- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163918082
作品紹介・あらすじ
「まだ人生に、本気になってるんですか?」
この新人、平成の落ちこぼれか、令和の革命家か――。
「クビにならない最低限の仕事をして、毎日定時で上がって、そうですね、皇居ランでもしたいと思ってます」
慶應の意識高いビジコンサークルで、
働き方改革中のキラキラメガベンチャーで、
「正義」に満ちたZ世代シェアハウスで、
クラフトビールが売りのコミュニティ型銭湯で……
”意識の高い”若者たちのなかにいて、ひとり「何もしない」沼田くん。
彼はなぜ、22歳にして窓際族を決め込んでいるのか?
2021年にTwitterに小説の投稿を始めて以降、瞬く間に「タワマン文学」旋風を巻き起こした麻布競馬場。
デビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』のスマッシュヒットを受けて、
麻布競馬場が第2作のテーマに選んだものは「Z世代の生き方」。
新社会人になるころには自分の可能性を知りすぎてしまった令和日本の「賢すぎる」若者たち。
そんな「Z世代のリアル」を、麻布競馬場は驚異の解像度で詳らかに。
20代からは「共感しすぎて悶絶した」の声があがる一方で、
部下への接し方に持ち悩みの尽きない方々からは「最強のZ世代の取扱説明書だ!」とも。
「あまりにリアル! あまりに面白い!」と、熱狂者続出中の問題作。
感想・レビュー・書評
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令和元年の人生ゲーム
**著者**: 麻布競馬場
「人生まだに、本気になってるんですか?」――令和時代の新たな働き方や生き方を描いた本作は、意識高いビジネスマンや若者たちの中で一人だけ「何もしない」選択をする沼田くんの物語です。
慶應のビジネスサークル、キラキラメガベンチャー、Z世代のシェアハウス、コミュニティ型銭湯など、多彩な背景で描かれるキャラクターたちの中で、沼田くんは「クビにならない最低限の仕事をして、毎日定時で上がって、どうやら、皇居ランでもしたいと思ってます」というスタンスを貫きます。彼が選ぶ「何もしない」生き方は、一見すると平成の落ちこぼれのようにも見えますが、実は令和の新しい革命家の姿でもあります。
麻布競馬場のデビュー作『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』に続く本作は、「Z世代の働き方」をテーマに選び、現代の若者たちのリアルを高い解像度で描き出します。その描写は20代から「共感しすぎて悶絶した」との声が上がり、後輩との接し方に悩む人たちからは「最強のZ世代の解説書だ!」と絶賛されています。
読んでいると、ビジネス用語として頻繁に使われる「バリューを出す」「ジョインする」「アジャストする」などの言葉に対する違和感や面白さを感じることができます。これらの言葉が業界特有のものなのか、それとも世代特有のものなのか、どちらにしても、令和時代の働き方や生き方を見つめ直すきっかけとなる一冊です。
- Wikipedia-
Z世代(ゼットせだい)、ジェネレーションZ(英: Generation Z)とは、概ね1990年代後半から2000年代に生まれた世代を指すことが多いが、アメリカ心理学会は1998年生まれ以降を指すなど、定義は厳密に決められているわけではない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平成28年の第1話から令和5年の第4話まで、それぞれ語り手は違うが、一貫して登場するのが「沼田」である。慶応義塾大学の「ビジコン」サークル活動に始まり、一流企業「パーソンズ」や、シェアハウスでの飄々とした働きぶり、退職後の銭湯経営者に対するアドバイスなどが、淡々と描かれる。意識の高い面々が、自尊心を守るため、また認められたいがために、他人を揶揄したり、勢力の強い者についたりする。帯には「Z世代」とあるが、どの世代でも若い時はそうだったのではないか、と思えるような描き方だった。しかし全体的に共感はできなかった。
どんなに冷ややかな目で見られても「仕事はほどほどに」と堂々と言う沼田に、ぜひ一人称で語ってもらいたかった。人々が話す以上に興味深いキャラクターのはず。彼の退職理由もわからず、天敵みたいな「吉原」のその後もはっきりせず、知りたいことがことごとくスルーされた気分。本作の構成自体が行先不明のようで、これが若者の迷いの表れと解釈すれば納得できるかもしれない。 -
新しいタイプ。全4話で、1話進むごとに平成から令和へと時代が進み、毎回、語り手が代わるのだが、沼田だけはフル登場する。
沼田の本音や信念って、どこにあったのだろうと4話通して考えさせられた。大学生の時に出会ったあまり良い関係とは言えない吉原のことが、大きく占めていそうだ。3話にも出てくる保護ネコに、ヨシハラと命名し可愛がるし、4話の銭湯存続のエピソードでも、吉原のことでは?と思う発言が出てくる。
登場人物のほとんどが、所謂、Z世代で構成されているこの物語に、ジェネレーションギャップを感じた。 -
直木賞の発表迄に読了したかったのに間に合わなかった。高学歴で上昇志向をもつZ世代を主人公にした小説。各章のメインがいまいちで、脇役として全章に出てくる沼田との関係性が希薄に感じた。最後、高円寺の小杉湯がモデルの銭湯が出てきて、本家はラーメン風呂とか色々試されていたのでそれが感慨深かった。
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前作的な空気感を期待して読んだが、作者が違うのか?と思うほど、作風が違う。また、現代のお仕事小説的なノリでいつ、盛り上がるのか?と待っているうちに、終わってしまった。正直今作は全く響かず、良さが見つけられなかった。
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Audibleで。
俺の心の中にも沼田がいる。現在36歳の俺の中の何者かになりたかった俺が成仏した気がする。ただ、今を必死に生きてる人を嘲笑う権利など誰にも無いのだ。
ただ、沼田がなぜ最後ああなったのかはもう少し描いて欲しかった。
あと、高円寺の銭湯のモデルである所の近所に住んでいてよく利用していたけど、この話に出てくるような感じとは近いようで違う。軽く風評被害だと思った笑 -
麻布競馬場さんが書く「就活」、そしてその後の人生。
前作のような展開を期待して絶対におもしろいだろうと思って読んだのだけど、文体や作風もがらっと異なるように感じられた。
平成28年、平成31年、令和4年、令和5年、時系列で綴られる四つの連作短篇から成っているのだけれど、語り手(主人公)が毎話ちがうので人生ゲーム要素を感じられなかった。
意識高い大学生集団をシニカルに描いた第一話は良かったのだけど、その後に続くだろうと思われる主題が曖昧なまま終わってしまった。ビジネスシーンのディティールばかりやたら細かく、情景描写や起承転結が圧倒的に物足りなかった……。
沼田、という癖のある男性がキーパーソンらしく共通して姿を現しているのだけど、彼の人物造形もいまいちピンとこず、ただ不気味なだけの印象に終始したのが残念。
令和の時代では、沼田のようにほどよく&要領よく手を抜きながら働くのが正解な働き方ということだろうか。それはきっとその通りなのだろうけれど。