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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784163918129
作品紹介・あらすじ
第170回芥川賞候補作。32歳のピアノ講師・田口琴音は、さいきん仕事も恋人との関係もうまく行っていない。そんな中、ひさびさに連絡をとった友人との再会から、事態は思わぬ方向へ転がっていくーー。静かな日常の中にひそむ「静かな崖っぷち」を描き、心ゆすぶる表題作。そして選考委員の絶賛を浴びた文學界新人賞受賞作「アキちゃん」を併録。
「すべての結果としてこの作品は、新人離れした堂々たる手腕を示すことになった」(川上未映子氏の選評より)
感想・レビュー・書評
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第170回芥川賞候補作。
タイトル「アイスネルワイゼン」は「ツィゴイネルワイゼン」のもじり。本筋に関連あるようなないような微妙なワード。
とても居心地というか座り心地というか読み心地が悪い小説。そういう意味では芥川賞候補作っぽいと言える。
面白く読めました。
主人公が性格悪いんですよ。
でも、読み始めはわからない。いかにも普通の人のふりしている。
だんだん本性が現れて嫌われていく人いるじゃないですか。まさしくそんな人。
主人公の視点で小説を読んでいて最初は感情移入しているから、途中から違和感が急上昇。あれあれあれ…って。
読んでいて、「自分ってそんなに無垢で純粋で正しくないんだー、悪いやつなんだー」と思い知ってショックを受けた若い頃を思い出した笑
併収されている「アキちゃん」も秀逸。
実は〇〇ではないアキちゃん。
感情というものがじぶんのものでありながらじぶんのものでないことをよくわかっていないと、けっこう、やっぱ大変だよね。
♫蝶々(グリーグ)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
32歳の琴音の友だちとのやりとり、元彼⁇とのやりとりに気持ちがついていかない…。
彼女、しんどくないなのかな⁇と思ってしまう。
哀しくて息詰まりそう…と感じてしまう。
「アキちゃん」も最初はよくある小学生同士の揉め事かなって思いながら読み始めたけれど、アキちゃんって実は男子だったの⁉︎と。
アキちゃんがどういう大人になったのか、知りたいなぁ。
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コミュニケーションが上手く取れずに他人とすれ違い続けるピアノ教師のクリスマスの1日が描かれた作品
登場人物がみな自己中心的で歪んでいるため
読んでいるだけで具合が悪くなる
会話文が多くかなりライトに読めるためすぐ読み終えたが終始胸がしんどかった
人間の底意地の悪さみたいなのをうまく描いている -
アイスネルワイゼン
琴音の、苛立ち、揺れ、仮面、悪意、不本意な選択…。上手くいかない日常に潰されそうな、どうしようもない状況。
このどうしようもなさを諦めず超えるには大きな苦しみを伴う。完全に壊れてしまわないように自分を大切にし、時間をかけて超えて欲しい。そして、苦しんでいるからこそ、彼女の弱さや、脆さ、浅はかな行動が、優しさ、強さ、思慮深さにいつか繋がって欲しい。でもやはり、できれば全てをそのまま包み込んでくれる信頼できる人に出会えることを祈る。
アキちゃん
「人を憎むということは、ほとほと疲れ果てることなのだ。 それは火柱を遠くからながめることではなく、自らを燃やして火柱をつくることなのだ。燃料さえも自足しなければならず、そうしなければほんとうに憎しみ抜くことはできない。こんなに邪魔くさく、気の滅入るものはないだろう。憎しみはつねに憎む対象への情熱をためしている。そして習慣的に人を憎んだことのあるひとならわかってもらえると思うが、ほとほと疲れ果てる憎しみを習慣にしだすと、憎しみの根本である怒りや悲しみはもはや怒りや悲しみではなくなってしまう。それは虚無になりさがるのだ。」
身体と心、家の状況、兄のこと、アキちゃんのたくさんを知り、蔑みや見下しも気持ちをコントロールすることである程度をかわしている。そして憎しみを持ちつつ気になって仕方がない。
人と関わりを持つあり方は様々だけど、憎しみに支配されないようにはしたい。 -
静かに嫌味が堆積していく感じ。悪意に気付いてて、でもおバカでピュアで気付かないふりをすることってたまにある。それの積み重ねに耐えられなくなった主人公の話。
二篇とも本ならではのミスリードをされてしまう。ん?ってなった。 -
文學界10月号より
ほぼ、会話形式で進むので、非常に読みやすく、サクサク進む。感想としては登場人物達にほぼ共感できないようで、気づいたら共感してしまっている自分がいた。
終始不穏な空気の中、物語は進み、足場の崩壊寸前な感覚に、ハラハラした。
主人公の幼児性もさることながら、出てくる人達にまともな人は少ない。
でも、文章でみる危うさは、至って普通の日常であることに気づく。
凄く面白かったのは、間違いないが、佳作感は否めない。 -
主人公の暴言が気になった。
自分より、弱者の友達には、相槌をうちながら
優しい言葉をかけながら、
相手の幸せにジェラシーを感じると
チクリと意地悪なことを言ったり。
自分と対立する友達には
敵対モードで、暴言。
自分より上の立場の女性には
へいへいと、したがって、
なんでもかんでも
謝ったりするけれど
心の中で、「ババア」と言って暴言。
読んで、嫌な感じが残ったんだけれど
たぶん、自分達、一人一人にも
おおかれ、少なかれ
対応する人によって
言葉や態度
少し変わってしまうような
本質的な、人間の問題があるのかも。
会話が多く
それが物語をすすめているので
すらすらと、読むことはできました。
哀しみのノクターン
というように
やはり、主人公には
自分でどうしようもない
哀しみが心の中にあるのかも。
その哀しみが、
自分にとって理不尽だと感じたときに
心が爆発して、暴言、嫌味、皮肉
そんなことを
つい、うっかり言ってしまうのだろう。 -
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以下ネタバレ含みますので、注意。
「アイスネルワイゼン」
きれいな響きのタイトルとは裏腹に、足が泥沼に沈んでいくような、ゆっくりした重さがのしかかる。
中盤、琴音が友人の優の家を訪れる場面で。
絵に描いたような美しく幸せな家庭を築いている優たちに羨望するというより。
途中から、そんな理想の家族が〝美しく在りたいがゆえに〟綻びを見せていくように感じた。
夫に対する声の掛け方が荒くなったり。
琴音に対して、妻であり母になることの、先輩風を吹かせてみたり。
そんな夫婦、家族に、琴音は知らず、凍りつかせるような言葉を放つ。
この場面であれば、きっと敬遠されるのは琴音の方だろう。
でも、私はそんな琴音のうまくいかなさが、琴音自身が自覚する歪みが、イヤではなかったりする。
自分の持っている荷物を、ぞんざいに放り投げたくなったり、それでいて、やっぱり手放せず、重さに泣き出したくなったり。
ラストシーンの琴音の姿は、自分に似ている。 -
第170回芥川賞候補作『アイスネルワイゼン』
いろんな話が交差して気持ちが溢れていく描写が上手だった。
文學界新人賞受賞『アキちゃん』
残酷。自らのカルマを清算したという言葉が印象に残った。
良いことをしたら良いことが、悪いことをしたら悪いことが返ってくる。 -
表題作の「アイスネルワイゼン」は、差別的表現かもしれないが、女性の振る舞いの怖さを表現しているように感じた。本音と建前を越える本能的な行動のように思え、そこに人間の業を感じる。私には刺激が強すぎてクラクラした。著者が文學界新人賞を受賞した「アキちゃん」も収録。こちらは、途中からの違和感が最後にすっきりするわけではなく、こちらも救いがない作品だった。悪い意味ではない。記憶に残る作品だった。
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芥川賞候補作の「アイスネルワイゼン」では、諸事情あり会社を退職したピアノ講師・琴音が主人公。生徒、友人、仕事先、それぞれの相手と厭な含みを感じさせる会話のやりとりが巧みだと思った。適当に生きているように見える人も、実は重たいものを一人で抱えながら地獄を歩いているのだろう。ラストは急に安倍公房みたいでちょっと笑ってしまった。
文學界新人賞受賞のデビュー作「アキちゃん」は、小学5年生時のクラスメイト・アキちゃんに対する主人公の恨みつらみが綴られていく。性格の悪いアキちゃんのサンドバッグ的役割を担わされた、転校するまでの暗黒の1年間。叙述トリック要素があってやや驚かされた。
二作とも盛り上がりやカタルシスには欠ける坦々としたストーリーなのであまり言及できるところが無いのだけど、この静かな狂気を感じさせるテイストはとても好みなので今後も新刊がでたら読んでみたい。 -
不思議な世界観に引き込まれるけど、どうしても琴音に感情移入できなかった。どこか他人事みたいで、温度差を感じた。音や空気の描写はきれいだし、言葉のリズムも心地いいけど、自分とはちょっと合わないタイプの物語。
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怖かった…
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アイスネルワイゼンは、芥川賞候補作(第170回)。
こんな嫌な気持ちになる小説は、なかなかないと思うくらい
イライラする小説だった。(それも狙いだろうけど)
セリフと状況説明(表情とか行動とか)だけで
主人公の心情描写がないのが特徴的。
よって説明されず、たぶんこうなのかな?という予想の部分が多い。
アキちゃんも芥川賞候補作(第163回)で、
今まで書籍化されておらず気になっていたので
併録されて、読めたので良かった。
こちらも子供の頃の嫌なことを思い出す小説。
そして驚きもある。 -
「アイスネルワイゼン」
「アキちゃん」
二話収録。
苦手な芥川賞系の作品だが、非常に読みやすかった。
芥川賞候補作となった表題作はかなり強烈。
主人公は32歳のピアノ講師・琴音。
仕事も恋愛も上手く行かず、友人から頼まれたクリスマスイブのバイトでは散々な目に合う。
冒頭から不穏な気配が漂っていたが、途中からは悪意に次ぐ悪意で胸やけがしそうだった。
友人間で繰り広げられる非難の応酬。
辛辣な言葉のラリーに恐怖さえ覚える。
自暴自棄になり、琴音の軋んでいく心が不協和音を奏でているようでザラリとした印象を残す。
最後の場面は切ない。
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