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Amazon.co.jp ・本 (336ページ) / ISBN・EAN: 9784163917665
作品紹介・あらすじ
離婚届を置いて失踪した妻、発見された銃弾、28年前の未解決事件。
平穏な生活が一変する秘密と嘘。
東京都北区十条で楽器店を営む青井圭一。雑誌記者の妻・沙月とは取材がきっかけで知り合った。
ある夜、妻の沙月が圭一に差し出したのは離婚届だった。明日から一週間取材に行くから、帰るまでに答えを出してほしい――。
確かに、圭一の友人のミュージシャンの不倫スキャンダルを沙月がスクープしたことで、最近夫婦関係はぎくしゃくしていた。しかしそれが離婚になるとは思えない。そして一週間後、電話口で「このまま家に帰ったら、許してくれる?」という言葉を残して沙月は消息を断つ。
ほぼ時を同じくして、亡くなった圭一の叔父の遺品の中から銃弾が発見される。叔父の友康はこの楽器店の先代で、幼い頃に両親を亡くした圭一の育ての親でもある。平穏な人生を送っていた叔父と銃弾が結びつかず混乱する圭一。追い打ちをかけるように、その銃弾が28年前に起こった警察庁長官狙撃事件に使われたものと同じ型という可能性も浮上する。
警察庁長官狙撃事件は未解決のまま公訴時効を迎えていた。そして、沙月がこの未解決事件を追っていたことも明らかになる。
叔父と長官狙撃事件の間に何らかの関係があるのか。もしあるとしたら叔父はどう関わっていたのか。今回の沙月の失踪はその未解決事件の取材と関係しているのか。
この世界が今日も明日もこのまま続くだろう、そう思っていた人間が、期せずして社会の深淵を覗くサスペンスミステリー。
AIがまとめたこの本の要点
この本を表す言葉
みんなの感想まとめ
人間ドラマとサスペンスが交錯する物語で、主人公は妻の失踪をきっかけに28年前の未解決事件の真相を追うことになります。楽器店を営む彼は、叔父の遺品から見つかった銃弾が、過去の警察庁長官狙撃事件と関連して...
感想・レビュー・書評
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人生を賭けて護りたいものがある。それが例え自分の属する世界の正義と相容れぬことであっても。
狙撃手は何のために祈るのか。
国家転覆のためなのか。教義を貫くためなのか。それとも同志を守るためなのか。あるいは……。
オウム真理教による一連の事件をモチーフにしながら、真相に隠された悲痛な家族愛を描くヒューマンサスペンス。
◇
木佐貫は雨の中、車を走らせていた。まもなく警察庁長官の住むマンションに着く。
1年前から長官秘書を務める木佐貫の任務は、長官の公務時間内の警護である。そこには自宅への送迎も含まれるため、朝8時半きっかりに長官の自宅マンションのエントランスまで迎えに行くことになっていた。
10日前にカルト教団光宗会による地下鉄サリン事件があり、教団と警察との間にはかなりの緊張が漂っている。
マンションに到着し警備担当の刑事と言葉を交わした木佐貫は、周囲に異常がないのを確認すると呼び出しパネルで海江田長官の部屋番号を押した。
やがてエントランスに姿を見せた海江田が木佐貫の待つところに歩み寄った。大きな銃声がしたのはその時だった。(「プロローグ」) ※全5章とプロローグからなる。
* * * * *
地下鉄サリン事件や警察庁長官狙撃事件で始まるプロローグなので、警察とカルト教団との闘いを描いたサスペンスなのかと思ったら、少し違っていました。
本編は一連の事件から28年後の令和5年のできごとで、光宗会はすでに解散していて、教祖の徳丸宗邦の死刑は5年前に執行されています。
つまり 教団 対 警察 の闘いは終焉していたのでした。
本編を引っ張る主人公は2人います。
1人は楽器店とレンタルスタジオを営む青井圭一という32歳の男性で、もう1人は警視庁公安部の斉賀速人という31歳の巡査部長です。
2人は期せずして28年前に起きた警察庁長官狙撃事件の真相究明に関わることになるのですが、主人公としては圭一の方に大きくウエイトが置かれていました。
圭一はミュージシャン志望でしたがまったく芽が出ず、現在は叔父の楽器店を引き継いで生活しています。
幼い頃に両親を失くした圭一を引き取り育ててくれたのが、この叔父の友康でした。1年前に急死した叔父は生涯独身だったため、圭一が楽器店を相続したのです。
圭一には、沙月という雑誌記者の妻がいます。圭一は叔父の存命中に楽器店を取材に来た沙月と知り合い、交際がスタート。2人が結婚を意識するまでに時間はかかりませんでした。
ミュージシャンの道を諦めきれずアルバイト暮らしの圭一は、沙月を幸せにする自信がないと結婚を躊躇します。けれど、自分が圭一を幸せにすると沙月がきっぱり宣言したことで、2人は結婚に踏み切ったのです。
自分の立場や境遇を考えて身の振り方を判断する圭一に対し、愛する人のことを考えてものごとを進めていく沙月。
この2人のスタンスの違いが1つの伏線になっています。(あとで気づきました。)
ある日、行き先も告げずに泊りがけで取材に出た沙月が、不審な電話1本を寄越したまま行方不明になったことで、物語は回り始めます。
妻の足取りを掴もうと彼女の仕事部屋に入った圭一は、沙月が28年前の海江田警察庁長官狙撃事件について調べていたことを知ります。さらに、彼女が箱詰めの銃弾を隠し持っていたことにも気づいたのでした。
その銃弾は叔父の友康が昔にアメリカから密輸入したものらしく、どうやら沙月が叔父の遺品を整理する際に見つけたものであることもわかりました。
単独では手に負えないと悟った圭一は、警視庁を訪ね斉賀に面会を求めます。沙月が残したメモの中に公安総務課の斉賀速人の名があったからでした。
こうして圭一と速人という奇妙なコンビによる聞き込みが始まったのです。
本作のおもしろさは、2重3重に張り巡らされた事件の謎にあります。さまざまな真実が明かされる終盤は圧巻です。その重厚な作りは、読んでいてため息が出るほどでした。
そして、作品の中心に据えられていたのは社会正義ではなく、家族愛だったところに個人的に感銘を受けました。
他に強く感じたことは2つあります。
1つめは、カルト教団が引き起こした一連の事件の爪痕を28年経った今も心に残している方はいらっしゃるに違いないということに思い至り、痛ましい気持ちになったこと。
2つめは、刑事部と公安部の対立が捜査を滞らせてしまったことが実際の事件でもあったという報道を思い出し、暗澹たる気持ちになったことです。
ともあれ、いろいろなことを考えさせてくれる作品で、さすが社会派サスペンスの名手として名高い城山さんだと感じ入りました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カルト宗教、地下鉄サリン、警察庁長官狙撃事件
それを題材に凝った設定ではあった。
たまたまこの時期に読んだのは偶然ですが…
ネタバレになるから詳しくは書けませんが…
この凝った設定での事件を最後まで成し遂げるのは少々現実味に欠ける。
まぁ小説だから良いかとも思うのだけど…
少ない手がかりを頼りに犯人の足跡を辿るって話は大好きなんだけどなぁ(๑•́ ₃ •̀๑)
昨日テレビで地下鉄サリンの特別番組を観ました。
麻原彰晃逮捕の日は子供の遠足!
バスの中からテレビ中継を観たのを生々しく思い出しましたよ。
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2025/03/24
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あの番組は生々しくて、観るのが苦しかったですね。私でさえ、苦しくなるのだから、被害者・遺族はおそらくテレビもつけられなかったかもしれない。3...あの番組は生々しくて、観るのが苦しかったですね。私でさえ、苦しくなるのだから、被害者・遺族はおそらくテレビもつけられなかったかもしれない。30年後にやっとこんな番組ができるのも宜なるかなと思いました。2025/03/25 -
観ているわたし達はそれがサリンだと分かっているから、早く逃げて!早く全線止めて!などと思ってしまいました…当時のパニックを思い出して辛かった...観ているわたし達はそれがサリンだと分かっているから、早く逃げて!早く全線止めて!などと思ってしまいました…当時のパニックを思い出して辛かったですね2025/03/25
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1995年に起きた警察庁長官狙撃事件を題材にした物語。楽器店主が雑誌記者の妻の失踪を機に事件の真相を追っていく。
「看守の流儀」と「看守の信念」がお見事だった城山真一先生の新作長編で、ワクワクしながら読みました。
読みやすさ、テンポの良さ、よく練られた展開。さすがだなと思いました。
でも色々な部分で私の好みとはちょっと違ったかな…
まぁこういうこともありますよね。
実在の事件を題材にした社会派小説でありながら、家族の絆が大きなテーマとなった重厚な人間ドラマでした。 -
家族物語の一冊。
主人公の叔父の遺品から銃弾が見つかった。
28年前の警察庁長官狙撃事件と関係があるのか、真相を紐解くストーリー。
手がかりを得て一歩ずつ謎に迫る過程は読み応えあり。
事実と仮説が浮き彫りになる度にせつなさもあり惹き込まれた。
幾つもの家族が複雑に絡み合うさま、一つの決断、そこに至るまでにどのような家族物語が、想いがあったのか、小さな驚きと予感も含め丁寧に掬い上げ最後まで導かれたのも良かった。
と同時に実際の某宗教事件の裏で流された被害者、遺族の涙、警察の真摯な対応の非力を改めて感じずにはいられない。 -
全然のめり込めなかった
理由を一つあげるとしたら
魅力的なキャラが1人もいなかった…
んで 犯人にすいすい辿り着いた感じ(わたし的感想)
んで勝手に警察小説だと思って読み始めちゃったこと。(自分のせい)そもそもなんだが、28年前に警察庁長官ほんとうに撃つ必要あった??
と四つもあげてしまった。
内容は「文藝春秋BOOKS」さんのサイトの作品紹介にとても詳しく載っておりましたので そちらをどうぞ
みなさま週末いかがお過ごしでしょうか。
わたしは銀杏の木ライトアップ見に行ってきます・.。*・.。*-
2023/11/05
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2023/11/05
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2023/11/06
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狙撃手の祈り、読み終わってタイトルの意味を考えても、祈りではなく恣意的になっているように思えました。 内容は凝っていて、未解決の事件をそれぞれの立場から、行動や見解が綴られていて、分かりやすかったのですが、拝読後なんとも言えない感情になりました。
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少し現実離れしたストーリーではあったが、家族の絆、様々な理由を抱えながらも繋がっている。それも家族なんだと言うメッセージがあった。今、家族は疎遠状態になっているケースが多い。家族とは何かを教えてくれる本だと感じた。
※28年前の事件をなぜ使ったのか知りたくもなった。 -
國松長官狙撃事件を題材にしたミステリー。主人公は楽器店主の青井と公安の斎賀。記者の妻の失踪と、父親の執念の書付けが彼らを過去の事件に引き寄せる。一つ一つの文章がとてもステレオタイプ。気に入らないと「あーん?」と圧をかけてくるキャリアの同期の上司の態度とか、作者のオリジナリティが見えずに残念。
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現代のお話だけど、またスナイパー?
って思いながら読み始めましたが…
(同志少女を読んで間もなかったので(^-^;)
意外にも家族の物語という感じでした。
公安だけど、良い人だったり。
過去の現実の事件を取り入れているので
振り返って思い出したり。
大切なものを守るため…
色々切なくもありました。
ちょっと、どうなの?と
疑問に思う点もありますが
最後は、良い終わり方だったと思います! -
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タイトルに『狙撃手』とあったので、てっきりいわゆるスナイパー(軍とか警察とかの)の話かと思っていたのですが、意外とそうではありませんでした。
話の内容からするとむしろ『狙撃者』としたほうがしっくり来ると思います。
ストーリー的にはサスペンスというよりもむしろそれぞれの思いが交錯する家族の話、と言った感が強かったですね。 -
実際の事件をモチーフにした重厚な警察小説。しかもミュージシャンが一方の主人公なので、親近感が湧きます。ちょうど90年代が最初の事件当時なのでオアシスが出て来てぐっときます。
オウム事件、警察庁長官射殺事件。もう30年経つんですね・・・。 -
オウムや国松長官狙撃事件にインスパイアされた小説だが、警察小説として読んだり、プロット重視で読むと後悔すると思うなあ。これは純粋に家族の物語だと思って読むとなかなか面白かった。鍵がオアシスの「Live Forever」なのも良い。ただ主人公(と思われる)青井圭一の魅力のなさが痛い。妻の沙月の方が十分魅力的に思える。こちらを主人公で書いたらミステリー感も増して、もっと面白かったかも。
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「看守」シリーズの作家さんの作品。
ということで、すぐに気をひかれた。
じわじわと染み入るような面白さを持つ
「看守」シリーズとは別物のワクワク感がある。
未解決のままになっている警察庁長官狙撃事件を
題材に、公安の捜査員である斉賀と、
楽器店を経営する青井圭一の人生が交差する。
雑誌記者である圭一の妻が、不審な動きを見せたあとに、
行方不明になったことから、圭一も次第に事件に
巻き込まれていく。
エンタテインメントとして面白い。
うー、「看守」シリーズの方が好みなのだが…。 -
プロローグでの警察庁長官狙撃事件は実際にあった國松警察庁長官狙撃事件を思い出しました。場所も日にちも同じ設定でおまけに未解決であることも。そしてオウム真理教の地下鉄サリン事件を思わせる宗教団体の存在。
最初は十条銀座商店街の楽器店の店主青井圭一とこの事件がどう繋がるのだろう?と思って読み始めたけれど、妻であり、記者でもある沙月の亡くなる前の行動を辿って行くうちに思ってもいない真相に辿り着きました。
全ては家族の為に…。この小説の中の隠されたテーマのような気がしました。
タイトルにもなっていますが、狙撃手の祈りが通じたのは良かった。しかし、実際の事件の裏にはどんな真実が隠れているのでしょう?改めて当時の事件の事を思わず調べてしまいました。 -
謎が謎を呼び、ドンドン引き込まれる。二重、三重のどんでん返しにふー。ごく普通の人が、とんでもない犯罪に手を染めざるを得ないところまで追い込まれる社会の理不尽さにやりきれない思いが残る。
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一言で言うならば、家族愛である。犯罪はいかなる理由であれ許されるものではないが、犯罪に至るまでの葛藤や思いを知ると杓子定規にダメなものはダメだろうと思えない犯罪もあると感じてしまう。親が子を思う気持ちから犯してしまう罪が、その最たるものであろう。とにかく切ない思いになった。
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こういう丁寧に人生が描かれている作品にはステレオタイプの公安と一課の対立を持ち込む必要はなかったんではないかな。いくつもの流れがある中で最後はやっぱり家族の物語になった。思いの伝わる作品でした。
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面白かった。複雑に絡み合う糸を解いていくうちに、人びとの深い思いを知ることになる。
著者プロフィール
城山真一の作品
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