グレイスレス

  • 文藝春秋 (2023年1月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784163916545

作品紹介・あらすじ

デビュー小説『ギフテッド』に続き、芥川賞候補に選ばれた鈴木涼美の第二作。主人公は、アダルトビデオ業界で化粧師(メイク)として働く聖月(みづき)。彼女が祖母と共に暮らすのは、森の中に佇む、意匠を凝らした西洋建築の家である。まさに「聖と俗」と言える対極の世界を舞台に、「性と生」のあわいを繊細に描いた新境地。

みんなの感想まとめ

「性と生」をテーマに、ポルノ業界で化粧師として働く主人公・聖月の物語が描かれています。彼女は、個性的な女優たちの生きざまを支えながら、切磋琢磨する姿を目の当たりにします。元セクシー女優の著者が描くこの...

感想・レビュー・書評

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  • 闘う女たちの舞台、そこは、ポルノ女優たちの生きざまを色濃く描く物語。
    ポルノ業界で、プロメイクとして働く聖月。
    そこでは、女優たちが、切磋琢磨と自分たちを輝かせるために生きていた。その環境で、聖月(みづき)は彼女たちにメイクを施している。
    マイナスな偏見が多く見受けられる、ポルノ業界の実情が、元セクシー女優の著者だからこそ描ける物語だと思います。

  • 芥川賞候補作になったので、読んでみた。
    以前読んだギフテッドも良かった。
    作者の鈴木涼美さんは東京大学大学院社会情報学修士課程修了。
    すごい。
    主人公のメイクの仕事をしている女性は、
    聖月(みづき)。いい名前だと思う。
    お仕事小説。
    下ネタ的な語彙はたくさん出てくる。
    けれど、内容は淡々としていて、へーなるほどと思った。面白かった。
    受賞したものよりこちらの方が読みやすいし良い。
    撮影中に女優が、
    「ダメ」とか「ムリ」っていうのは演技だと思われてしまうので、
    止めたい時は、はっきりと「カット」と言うこと。
    おばあちゃんの考え方が素敵だと思った。
    学校図書館は×

  • はじめにおことわりしておきたいのだが、私が書いたこの感想には、ストーリーとしてのネタバレは含まれないが、印象的な表現の引用、を何点かさせて頂いている為、この書籍を未読で新鮮な驚きを経験したい方はここから先のこの感想を読むことをお控えいただきたい。

    私が男性であるからかもしれないが、ポルノ的な視点、でこれまで読んでいたいくつかの小説…、村上龍先生の作品であったり、金原ひとみさんの作品であったりしたもの…、それらとは全く異なるエロチックな表現に衝撃を感じて、恥ずかしながら一気に読み終えてしまった。

    作者の名前は、芥川賞候補、という事で何度か目にしてはいたのだが「かつてAV業界に身を置いた…」「東大大学院卒の…」という、穿った表現をすればある種「紋切り型」の経歴に嫌悪して、私はこれまでその作品を読まずにいた。しかしその私の偏見は間違っていたと強く認識させられた。

    文体は平易で読みやすい。また、冷静で客観的な主人公の視点で描かれる日常風景、そして突然、”精液”などという語句を含む情景描写で読む者をある種「作りものではない」世間一般の人間にとっては現実的ではない世界にひきずりこんでいく展開の巧緻さ、これは私が嫌悪した作者の実体験に依るもの、それを忠実に表現する作者の才能に依るもの、が大きいのではないかと思う。

    要所要所でも作者独自と思われる”化粧バンド”(ビジュアル系ミュージシャンの事であろう)とか”運動選手のための祭典”とかいったある種ひねくれた表現もあり、私はクスリとさせられた。また、”ポルノは女の現前性に強く依存する。”などという哲学的な表現もあり、その意味を興味本位ではあるが考えてみる事、その機会を与えられた事、も感動に値する。

    ”化粧師”という立場で、ポルノ産業に身を置き、女優も男優も、その向こうにいる多くのポルノ愛好家も、全てを客観的な視点でとらえ、冷静に表現する主人公(作者)の、くり返しにはなるが才能、極めて現実的な創作による快作であると私は思う。

  • 惜しくも受賞はならなかったが、再び芥川賞にノミネートされていた鈴木涼美さんの二作目の小説。
    瀟洒な洋館のような実家と、化粧師として働くAV撮影現場、「聖と俗」を行ったり来たりする感覚が新鮮だった。
    言い回しがややまわりくどいところは、鈴木涼美さんぽさを感じる。
    主人公・聖月の、奔放というか自由気ままな祖母と母親の存在がうらやましい。愛する娘へ、から始まるメールを英国から送ってくれたり、「嵐が来て雨が降って、それが過ぎ去った後って誰かと会いたいじゃない」と悪びれない顔で言ってくれるような存在が。

  • テーマにインパクトがあり購入したが独特な言い回しで少しわかりにくく感じる文体でした
    これが芥川賞候補なのか…と

    AV女優のメイクを担当する主人公の話
    数分後には裸になり、身体も性も自尊心も数時間の間は放棄する彼女たちがそれでも明け渡さないものがあるのだとしたら、その片鱗に触れる私は幸福だとすら思う

  • AV撮影ヘアメイクをする女性が主人公。芥川賞の候補作。
    母や祖母の存在がアクセントになりながら
    静かに話がすすんで行きます。

  • 夜と朝とか、男と女とか、都会と田舎とか、他人と家族とか、聖と俗とか、そういったものの間(あわい)を揺蕩う姿を描いた作品だと感じた。
    人ってそんなに何事も白黒はっきりさせて生きられるわけじゃない。
    「自分はこっち」って、はっきり決めなくちゃいけないなんて誰が言った?
    立場も生き方も考え方も、いつでもどんなふうにでも変わり得る。
    タイトルのグレイスレスの「グレイ」という音がグレー(灰色)を思い起こさせて、余計にそんな印象が強く残った。

    田舎の邸宅での丁寧な暮らし(風味)と都会のスタジオですぐに崩れる宿命のAV女優の化粧をする描写が行ったり来たりするのがおもしろい。
    主人公の祖母が人生を謳歌していて自分もこんなふうに歳をとりたいと思った。

    芥川賞は取れなかったけど、読んでよかった。

  • AV業界の話だと思ったけど、主人公の職場がそうであるというだけで、主題?にそこまで「性」の感じがしなかった。自分の働き方や家族の生き方に対して、自分はどうあるべきかと考えていた。それは、どんな人でも考えそうな事で、全く一緒の考えには決してならないものだ。主人公ははっきりと答えを出したわけではないと思うが一歩を踏み出したような気がする。劇的な何かがあったわけではないが、そういう変化もあるよなあ。

  • 感受性がにぶい「ブルジョワ」女性三代。孫が主人公。作者は皮肉なのか、本気なのか?私が理解できないだけか?ても、まあおもしろい、かな…

  • とても芥川賞っぽいのに、スラスラ読める私には稀有な小説。
    ポルノ入ってるところが、ゾクゾクさせられるから?高度な表現が、なんとなくわかったような気持ちになれるから?

  • 「何かが正しくて何かが愚かに見えてもそんなものは無限に広がる世界の中で偶然転がり込んだ感覚でしかありません」
    この言葉が印象的でした。

    常識に固執しなくてもいいんだと思うと肩の力が抜ける気がしました。
    同時にそういうのに執着しまくる自分自身に苦笑しました。

  • 芥川賞候補作。初読みの作家さん。なんか何が似てるわけでもないんだけど、斜陽を思い出しました。お母さんやおばあちゃんの印象とか、旧家っぽい家の描写からかな?

  • 曖昧だからこそ難解さを孕む読後感。

    物語の終盤、主人公はなぜ仕事をすべてキャンセルしたのか、辞めたのか、辞めてないのか、戻るのか、休むのか、その曖昧さこそ今作のテーマとリンクするように感じた。

    「なんで辞めたんだろう?理由は?」と瞬時に疑問を持つ自分に気付かされ、そう、だからその”明確な”理由を求めている時点で、まだこの作品の「間(あわい)」を嚥下できていないのだと痛感する。

    数年後に読み返した時、きっと表情を変えてくれる作品だと感じた。

  • 鈴木涼美さん2作目。
    ポルノの撮影現場で、女優たちにメイクを施す化粧師が主人公。かなり露骨で生臭い描写も多数あり、受け付けない人は受け付けないだろうと思う。彼女が住むのは都心から離れたなかなかに豪壮な洋館で、玄関扉の上には十字架が飾られていた。この“聖”と“性”の対比が面白みなんだろうか。ちなみに彼女の名前にも「聖」が使われている。
    うーん、ちょっとなにを感じ取ればいいのかわからなかった。
    第168回芥川賞候補作。

  • 自分の知らない世界だったので、素直に「撮影現場ってこういう感じなんだ」「そんなビデオがあるのか(なんせ好んで見ないので)」という感想。女優と主人公のそれぞれの化粧のシーンは細かく書いてあって、自分もお化粧したいなあと思った。文全体が主人公の回想のようで、自宅での祖母との暮らしの途中で突然撮影現場の場面に切り替わっている。最初は戸惑ったけど、慣れると「こういう思考の飛び方って私もよくあるよね」と、作者の頭の中がそのまま文章化されたものなんだろうと納得する。第168回芥川賞候補作ということで、もし講評が出るならそれも読みたい。

  • グレイスレス(文學界2022年11月号)
    著作者:鈴木涼美
    発行者:文芸春秋
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    facecollabo home Booklog
    https://facecollabo.jimdofree.com/
    「AV女優」の社会学として書籍化!日本経済新聞社記者を経てフリーに 。

  • 感情移入できるとか先が気になるとか、そういうのは無かったけれど、読み終えてみると妙に胸に残る感じ。
    ミニシアター系の映画を見た感じというか。

    淡々とつながっていく文体のまま時系列が入れ替わっていたりして、少し混乱しつつ、そういうものかと思って読んでいったけど、脱落せずに最後まで読めてよかった、と思えるラストだった。

    「うちの近くに祀られた皇族が、殺される直前に幽閉されていた神社」とか「鉄道発祥の地と呼ばれる都心部の駅」とか、人や地名などの固有名詞を徹底的に避けていて、クセ強いなあと思いながら読んでいたらクライマックス(とわたしは感じた)である人の名前が出てきて、「ああ、このためだったのか」とすとんと腑に落ちてきて、そのあとの主人公の選択もなんだか少しじんときた。

    女系家族というか、おばあちゃんとお母さんの存在が色濃くておじいちゃんとお父さんはその2人を通してしか描写されていなかったけど、それぞれ好きに行きつつ家族を大切にしている距離感が良かった。

  • 純文学として読むべきなのかエンタメ(大衆)文学として読むべきなのか迷った作品だった。私の読解力不足もあるのだが、純文学作品として読んだ場合に、私は何を受け取れば良かったのだろうと考えたが分からなかったい。一方でエンタメとして読んだ場合には、スカッとする要素が不足しているように感じる。もちろん芥川賞候補作なのだから純文学として読むべきだろう。でも私にはお仕事小説としてしか読めなかった。

  • 希望を抱きつつ読み進めても一向に感情移入できず読了。新奇な題材に面白さを感じたが、描く世界観から伝わるもの、心に響く何かを感じられなかったのが残念。これも読者の好みがあるので仕方ない。

  • その女の仕事は、ポルノビデオに出演する女優の顔に化粧すること。
    祖母とふたりで暮らす郊外の家は古くなってきているが、建物としてイケてる。化粧の仕事で遅くなった時はカプセルホテルに泊まる。
    ポルノ業界に新しく入ってくる女優がいれば、引退していく女優もいる。ずっと業界で働く男優もいる。

    引退する女優の化粧を頼まれた女は他の仕事をキャンセルし、勢いがついたのか他の仕事もすべてキャンセルする。

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    言い回しのわかりにくい箇所が何度もあったが、語り手が理屈っぽいってことなんだろうなと思うことですんなり読めた。
    アダルトビデオに関わる人のあれこれ、別世界で生きる人々のあれこれ。それらが対比だったのかはわからないけど、二つの世界を行ったり来たりする感覚が面白かった。

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著者プロフィール

鈴木涼美

作家。1983年東京都生まれ。慶應大環境情報学部在学中にAVデビュー。その後はキャバクラなどに勤務しながら東大大学院社会情報学修士課程修了。修士論文は後に『「AV女優」の社会学』として書籍化。日本経済新聞社記者を経てフリーの文筆業に。書評・映画評から恋愛エッセイまで幅広く執筆。著書に『身体を売ったらサヨウナラ』『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』『ニッポンのおじさん』『JJとその時代』、『往復書簡 限界から始まる』(上野千鶴子氏との共著)など。

「2022年 『娼婦の本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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