ハンチバック

  • 文藝春秋 (2023年6月22日発売)
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  • 本 ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163917122

作品紹介・あらすじ

第169回芥川賞受賞。
選考会沸騰の大問題作!

「本を読むたび背骨は曲がり肺を潰し喉に孔を穿ち歩いては頭をぶつけ、私の身体は生きるために壊れてきた。」

井沢釈華の背骨は、右肺を押し潰すかたちで極度に湾曲している。
両親が遺したグループホームの十畳の自室から釈華は、あらゆる言葉を送りだす——。

感想・レビュー・書評

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  • 第169回芥川賞受賞作(2023年)。
    まずこの作品を書いてくれたことに感謝したい。
    知ることができたから。知らないのは存在しないのと同じだ。

    「ミオチュブラー・ミオパチー」という病気。
    脳性麻痺患者と筋疾患患者の違いすら認識していなかったし、筋疾患先天性ミオパチーの症状を想像したこともなかった。私は幸福な人間なのだろう。

    「生きるために、身体が壊れていく」。自分の痰で呼吸が止まる辛く厳しい現実に、私なら耐えられるだろうか。

    作中では性的、露悪的な表現、ミームの多用が見られるが、あえてだと思う。怒りの発露の一端ともいえる。

    しかし、言っていることは一つ。
    <人とのつながり>の希求だ。
    健常者と障害者を分断して考えることは本意ではないが、障害を持つ方だからこそ、健常者よりも強く<つながり>を求めることが痛いほど伝わってきた。
    私もあなた達と同じなんだ、という叫び。

    「わかりたい」と思うのは、傲慢だろうか。
    でも、知ってしまったのだ。
    市川沙央さんの次作も是非読みたい。

    • t ozawaさん
      わかりたいはコミュニケーションの最初の一歩だと思います(單純すぎますかも)

      私は障害をもつ方との接点が、仕事柄少しありますが、この小説を読...
      わかりたいはコミュニケーションの最初の一歩だと思います(單純すぎますかも)

      私は障害をもつ方との接点が、仕事柄少しありますが、この小説を読んでよかったです
      気持ちがわかったというのは傲慢ですが、少し近づけた気がします
      2024/09/07
  • さらっと一時間ちょっとで読了。怒りに近いパワーが存分に練り込まれており、正直これが長編小説であれば、なかなかきつかったかも。うまく消化しきれないのは、自分の器量の狭さゆえなのかもしれない。とはいえ、読んでいて恥ずかしながら気づかされることも有り、得られるものもあった。
    著者の背景があまりに露出してしまったことも有り、小説に対してシンプルな評価が難しい。肯定否定の感想を巻き起こす作品を生み出すことができたこと。そして芥川賞を受賞したこと。その事実は揺るがない。この作品に向けたパワーを次回作以降にどう反映していくのか。個人的に著者に対する評価は次回作以降に預けたい。 ★3.2

    余談だが、紙の本が好きについてのくだりが理解できなかった。紙の本の選択は、(あくまでも個人的にではあるが)電子書籍を貶めているわけでもなく、偏った見方をされてしまっているパラドックスのように感じた。

    • 傍らに珈琲を。さん
      チャオさん、こんにちは!
      本書、賛否両論みたいですよね。
      私は皆さんのレビューを拝見して、避けているかもしれません。
      紙の本についてのくだり...
      チャオさん、こんにちは!
      本書、賛否両論みたいですよね。
      私は皆さんのレビューを拝見して、避けているかもしれません。
      紙の本についてのくだりも、うっすらと存じ上げていますが、
      なんだかな~な思いでした。
      そうやって刺々しく相手を思っては、溝が深まるばかりだと思うんですけどね。
      社会への問題定義としては、本書が発刊されたことは意味を持つと思うのですが、斜に構えた目線からは、良いことは何も生まれませんし。
      …って、読んでもいない私が想像で物を言うのが一番いけませんね。
      でも、思わず。

      しっかり読まれて、ご自身の考えを述べられたチャオさんが立派だなぁと。
      2023/11/04
    • チャオさん
      傍らに珈琲を。さん
      コメントありがとうございます。
      まさにすでに読まれているような感想ですね笑
      痛烈な批判も的を得ているものであれば良いとは...
      傍らに珈琲を。さん
      コメントありがとうございます。
      まさにすでに読まれているような感想ですね笑
      痛烈な批判も的を得ているものであれば良いとは思いますが、
      やっぱり扱う内容に対して、嫌悪感を抱くようなものは、
      誰が書き手であれ、配慮すべきものだと考えます。
      2023/11/04
  • 手に取ったのは一年前。

    パラパラと斜め読みし
    なぜかそのまま伏せて
    しまった本作。

    あらためて手に取って
    まず感じたのが違和感。

    そうそうわかるわかる
    なんて全くならないし、

    喜怒哀楽の乖離という
    か、このズレの大きさ
    たるや・・・

    で、気付いたのが私は
    健常者の視点に囚われ
    てるということ。

    社会の不平等を勝ち組
    負け組なんて無配慮な
    言葉で表す人は嫌い。

    だけど私だって本作の
    主人公から見れば同じ
    くらい配慮に欠けてる。

    健常者としての特権を
    無意識に享受しそれに
    気付かないってまさに。

    でも健常者の視点から
    逃れられないんです。

    だからせめて想像力を
    働かせ配慮を忘れない
    ようにしたい。

    この違和感を大切にし
    他者の視点に立つ努力
    を続けることが、

    より良い共生社会への
    一歩になると信じて。

  • 第169回芥川賞受賞作。


    自分が障害者で、収入がなくても親のあり余ったお金で十分すぎる生活ができても、webライターをやって雑文を書き、その自分の収入を恵まれない人に全額寄付するというのは自己存在証明のようなものでしょうか。

    中絶するために健常者のように妊娠をしたいと思い、ヘルパーさんをお金で誘惑するのは全く発想がわかりませんでした。

    紙の本を憎むのはよくわかりました。


    私はこの本、単行本で登録していますが、実は文藝春秋で読みました。
    選評で山田詠美さんが「文学的に稀有なTPOに恵まれたのはもちろん、長いこと読み続け、そして書き続けて来た人だけが到達出来た傑作だと思う。」と大変褒めていらっしゃいますが、私はそれ程、凄いとは思えませんでした。
    紙の本を憎んでいる人の存在以外はよくわかりません。
    長く読み、書いてきた人だけに書けるような凄いものを書かれているとは思えません。

    二作目を読んでみなければわからないと思いますが、こういう作風なら二作目はもう読まないと思います。

    追記 ブク友さんとのコメントのやり取りで、気がついたことがあります。
    何に腹を立てていたかというと、文藝春秋の選評の山田詠美さんの「文学的に稀有なTPOに恵まれた」と言う言葉です。山田さんは昔、好きな作家さんで、ほとんど拝読していましたが、この言葉は、おかしいと思います。文学的に生まれることより、まず、人は健康に生まれるのが、幸せだと思います。
    次に、この作者の市川さんは、文藝春秋を読むと、やはり自分に対する何者かと言う称号がほしくてたまらなかったのでしょう。作家、それも芥川賞作家でなくてはならなかった。そのために自らの、障害を武器にしたのです。芥川賞は、「高校生が受賞」「外国人が受賞」などで、話題になりますが、「障害者が受賞」は、あってもよかったかも知れませんが、あの書き方では、障害者の中には、私のように、腹立たしく思う人間がいると思います。障害者は、際ものではありません。ユーモアが小気味よいなんて、選評はくそくらいです。文学界とは、ずいぶんと下衆なところなんですね。ご自分が障害者であるなら、まず、第一に同じように、障害をもつ人間に同調を得られる作品を書いて欲しかったと思います。あれでは、ただの障害の大安売りではないでしょうか。作者の方には、障害を武器にした話以外で、真の傑作と呼べる作品が本当に出来るのか問いただしたいと思います。

    • naonaonao16gさん
      アールグレイさん

      ありがとうございます。
      コメント拝見いたしました。
      以前お話しいただいたのはわたしで合っていると思います。

      ...
      アールグレイさん

      ありがとうございます。
      コメント拝見いたしました。
      以前お話しいただいたのはわたしで合っていると思います。

      許してだなんて…
      わたしはありのままのアールグレイさんでいてほしいです。
      謝らないでください。
      いつもいつも、いろいろお話してくださって、ほんとうにありがとうございます。

      ブクログは作品を通していろんな方と関われて本当に楽しいです~
      これからもよろしくお願いします^^
      2023/09/07
    • アールグレイさん
      まことさん★naoさん

      こんばんは
      あ~カミングアウトしてしまった・・・・今まで、息子の学校関係で仲の良いママ友はできませんでした。避け...
      まことさん★naoさん

      こんばんは
      あ~カミングアウトしてしまった・・・・今まで、息子の学校関係で仲の良いママ友はできませんでした。避ける方がいました。でも、中途障害ではない私は障害と一緒に育ちました。そんな私は、もしかしてまことさんと少し考えが違うのでは?とも思いました。
      わかりませんが。
      このコメントも削除するべきかなぁ?
      まぁ、知った人は人でいい!さっきのカミングアウト文のみ削除させて下さい。
      ふたりとも、これからもよろしく
      (゜゜)(。。)ペコッ
      2023/09/07
    • まことさん
      アールグレイさん、naoちゃん、おはようございます♪

      アールグレイさん、私も、関係したコメントを削除しました。
      そして、追記に一番書...
      アールグレイさん、naoちゃん、おはようございます♪

      アールグレイさん、私も、関係したコメントを削除しました。
      そして、追記に一番書きたかったことがわかったので、また書き足しました。
      私には病院でできた障害のある友だちが一人いますが、とてもその友だちにこの本を勧めることはできません。
      この作品が優れたものであるなら、もちろん堂々と勧められたでしょう。
      友だちはとても奥ゆかしい方なので、こんなの読んだらびっくりしてひっくりかえるでしょう。
      障害について書いたのなら、障害者同士で、お勧めし合えるような作品であってほしかったです。
      健常者がいたずらに「面白いね、やっぱり読書バリアフリーだよね」なんていうだけの作品は3流品だと思います。
      (私もしつこいですね。ごめんなさい)

      お二人共、私も、これからも、以前とかわらずよろしくお願いします。
      2023/09/08
  • これは衝撃作、問題作ですね。
    好き嫌いは大いに分かれる作品であると思いますが、いずれにしても、誰の中にも何とも言えないものが残る作品であることは間違いないと思います。
    初めから終わりまで、ずっと作者の怒りを感じていました。
    色々感じたこと、書きたいこと、あるのだけれど書いては消し、書いては消し‥‥言葉にするのはやっぱりやめておこうかな、と思ってしまいます。
    でも、これだけは書いておきたい。誰の心も自由だということ。どんなことを思ったって表現したっていいんだってこと。それが生きてるってことなんだ。

  • 第169回芥川賞候補作品。
    著者は先天性ミオパチーによる症候性側弯症で人工呼吸器使用・電動車椅子当事者。

    この小説、著者の言を借りれば、
    ーめちゃくちゃ刺激的なやつ。
     見えている世界がひっくり返るくらいの、ね――。

    主人公・井沢釈華は、先天性の疾患のため、電動車椅子と人工呼吸器を使いグループホームで暮らしている。コタツ記事や18禁TL小説をサイトに投稿し、「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」とツイートし、妊娠して中絶したい、と切望する。

    ヘルパーにページをめくってもらわないと読書ができない紙の本は不便。だから、「紙の匂いが好き」とか「ページをめくる感触が好き」などと宣い電子書籍を貶める健常者は呑気でいい、という。
    言われてみれば、ほんとだよね。

    そういえば、こないだも、「車いすの使用者が電車に乗る時は、乗降を手伝ってくれる駅員に感謝すべき」っていうような意見をTwitterで見たな…
    こういうのを、健常者優位主義っていうんですかね。

    みんな、たまには見えている世界をひっくり返した方がいいんだよ。
    だから、おすすめします。
    短いし、多少激しいエロはあるが読みやすい。

    《7月23日追記》
    この作品に盛り込まれている著者自身の経験は30%ほどなのだという。

    「私は当事者を代表はできないですけれども、当事者表象がいろんな形で増えることは必要だと思っています。1つの例として、私のことばを小説に刻みつけていくことは大事だと思います。私も含めて障害者は社会の一員ですから、障害者を含めた社会はよくなっていってもらいたいと思っています。そのヒントになればいいと思います」と受賞後市川さんは語っている。

    《8月5日追記》
    ー 健常者の無知な傲慢暴く
    日経書評のタイトルが本書の内容をわかりやすく示している。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      ほおお、なるほど…
      確かに言われてみればそうかもしれない。わたしには紙の本が読みやすい、と言うだけですよね。あと、これは障害の話...
      たけさん

      ほおお、なるほど…
      確かに言われてみればそうかもしれない。わたしには紙の本が読みやすい、と言うだけですよね。あと、これは障害の話ではないんですが、漫画は次にどこを読んでいいのか分からなくなるので苦手です…

      Kindleやオーディブルの便利さは分かりつつも、結構お金かかるのが納得いかないんですよねー
      Kindleはラインマーカーや検索機能が便利なんですよ。あれ?どこだったっけ、前に書いてあった、と振り返る時に自動で見つけられたりするのはすごい便利ですよね。
      2023/07/25
    • たけさん
      naonaoさん

      漫画苦手ですか…
      小さい頃にあまり読んでいないと、読み方が慣れないって言いますよね。

      そう!
      Kindleの検索やライ...
      naonaoさん

      漫画苦手ですか…
      小さい頃にあまり読んでいないと、読み方が慣れないって言いますよね。

      そう!
      Kindleの検索やラインマーカーはとても便利なんですよ。誰だっけこれ?っていう登場人物を確認したい時、紙の本だとめんどくさくて(流れを止めたくなくて)諦めがちだけど、Kindleだとサクッと確認できますからね。

      それでも、僕は紙の本買っちゃうんですけどね。デジタルって頭に入っていかない感じがして…

      紙の書籍買ったら、付録で同タイトルの電子書籍もオーディオブックもつけてほしい。そうしたら、様々な場面で色々な媒体をミックスしながら読み進められるのに、と思います。
      2023/07/26
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      あ!小さい頃、漫画あんまり触れてきませんでした!
      やっぱりこれも親が厳しかったからかも、、

      特にたけさんみたいにランニングとか...
      たけさん

      あ!小さい頃、漫画あんまり触れてきませんでした!
      やっぱりこれも親が厳しかったからかも、、

      特にたけさんみたいにランニングとかしながら読書にも触れたい!って人だと、オーディブルもついてれば紙で読んだ本の続きからランニング中も読書できますもんね!素晴らしい仕組み!!
      障害者には使いやすいとか、健常者しか使えないとか、そういうことじゃなく、窓口を広げて誰にでも触れやすい、アクセスしやすいものがいいですよね。
      2023/07/26
  • 2023年度上期芥川賞受賞作品
    2023年度文学界新人賞

     市川沙央さんは1979年生まれ。早稲田大人間科学部eスクール人間環境科学科卒。「先天性ミオパチー」により人工呼吸器と電動車いすで生活中の作家です。私とほぼほぼ同世代の人と言ってよいでしょう。

    市川さんは14歳ごろから心肺機能が低下して電動車いす生活になったとのこと。同世代が就職する20歳を過ぎた頃、「自分も仕事がしたい」と志したのが作家だったそうです。

    異色の芥川賞作品ということで一気読みしてみました。
    タイトルの「ハンチバック」とは背中が曲がった「せむし」のこと。背骨がS字に湾曲した症状を抱えた43歳の重度障害者の主人公・井沢釈華(しゃか)が自身のことをそう言ってます。

    主人公は両親からそれなりの遺産と資産としてのグループホームを残され、そのグループホームにオーナー兼入居者として生活しており経済面には困っていません。グループホームで生活しながらウェブライターとしてアダルト記事で得た稼ぎを恵まれない子に寄付をしつつも、ツイッター(今ではX)の裏アカで“普通の人間の女のように子どもを宿して中絶するのが私の夢”などの障害当事者としての思いを吐露。

    ある日、健常だが収入が低い入居施設のヘルパーの男性に裏アカ投稿を特定されたことを機に、対照的な2人が交錯することになります。

    グループホーム職員の手厚いケアを受けながら暮らす主人公は、外から見ると「弱い人」。でも、心の中や生き方はとても批判精神旺盛な「強い人」。逆にホームの男性ヘルパーは体は健康なのに、心の中はとても弱い人。主人公はその弱さに気づき、自分とのある共同作業を持ちかけるわけです…おっとネタバレしてしまいますね、まずいまずい。

    本作のキーワードは「当事者性」ですね。
    以下の引用のような障害当事者として痛烈な健常者批判にはドキッとさせられる。

     “紙の本を1冊読むたび(重さで)背骨が潰れていく気がするのに、紙のにおいが好き、とかページをめくる感触が好き、などとのたまい、電子書籍をおとしめる健常者は呑気”

    “私は紙の本を憎んでいた。目が見えること、本が持てること、ページがめくれること、読書姿勢が保てること、書店へ自由に買いに行けること、――5つの健常性を満たすことを要求する読書文化のマチズモ(健常者優位主義)を憎んでいた”

    “その特権性に気づかない「本好き」たちの無知な傲慢さを憎んでいた”

    過激な言葉からもわかる通り著者が「一番伝えたかった」というのが、バリアフリー化が進まない読書文化へのいら立ちのようですね。紙の本の重さや厚さは、曲がった背骨には大きな負荷になる。だが、電子化されていない書籍はごまんとあり、重度障害者が読者として想定されていない読書文化に問題意識を投げかけています。

    健常者の「当たり前」を撃ち、「当たり前」は当たり前ではないということを文学の力で暴力的なまでに訴えます。
    当事者性を前面に押し出してはいますが、安易な憐憫や共感を求めるものではないです。皮肉たっぷりな感度の高い言葉や鋭い批評が「怒り」を文学へと結実させているように思います。

  • 第169回芥川賞受賞作
    好き嫌いで言えば嫌い。
    障害とエロチズム、人間の本能、ちょっと読んでて私は気分が悪くなりました。きっとこれは作者の表現力が強いから。何だろうか?凄い本だなぁ、様々なジャンルがあるにせよ、文学って深いなぁと感じた限りです。2時間もあれば読み切れてしまうボリュームです。
    そして読み終えてしばらく経った今、読んでる最中とは違った評価をしている自分がちょっと解らない。

  • 芥川賞受賞とのことで購読
    3割真実とのことだが社会に対する怒りが凄まじい
    この内容を両手で賛美は難しい
    迂闊に共感したと公言したなら「お前に何が分かる」と筆者に叱責されそう

    文書は短く電子書籍で私のフォントでは59頁表記 短い!
    一瞬kindleのダウンロードミスを疑う
    不自由な中書いたと思うと感慨深いがこれで新書の値段!?
    短編でも数話入れて発刊する他の作家が浮かばれない‥
    受賞で騒ぎ立てる 商業じみた匂いを感じた

    筆者は、読書バリアフリー法として本のあり方を提唱している
    私は目が悪いので文庫が嫌で長年小説を敬遠してきた
    去年、電子書籍にでフォント大きくできることを知り
    今では読書に浸る日々
    私は電子書籍マンセー 紙より安いし

    ツールはあくまで手段であって目的ではない


    琴線メモ
    ■葡萄かあ、秋ですねえ、ありがとうと伝えてください、くらいの意味を一つの頷きで表す。

    ■こちらは紙の本を1冊読むたび少しずつ背骨が潰れていく気がするというのに、紙の匂いが好き、とかページをめくる感触が好き、などと宣い電子書籍を貶める健常者は吞気でいい。

    ■私を通して金しか見ていない奴のことは、私も金を通してしか見ない。 社会とはそういうものだろう。

  • 人工呼吸器をつけた喉で、男性を飲み下す。

    小説の中でポルノ。お金で得る意味のないエロス。妊娠して堕胎したいという妄想。下劣な性的文筆業で読み手の性を刺激する。「あ、あっ…」という文字の羅列で肉体が反応する哀れな健常者たちよ。この小説で語られるエロスは、あなたたちを捕獲するための鼠捕りである。捕えられた鼠たちは、私の呪いを聞くが良い。私はその小説すらその手には重く、読み続けられはしないのだ。

    こうしたモチーフは全て繋がり、マチズモ(健常者優位主義)への復讐となる。本来、私には性など無縁。摩擦のない虚無を呪うがしかし。ポルノを書きながら健常者の残滓、一人、パンティライナーを貼り替え、痛み分けで糸を引く。

    著者、市川沙央。筋疾患先天性ミオパチーによる症候性側彎症および人工呼吸器カニューレ、電動車椅子使用者。 ハンチバックつまり、せむし。

    1974年、東京国立博物館で開かれた展覧会で「モナ・リザ」の保護ガラスに向けて赤いスプレーを噴射。会場が混雑するからと車いすの障害者やベビーカーの入場を禁じたことへの抗議。実行した米津知子は半身麻痺の障害者。小説に仮託された英雄。本書は、アナロジーでもある。

    そしてそこにあるのは、五体不満足だが性的ゴシップで賑わせた乙武氏とは異なる障害者のリアル。著者のインタビューがYouTubeで見られる。誰もが読みたがるようなカタルシスを狙ったストーリーではない。道徳など我知らず、浄化されぬ観念世界は、その肉体に籠ったまま救われない。この本は市川沙央であり、読者は入れ子構造へ。

    健常者の創作した神話など、信仰するに値しない。それが私を否定するように、私はそれを否定してやる。凄い本を、凄い人を読んだ。

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市川沙央の作品

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