ラーメンカレー

  • 文藝春秋 (2023年2月7日発売)
3.49
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784163916569

作品紹介・あらすじ

35歳、9月。ロンドンで高校の同級生の結婚式に参加した。

仁と茜の夫婦は、茜の古い友達を訪ねてペルージャまで足を延ばす。
そして窓目くんは、結婚式でシルヴィに出会ってしまったのだった。

言葉と記憶があふれだす、旅の連作短編集。

みんなの感想まとめ

言葉と記憶が交錯する旅の連作短編集で、登場人物たちの個性豊かな物語が展開されます。友人の結婚式をきっかけに、ロンドンからイタリアへと向かう夫婦や、恋愛に悩む窓目くんの視点が描かれ、彼の心の動きや細やか...

感想・レビュー・書評

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  • 旅のなかで、芽生える友情や恋心。
    その旅先で、どんな物語が出来上がるのか、そして、その物語が全部が良い物語とは限らない。
    本作の登場人物たちも、旅先で、様々な体験を
    目の当たりにし、新たな価値観を得る。

    本作では、イギリスとイタリアにそれぞれ旅に
    向かうのだが、茜と仁の夫婦は、仁の友達のけり子の結婚式が行われるイギリスに向かう。
    その後に、今度は茜の友達が住んでいるイタリアのペルージャに向かうのだが、そこまでに行くのが大変で、バスの乗り換え、チケットの買い方等、
    様々なトラブルに遭いながら、夫婦お互いの目線で、物語が語られている。こういう性格なんだとか、英語しゃべれるんだとか、普段あまり知らない部分が、慣れない土地での旅でお互いに見えてしまう。少し嫌悪感を感じてしまう部分も露わになるのだが、茜と仁2人の絆が垣間見れる、良い物語でした。本作は、連作短編になっていて、茜と仁のストーリーと、仁の友人の窓目の話も描かれている。窓目の健気さにやられました。優しさは
    時に自分を傷つけてしまうのかと、あらためて実感しました。

  • この著者、読みはじめ慣れないうちは、一瞬、なんか読みにくい?くどい?とか思っちゃうんだけど、慣れるとクセになるというか、ああこの人こういう文章だった好き、と思うっていう。今回もそうだった。口に出さず心のなかで思っていること、うつろっていくさまざまな細かい思いがそのまま書き連ねられるような感じが好き。

    ストーリーは、友人のロンドンでの結婚式に出席した30代の夫婦が、その帰りにイタリアに住む妻の友人を訪ねるって話と、同じ結婚式に出席した友人のひとり(窓目くん)の恋愛話。どっちもおもしろかったけど、この「窓目くんの手記1~5」がよかった。手記と言いつつ、手記じゃないみたいな部分があったり、延々と料理の実況中継みたいになったりしてちょっと不思議な読みごこちもあるんだけど。彼が恋するシルヴィーあてのメールの、日本語で考えて英語で書いたメールをまた日本語に訳したみたいな文章がよかった。ロマコメみたいにキュートな感じがあって、まさに窓目くんこそ「ラブリー」だ。期待や願望や約束は絶対に叶えられないと思っている、でも絶望しているわけではなく、あきらめているわけでもなく、っていう窓目くんいいなと思った。

  • 大好きな滝口悠生さんの小説。お馴染みの登場人物たち。これまで脇の方にいたジョナサン周囲が今回クローズアップ(ジョナサン目線の話はないけれど)。いつまでも読んでいたい。

  • 本の説明にはないけれど、「長い一日」のスピンオフ版かしら。
    その友達たちの旅の連作短編集なんだな。

    ロンドンやイタリアペルージャでの出来事、コロナで遠ざかった世界が懐かしい。
    窓目くんが相変わらず飄々として達観している姿が愛しい。
    結局、タイトルのラーメンカレーってなんだっけと思いながらも、居心地のよい空間にいた感じでした。

    紹介されていたカレーの本は、しっかりブックマーク!

  • 滝口作品と言えば、記憶、思い出。
    今回は旅が(大きな意味で)テーマ。
    旅を描くという事は、記憶を辿ることは必定。
    滝口悠生作品の髄を存分に楽しめる。
    後半は窓目くんが主人公。
    『長い一日』などで存在感を放っていた彼がついに。
    なんだかやっぱり、いいキャラクターだ。

  • どうしようもなく好き。いっしょにおなじ場所に行っても、思うことや思い出すことは違っていて、共有しようとしても100%完全に伝えることはできない。それがいいよね。記憶が記憶を呼んで、いまここにいないと思い出さなかったこともきっとある。いまこの瞬間も、いつかの未来で思い出すかもしれないし、思い出されないかもしれない。偶然すれ違ったアジア人に親しみを持つかもしれない。私たちは一瞬一瞬の選択の積み重ねで生きているけど、大きな時代や歴史の流れと無関係に生きることはできない。
    あわせて読んだ文學界3月号の特集もとても良かった。

  • 読み始めこそ独特な展開に やや戸惑うが
    すぐに慣れ、劇的な展開など一切ないのだが
    とても良かった。

    アッパとマンマ(ロンドン在住のスリランカ人
    ジョナサンの両親)の調理シーンがなかでも
    印象的。

    後半の「窓目くんの手記」も独特な文章、言い回し
    が多いが、センチメンタル。

    この著者はお初だったが
    他の作品も読んでみよう。

  •  はっきりと、こんなお話で面白かった、と言えない話だった。
     例えば、知らない誰かの独り言をずっと聞いているような、お茶しながら友達の話を聞いているような気分になる。
    それが面白い時もあれば、ふんふん頷きながら眠たくなってしまう時もある。
     そんなお話だなあ、と言う感想。

  • ずっと積読していたけど、滝口さんの本を読みたいゾーンに入り、グイグイ引き込まれて読んだ。おもしろかったー!!!他人やその人の生活を見る視点が、その見方と書き方が、独特。おもしろい。
    窓目くんが愛おしい!
    でもなぜか、滝口さんの本は、滝口さん読むぞのエンジンがかからないと、ぐいっと読めない。なんでだろう。おもしろかったな〜

  • 2023年2月
    日常って人を癒す効果があるなぁと思う。旅行に行く"非日常"も含めて日常。事件も事故も起こらない。
    普通の人が日常を振り返って書いたならばこうはならない。鮮やかさがすごい。まるでわたし自身がこの日常を体験したような気がしてきてしまう。そしてこの日常から浮き立ってくるものは幸福だなぁと思う。

  •  新刊が出れば必ず読む滝口さんの最新作。海外旅行記系小説でオモシロかった。2023年の今はだいぶ戻りつつあるが、海外旅行に気軽に行けて世界の距離が近かった時代の話として貴重なように思える。異文化交流の中で生じる喜びや悲しみが惜しげもなく表現されていて、自分の過去の経験を思い出したりもした。加えて最近はオンライン英会話で海外の方と月内に何回か話す中で自分の気持ちや意見が伝わらないときの切なさや悲しみ、一方できちんと通じて盛り上がったときの喜びを経験する日々を過ごしている。こういった感情の機微が逐一言語化されている感覚があった。
     大きく分けて前後半あり、前半では夫婦での海外旅行の話。夫婦それぞれの視点があり旅行中にピリッとする感じが絶妙に表現されていて身に覚えがあった。あとはまさか滝口さんの小説でウィードの話が出てくるとは思わず、そこでテンション上がったし赤ちゃんの描写は植本さんとの共著『ひとりになること、花をおくるよ』に通じる部分があった。海外旅行での疲労感とかどうしようもなさを小説を通じて実感、その苦労も含めて旅に出たいなと思わされた。
     そして後半は窓目君という人物の一大恋愛物語となっていて、いったい何を読んでいるか分からない良い意味で謎のメロドラマだった。この人物は『長い一日』で登場した人物であり、そこから地続きの物語のように読める。今回は特にこの窓目なる人物のすべてにおいてToo much、けど憎めない人物像が全面に展開されており読んでいて楽しかった。元は手記があってそれを滝口さんが語り直したらしく、手記ではないからこその蛇行があり、それがまさに滝口さんの小説らしさが存分に出ていてオモシロかった。また調理過程がここまで細かく書かれている小説を読んだことがなく、読んでいるとカレーをスパイスから作りたくなった。最近ビリヤニを作ったりしているのだがミックスされたスパイスを買ってそれを混ぜてるだけなので水野氏の書籍など読んでベースから勉強したい。文學界も買って読んだのだけど合わせて読むと本著の理解が深まってオモシロかったので両方読むのがなおよし。

  • 【35歳。もう、若かった頃のように若くはないのだ】9.11、日韓WC、貧乏一人旅、サークル同期のあの子――青春の記憶はあらゆる所で飛び出して、あらぬ所へ誘いだす。連作短篇集。

  • どんなお話で、どんな評価なのか
    うまく言えないような作品。
    独特の文体で、決して読みやすくはないし
    だれの視点なのか分からなくなる難しさはあった。
    だけど、最後まで読まずにはいられない、そんな話だった。
    スリランカ料理が食べたくなる。

  • 35歳の主人公の、年末ごろの話。この年齢にしてはみちならなくない恋の話。

  • 「ラーメンカレー」、というタイトルに惹かれ手に取るが、「ラーメンカレー」というものが出てくるわけではなかった。カレーライスのライス部分がカレーみたいなものがババーンと中心に据えられてみたいな話を想像していたのは裏切られ(いや、これはこちらの勝手な思い込み)。窓目くんが、探究心でラーメンばかり食べて太り過ぎ、その後カレーを食べ続けて、みたいなエピソードからとられたみたい。◆茜と仁の夫妻の旅路と、仁の同級生窓目くんの手記という構成。夫妻は、仁の同級生の結婚式でロンドンへ飛び、その後茜の古いバイト仲間由里さんに会いにイタリアはペルージャへ。由利さんは日本からロンドンへ飛び、ブラジル人のチコと出会い、結婚してペルージャへ移住。そこへの旅路、滞在時の思いが夫婦交互に語られ。けど、わざと人称をわかりにくくしてるのか、わかりづらいところがあって、すっと入ってこないところも。そして、こんなに細かいところがわかりあえないとお互いに思っていて、この先大丈夫なのだろうか?と余計なお世話なくらい気になってしまい。窓目くんのターンは、茜・仁夫妻の出た同じ結婚式でイギリス人のシルヴィと知り合い、激しい恋に落ち、その顛末がつづられる。シルヴィの留学先のブルガリアと窓目くんの働く東京で、激しいメッセージのやりとりが重ねられるけど、いざ会おうとなると、シルヴィは約束を守れない/守らない…傍目には守る気がかんじられないぐらいに。そしてようやく3度目のチャレンジで濃密な2日間をすごすが、消化不良のまま別れ、あとからその理由がメッセージで送られてくるが、…と。わかった気になったというのが間違いで、永遠にわかりあえない、それでも…という苦さが感じられ。◆記憶というのは、だから残酷で優しいシステムだp.198◆それなのに、運命もまた記憶と同じように、残酷で優しいものなのだった。p.202◆費用対効果なんて、どこをとっても恋慕の感情と反りの合わない話だ。p.206◆

  • ふむ

  • 『長い一日』と同じように独特な雰囲気のある小説だ。窓目くんのキャラも不思議な感じだが、前半の方の海外にいる友人を訪ねる話もけっこうおもしろかった。茄子の入った味噌汁の描写でうまい以外に「安堵に似た喜び」を表していることなど、とてもきれいな風景だと思えた。後半の窓目くんの手記については、共感と疑問が混在しつつ、大爆音で流れ続ける徳永英明「レイニーブルー」のシーンのインパクトがすごかった。リピートされ続ける「レイニーブルー」を聞く感情はたしかにごっちゃ混ぜになりそう。
    ====
    由里さんがお椀に入った味噌汁と取り皿を持ってきてくれた。木の箸を少し懐かしいような気持ちで手にして味噌汁に口をつけると、おいしくてまた腰が砕けるような感覚になり、夫婦揃ってため息のようなものを漏らした。入っていたのは茄子で、お味噌汁を身に含んで柔らかくなっていて、そのさまがいまの自分たちととても似ていて、うまいとかそういうこととは別の、安堵に似たよろこびがあった。(pp.46-47)

    眼にする木や鳥の名前を知らないのは、たいていの場合、一度も聞いたことがないから知らないのではなくて、何度聞いても覚えていないということだと思う。それがそれである特徴と、その名前とが紐付かず、名指すことができないまま、やがて時間が経って、外国語の単語を忘れるようにその名前を忘れてしまう。名前は忘れ、覚えていられない。文法は名前じゃないから、なんとなく憶えていられる。木や花や鳥の名前は、子どもの頃に覚えないと、なかなか覚えられない気がする、と夫は景色を見続けながら考え続ける。(p.69)

    記憶というのは、残酷で優しいシステムだ。膨大な時間と空間に存在していた浜ちゃんを、ひとつの場面に納めて、意識に浮かび上がらせる。虚構と現実というのは、だから対立するものじゃなく、ひとが自分の人生や運命について語ろうとするとき、共同的に働いて、現実よりも現実的な場面をつくり出し、提示してくる。(p.198)

    手記とは、自らの経験を書き記すものである。窓目くんもシルヴィと出会い、関係を紡いできたその経験を書き記してきた。書き記すうちに、シルヴィと出会う以前の窓目くんの恋愛遍歴にまでその記述が及んだこともご承知の通りだ。経験を書き記すということはそういうことなのだ。ある出来事について書き記そうとすれば、そこに至るまでの時間が流れ込んでくる。手記のなかの現在はどこまでも仮構的なものである。手記を書く者は、すでに過ぎ去った時間、過ぎ去った経験についてしか書くことができないのだから、つまりその内容はことの顛末とその経緯である。もし実況中継みたいな現在と同時に進行する手記が存在するならば、そこには以前の出来事が流れ込む必要も、そんな余地もない。そしてそうではないからこそ、わざわざ手記を書く意味があるのだと思う。顛末の経緯を記せば標すほどに、ある時間は別の時間と結びつき、別の出来事がことの顛末として本線に連絡する。そうやって件の出来事が豊かに彩られ、厚みを増していく。それっが手記という形式の意味ではないだろうか。本件でいえば、シルヴィと窓目くんのロマンスは標すほどロマンティックになっていく。傍からどう見えるかはともかく、手記を記す窓目くんにとっては、手記を記すほどにロマンティックが高まり、窓目くんは昂ぶる。(p.233)

    窓目くんとジョナサンがふたりでキッチンに立ち、料理をつくった。カトレット、ポルサンボル、カードチリ、マサラオムレツ、鯛のカレー、チキンカレー、バスマティライス、そしてイディアッパム。できあがった料理を並べたはしからつまみつつ酒を飲み、次の料理にとりかかる。部屋にはスピーカーにWi-Fi接続したけり子のスマホでランダム再生される陽気な曲が流れている。ダンサブルなリズムで灰トーンの男性ボーカルの曲がはじまった。やがてビートを刻みはじめると、そのすべてに手拍子が載っていて、聴いているだけで体が踊り出す感じがする。BTSの「Dynamite」だ。あの頃窓目くんは名前すらよく知らなかったが、シルヴィの好きだったこの韓国のアイドルグループは、今年この曲を世界的にヒットさせた。(p.260)

  • それぞれの章を読むたびに、誰の目線で書かれているのかを読みながら整理していく感じ。そして、それぞれの章がつながっている。登場人物の生い立ちや経験や選択が出会いや旅先に反映されていて、無意識にこなしてきた人生のアレコレって案外うまく回収されるんだなと自分の現状と照らし合わせても感じる。
    久しぶりに海外旅行に行きたくなったし、何と言ってもカレーが食べたくなる!そして人と関わりながら生きて行きたいと思った。

  • 前半の話は、夫または妻が主語となっていてころころ主語が変わって少し読みにくく感じたのだが、なんか英語的な文章のように感じた。気のせいかもしれないけど。
    後輩の窓目くんの手記はうってかわって読みやい文だった。

  • 窓目くんの感性なんか素敵で惹かれるものがあった。

    物語は基本誰目線だ〜??って思う文章が多くて読むの大変だったけどなぜか飽きずに読み進められた。

    ラーメンカレーという題名は窓目くんの手記を読み進めてなるほど!!!となった笑

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著者プロフィール

滝口 悠生(たきぐち・ゆうしょう):小説家。1982年、東京都八丈島生まれ。埼玉県で育つ。2016年、「死んでいない者」で第154回芥川龍之介賞を受賞。主な著作に『寝相』『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』『茄子の輝き』『高架線』『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』『長い一日』『水平線』などがある。

「2024年 『さびしさについて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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