- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163917931
作品紹介・あらすじ
高校一年の夏、ぼくは彼に恋をした。
「ぼく」(羽田海)は、血の繋がらない継母の美佐子さんと二人暮らしをしている。
ぼくが高校一年の夏に、美佐子さんの仕事の都合で引っ越しをすることになった。前の町で美佐子さんが勤めていた印刷会社が倒産したのだ。
幼いころは父さんと母さんがいたけれど、ぼくが六歳のときに母さんは家を出ていき、その後美佐子さんと結婚した父さんもどこかに行ってしまった。
勉強も好きじゃないし、運動も得意じゃない。いつか美佐子さんとも離れなくちゃいけない。
そんなとき、「ぼく」は、転校先の高校で忍と出会った……。出会ってしまった。
感想・レビュー・書評
-
『夜空に浮かぶ欠けた月たち』以来の窪美澄さんの作品を読了した。6編からなる連作集である本作品の構成は、主な登場人物がその短編ごとに主役となり物語が連なっていく。それは、私にとって初めて味わう作品世界であった。その分、想像を膨らませながら読み進めた。また、窪さんが描く、個性的で魅力的な登場人物の世界を存分に楽しんだ。初めての不思議な感覚ではあったものの、物語の展開の中で起こる出来事や登場人物たちの思いを想像し、爽やかさや切なさをずっと感じ続けていた。主となる登場人物が入れ替わることにより、視点が変わり、その作品世界の味わいが変わってくる。なんとも不思議な感覚であるけけれど、それがとても楽しく面白かった。ただ、視点が変わることにより、登場人物のすれ違いや焦りも味わう、そこが切なかったりもした。
『第1話、海』では、作品全体の中心人物でもある羽田海が中心人物。第1話では、高校1年の男子である。夏休みに転校する場面から物語が始まる。海と一緒に暮らしているのは美佐子、血のつながらない親子関係で、海の家族構成は複雑な状況にある。しかも、高校1年という多感な時期での転校。不安な気持ちを膨らませつつも、海の言動は明るくつかみどころのない感じがする。そこがまたこの作品の魅力にも感じる。読み進める私の不安な気持ちとまっすぐに前を向いて過ごす海の気持ちが交錯する。なんとも言えない感覚を持ちながら読み進めていた。転校の理由は、美佐子の失業だったことが明らかになる。このことも二人の暮らしぶりを想像させるが、海と同様に美佐子も明るく前向きで、その生活とのギャップを感じる。心の豊かさと生活の豊かさは違うのかもしれないな。そして、物語の中でサラッと出てくる海が男性を好きだということにドキッとする。転校して初めに関わりをもったのは長岡忍、海のクラスのホームルーム委員長。忍は学校の教室配置や場所を海に教えるように担任から頼まれた。そこでのやりとりは高校生らしくさっぱりとしているような感じだけれども、それぞれの個性も感じられた。そして、海に関わるもう一人の中心人物、同じクラスの璃子。璃子はいじめられていた。そんな璃子と自然に関わり、助ける海。海の明るさや行動的なところが、まっすぐ伝わってきて心地よい。高校時代の関係って、繊細で移ろいやすくこわれやすい。そこを誰もが通り過ぎるものなのかもしれないな。当人にとっては、苦しく厄介なものでも。
そのような中、クラス対抗駅伝大会に全員参加で出場することに。練習でさえ乗り気でない海とそんな海に声をかけ続ける忍。そして迎えた当日。ここで、忍が足をくじき次のランナーである海が近寄る、ここからの展開は何が起こっているのか、もう一度読み返しながら理解した。そのくらい衝撃を受け動揺した。それは、私が予想していなかったからなのだろう。ただ、純粋な海の気持ちも伝わってきて、不思議な感覚だった。一方、海と璃子の信頼関係は築かれていく。璃子の好きなものや海の好きなものについて隠すことなく、互いに分かり合っていく。人に知られたくないことを知ってくれている人がいるということは、心の安定につながるだろうな。二人の微笑ましい関係に穏やかな気持ちになる。海の真っ直ぐな気持ちを受け止めた忍は、付き合っていた沙織に別れを告げる。互いの持ちを伝え合う海と忍。それは爽やかで切なくもるある。それでも互いが向き合っていることを純粋に感じながら、第1話を読了した。
『第2話 美佐子』の中心人物は、羽田美佐子。美沙子と海の父である緑亮との出会いの詳細が明らかになる。美佐子が39歳の時のこと。緑亮は、美佐子の会社のレンタルのコピー機器を扱っている会社に勤め、美佐子の会社に出入りしていた。美佐子の会社のコピー機器を修理するのに時間がかかり、保育園の迎えに行って海を連れてくることになり、そこで海と美佐子は初めて出会うことになる。この出会いがきっかけとなり、緑亮と海の親子と美佐子が、弁当を持って山登りにいくことになる。ここから、さらに関係は近くなり、緑亮と美佐子は付き合うことになる。小さい頃から海の嗜好を理解し受け止めていた緑亮。そのことにも美佐子の気持ちは共感していった。同じ見方をすることで惹かれ合うことは自然なことだろうな。それが、存在している子供への見方だということに、つながりの自然さを感じた。そして、3人での暮らしが始まった。海の母親は海が5歳の時に家を出て行ったことを、緑亮から聞かされる美佐子。過去の出来事を含めて、いろいろなことをわかり合いながら、美佐子と緑亮の籍を入れない生活が1年以上続いていた。読みながら不安な気持ちになっていく。その気持ちが増していくのは、緑亮が家をあけることが増えていったという状況があったから。結局それから、緑亮と美佐子は入籍する。読みながらよかったなとホッとする。こういう夫婦関係や親子関係もあるだろうな。互いに惹かれ合うことがあれば。しかし、その関係があっという間に変化していく。そのことに気持ちがついていかず、混乱しながら読み進めていた。緑亮が姿を消したのだ。小学1年生の海を美佐子に残したまま。2度も親から置いていかれた海。その心中を想像することは難しい。そして物語は進み、第1話とつながる展開になる。海は高校生となり、忍と璃子と仲良くなった。忍と璃子は海の家で過ごすこともあり、美佐子ともつながっていく。驚きなのは、美佐子は海が忍へ好意を寄せていることを認識しているということ。海にとっての美佐子の存在の大きさと包み込むような温かさを感じる。さらに時は流れ、海は調理師専門学校へ、忍と璃子は大学に進むこととなる。場所はいずれも東京。それぞれの、生活への変化と期待、そして海と忍のつながり、さらには、一人暮らしとなる美佐子。どの登場人物の思いも伝わってきて、胸にぐっとくる。この先の展開にどきどきしながら第2話を読了した。
『第3話 忍』の中心人物は、長岡忍。過去を振り返るシーンでは、好意を寄せる相手が同性である男の子だということを隠してきたことが明らかになる。町議をしている父や母に知られてはいけないという苦しさを抱えながら暮らしていたこと。自分の本当の気持ちが伝えられない苦しさを想像する。身近な人に言えない苦しさは計り知れないものがあるな。そのような中、自分の心の中を知られないようにするためにガールフレンドをもつ。その中に、高校の時、周囲からもその関係を認められていた女の子、市長の娘である沙織がいた。そこからは、第1話の海目線のシーンとつながっていく。海が転校してきた時から、忍の心が揺れていたことが明らかになる。そう考えると、二人の出会いの縁を感じる。そして、出会えたからこそ、素直になれた思いと、その思いが強くなるほどに得た切なさや苦しさも想像する。当人同士は幸せや喜びを得られただろう。しかし、周囲の人たちとの関わりは苦しさが増したかもしれないな。だからこそ、友人である璃子と、海の母、美佐子の存在は大きく温かい支えになったのだろうな。第1話での忍が沙織に別れを告げる場面の詳細が明らかになる。沙織からすれば、忍から告げられた別れの理由の衝撃は相当なものだっただろう。だからと言って、周囲の人に忍と海の関係を明かしても良いということにはならないだろうけれど。海と忍の関係は、東京という場所で自由になれた。しかし、自由になれた二人の生活にもズレが出始めていることに気がかりになりながらも読了した。
『第4話 璃子』の中心人物は中野璃子。璃子の過去の話から始まる。璃子は中学、高校といじめられていた。このような中、海が転入してきてから、璃子の生活が大きく変化していく。それは『第1話 海』『第3話 忍』の話と重なる。この話は璃子目線での物語となるので、璃子の背景や思いが明らかになっていく。璃子にとって、二人の存在の大きさ、そしてつながりが、璃子の生活を変えていった。一人で変えられるものもあるだろうけれど、支えとなってくれる人の存在は嬉しいし頼もしいだろうな。特に自分が悩んだり困ったりしている時には。そして、この物語では、璃子の海への思いも明らかになる。そのことによって、海と忍の関係も気になっってしまう。この璃子の気持ち、自然なことではあるだろうな。切なく苦しいこともあるだろうけれど。この話のラストは、海と忍のすれ違いが生じる。その背景には、相手の気持ちが分からなくなることがあるのだろうな。分かりあっているはずだという前提があるが故に、相手を思う気持ちを素直に伝え合うことの難しさも感じるな。その場には璃子も居合わせていた。この先の展開に不安な気持ちを膨らませながら読了した。
『第5話 緑亮』の中心人物は羽田緑亮、海の父親。本作品のラストの前の話が緑亮の話というところに、緑亮の素性を知りたいという気持ちが増す。緑亮目線だと、今までの話はどのように見えていたのだろう。純粋に知りたいなという気持ちが大きくなる。緑亮の幼少期からの過去が明らかになる。緑亮に父の記憶はない。母と二人暮らしで、母は酒場で働いていたため、夜は一人だった。そして、ある日、母は緑亮のもとからいなくなった。そこから、叔母の家に引き取られることになる。緑亮が園児の頃のこと。そんな過去を経験してきた緑亮なのに、海を置いて家を出たのか、としっくりこない気持ちが湧いてくる。そして、時は流れ、大学生の緑亮は、海の母となる大学生で芝居に夢中だった霧子と出会う。そこから付き合いが始まり、緑亮27歳の時、霧子は妊娠し、海を出産する。しかし、霧子は自分の思い描いていた生活とのズレや海の個性を受け入れられず、海が5歳の時に家を出る。海の心中はどうだったかな。母親からの愛情を得られずに育った感じを受ける。ただ、緑亮は違っていた。霧子が家を出たことによって、海を育てる覚悟をもったように感じる。この経験がありながらも、緑亮は海を置いて家を出るのか、とやりきれない思いが広がる。そのような中、璃子と緑亮は喫茶店で話をすることになる。そこには、璃子の申し出で沙織も同席することになる。緑亮は璃子と沙織に散々に言われる、海の父親として海と美佐子を置いて家を出ていった過去の行動について。それを受け止めながらも、二人に呟いてしまう抗う言葉。それに窮してしまうのは沙織。それでも、言葉を紡いで、別れを告げられた忍とそのきっかけをつくった海の関係を広めたことへの謝罪と後悔を口にする。それは、緑亮に言う必要はないのかもしれない。けれど口をついて出ていく謝罪と後悔の言葉。でも、この言葉は、緑亮にも璃子にも響く。この間の空気は読みながら澄んでいくような感覚になっていた。自分の中にある謝罪や後悔は、伝えることによって、すっきりすることもあるなだろうな。もちろん、その伝える相手の受け止め方にもよるのだろうけれど。この話のラストは、海と美佐子への緑亮の思いが明らかになる。しかし、この話の中では、海や美佐子へは届いていない、残念だけれど。それでも伝わってくる緑亮の思い。次はいよいよ本作品のラストの話へ。しかし、緑亮が一人自宅で倒れるところでこの話は終わる。どうなるのだろうか。
『最終話 海』の中心人物は、羽田海。最後の話は『第3話 忍』とつながる。海と忍のズレは、解消されていない。海は忍へと思いが募ってLINEもメッセージもしているのだけれど、忍からの応答はなかった。そのような中、忍から海へと段ボール箱が送られてくる。忍の部屋にあった海の物。どんどん、関係が崩れていく感じが増していく。せっかく互いのことを理解し、思い合えたのにな。ここから、璃子の存在が二人を繋ぎ合わせる。璃子は自分の部屋に忍を呼び出す。忍が訪れると待っていたのは璃子と海。やっとのことで、海は忍に会えた。そして、それぞれの思いを伝え合う海と忍。蟠りが溶けていく。二人は璃子の部屋を出て、海の部屋へ。そして、久しぶりに一緒に朝まで過ごす。幸せで穏やかな時間が流れていき、よかったなと思う。それも束の間、ここからは急展開が待っていた。朝になると海の部屋に忍の姿はない。そして、病院からの電話。その内容は、父、緑亮が倒れたという内容。海と緑亮の対面シーンでは、すでに緑亮の意識はなく、そのまま亡くなる。美佐子も駆けつけていて、3人での久しぶりの対面。しかし、このような形になるとは。海と美佐子の会話は、胸にぐっときた。幸せな時間を3人で過ごせたこと、それは温かく穏やかなものとして、ずっと海と美佐子の中に残るだろうな。さらに、美佐子が抱えていた緑亮、海への思いと、緑亮がいなくなってからの海の母としての覚悟が明らかになる。読みながら、強いなと思わず呟いていた。人を本気で思う時には、強さが溢れてくるものかもな。揺るぎない強さや覚悟が生まれてくるのかもな。その会話の中で、海の強さと覚悟も表れる。それは、忍を心から大切に思う気持ち。そして、意を決して忍に会いに行く海。対面し、互いの心の中の思いを伝え合う、その言葉はまっすぐで心地よい。互いを思い合うってこういうことなのだろうな。二人の会話を読みながら清々しさを感じる。そして、ラストは湖のほとりを二人で歩くシーン、この物語のこれまでとこれからを象徴するかのようなシーン、暖かく穏やかな景色を想像しながら読了した。
久しぶりの窪美澄の作品を読了した。新たな作品世界との出会いとなった作品であり、私の想像世界を広げてくれる作品となった。窪さんの作品にかける熱量を感じながら存分に楽しめた。次に手にする窪美澄さんの作品が楽しみになった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
窪美澄さんのBL小説。とはいえ、章ごとに主人公が変わり、様々な視点から浮かび上がる親と子の絆や確執、夢を追う生き方などの恋愛以外のテーマも盛り込まれており、シンプルなBL小説とは少し違うものだった(普段読まないので、推測ふくむ)。手に取るのにやや躊躇する方もいるかもしれないが、窪さんらしい、誰しもが弱さも持つ人間っぽさがしっかりと感じられるヒューマンドラマのような作品でもあるので、ぜひ多くの方に読んで欲しい。
それにしても、時代小説だったり、ディストピアっぽいテイストの作品を作ってみたり、様々な作品を届けてくれる窪さんは本当にすごい。次作はどんな内容の小説を届けてくれるのか。楽しみに待ちたい。 ★3.7 -
地球っこさん、松子さん、aoi-soraさんとの夏の「みんどく」本。
今回は地球っこさんの選書。
よかった~。
読むのが止まらない。
BLだけど、家族の物語もあっておもしろい。
いろいろな人が登場する。
普通って??
自分では多様性を尊重しているつもり。
身近にも性的指向は男性だけど時に女性がすきになる という20歳の娘さんを持つ女性がいる。
お母さんも彼女もシングルマザー。
その女性は自分で会社をおこして代表を務めている。
海も強いけれど、彼女もすごく強い。
いろんな視点から語られる物語。
とっても面白く、読むのが止まらない。
本が終盤になって、残りページが少ないのに大丈夫か?と思ったけれど、ストンと収まった。
読んでいる時間がとても幸せでした。
地球っこさん、松子さん、aoi-soraさん ありがとうございます。
これからもよろしくです~-
ちーちゃん、すごいっ!
好きを極めてる感じが伝わってくるよ
楽しそう!
あおちゃん、私のアイコンも聞いてほしい
我が家のアイドル文鳥の1代...ちーちゃん、すごいっ!
好きを極めてる感じが伝わってくるよ
楽しそう!
あおちゃん、私のアイコンも聞いてほしい
我が家のアイドル文鳥の1代目と2代目です。
大好きな子たちを並ばせてみたのっ
可愛くてねぇ
いっちゃんの英語の勉強、ほんとすごいわっ
続けられるって、すごいよね。心から尊敬です(^^)2024/08/29 -
地球っこさん、自分で描いた絵なの?
本を作るなんて、すっごく楽しそう(≧▽≦)
ワクワクする夢だね!
まっちゃんは文鳥を飼っている...地球っこさん、自分で描いた絵なの?
本を作るなんて、すっごく楽しそう(≧▽≦)
ワクワクする夢だね!
まっちゃんは文鳥を飼っているの?
可愛いだろうなぁ~
うちも娘に「犬か猫かウサギか鳥を飼いたい」
と言われてるよ(^.^;
こちらは雨が強くなってきました
台風が心配だけど、災害になりませんように…2024/08/29 -
2024/08/30
-
-
窪美澄さん2冊目です
前に読んだ作品もよかったので
次何読もうかな、、と思っていたら
1年以上経ってしまっていました
海と忍の恋の物語。
いろんな人の視点で語られていて
それ以外にもいろんな生きづらさが描かれています。
2人は強烈に惹かれあっていて、
純粋な愛に胸を打たれます。
ただ好きなだけなのに
なんでこんなに苦しまないといけないんでしょうか。
なんで空気のように、目立たないようにしてないといけないのでしょうか。
なんでも持っていたように見えた忍が、自分らしくあることが苦しくて、海のことを羨ましく思う。そして追い込まれていく。普通に生きる難しさってこういうことなんだろうなと思いました。
あといじめられたことをせっかく打ち明けたのに、あの先生はいったいなんなん?!
いろんな人出てくるけど
先生が1番腹立つーーー!!!!
そこでの美佐子さんの存在。
なんて人だろう
あんな深い愛で人と関われるって
本当に素敵。
こんな人になりたいです
切なくて、まだモヤモヤが残るので
星は3つ
結果至上主義的なところがでてしまった笑
でもスッキリできるわけないんですよね、、、
2人にはまだ試練が待っているだろうし、、
何の疑問も持たずに、2人の問題以外で悩むことなく、幸せに暮らせる世の中になってほしいです
窪美澄さん、とても読みやすかったです(*'▽'*)
もっと他の作品も読み進めていこうと思います♪
-
2024/08/30
-
2024/08/31
-
2024/08/31
-
-
窪さんのBL小説w
こうゆう感じの話はデリケートでバリケードな感じ、
異性に置き換えて読んでみるとドキドキするんですけど。
それぞれの視点で描かれているのが判りやすい。ものの見方は一方向だけでは見失うことも、双方向からならより鮮明になる。
特性だけ見てると個性を見失うし、人間性だけ見ていると悩みの原因がわからないし、バランスよく見ることが大事なんだと気づかされる。
継母の美佐子さんの視点が健気に不器用で海のことをよく理解してていい感じに思えました。
海は凄く良い環境で育ったようで、いじめられっこの璃子やカミングアウトの忍、海を捨てた父親の緑亮と一緒に食事している光景が異次元だけどそんなあり方が面白い。
BL好きの璃子視点も共感できました。 -
──ぼくの「普通」は世の中の「普通」とは隨分違う、と気づいたのは中学も終わる頃だった──
そんな高校一年の海は、転校した先で優等生の忍と、保健室登校の璃子に出会う。
駅伝大会でのある出来事により、海と忍の関係は大きく変化していくのだが…
「人が人を好きになる迫力と質量というのはすごいものだと改めて思った」
という海に対する璃子の言葉があるのだけど、私はこんなに真っ直ぐ人を好きになり、迫力を感じさせる程の恋をしたのはどれくらい前の事だろうか。
そもそも、そんな恋を経験しただろうか?
また、忍の壊れそうに繊細な姿が切なくて愛おしくてたまらなかった。
これまで優等生として生きてきた忍が、自分の本当の気持ちに気付き苦しむ姿。
でも海への想いは真っすぐで…
胸がヒリヒリと焦げるような思いで読んでいた。
「ねぇ、忍の人生はいったい誰のものなの?」
と海は問う。
自分が自分らしく、自分の人生を生きていくって、勇気が必要でちょっと恐い。
でもそんなふうに生きていきたい。
この作品は、海の「普通じゃない」家族の姿を描いた物語でもあり、それがまた心に沁みて…
窪さんの優しい文章が物語全体を包みこんでいるなぁ、と感じました。
この本は、地球っこさん・いるかさん・松子さんとの〝みんどく〟夏の部の一冊。
今回は地球っこさんの選書です。
とても心に残る大切な作品になりました。
ありがとうございます!!
-
あおちゃん、おつかれさま!(^.^)
あおちゃんのレビュー楽しみにしてますってコメントしたばかりなのに、もうすでにレビューあがってたぁ∑(゚...あおちゃん、おつかれさま!(^.^)
あおちゃんのレビュー楽しみにしてますってコメントしたばかりなのに、もうすでにレビューあがってたぁ∑(゚Д゚)
あおちゃんのレビューの中の
「海の普通じゃない家族の姿を描いた物語でもあり、それがまた…」の感想に、そうそう、そうなんだよっ、恋愛だけじゃないんだよねって、すっごく共感した!
あと、ほんと優しい文章だったねぇ。
みんなのレビューを読みながら、感じたことが言語化されていて、またじんわり感動してます。
ビバみん読╰(*´︶`*)╯♡2024/06/21 -
いるかさん
海が自分の道をしっかりと歩んでいる姿、頼もしいよね
それもやっぱり美佐子さんという絶対的な味方がいるから、自信を持って前進できる...いるかさん
海が自分の道をしっかりと歩んでいる姿、頼もしいよね
それもやっぱり美佐子さんという絶対的な味方がいるから、自信を持って前進できるのかもね
本当に、〝みんなで読書〟楽しくてワクワクします!
これからもよろしくね( ◜‿◝ )♡2024/06/21 -
まっちゃん、お疲れさま!
うん、タイムラグがあるからね(笑)
家族や親子の関係、いじめやスクールカーストなど、色んな問題にも触れているよね...まっちゃん、お疲れさま!
うん、タイムラグがあるからね(笑)
家族や親子の関係、いじめやスクールカーストなど、色んな問題にも触れているよね
親子関係については、前回の「風に立つ」とも重なる部分があるなぁ、って…
ラストも良かったなぁ( ꈍᴗꈍ)
ビバ☆みんどく(☆▽☆)
2024/06/21
-
-
お気に入りの作家さんの1人である窪美澄さんの最新作ということで、アメリカから電子書籍で拝読。LGBTQをとてもリアルに描いてるとともに、青春要素もあって割と読みやすい印象を受けました。
本作の主人公は生まれながらにして、女の子の趣向を持つ男子高校生の海。海は生活の事情から別の高校に転校することになり、クラスの中心人物の1人である忍と出会う。明るく朗らかな性格である忍とは少し合わないように感じつつも、徐々にクラスでのイベントを経て交流を重ねていくようになる。その中で次第に海は忍に恋をするというストーリー。
本作の構成としては、6章からなる連作短編集であり、主要な登場人物5人の視点から物語が描かれます。大枠のテーマとしてはLGBTQについてだったのですが、各短編で親との確執やシングルファザー、子どもとの血の繋がりなどといったテーマについて描かれています。
窪さんの作品は、人間の持つ強さと弱さをしっかり描いてる印象があり、本作もまたそういう印象を受けました。時には挫折したり、大事なことから逃げ出したりという人間臭さを肯定しつつ、前を向いて生きていくことを薦めるような優しさのある作品であると感じました。
個人的には、いわゆるマイノリティの生きづらさをテーマにした作品では朝井リョウさんの「正欲」とかの方が好みだったのかなと思います。しかし本作は青春小説というエッセンスがあるので、そこら辺で好みが分かれる気がします。 -
幼い頃に母親が出て行き、父親と暮らしていた海だったが、そのあと美佐子さんと結婚した父親も出て行ってしまった。
血の繋がりのない美佐子さんとの暮らしも決っして裕福とは言えなかったけれど温かくて居心地の悪さなどなかった。
転校した高校で忍と出会ってから海は、自分の気持ちが彼に向かっていることを意識したのは、駅伝大会のときだった。
その後から忍も自分が好きなのは海だと意識しだす。
海から始まる第一話、そして第二話の美佐子の話。
第三話は、忍。第四話は、保健室登校していた璃子。第五話は、海の父親の緑亮。最終話に海。
と繋がって物語は進む。
高校を卒業してから一人暮らしを始めて、海は随分と強くなったように思う。
逆に感情を素直にあらわせないところや物事を悲観的に考えがちな忍の苦悩が滲み出てくる。
2人の未来は、明るい雰囲気ではないのだがなんとか気持ちに正直に生きようとしている海を応援したくなる。
海と忍、2人とも優しい。
美しくて切なくて哀しくて。
いつまでも2人一緒にいてほしいと思った。
-
これは切ない…!
「出会ってしまったから全力で愛するだけ。」
海と忍。まわりに理解されにくい恋愛をする2人は、人より色んなものを背負うから、痛く、切なかった。
2人の恋愛もよかったけれど、第二章の美佐子さんと出会ってからの物語が本当に感情移入しすぎて…何度も泣けました。
ああ、一気読み… -
大好きな窪美澄さん
カーテン越しに学生服をきた男の子同士が寄り添って手を握り合っている表紙が切ない
羽田 海(かい)は物心ついた頃から可愛いものが好きで 恋愛対象も男の人だった。周りの目に無頓着で「中身」が漏れだしていた海は中学時代にいじめにあい それからは「空気」のような存在になることを心掛けて生きてきた。
高校一年の夏、継母でシングルマザーの美佐子さんが働いていた会社が倒産したことを機に 小さな町に引越してきた海。転校先の高校で 忍と出会い恋に落ちる。
高校でも「空気」でいようと決めていた海だったけれど、忍に「羽田のことが好きかもしれない」と告白され、二人の高校生活は一変する。
くぅーーーー純粋⟡.· 真っ直ぐ⟡.· 高校生の恋⟡.·
忍の告白が嬉しすぎる反面、優等生の忍が この小さな町で後ろ指さされ 傷つくのは嫌だと言う海。
片や忍は、町議の父を持つ息子として ずっと「優等生」で「良き息子」を演じ 同性が好きだという気持ちを押し殺し続けてきた。けれど海に対する恋心が日に日に募り とうとう勇気を振り絞って告白する。
そんな二人が同性愛者だという噂はあっという間に町中に広まり、卒業したら二人で東京へ出ようと約束する。
海と忍
二人ともいい子( ߹ㅁ߹)
ただ純粋にお互いのことが好きなだけなのに、世間の目や 両親や妹を悲しませたくないって気持ちが壁となって上手くいかない。
東京に出てきた二人。ちょっとしたすれ違いから 海の前から姿を消した忍。海と忍が下した決断とは。
二人の息子を持つ母親である私は、第2話の美佐子目線の話もウルウル( ノД`)
血の繋がりはないことで、いつか海が自分のもとを離れていくんじゃないか…海に偏見を持たずに優しく出来るのは自分が赤の他人だからなんじゃないか…と悩む美佐子。
近くで成長を見守りたい美佐子と、美佐子にこれ以上迷惑をかけたくないと上京する海の 互いに思いやる気持ちがなんとも言えない。
-
BLの再販は出版元がなくなってしまって、人気作家や作品を新たに出してもらうって感じ?
だから甘々な書き下ろしがプラスされてます。
誤字脱字と...BLの再販は出版元がなくなってしまって、人気作家や作品を新たに出してもらうって感じ?
だから甘々な書き下ろしがプラスされてます。
誤字脱字とかも多いから改正されます。
残念ながらどしゃぶりも甘々おまけがありますよ〜
凪良さんや一穂さんはBLのトップだし(๑•∨︎•๑)2024/04/04 -
なるほど!!
その甘々を求めていたのですが…諦らめますorz
凪良さんも一穂さんも今や文芸の世界でもトップレベルですもんね!楽しみだなー♪なるほど!!
その甘々を求めていたのですが…諦らめますorz
凪良さんも一穂さんも今や文芸の世界でもトップレベルですもんね!楽しみだなー♪2024/04/04 -
2024/04/04
-
著者プロフィール
窪美澄の作品





