街場の成熟論

  • 文藝春秋 (2023年9月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784163917566

作品紹介・あらすじ

ウクライナ戦争、陰謀論、ポスト真実の時代、公共財の私物化、バワークラシー、ハラスメント……

非常識で、冷笑的な人々が増えたこの国で――

・権力者支配(パワークラシー)の国で上昇志向に駆られた人の振る舞い
・なぜ複雑な話は「複雑なまま」扱ったほうがよいのか
・人からの採点を待つ「被査定マインド」をやめる
・ものごとは原理よりも「程度の問題」で考える
・子どもたちを歓待し、承認し、祝福する大切さ……etc.

親切、品位、勇気……失われゆく徳目を明らかにし、
〈大人の頭数を増やす〉道しるべがここに

みんなの感想まとめ

現代社会の複雑な状況や人間関係について深く考察した作品で、特に「成熟」というテーマが際立っています。著者は、権力者支配や公共財の私物化といった現実を背景に、私たちがどのように自らの価値観を見直し、成長...

感想・レビュー・書評

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  • お世話になっている整形外科医院の本棚からお借りした

    神戸にお住いの内田樹さん
    たくさんの著作があるが、なんか難しそうで……
    最新の本(2023・9・15発行)を手に取った

    今の世界、日本
    なんかヘン
    イヤな肌触りがする
    そんな違和感が少し分かるかなと

    たくさんの脳にビンビン響く言葉たちを届けて頂いた

    書きだせばきりがない
    でもプレ認知症の私はすぐ忘れるんだろうなあ

    自分も含めてホントみんなが「幼い」!
    もっと寛容で学べる「成熟」した大人になりたい

    ・ウクライナ危機後の世界
    ・沈みゆく社会
    ・成熟について
    ・ジェンダーをめぐる諸相
    ・語り継ぐべきこと

    ≪ 大人たれ 自分の「VOICE」 みつけよう ≫

  • 2020年~2023年に著者が新聞や雑誌に寄稿した原稿のコンピレーション本。42の文章が5つのテーマ(ウクライナ危機後の世界、沈みゆく社会、成熟について、ジェンダーをめぐる諸相、語り継ぐべきこと)で配置されている。

    「日本は帝国の属領から脱却できるか」(今後の世界では帝国の「併呑」志向と国民国家の「独立」志向がせめぎ合うことになる、エリート=「どこでも生きて行ける人たち」には祖国を守る義理はない)、「パワークラシーの国で」(権力的にふるまうことが権力を維持するための必須条件)、「病と癒しの物語 『鬼滅の刃』の構造解析」(「健常」と「疾病」をデジタルな二項対立としてはとらえず、その「あわい」こそが人間の生きる場であるという透徹した見識)、「アメリカにおける自由と統制」(アメリカが世界最強国力になったのは、彼らが統治の根本原理を採択するとき、統制か自由かのいずれを優先させるかをついに決しかねたことの手柄)などが面白かったかな。

    「旧弊は露見するか」で著者は、「仮に過去に恥ずべき失言をなしたことがあったとしても、その後反省して、「そういうことを言いそうにない人」になるべく努力を重ねていれば、その人について「恥ずべき過去があるに違いない。いくら時間がかかっても構わない。徹底的に調べてやろう」という人は出てこない」と書いているが、これには承服できない。世の中こんな綺麗事では済まない。いつなんどき他人から妬まれるか分からないし、現在と過去のギャップが大きいほどネタとしての価値が高まるのだから!

  • 『街場の成熟論』まえがき - 内田樹の研究室
    http://blog.tatsuru.com/2023/06/07_1449.html

    『街場の成熟論』内田樹 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163917566

  • 成熟に関わるさまざまな論考。
    努力、友情、勝利のもたらす弊害というか、その価値観だけでは足りないものがあるという言及に、ハッとする

  • 時代というものがどう流れていても、内田樹の言葉はある種、自分のリズムに合うのだと思う。
    (この人が「イラチ」だなんて、そんな気はしないのだけど)

    内田樹の取り上げる、ジョナサン・ゴットシャル『ストーリーが世界を滅ぼす』の引用が面白い。
    端的に述べられている部分がないので、孫引きにはなるけど、挙げておく。
    「今、私たちがみずからに問うことのできる最も差し迫った問いは、さんざん言い古された『どうすれば物語によって世界を変えられるか』ではない。『どうすれば物語から世界を救えるか』だ」

    物語の効用というものを、私はどうしても肯定したくなる。
    けれど、物語によって、人の憎しみを煽られ、戦いが起きることも、幾度となく繰り返される。
    人はフィクションを信じるだけでなく、生み出すことの出来る動物だ。
    「物語から世界(人間)を救う」という問いに、どんな解答が用意できるだろう。

    「どうして『勇気を持て』という教えが後退したんでしょうと重ねて訊かれたので、これもその場の思いつきで『少年ジャンプ』のせいかなと答えた。『少年ジャンプ』が作家たちに求めた物語の基本は『友情・努力・勝利』である」

    「協働」と言われ、掲げられる世の中で、「孤高」を貫くことの価値が見えなくなった気がする。
    一匹狼と「勇気」のニュアンスは、微妙に異なるだろうが、自分一人が貫ける信念は、後に出てくる、他者評価に自分を委ねない話にも繋がってくる。

    「この短い引用を読むだけでも、太宰が何かを『言い切る』ことを必死で避けようとしていることはわかる。『心づくし』というキーワードを思いついたのだが、それで止まらずに『親切』『心趣』『心意気』『心遣い』と次々と言い換えてゆく。だが、どれも『ぴったりしない』」

    今作の「鬼滅の刃」論が面白かったのだけど、善悪にピシッと分かれるのではない、境界の淡い。
    太宰の『言い切る』ことを避ける態度は、それとも少し似ているように思う。

    「教師というのは個人で営む仕事ではない。集団として営まれる事業である。同意してくれる人は少ないけれども、私はそう考えている。この職能集団の規範と倫理に、すべての教師はひとりひとり忠誠を誓わなければならない。それは医師たちが『ヒポクラテスの誓い』を誓言するのと同じことである」

    なるほどな、と思う。
    そして、なるほどな、と思わない人もいると思う。
    「先生」と呼ばれる仕事にまつわる、公共性に、最近うんざりしていたのが、正直な所だった。
    働き方が変わったとしても、価値観が変わったとしても、多分「聖性」は、変わってはいけないものなのだろう。

    それは「委ねる」という信頼に繋がるからなのかもしれない。

  • 内田樹氏が、いろいろな媒体に寄稿したものを、
    ウクライナ危機後の世界
    沈みゆく社会
    成熟について
    ジェンダーをめぐる諸相
    語り継ぐべきこと
    の各章に分け載せている。

    彼の思想やこだわりがよく見え、共感する部分が多く感じたので、もう少し拡げてみよう。

    ・図書館
    図書館はそこを訪れた人たちの無知を可視化する装置である。自分がどれほどものを知らないのかを教えてくれる場所である。だから、そこでは粛然と襟を正して、「寸暇を惜しんで学ばなければ」という決意を新たにする。図書館の教育的意義はそれに尽くされるだろう。
    図書館に向かって「みんなが読みたがるベストセラーだけを並べて置け。読まれない本は捨てろ。そうすれば来館者は増える」と言う人たちは知性と無縁な人間である。だが、今の日本では、そういう人たちが行政の要路を占めて、教育や文化予算の配分を決めている。日本の知的生産性が急坂を転げ落ちるように低下したのも当然である。 
    ・国旗と国歌については、強制すべきではなく、信頼できる国家となることが先で、かのアメリカ合衆国においても、国旗の損壊は個人の権利として認められているという。
    ・どんな教師であれ、「子どもたちを歓待し、承認し、祝福する」ことが教師の本務だ。そんなことはしたくない、できないという人間は教壇に立つべきではない。
    ・安倍元首相の国葬について
    岸田首相は「聞く力」ということを繰り返し語ったが、政治家に最も必要なのは「ここ一番」というときに、割れる世論をとりまとめて、合意形成をもたらす「語る力」ではないのか。耳元で大声でがなり立てる人の話を「聞く」だけで、国民的合意を形成するために「語る」ことを惜しんだせいで、首相は支持を失った。
    ・選挙と公約
    選挙に勝った政党は政策が正ししいから勝ったのではない。「勝ちそうな政党」だったから勝ったのである。選挙に負けた政党は政策が間違っていたから負けたのではない。「負けそう」だから負けたのである。
    有権者たちは「勝ち馬に乗る」ことを最優先して投票行動を行っている。その「馬」がいったいどこに国民を連れてゆくことになるのかには彼らはあまり興味がない。

  • いろんな媒体で依頼のあった評論をまとめた一冊。ロシアとウクライナの戦争が始まったころの文が最初の章に収録されていてその後の経過を振り返りながら読みました。内田先生もこの文をお書きになられた頃はここまでこの戦争が長引くとはさすがに予想されなかったのでないでしょうか。

    p53教育、医療、司法、行政をはじめとする社会的インフラ「社会的共通資本」制度は、政治やビシネスのように多数派を占めたとか経済力や発言力の強さとか台風が来たから(!)などという理由で変えてはならない、という意味合いのことが書かれています。
    日本のウエに立つ人々や組織は確かにここを履き違えてしまっているのが多いと思いました。というか章末「破壊することで得られる全能感に淫する人が今の世界にはあまりに多い」手を握りしめるほど共感しました。
    p174「私が怒っているのは私が正しいからだ」も。そういう人ホント多い。
    ああ勘違い、だよ。大きな声を出し無作法に喋りだせば通用すると思って振る舞う輩、クレーマーという人たちに特にホント多いですね。

    p200アメリカが常備軍を禁じた憲法を持っていることを知っている日本人は少ない。
    え、ホントですか?びっくりでした。確かに知らない日本人が大多数なのでは。
    アメリカの憲法への向き合い方と日本の憲法への向き合い方の差異に唸りました。
    p237「原理の問題」と「現実の問題」は別々に扱うほうがいい

    内田先生の文は、自分には全部は理解できないのですが目が向かない、届かない、思い至らない場所を考える機会を与えてくれます。
    しかし読了して思うのは、本書タイトル成熟論ですが、自分成熟には程遠い大人であると思い至る、ということです。

  • 生きていると様々な事柄を考える場面に出くわす。そしてその考えは得てして自分の視点からの見方だけに終始してしまい偏ったものになりがちである。
    内田樹さんの本はいつも少しそのようなものの見方をずらしてくれる。

    「反抗のうちで死ぬのは、自分個人の運命を超える『善きもの』のため」
    運命を越えると思える時、命すら惜しまない状況が起こる。

    「反抗的人間は孤独ではない。」
    関係性は戦いという形でも万人と繋がる。人は関係性の中で生きている。

    「全能感を手早く求める者は必ず破壊に走る。」
    権力を振りかざす周りの人はやはりこのスタイルを取る。

    「文学的素養のない人たちが他者の内面についての想像力の行使を惜しむ傾向があるのはたしかな事実である。」
    文学の持っている大切な側面だと思う。

    「科学者は個人的な努力によって科学的であることはできない。」
    科学は公共性を必要としている。

    「複雑な現実は複雑なまま扱い、焦って単純化しないこと」
    とても難しい。そしてそうありたい。

    「「勇気・正直・親切」と「友情・努力・勝利」はまるで違う。」
    大切にするべきものを何かが歪める。見極めないとと思わされる、

    「「自分が何を学ぶのかわからないが、学び始める」というのが師弟関係である。」
    そのような学びだからこそ師弟関係には超えてはいけない線がある。それは道徳でも公正さでもなく、関係として超えてはいけない。それを超えた時、師は師の資格を失う。弟子は師弟関係というものを生涯理解できなくなり学びを捨てる事になる。

    他にも感じた事はたくさんある。
    感じ方はきっと人それぞれなのだろうけど、自分の考えをずらされた時に、その事が意外にまっすぐなものの見方である事を発見する。



  • 人の成熟を大人になることと考えると、僕自身は社会観念の点でそこそこ成熟しているけどまだ完熟ではないかな。街場の成熟とはなんだろう?、それをを考えるために読んでみたい

    #街場の成熟論
    #内田樹
    23/9/13出版

    #読書好きな人と繋がりたい
    #読書
    #本好き
    #読みたい本

    https://amzn.to/3sMyHAe

  • 世の中には資本主義や市場原理で語ってはいけないものがあると内田はよく言う

    教育、学び、師弟についての項は、いつもながら素晴らしかった

    彼の本を読んできた者にとっては「また同じようなこと言ってる」という感じだけど、それでも何度でも読みたいのだ

    星4つ。
    5つにしたいくらい良かったけど、書き下ろししてくれたら5つにする。

  • 大好きな内田先生本

    学びには、カリキュラムなどない。学ぶまえから何を学ぶかわからないのが学びの本質。
    など、キレッキレの内田節がひかる。

    また何故内田さんが共産党推しなのかも分かる一冊。

    大好きな内田さん。
    とはいえ短編を集めた感もあり、内田節が他の内田さん本よりは少ない気もした。

  • 安定の内田節、という感じ。
    特にフェミニズム批判の論考における切れ味の鋭さと、先に逝った友人を悼む論考の切実さが印象的だった。
    前者は以前からのもので、最終的な着地点が「体のいうことを聞きましょう」なのが非常に胡散臭いものの、その他の理屈は鮮やか。特にセックスワーク論では廃娼論への違和感を鮮やかに言語化していた。体の所有権を確認するためにこれを傷つけることが必要なタイプの人のメンタルのあり方に一切思いを致すことがないのが、この人の鈍感な部分。
    後者は、特に小田嶋隆に向けられたものが好きだった。小田島のコラムの語りの構造を分析することがほぼそのまま哀切な追悼の意思の表明になっている。誰かのことを真剣に考えるということはその人を愛することとほぼ同義なんだよね。あんたほんとにオダジマンのこと好きだったんだね、とよくわかって落涙を禁じ得ない。

  • 内田樹先生のブログの文章と雑誌などへの寄稿記事がまとめられたものです。

    オンラインでも見れるのだけれど、やはり紙でまとまっていると作品になる、

    国際政治から国内政治、社会問題など、世間でも話題に上がる身近なテーマから、内田先生なりの視点が文章にされていて、どの稿もとても興味深いものがありました。

    ひとひねり、ではないですが、これまでの知的且つ身体的経験の蓄積に裏打ちされた独自の一貫した視座があって、常に新しい言葉の意味や考え方、視点のもち方を学ぶことができます。

  • 読書が滞っていたので、久しぶりの内田先生の本でした。

    やはり読書が滞るっていると再開すると、なかなか読む内容
    が頭にながれてこないものですが。
    著者の本は、すっと入ってくるようになるものでした。

    複雑な話を複雑なままに、簡単にしないこと。
    勇気と親切
    学びとは変わること
    無作法と批評性
    学ぶことと、師弟関係とハラスメント
    セックスワークに関してのフェミニスト・人権・身体
    図書館について
    いろいろ為になる話、吸収できる話を読めたと思います。

  • 学ぶということは生まれ変わったかのように変わること、という話は最後のページを読むまで忘れなかった。
    自分も今の仕事を始めた20年前、学ぶものを変えたときから変わったのだろうか。生まれ変わったのだろうか。
    蝉が殻を破って出てくるようには変わったのだろうと思うが、生まれ変わったかのようには変わっていないと思う。
    心と直感に従う勇気を持って生きてきた…とまで果たして自分のことを認められるのだろうか。

  • 半分以上(もっとかな)は既に一度読んだものだが、読んでなかったものと合わせて1冊の本となりまとめて読めるのはありがたいことだ。

  • 3.5

  •  いつも聴いているpodcastの番組に著者の内田樹さんがゲスト出演していて、本書についてお話ししていました。
     内田さんの主張は、ご自身の “思考の軸足” にブレがないので、昨今のいろいろな社会事象に関する私自身の考え方の揺らぎをアジャストするのにとても参考になります。

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著者プロフィール

1950年東京都生まれ。神戸女学院大学名誉教授、神戸市で武道と哲学研究のための学塾凱風館を主催、合気道凱風館師範(合気道七段)。東京大学文学部仏文科卒、東京都立大学人文科学研究科博士課程中退。専門は20世紀フランス文学・哲学、武道論、教育論。 主著に『ためらいの倫理学』、『レヴィナスと愛の現象学』、『寝ながら学べる構造主義』、『先生はえらい』など。第六回小林秀雄賞(『私家版・ユダヤ文化論』)、2010年度新書大賞(『日本辺境論』)、第三回伊丹十三賞を受賞。近著に『日本型コミューン主義の擁護と顕彰──権藤成卿の人と思想』、『沈む祖国を救うには』、『知性について』など。

「2025年 『新版 映画の構造分析』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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