自然、文化、そして不平等 —— 国際比較と歴史の視点から

  • 文藝春秋 (2023年7月11日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (104ページ) / ISBN・EAN: 9784163917252

作品紹介・あらすじ

世界的ベストセラー『21世紀の資本』のトマ・ピケティが、「格差」について考察。

「r>g」の衝撃から10年。戦争、気候危機、経済不安などを受け、世界は”第二次ピケティ・ブーム”へ。

その最新思想エッセンスを、ピケティみずからコンパクトな一冊にまとめたのが本書である。

・「社会は平等に向かうべき」との思想はいつ始まったのか
・所得格差が最も少ない地域、最も多い地域は
・「所得格差」と「資産格差」について
・累進課税制度の衝撃
・世界のスーパーリッチたちの巨額税金逃れ問題について
・ジェンダー格差をどう考えるか
・環境問題の本質とは、「自然資本の破壊」である
・炭素排出制限量において、取り入れるべきアイデア
・「戦争や疫病が平等を生む」という定説は本当か

——「持続可能な格差水準」は、存在するのだろうか

〈目次〉
*自然の不平等というものは存在するか? 平等への長い歩み
*不平等および不平等を生む体制の歴史的変遷
*所得格差
*資産格差
*ジェンダー格差
*ヨーロッパにみられる不平等への歩みのちがい
*スウェーデンの例
*福祉国家の出現——教育への公的支出
*権利の平等の深化に向けて
*累進課税
*債務をどうするのか?
*自然と不平等
*結論

感想・レビュー・書評

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  • 「自然、文化、そして不平等」書評 データを示し政策批判|好書好日(2023.07.29)
    https://book.asahi.com/article/14968277

    経済格差の解決 政治参加が鍵 [評]根井雅弘(京都大教授)
    <書評>自然、文化、そして不平等:北海道新聞デジタル
    https://www.hokkaido-np.co.jp/article/895648/

    『自然、文化、そして不平等 —— 国際比較と歴史の視点から』トマ・ピケティ 村井章子 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917252

  • トマ・ピケティの著作が、さまざまな場面で取り沙汰されるのを見るにつけ、「21世紀の資本」を読まなくてはなあと思ってはいた。
    だが、いつも後回し。読みたい本がたくさんありすぎて腰を据えて読む気になかなかなれず。
    そんな時に、この講演録は、章立てが細かく、データを駆使してわかりやすくピケティの分析を披露してくれているので、経済学に暗い自分でも十分に読める。

    データは中央値や平均値を見るのでは実態が掴めないこと。データ分析が鮮やかでさすがだ。
    そこから浮かび上がる格差について、ピケティはあらゆる格差をゼロにしようと思っているわけではなく、一部の富裕層と圧倒的多数の一般庶民の格差を5対1.あるいは10対1くらいに抑えたいと考えていること。資本主義社会の枠内の現実路線を目指しているなと思う。これは意外。

    そして地球温暖化と経済格差の相関性も鮮やかにデータで示している。
    気候変動の影響はこの暑い夏でひしひしと感じることだが、これまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性があるという仮説を立てている。
    確かにその萌芽はすでにあると思うが、やはり一筋縄でないいかないだろうな。
    私はこの件に関してはとても悲観的だ。
    知れば知るほど、日本は、世界は、人類は決して解決できないと確信してしまう。
    確信がひっくり返されることを願ってまた次の本を読んでいくのだが。さて。

  • 講演録なので、分かりやすかった。所得格差と資産格差をどうにかしないと格差はなくならない、とわかった。教育もすごく重要だし、ジェンダー格差もなくさないと日本に未来はないと思った。

  • 世界中で起きている現代の不平等は、自然や文化の変化だけでなく、政治によって大きく変化する。特に所得格差の拡大や富裕層の税逃れなどが不平等を助長している現実があり、これらの問題に対処するためには、個々の専門学者の取り組みだけでなく、政治的な施策が不可欠だと、言う事だ。日本においては、特に所得税や相続税が他国に比べ既に高い利率がかけられていることを認知しておくべきだ。

  • あまり新鮮な意見では無かった。
    多分皆んながなんとなく感じてる「格差が無くなればいいのにな」って事を具体的な数字で示してくれている。
    だからこそ格差は今後も無くならないと思う、だって皆んなそう思ってるはずなのに、過去から格差が拡大していってるから。
    特に資本主義が最強のイデオロギーのうちはね。かと言って共産主義はありえない。
    で、エコ社会主義!ってのもありえないだろ。
    資源の消費速度が早くてそのうち枯渇するだろうけど、その時は適当に人間が間引かれて、それに適した数の人類が生き残って、「そういう環境」がまた出来上がるだけだとおもう。
    私ができるのは悲惨な間引きが行われない事を願うだけだろう。

  • 講演録のため、浅い感じがするが、ポイントは十分に押さえられているので、ここから広げていけばよい。
    歴史では政治体制による不平等。政治参加することで変えられるだろう。
    所得格差は制度による格差。自然が大きな要因ではない。
    資産は富の再分配の問題。上位から中位へはなされたが、下位までは届いていない。
    ジェンダーは家父長制度的経済システムによる。
    二酸化炭素排出量は既に十分に偏っている。
    これらは経済だけの問題ではなく、今後は専門家に任せるばかりでなく、広い視野を持って問題を見、解決のために話し合わなければならない。

  • オーディブルで聴いたのは失敗だったかもしれない。豊富なデータ比較や諸外国の事情についてなので、オーディブルだと分かりづらいように感じた(わたしの理解力の問題かもしれない)。

    翻訳本なので日本との比較が少ないのも個人的にはイメージしづらかった原因のひとつかなと思う。でも調べないと分からない海外の事情を知れるのはいい機会になった。

  • 2022.3.18にケ・ブランリ=ジャック・シラク美術館で行われた講演の原稿を加筆訂正したもの。講演は民族学会の招きで行われた。

    ・不平等を生む体制が社会によってどれほど異なるとしても、過去数世紀にわたって基調的な流れ~社会的な平等へと向かう底流はあった。18世紀末という特定の時期に水脈が現れ、政治的・社会経済的平等の実現をめざして勢いを増したていった。
    ・不平等を生む体制は社会によって大きく異なるが、自然、文化、不平等の間にはまったくちがう種類の関係性が存在する
    ・気候変動問題は、現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては解決できない。それは「民主的でエコロジカルな参加型社会主義」である。

    ・スウェーデンは今日きわめて平等的な社会だといわれるが、20世紀初頭はそうではなかった。1920年に普通選挙が実現し、社会民主労働者党が1932年に政権党となり以後2000年代までほぼ切れ目なく政権を担当し、税収は教育や医療へのアクセス拡大に充当された。

    ・不平等に関しては二つの問題がある。累進課税と環境破壊だ。

    ・経済成長の真の原動力となるのは教育だ。

    ・単に金銭的な再分配だけが福祉国家の仕事ではない。

    ・自然の破壊とは自然資本の破壊にほかならない。

    ・気候変動の影響がこれまで以上に日常生活で実感できるようになったら、現在の経済システムに対する考え方が急激に変わる可能性は十分にある。
    ・不平等の問題は経済学者だけでは解決できない。狭い視野ではなく、歴史学者、社会学者、政治学者、人類学者、民俗学者たちの力が必要だ。経済や歴史の知識と知恵を共有することで、より民主的な社会と権力のよりよい配分をめざす運動の重要な一翼を担うことができるし、またそうしなければならない。

    2023.7.10第1刷

  • ピケティさんの書籍はどれも読むのが大変だが、本書は講義内容の文字起こしなのでサクッと読める。格差(所得、資産、ジェンダーなど)や環境問題(炭素排出制限量の南北問題、自然資本の破壊など)についての彼のスタンスとその結論に至った経緯が簡潔に記されている。ピケティさんご自身による「ピケティ入門書」という位置づけの本。

  •  2022年3月18日のジャック・シラク美術館で行われた講演録。
     「社会的不平等の違いや度合いや構造は・・・・参政権をはじめとする政治参加のほうが大きな要因だったかもしれない。その一方で、「自然」の要因、たとえば個人の能力であるとか、天然資源などに恵まれているといったことが果たす役割は、思うほど大きくない。」

     スウェーデンの例は「ある国が本来的に不平等だとか平等だということはないと示した点で興味深い」「肝心なのは、政権運営を担うのは誰か、何を目指すのかということである。」

     そして「不平等の大幅な解消無くしては、また現在の資本主義システムとはまったく異なる新しい経済システムの出現なくしては、気候変動問題は解決することはできない」と結論づける。

  • 奨学金のつかいどころに格差があると言う話とそれを是正するべきだという主張に賛成できるかは別としてわかりやすかった。

  • r>gで有名なフランスの経済学者のトマ・ピケティが過去データを分析して、不平等を切り口に世界で起こっている様々なことを論じる。

    所得、ジェンダー、教育格差など。驚いたのはヨーロッパなどでは1800年代から統計データがあること。

    累進課税などの導入により、十分ではないが、格差は縮まっていること。

    教育に国がかけるお金は重要であり、これが格差を縮めるのに重要な役割を果たすが後回しにされること。

    炭素の排出量は一人当たりに換算すると北米が群を抜いて大きいにも関わらず、同様の排出量が求められていることなど、筆者が述べるように分野を超えて専門家の知見を集約することが重要である。

  • 『21世紀の資本』で有名なピケティによる2022年3月に行われた講演の内容を書籍化したものとなっているので、分厚い『21世紀の資本』と違って、1時間くらいで読み終えてしまった。

    内容としては、やはりピケティらしい不平等についてのもので、
    不平等の問題は、まだまだあるものの、全体として不十分ではありながら平等への歩みは続いているとしたうえで、
    所得格差や資本格差、ジェンダーや議決権の不平等などついて、データを示しながら、語られている。
    また、不平等が生まれる背景には、社会的、文化的な原因があるため、フランスやスウェーデンの歴史的事例を通してそのことが述べられている。

    これらの中で特に印象に残ったのは、自然への影響(環境問題)と不平等の関係で、格差と環境問題がどう関係するのか、と思ったが、CO2排出量が、国際的にはいわゆる先進国に偏りがあり、また、国内でみれば所得上位10%に偏っているとあり、CO2の排出量規制への努力を格差を無視して平等に強いるのは、実態に則してしないと気づかされた。

    読んでいて、気になったのは、
    資本格差は、所得格差よりもはるかに大きく、また、不平等の解消度合いも低いこと。
    不平等の解消には、教育が必要であること。
    不平等の問題を解決するには、より平等な資本主義社会か、資本主義に替わるシステムが必要なこと。など、ピケティの考えていることが端的に述べられているものの、もとが講演会の内容のため、この本だけでは十分に理解できなかったのが、ちょっと残念だった。

    でも、短くても発見のある本だと思う。

  • 一般的に、ここ1世紀でだいぶ不平等が解消されたような印象があるが、『世界不平等リポート』のデータで見ると中間層が増えただけで資産ゼロの貧乏人の割合は実はぜんぜん変わっていない。フランスもフランス革命の栄光を自慢するほど平等にはなってない。

    それでも全体がゆるやかに平等へと向かっているのも事実。例えば平等世界一を誇るスウェーデンも、第一次世界大戦までは税金納付額に準じた票数を富裕層で割り振って貴族が首相をつとめる国だったが、識字率の高い労働者階級が参政権運動に励んだ結果1932年社会民主主義系の政権が成立し、今のように変わっていった。スウェーデンが特殊なのではない。社会構造は永続的な物ではなくいつでも変化するものである。だから希望を捨てず、経済学者まかせにせず、教育に公的資金を投入し、みんなで平等への道を歩いて行こうぜ。

    最近自由研究のテーマとして新自由主義関連本を読んでいるせいで、地球はもう強欲商人の遊園地として焼け野原になるしかないようで気が滅入っていたが、まだこんなまともな文化人もいたのかと元気が少し回復した。

    所得の再分配に関して、第二次世界大戦後のドイツに相続税の引き上げを指示したアメリカの話も興味深い。民主政が金権政治に脱しないようとの意図だったと。新自由主義にそまったレーガン大統領以前のアメリカは旧大陸的な不平等社会を反面教師にして富の再分配にも非常に積極的だった。それが現在は第一次世界大戦前のヨーロッパ並みに逆行している。まるでオセロゲームのようだ。社会構造は決定論では語れないとのピケティの言葉はここにも当てはまる。

    分厚くて読みづらそうなイメージで名前しか知らなかったピケティを講演録というダイジェスト版で、しかもこのタイミングで読める価値を考えると、薄めの本だが投資分の収穫は充分ある。

  • 読了。講演録であり100ページ足らずでサクッと読める。所得、資産、ジェンダーの不平等についてデータに基づき分析(主に欧州)。自然、文化、体制の違いあれど、大きなタイムスケールでは、揺り戻し等あったとしても、格差は縮小の流れにある。ただ、スウェーデンの例を挙げ、不平等を減らすために重要なことは政治的意志であると言っている。オビにあるように問題を他人に丸投げしてはならないというメッセージは自ら動かなければ、大きな前進はないという事なのだろう。

  • ピケティの思想がギュッと詰まったコンパクトな一冊。個人的には、50ページほど増やしてもう2-3ずつ論拠を示して欲しかった。反論の余地がある部分がいくつか。このページ数でこの価格、というのもちょっと抵抗あり。

  • 講演のまとめだったようで、結構なお値段のわりに分量は少なめ。
    著者の本を読むのは初めてだったので、「不平等は自然なものではなく、制度などによって人為的に生まれる」という内容は参考になった。
    以前の著作を読んだことがある人にとっては物足りないかも。

  • ●不平等を生む原因は、圧倒的に、文化>自然 である。
    ●所得の格差。上位10%の所得が、その国の所得全体に占める比率と言う比較的単純な指標を見る。アフリカ南部、南アメリカ、中東、インドメキシコ。植民地時代の負の遺産もしくは石油の利権。
    ●所得格差のばらつきは、自然(個人の才能)の要因に帰する事は不可能。制度(社会、文化、政治、イデオロギー)によるものと考えられる。
    ●資産の格差。所得以上に偏っている。下位50%の人は殆ど持ってない。フランスでも4%しかない。
    ●ジェンダー格差。女性の労働所得が全体に占める比率。女性の労働時間は全体の50%を常に上回っているので、この比率も50%を上回るべき。しかし、今でも6〜7割か男性。
    ●フランスは、フランス革命の時に相続や資産の登記制度が導入されたおかげで、相続に関する記録が当時としては例外的にきちんと保管されてきた。これらの記録は18世紀末まで遡ることができる。
    ●上位1割が所有する資産の比率は下がってきたが、それは中間層に移動しただけであり、下位半数の資産は増加していない。
    ●しかしフランスは、自国は革命により平等の実現を達成していると勘違いをし、累進税率の導入が遅かった。
    ●スウェーデンは、今日では極めて平等な国だとよく言われるが、20世紀初頭ではそうではなかった。結構不平等な国だったのだ。投票権は富裕層20%の男性のみ。しかも納税額に応じて多くの票を投じられると言う仕組み。
    ●第一次世界大戦まで、西欧4カ国の国の税収は、GDP比1割以下。税収は基本的に、秩序の維持や財産権の保全、警察・司法の運用、植民地拡大に伴う国外への戦力展開の財源に充当された。その後1918年以降は税収が拡大の一途をたどる。そしてここ30年間は、GDP比45%前後で安定的に推移している。その使い道は教育、医療への公的支出。
    ●フランスは1914年まで所得への課税が行われていなかったため、0%だった。
    ●二酸化炭素の排出量の削減については、累進課税のような制度にしないと解決することはできない。

  • トマピケティの本。フランスの講演会の内容をまとめた本なので、格差の現状を図表を使って説明しておりとても判り易い。著者は世界の所得、税、ジェンダー、環境等の格差問題について言及考察しているが、これは複雑な要因が絡んでおり問題解決は一筋縄では行かない。各国にはそれぞれ事情があって、資本主義社会である限り、著者が指摘する格差を是正するのは難しいと思う。

  • 不平等・格差の歴史についての講演会をまとめた一冊。
    講演会なので比較的分かりやすくまとめてあり、読みやすい。
    スウェーデンの社会民主政党をサンプルとして取り上げており、スウェーデンの政治について知識がなかったので、興味深く読んだ。

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著者プロフィール

フランス国立社会科学高等研究院の研究所長、パリ経済学校の教授、ならびにグローバル不平等研究所の共同主宰者。とくにLe capital au XXIe siècle (2013)(山形浩生・守岡桜・森本正史訳『21世紀の資本』みすず書房、2014年)、Capital et Idéologie (2019)、Une brève histoire de l’égalité (2021)の著者として知られる。

「2023年 『差別と資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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