神と黒蟹県

  • 文藝春秋 (2023年11月13日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784163917757

作品紹介・あらすじ

「黒蟹とはまた、微妙ですね」
微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されてしまって今はもう跡地すらどこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
 つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。

みんなの感想まとめ

微妙で地味な県を舞台にした物語は、さまざまな人々と半知半能の神が織りなす日常を描いています。架空の黒蟹県には、移住者や生まれ育った人々、再び戻ってきた者たちが交わり、地域間の確執やユニークなキャラクタ...

感想・レビュー・書評

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  • 「全知全能の神と言うけれど、すべての神がそうだと言うわけではない。この神は半知半能といったところだった。」半知半能の神が存在する黒蟹県。神と人々(神の存在は知らない)が織りなす8篇からなる連作。8篇とも不思議な味わいがあり、読了感も良い。紫苑市の落雁派、灯籠寺市のきんつば派。
    タイトルに惹かれて手に取りました。神様も良いし、登場人物も、ほんわかと良かったです。

  • 架空の『微妙に』『地味』な県、黒蟹県を舞台にした連作集。

    癖の強い市長がいて、地域同士の確執があり、めんどくさい地域もあればこれといった特徴もない地域もある。
    移住してくる人、生まれた時から住んでいる人、一度出て行ってまた戻ってきた人、様々な人がいてその中に神が交わる。

    架空の場所や物と実在の物が交わるように、人々の人生のリアルな部分と神のとぼけた部分が交わる。

    先の話に出てきた名前だけの登場人物の物語が後に出てきたり、脇役で出てきた人が後に主人公となって描かれたり、様々な視点で楽しめるのも連作集の楽しいところ。
    黒蟹県の様々な地域の様々な人たちの物語が多視点で楽しめた。
    時折出てくる神のキャラクターが良かった。神なのに何でも出来るわけでも何でもお見通しというわけではないところが良い。

  • 不思議なタイトルだ、と思い読んでみました。連作短編集。不思議な味わいがありました。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
    神視点で「人々」を愛することを教えてくれるお話

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    「黒蟹とはまた、微妙ですね」
    微妙、などと言われてしまう地味な県は全国にたくさんあって、黒蟹県もそのひとつだ。
    県のシンボルのようにそびえたつのは黒蟹山、その肩に目立つ北斎が描いた波のようにギザギザの岩は、地元では「黒蟹の鋏」と呼ばれ親しまれている。県庁や裁判所を有し、新幹線も停まる県のビジネス拠点としての役割を担う紫苑市と、かつての中心地で歴史的町並みや重要文化財である黒蟹城を擁する灯籠寺市とは、案の定、昔からの遺恨で仲が悪い。空港と見まごうほどの巨大な敷地を持つショッピングモールの先には延々と荒れ地や牧草地が続き、廃業して解体されてしまって今はもう跡地すらどこだかわからない百貨店に由来する「デパート通り」はいつまで経っても改称されず、同じ姓を持つ住民ばかりの暮らす村がある。
    つまり、わたしたち皆に馴染みのある、日本のどこにでもある「微妙」な県なのだ。
    この土地に生まれ暮らす者、他県から赴任してきた者、地元テレビ出演のために訪れた者、いちどは故郷を捨てるもひっそり戻ってきた者、しばしば降臨する神(ただし、全知全能ならぬ半知半能の)。そういった様々な者たちのささやかでなんてことないが、ときに少しの神秘を帯びる営みを、土地を描くことに定評のある著者が巧みに浮かび上がらせる。

    ⚫︎感想
    地方に、本当に居そうな様々な人々の生活の中に溶け込んで生活する神。神の優しい眼差しで人々を見る視点を与えてくれるので、人間が愛おしくなるお話だった。神が人々の生活に紛れ込んで生活するので、本当にこういうことがあるのだったら、人にはいつもいつも親切にしたいなぁと思ったり、自分も神視点で人々を眺めるといいかもしれないと思ったりした。
    穏やかな気持ちになれるお話だった。
    心に響く文にも出会えた。
    表紙絵も、中の地図もたのしい!

  • 図書館本

    行ってみたいな黒蟹県。
    神が60代無職枠で審査員してみたり、落雁ときんつばの戦いがあったり、地味にクスッとなるところがまた心地よい。

  • 沁み込む一冊。

    すごく好みの世界観だった。

    舞台は架空の地、どこにでもあるような「黒蟹県」。

    この現実と架空の絶妙な交わりに深く考えずに身を委ねられた至福の時間。

    元から暮らす人、移住し新しく住まう人たちのなんてことはない姿を描いていくだけなのに、なんだろう、スッと沁み込んでいく感じがすごく好き。

    ふわっと舞い降りる神なる存在も神の視点もじわりと沁み込む数々の言葉もめちゃくちゃいい。

    これぞ人たるものの姿が絶品で何度も共感し、最後はたまらない愛おしさが溢れる感覚に陥ったほど。

    人間でいるのも悪くないよね、なんて思えた。

  • 絲山秋子さんの新刊は外せない
    「黒蟹県」と同じ微妙な地味県に住んでいるひとりとして「だよなぁ~あるある」だ
    架空の固有名詞がどれもこれも素敵!
    例の「神」もなかなかなはたらきをする
    平凡で普遍な人びとをこんなにも愛おしい描く著者
    カバーデザインが中途半端に地味なのがざんねん
    文庫化に期待

  • これ読んで、自分の住んでる都道府県みたいだとかなりの人が思うのかも。しかしまあ、最後ねぇ・・

  • 黒蟹県(架空)を舞台にした短編8話。
    独立した話ではなく、登場人物やお店の名前などは共通する。そして異彩を放つのは、所々に現れる神。
    神も神だが、登場する人たちも総じて緩い。
    読んでて楽しいとはこのことかな。
    しかし一方で、教訓的なことや人生訓を想起させるような含蓄のある話もあり、飽きない内容だった。

    本文より、

    世のおばちゃん方がなぜ飴を持ち歩き、人にくれたがるのか、やっとわかった。唾液の分泌が不安定でふとした弾みに口のなかがカラカラになっていることに気づくのだ。だから飴を持ち歩く。人にあげるということは自分でも舐めていいということだ。不調を隠しつつ愛嬌を前面に出して恩を売る。さっと差し出す迷いのなさと社会性の高さ。これこそがおばちゃんである。

    閉経こそ赤飯を炊いたり鏡割りをしたり二階の屋根から餅を投げたりして祝うべきものではないだろうか。これからはいつだって温泉旅行に行けますから誘ってくださいねと紅白饅頭を配ってもいいのではないか。人からもらいたくはないけど。
    まあ、それ以前に更年期症状でだるくて動きたくもないのだけれど。

    人々は不便でも貧しくても変わらない暮らしが継続することを内心望んでいたりする。見た目の対称性や反復するリズムを好む。予測不能な自由より把握できる不自由を選んでしまう。それなのに退屈する。だからこそぎこちなさやためらい、突然現れる小さな反乱、不穏な気配、刺激に惹きつけられるのではないか。

    そうなのか!(?)

  • これは…思いがけない面白さ!
    架空の「微妙県」黒蟹県を舞台にした日常。普通の人々の普通の日々に、ちょっとした普通でないことが混じり、めちゃくちゃ身近なあれこれの中に架空の事物がてんこ盛り。神もいる。全知全能ではなく半知半能くらいなところがかわいい。蕎麦屋に通ったり滝を見に行ったりお弁当について考えたり人間に叱られたりする。

    何が起きた?と説明できるほどのことは起こらないのに、クスッと笑えて、不意に心を貫くような言葉が残る。読み返したくなり、覚えておきたくなる文がいくつもある。何がなんだかわからないけど、良いものを読んだと思う、多分。そんな本。

    中でも、書き写さずにいられなかった1行をひとつ。

    「どうして自分に許せる孤独と許せない孤独があるんだろうね」

    ほんとにね、そうだよね。でも「許せる孤独がある」って、それが分かるだけで、ほんのちょっとだけ救われるところもあるように思うよ。

    なお、手に取るきっかけになったのはデイリーポータルZのこちらの記事でした。
    https://dailyportalz.jp/kiji/book-review-parikko02

  • 海の仙人が良かったので、続けて同じ作者さん。
    やけにディティールが細かい架空の黒蟹県の人々。
    内容も、架空のものと実在のものが入り混じり、これはどっちた??ってなりながら読むのが楽しい。
    ないようは、本当になんてことはない、黒蟹県の住人たちの世界を覗き見しているような感じ。
    その中に当たり前のようにファンタジーが混ざってるのも面白い。
    いい意味で、毒にもクスリにもならない、でもところどころでくすりとなる、あっさり読後感な一冊。

  • “黒蟹県”なる架空の微妙な県を舞台に、普通の人々と半知半能の神が普通に関わったり関わらなかったりする八編からなる短編集。各編で登場人物が変わったり、神が主人公になったり、前の編の主人公が後の主人公と関わったりして、黒蟹県のリアリティが補強されていき、架空と現実が混じり合って、なんとも不可思議な黒蟹ワールドを構築している。
    植物とか鉱石とか機械とかの名前がサラッと出てくるけど、それが架空だったり、実物だったりして、各編の最後に辞書索引みたく、文中の単語が引かれていて、架空か実物かを解説しているのもクスリとさせられる。なんとも不思議な本だなと思ったら、作者さんの過去作には神が出てくるのが多いらしく、お得意の手法と言えるのかもしれない。誤解を恐れず言えば、長嶋有+万城目学的世界観というか(逆にわからん)。
    基本とぼけたような静かな文体で、登場人物や登場神には何も起こらないようでいて、心の中のザワザワやモヤモヤを静かに炙り出していく。全体的には前半軽やかでクスリな場面が多く、後半はちょいと重めな雰囲気になってくる。そして最後は、まぁ、そこは読んでみてはのお楽しみ。
    個人的には「なんだかわからん木」がぐっときた。

  • 架空の地方に住む人たちの話で軽快。
    脇役で登場する人は地方にありがちな同じ苗字で、メインの人は聞き馴染みのない苗字。
    現実と架空をさまよう展開もだが、独特のユニークな表現もこの作家の魅力で、本作も冴えている。

    勉強机と壁の間には「消しゴムの墓場」が、洗濯機と壁の間には「靴下の墓場」がございますけれども

    細やかな気遣いは出来ても思い切って空振りをすることは恐ろしくてできない。それを他人はケチというのだった。

    廃業や精算はプラスには見えなくても、立派な仕事だと思う。時代をひとつ先に進めるために避けられないプロセスなのだ。
    撤退の判断と実行こそ尊い。

  • 黒蟹県!? 三ヶ日凡(みつかび なみ)が主人公のフィクションかと思いきや、黒蟹県なる架空の県とこの県に御座す神が主人公?の連作短編集でした。聞きなれない言葉や単語が出てくると思ったらしっかり各章の最後に黒蟹辞典なるものが付いており架空のものと実在するものが解るようになっていました。そして、最後のほうは脳が勝手に本当にある県だとバグっていました。神様もなんか勝手に県内を人間として散策してるし。神様、自分のした行いに拒絶して勝手に世界を滅ぼそうとしないで(笑)

  • 最近 ほとんど「小説」からは
    遠ざかっていたので
    行きつけの図書館の司書さんから
    ーこれ 面白いかも
    と 手渡されたとき
    少し前に 新聞の書評欄にに載っていた
    一冊であったことを 思い出した

    帰ってから
    読み進めていくと
    これが 当たり!
    絲山秋子さんご自身が
    楽しんでいらっしゃるなぁ
    と思われるところが 随所に

    改めて フィクションの醍醐味を
    味合わせてもらえました

  • 読み始めて
    これ書くの楽しかっただろうな〜
    と思った。
    架空の県の架空の街。架空の会社と物。架空だけど異世界ファンタジーじゃなくて現実世界に実際にあるかのような地方都市。
    そこで生きる普通の人々と、人間の姿で生きる神の話。
    取り立てて何か起きるわけでもなく、日常の暮らしや独白。エッセイのような読みやすさで延々と読める。

    あるあるが沢山でクスッと笑えて、絲山さんらしい痛快さが良い。

    旦那さんに掻い摘んで少し読んで聞かせたら「漫才みたいだね」と。
    そう言われると漫談みたいだと思う。表現の面白さや言葉の選び方が最高。テンポもいい。

    私が好きなのは恋愛を語る50代女性が、
    「私のところに恋愛の取り扱い説明書って来ました?」
    っていうところ。
    恋愛についての説明がめちゃくちゃ面白くて、上手いこと言うなぁ〜と感心しまくりでした。

    あと、中年男性だって流れるプールで流されたい!なんで中年男性はジムで鍛えるとかストイックじゃないといけないんだ!とか、分かる!私も流されるの大好き。
    で、その後、なんなら生まれ変わって流しそうめんになって、箸の間をすり抜けて「うひゃー!」と叫びたいとか。それもなんか分かる(苦笑)

    でも、面白いだけでなく、神を登場させることで人間というものを浮かび上がらせて、心に響くところやハッとさせられるところも多い、ちゃんとした文学小説です。

    終わってしまってさみしい。ぜひ第二弾も書いて欲しい。

  • 架空の県と不思議な地名と名前の人々。

    各章の終わりに、黒蟹辞典なるものが添えられていて、これまた興味深く、紐解いてみたくなる。
    著者の頭の中には、この辞書がぎっしり詰まって整然とした別世界が織りなしているんだろうな。

    そして、装丁がなんともユニーク。
    県のロゴとして最高だ!!

  • 楽しみにしていた単行本、読了しました。ひとつひとつのお話は文學界で読んできたけれど、こうしてまとまっているとひとつの物語になっているようで、最後はちょっとさみしくなってしまいました。と言ってるそばからまたその、隣にいる人が神かもしれないのに⁉️さみしさの原因は狐のほうかな。うん。

  • 県の名前や色々な事が架空の言葉なので、内容が全然頭に入ってこなかった。途中でリタイア。

  • 絲山秋子の神と黒蟹県を読みました。
    神様が黒蟹県という架空の県で人間として暮らすのですが、私的にはイマイチでした。
    絲山秋子は川端康成賞や芥川賞などを受賞しているのですが、他の作品は読んでないので何とも言えませんが、つまらなくは無いのですがイマイチとても面白いとも思えませんでした

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著者プロフィール

1966年東京都生まれ。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。「袋小路の男」で川端賞、『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、「沖で待つ」で芥川賞、『薄情』で谷崎賞を受賞。

「2023年 『ばかもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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