。そのしかけに胸の中で幼い自分が切なく泣いた。
    犬や猫や馬との心の交歓、そして籐のカゴからの愛、すべてがささやかで温かい愛に溢れている。
    優しい幸せに浸りながら読み続けて、たどり着いた少し景色の違う最終章。
    『風よ あらしよ』ではなく、この一冊を集大成とした意味がここにあるのだろう。終戦から4年間をラーゲリで暮らした老人の「自分史」。彼の語る歴史とその歴史を紡ぐライター。生まれたときから始まる終わりへの時間。ひとりひとりの物語をこれからも村山由佳は紡いでいくのだろう。そこに愛がある限り。

  • とても良かった。6つの小さな寓話たち。
    そのなかでもとくに好きだったのが、
    猫ちゃんとの最期を描いた「世界を取り戻す」
    ナンタケットバスケットと女性の一生を描いた「グレイ・レディ」
    乗馬を通じて出逢う愛しい思い出「乗る女」
    が、とくに好きでした。
    あたたかくて優しい物語たち。

  • 考えそうで考えない
    届きそうで届かない

    入口までさしかかったことはあるけれど、あるいは一歩だけ踏み込んだことはあるけれど、そこから踏み込まなかった領域
    踏み込みすぎたら暗い部分もあったり複雑になったり、これまでのようには生きていけない領域

    愛にはそんな領域がある。

    無限の可能性がある愛。

    愛は、自分で感じるだけならまだしも、誰かと語る上では絶妙なバランスを保たなければいけない。
    ほとんどの人が大人になるにつれて、なんとか定まったその位置を、ずらそうとしない。
    ほんの少しでもずらしたら、途端にバランスが大きく崩れて、そのままほかの様々なものまで崩してしまいそうだから。

    本書は、一歩だけそんな領域に踏み込み、それにも関わらずバランスが崩れていない、素晴らしい作品。

    私は、人生のある時期に一歩だけ踏み込んで、誰かあるいは常識に引き止められて、それっきりそこにいたかつての自分と邂逅した。
    そしてかの人を、愛しく、抱きしめた。

  • 村山由佳さんの「デビュー30年記念作品」と掲げられた本。
    あの当時、集英社のPR雑誌『青春と読書』を購読していたので、小説すばる新人賞を受賞したあとのインタビューだか寄稿だかを読んだ記憶があるようなないような……。ただ、以前にも書いたが、受賞作は購入したのだけれど読めなかった。そんな、なんとなく苦手意識のある作家さんだが、最近の著作はわりと読んでいる。
    本作は後書きにもあるように、人と人ならざる者との交情を主題とした6篇からなる短篇集だ。どれも珠玉の出来だが、「世界を取り戻す」「乗る女」がとても好みだった。

  • 擬人化してある話が多かった。
    犬との恋愛はちょっと抵抗もあったけど、
    村山由佳さんの描き方だから
    完読できたと思う。
    でもできれば人対人の話がよかったかな

  • 最初は恋愛話だと思っていたけど、形にとらわれない様々な愛が綴られた短編集でした
    特に、晴れた空の下が良すぎた
    愛の記憶は鮮明なのに、少し残酷でとても切なかった…
    深く感動する一冊でした

  • どの話もグッときた。穏やかな雰囲気が心地よかった。その中でもグレイ・レディが好き。

  • こちらの本の装丁に一目惚れしました。

    なにものにも変えることはできないほど、自分にとっては大切でかけがえのないもの。

    冒頭の『晴れた空の下』が好きで、他の作品も抵抗なく読めました。

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著者プロフィール

村山由佳
1964年東京都生まれ。立教大学卒業。93年『天使の卵——エンジェルス・エッグ』で「小説すばる新人賞」を受賞しデビュー。2003年『星々の舟』で「直木賞」を受賞。09年『ダブル・ファンタジー』では、「中央公論文芸賞」「島清恋愛文学賞」「柴田錬三郎賞」をトリプル受賞を果たす。Twitter公式アカウント @yukamurayama710

「2022年 『ロマンチック・ポルノグラフィー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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