投身

著者 :
  • 文藝春秋
4.20
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本棚登録 : 85
感想 : 7
  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163916972

作品紹介・あらすじ

圧巻の書き下ろし最新長篇


最高の人生
永遠の快楽
その、極北


十字架を背負った女が、死にゆく男と交わした奇妙な約束――。
衝撃のラスト4ページの先に、あなたは何を見るだろうか。



介護に疲れて次々と男を買う女、妹の夫との際どい週末のひととき、両親・祖父母が遺した消えない禍根、忘れ得ぬ男との別離と心に刻まれた深い傷跡。そして、死にゆく男が示した奇妙な交換条件……。
いくつもの人生が響き合い、絡み合う。そして物語は、衝撃のラストへ。


人生と世界の営みの深淵を追い続ける作家が到達した、新たな極点

感想・レビュー・書評

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  • あらすじから気になっていた白石一文さんの新作。
    さくさく読み進められたのだけど、なかなか濃厚な人間模様で圧倒されました。
    主人公の旭が、妹である麗の夫を寝取った末の修羅場シーンとか痛快だった。
    "美人は自尊心の塊"。開き直った人間の持論、清々しいのでずっと聞いていたい。
    そして唐突に語り手が変わるラスト4ページには、とたんに本作まるごとを飲み込んでいくかのような胸中が綴られているのだが、そこにある感覚はとてもよく分かる。
    むしろ誰もが似通ったことを企みながら生きているのではないだろうか?と感じるのだが、そうでもないのかな。ここまで大掛かりでなくとも。

  • ひとりの女性の人並ならぬ生き様を描いた小説なのか…と思わせておいて実は…。
    彼女自身もその周辺の人たちもまた重い人間の業を背負っている。

    自分の最期は自分では決められないと人は皆思っているけれど、この本の本当の軸となる男は己の記憶に残らないならいっそ他人への悪名を残そうとした。
    凄まじいまでのその思いを財力が手助けして題名の『投身』へと繋がる。
    白石さんの小説の中にはいつも一見穏やかな平凡な人生・家庭と思わせておいて尋常ではない人間の本性が描かれている。

  • 白石一文作品の真骨頂とも言える登場人物たちとその関係。そしてそれぞれが抱えるものと自らの人生に求めるもの。

    生きることへの執着は自分が確かな存在であることを知らしめることで満たされていく。いや、満たされたことにしていく。そうやって自分の人生に折り合いをつけていく。

    妥協して生きていくわけではないが、優先順位のために手段を問わない。白石作品の根底に流れる情の薄さとある特定の誰かへの強い想い。

    自分もまた自分という存在を残し続けるために、人生の刻印を刻むために、強い方法を選ぶかもしれない。それはその時になってみなければわからない。そして、それが自分の人生の本性なのだ。

  • 怒っている妹に向かって放った言葉が衝撃的だった。でも、美人に対して一般人が常々思っていることで共感できて痛快だった。最後に突然R-18みたいなシーンがありびっくりしたが、それがラストシーンに繋がり、なるほどと思った。誰かの記憶に自分を刻みつける、しかも忘れられないほど印象的な物事で。私は死ぬ時に何を残したいか考えてしまった。

  • 2023/05/26リクエスト 2

  • 【人生と世界の営みの深淵を追い続ける作家が到達した、新たな極点】十字架を背負った女が、死にゆく男と交わした奇妙な約束――。衝撃のラスト4ページの先に、あなたは何を見るだろうか?

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著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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