雨だれの標本 紅雲町珈琲屋こよみ

  • 文藝春秋 (2023年10月6日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (232ページ) / ISBN・EAN: 9784163917597

作品紹介・あらすじ

お草が営む珈琲豆と和食器の店・小蔵屋が、高名な映画監督の新作の撮影候補地になった。店員の久実や常連客たちは色めき立つが、お草は店の通常営業ができなくなると、乗り気になれない。だが監督と面会すると、その件とは別に、お草は別のお願いをされる。彼に大きな影響を与えた古い映像作品を作った、ある無名の男を捜してほしいというのだ。わずかな情報とおぼろな記憶を頼りに、お草は男の姿を追うが――。彼はいったい誰なのか?

みんなの感想まとめ

人間関係や人生の選択について深く考えさせられる物語が展開されます。お草が営む小蔵屋が有名な映画監督の新作の撮影候補地となり、彼からの依頼で無名の男を探すことに。監督の過去に影響を与えた人物を追う中で、...

感想・レビュー・書評

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  • 〈紅雲町珈琲屋こよみ〉シリーズ第11作(らしい)。
    前作がかなりなサスペンスとハードな内容だったので、今回は少しホッと…と思っていたが、やはりこのシリーズはのんびりさせてくれない。

    今回は有名な映画監督からの依頼。彼が映画専門学校時代に出会った、不思議な男を探しているという。監督の今を作ったという才能ある男が紅雲町に所縁のある人間らしい。

    一方、小蔵屋のわれものゴミを荒らして持って行く朔太郎青年という新登場の人物も訳ありのよう。
    また前々から気になっている久実と一ノ瀬の関係のその後。

    結果的には思った通りの結末だったのだが、それほど苦い話でもなかったような。ある人物にとっては満足できなかったかも知れないが、これで良かっただろうと思う。しかし意外と朔太郎って若い子だった。序盤の印象と違っていた。

    何といっても気になって仕方なかった久実と一ノ瀬だが、終盤までハラハラのし通しだった。一時は最悪な事態まで心配したが、その結果も読まれてのお楽しみに。

    今回は、前作の後遺症もあってか、お草さんの立ち回りはなし。やっと年相応、少し落ち着いてくれたような。とは言っても着物姿で真相を追い求めてアクティブに動き回るのは変わらないのだが。

    このシリーズを読んでいると様々な人生の来し方について考えさせられる。夢ややりたいことを追い求めるのも人生、家族や大切な人のためにその場にとどまるのも人生。その家族が重荷になったり傷つけられて飛び出すのも人生。様々な人生がある。
    お草さんは過去の辛い別れがあって今、小蔵屋という店を切り盛りし様々な人たちとも交流しているが、それが無ければどんな人生だったのか。
    どの選択が正しいかなんて誰にも分からない。

    ただこのシリーズのメンバーにとって穏やかで幸せな日が待っていれば良いと思う。

  • 小蔵屋の物語も何作目になるのか。
    少しずつ進展する、でも決してスマートじゃない人間関係とか、お茶目なお草さんが魅力的です。

  • 【収録作品】雨だれの標本/別のお願い/狐雨は嵐の晩に/消えた場所まで/たずね人の午後

    お草は、自分が出したゴミを漁って中身を持ち出している若い男に不審を覚える。
    一方、高名な映画監督・沢口の新作の撮影候補地になった小蔵屋。監督に影響を与えた映像作品を作った、無名の男を捜してほしいと頼まれたお草は、記憶を辿り、ツテを求めて捜す。

    お草が年相応に衰えてきている様子に胸を突かれる。探し人を求めて糸を辿るうちに、思いがたゆたうように流れ、読んでいるこちらも目眩がしてくる。

  • 紅雲町珈琲屋こよみシリーズ最新作11

    少しずつ身体にガタがきているのは仕方がないことだけど、頭は相変わらず冴え渡っているお草さん

    今回の小蔵屋のおすすめ商品は?
    『紫陽花色掘り出し市』
    倉庫を整理して出てきた青系統の器を紫陽花に見立て
    売り出すアイデア

    それぞれラッピングして瑠璃色と銀色、水浅葱色のリボンを結ぶ
    和紙風の透ける包装紙を陳列台に波立たせるように敷き
    包装済みの青系の器を並べてゆく
    円形に、中心ほど高く、まるで紫陽花の花束のように

    『何でもない日の花束みたいに』というポップを添えて
    考えるだけでわくわく、うっとりしてしまう

    有名な映画監督の新作撮影候補地になった小蔵屋
    下見に訪れた監督から、影響を受けた古い映像作品の製作者である無名の男性を探してほしいと頼まれる
    この男性探しが今回のメインテーマ

    男性探しの方はあまりにこみいっていて、ついていけなかった
    表紙のほんわかとした絵とは裏腹のどこかいつも難しい感じがこの本の難点

    しかし、久実ちゃんと一ノ瀬公介さんが、晴れて結婚することになったのはビッグニュース
    どこかお互いが遠慮しあっていて奥歯に物が挟まったような違和感を感じでいたけれど、よかったよかった

  • 登場人物たちの人生、苦味がずっと漂っている。シリーズ11作目までよみつづけてきたけど、快晴!みたいなんないなあ。

  • コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋(こくらや)」を営むお草(そう)さんのシリーズ、第11弾。

    今回のゲストは、大学を出て就職浪人中の朔太郎、22歳。
    祖父が遺した「山の家」と呼ばれるアトリエで、廃材を使ったオブジェを製作している。
    また、草は、小蔵屋をロケ地の候補に挙げているという映画監督の沢口から、自分に影響を与えた映像作品を撮った、行方不明の男を探してほしいという依頼も受ける。

    生活のために夢をあきらめる人もいれば、夢を追うために家族を捨てる人もいる。
    趣味はほどほどに、打算の人生を選ぶ人もいる。
    自分で納得して夢と訣別し、次の人生を歩み出せるのならそれが一番良い。

    「夢」という言葉に与えられる意味についてあらためて考える。
    子供の時や若い頃に「将来の夢」といえば輝かしいものの象徴であり、「夢がない」ことはまるで悪いことのように言われたりする。
    しかし、長じてからも本気で追い続けると、「夢」は手に入らない物の代名詞に変わる。
    どれも「仕事」であることに変わりなくても、安定した収入を得られるものは「堅実な仕事」と呼ばれ、食べていけるかどうか分からないものは「夢」と呼ばれる。
    夢は、昼間起きている間に、つまり正気で見る物ではないとも言われてしまう。
    不思議な言葉だな。

    でも、夢を一度は持ってみるのもいい。
    例えそれを人生の途中に置いてきてしまったとしても、後で振り返れば、それは過去の時を輝き続けているのだ。

    前回はかなり危険な事件に巻き込まれていたお草さん、その影響がちょっと体に出ているらしい。
    やれやれ、年寄りの冷や水もいい加減にしてくださいよ(笑)
    お草さんの、一人で調える食卓が好き。生活スタイルが素敵。
    前作あたりから(?)「本シリーズは、まだスマートフォンが一般的ではなかった頃の物語」というただし書きが入るようになったが、その当時でも日常を和服で過ごす人はほとんど居なくなっていたと思う。
    お草さんが市内を(町内より広範囲)歩けば、またはお店に入れば、「小蔵さん」と声をかける人も多い。
    ちょっとした有名人ではないか。
    「紅雲町」は、群馬県の前橋市に実際にあり、前橋市は萩原朔太郎の地元である。
    しかし、観音像のある山や、音楽センターは高崎市に存在する。
    この作品では、小蔵屋のある場所を特に何市という呼び方を避けて、前橋と高崎の両方の要素を取り入れているようだ。
    久実と一ノ瀬の将来、バクサンの店のことなど、身の回りの人たちの動向は次回に続く。

  • 毎回ピリッとした空気を感じる。
    今回はちょっと落ち着いた。

  • このシリーズの好きなところ。小蔵屋の描写、コーヒーの薫りが漂ってきそう、目に浮かぶような器、お客がいる時いないときそれぞれの店内の描写、天候。私も小蔵屋ブレンドの試飲を楽しんで小蔵屋で豆を買いたい。お草さんの作る食事の描写。若者(久美と公介の恋愛の行く末)からお年寄り(老い、後継者問題)までそれぞれの世代が抱えるであろう悩み、街の開発などが上手く盛り込まれていていること。作者の社会問題、社会の状況に対する考えの描写。苦手なところ。所々の描写のくどさ、ミステリの肝心な部分で登場人物が混乱するような描写、今回だと”久”の女性とタカハシマートの社長と朔太郎の祖父、父の辺りが読みづらかった。そしてこれを書いてしまうとそもそもシリーズ成り立たないんじゃないかと言われそうだけど、なぜ草のところに問題が振ってくるのかわからない(要するに設定がちょっと)。今回ならなぜ草に無名の映画作品の作者をさがす依頼をするのか、フィルムコミッションには映画好きの人とつながっているだろうからいくらでもそちら方面で探せそうなのに。朔太郎の描写が幼すぎ。大学を卒業したとは思えない、高校生ぐらいにしか思えなかった。
    とはいえここまでくると登場人物其々に愛着はあるし、何より久美と公介のことが気になっているので新作が出ると手に取ってしまう。なんだかんだ言いながらここまでシリーズコンプリート。
    ところで、どうしてもわからなかったのが、p.114の表現。小蔵屋でFMからクラシックが流れる中常連に尋ねるシーン。
    ー「あの、映画はお好きですか」 
     ドビュッシーを衝立がわりにした草の問いかけに、客の主婦が眉間を開いた。...
    ”衝立がわり”ってどういう意味だろう。辞書やネットで探してみたが出てこなかった。

  • もう11作目らしい「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ。前作がかなり大きく動く話で、ひょっとしていったん区切り?と思っていたが、意外と早く続き(本作)が刊行されたなぁと思っていた。

    本作ではお草さんの店小蔵屋で映画撮影がある…みたいな話と、ひょんなことから知り合う芸術家を目指すクセあり兄ちゃん朔太郎との絡みを発端に、映画監督沢口に依頼された人探しがテーマとなっていく。

    どうにもやるせない部分と意外と捨てたもんじゃない部分を持つ、親子・家族・親族や友人・ご近所という人間関係、老いに伴って現れる心身の変化と増えていく思い出…お草さんの周りに起こってきたこれらが絡む出来事が本作でも語られるのだが、シリーズ内では比較的平穏かつ得心の行く落としどころを持っていたなぁと。

    ラストにはシリーズ内の大きな宿題も一つ目途がついた様子もあり、なかなか良い1冊だった。

  • 前作のぶっ飛び方から元に戻ってきた感じ。
    ストーリーも落ち着くところに落ち着いたという印象。

    謎の男の正体はなるほどと思ったものの、そこに辿り着くまでの人物相関図がややこしすぎて少し疲れた。もう少し丁寧にご説明頂けると助かります(笑)
    そして最後の朔太郎の就職先。びっくりよりポカーン。中学生のようなあの感情の奔放さはアーティスト向きでしかないと思うが?むしろ公介さんのほうがよっぽど秘書に向いている。今の政治に腹を立てているのは伝わったが無理にねじ込んだ感が否めず、うん…。といった感情で本を閉じました。

  • 前作があまりに無茶振りだったので今回はホッとしました。
    でも話の流れが良くなくて、何回も戻って読み返さなければいけなかった。
    唐突というか、何急に?みたいな感じ。
    それが残念。

  • もうこのシリーズも11作らしい。
    今回は人捜し。
    新たに出てきた人物が魅力的だけど今作限りかな。

  • 【新しい展開を予感させる、シリーズ第11弾!】小蔵屋が映画の撮影地候補となり、さらにお草は監督本人から人探しを依頼される。持ち前の行動力でその謎の人物に迫るが……。

  • 話の流れが少し読みにくかった。
    特に新しい登場人物の人間関係。
    メモを取りながら読めば良かった。

    ──
    新刊『雨だれの標本』に寄せて(吉永南央)
    https://books.bunshun.jp/articles/-/8300

  • 3.5

  • ちょっとずつじわじわと関係が進んでます。
    時間も進んでます。
    今後どうなる?どうする?
    ソワソワしちゃいます。

  • 紅雲町でコーヒー豆と和食器の店を営む小蔵屋のお草さん。

    小蔵屋を映画の撮影場所に使いたいという話があり、またそれとは別に沢口監督が学生時代に影響を受けたという映像を作った人物を探してほしいというお願いもされた。

    同じ頃に小蔵屋のゴミを勝手に盗んで創作物を作っていた朔太郎という青年との出会い。
    朔太郎の複雑な家族関係と親族の経営する会社と、沢口監督が探している人物。

    小蔵屋の店員の久美の恋人の一ノ瀬
    山と過去の気持ちをいったん押し殺して、山岳救助のために再び山に入ったきり何日も連絡が取れなくなり
    お草さん、久美、朔太郎でパジェロに乗って迎えに行った夜のプロポーズ。

    沢口監督が探していた人物は
    タカハシマートの高橋敬太郎と思いきや、
    朔太郎の出ていった父のやの定次だった。
    敬太郎と朔太郎の母は、従兄弟同士。

    ひょんな繋がり、人の生き様。
    お草さん今回も面白かった。

  • お草さんは優しすぎないところがいい。ちょっと厳しい。でも優しい。
    行動力がある。体力も頑張って維持している。全体的に頑張っている。自分の責任を自分で背負っている。
    かっこいいです。

  • 今回のお草さんのミッションは古い映像を作った謎の男を探せ!( ・`д・´)そして、いつもどおり危険な目にあっています(T_T)ドキドキハラハラ それに加えて、久実ちゃんの事、バクサンの事と心労が絶えない(;´д`)それなら止めときゃいいのに、なぜか読んでしまうんだよね〜

  • 面白いんだけれど、少しややこしくて理解に手間取った。自分の読解力の無さだと思う。出てくる魅力的な人たちが幸せになってほしいと願いながら読んだ。お草さんは、活動的で優しくて賢くて思慮深いのに、思いのままにどんどん進んでいく時があって、それが結局は気持ちいい。

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著者プロフィール

1964年、埼玉県生まれ。群馬県立女子大学文学部美学美術史学科卒業。2004年、「紅雲町のお草」で第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞。著書に「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズ『誘う森』『蒼い翅』『キッズ・タクシー』がある。

「2018年 『Fの記憶 ―中谷君と私― 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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