谷から来た女

  • 文藝春秋 (2024年6月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784163918556

作品紹介・あらすじ

アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。
彼女といると、人は自分の「無意識」に気づいてしまう。
自分の気持ちに、傷ついてしまう――。
そして、彼女は去ってゆく。忘れられない言葉を残して。

桜木紫乃の真骨頂、
静かに刺してくる大人の物語。


(収録作)
「谷から来た女」…2021年。大学教授の滝沢は、テレビ局の番組審議会でミワと出会う。大人の恋愛を楽しむ二人だったが…。

「ひとり、そしてひとり」…2004年。アクセサリーショップとセクシーパブで働く千紗は、夜のすすきのでデザイン学校の同期・ミワと再会する。

「誘う花」…1999年。教育通信の記者・譲司は、取材で出会ったミワの弟・トクシがいじめられていることに気づく。

「無事に、行きなさい」…2015年。レストランシェフの倫彦は、ミワとの将来を信じながらも、どこか遠さを感じている。

「谷へゆく女」…1982年。母を亡くした中川時江は、高校卒業と同時に、文通相手の赤城礼良を頼って北海道へ向かう。

「谷で生まれた女」…2023年。北海道テレビプロデューサーの久志木は、ミワのドキュメンタリーを撮影するが…。

感想・レビュー・書評

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  • アイヌの出自を持ち、独自のスタイルで地位を確立したアイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。
    彼女と関わった人との連作短編集。

    静かなのにじわじわと刺してくるようなミワ。
    誰に対しても冷静なのに突き放すわけではない。
    ただ何に対しても真面目であり、芯の強い女性だと感じる。
    近寄りがたくてこわいのに知りたいと思うのである。

    深くて重さを感じる描きかたは、桜木紫乃さんらしく出身地である北海道を舞台にした作品も少なからずある。
    アイヌの歴史や民族のことは、深く知ることもなかったのでもっと知りたくなった。




  • アイヌの血を引く孤高のデザイナー赤城ミワ。
    人嫌いではないのに、どこか人とは一線ひいているような雰囲気。ひけらかす訳ではないけど、溢れ出してしまう才能。唯一無二の存在であるミワという人物の今、昔…色々な時代が描かれている。
    物語は静かに進んでいくのに、奥底に熱い血が流れているような不思議な感覚がした。
    「無事に、生きなさい」はアンソロジーで既読。

    ミワのモデルとなったのは実在のデザイナー貝澤珠美さん。インタビューを拝見すると、ミワより柔らかな雰囲気で自然体の素敵な方。
    アイヌ文化は全然詳しくないけど、単純に作品を見て素敵だなと興味を持った。

  • 残念ながらあまり胸に響いては来なかった、というのが率直な感想です。それぞれの短編で、恵まれない家庭環境や日々の鬱屈を抱えた主人公たちの心持ちはどこか表面的で自己中な感じ。
    アイヌの出自をもつ赤城ミワとの関わりで、主人公たちに変化の兆しが生まれるのだけど、アイヌの伝統や文化を軽く(と感じられる)利用しているような気がして…。

    • しずくさん
      たまたま、図書館から借りている本です。桜木紫乃さんが好きで手にした1冊でしたが・・・
      たまたま、図書館から借りている本です。桜木紫乃さんが好きで手にした1冊でしたが・・・
      2024/10/30
    • koalajさん
      しずくさん、こんにちは♪
      いえいえ、読後の感想は一人ひとり全く違うので、私の個人的感想は気になさらず、お読みになってくださいね〜。
      しずくさん、こんにちは♪
      いえいえ、読後の感想は一人ひとり全く違うので、私の個人的感想は気になさらず、お読みになってくださいね〜。
      2024/10/30
  • 桜木紫乃さんの描写力に唸ってしまう。
    アイヌ出身の赤城ミワについて彼女を知る人たちが語る六つの連作短編。ミワという女性の像が徐々に浮き彫りにされていく。

    谷に生まれ育ったミワは札幌でアイヌ紋様デザイナーになる。"ミワ・ライン"と呼ばれる独特な曲線と鮮やかな赤が彩る物語。桜木紫乃さんの描く「男ですら太刀打ちできない考え方、生き方をする女性」に惚れぼれしながら一気に読んだ。

    「無事に、行きなさい」が良かった。
    ビストロシェフ、倫彦はミワと付き合い始めて二年。その関係に重さを感じるようになり…
    「不意に、目の前にいる人の気持ちがこっちに落ちてくることがあるの」とミワに言われて始まった恋。
    新しい店の白い壁には木のレリーフ。
    「アプンノ パイエ」と名づけた波形の彫刻は、アイヌ民族であるミワからの別れの挨拶と知る。

    「谷で生まれた女」
    護られていると意識して暮らすのは、自分を半分なにかに委ねているということです。最後のミワの言葉が刺さった。

  • アイヌ民族の赤城ミワをめぐる6遍の物語。
    登場人物はミワの立ち居振る舞いやストレートな言葉によって、自分の感情の気づきを得る。
    始めのほうは、民族問題というテーマを扱っている恋愛小説かと思っていたけど(★3)、最後の2遍が特にアイヌ民族を深掘りしているように感じた(★4)。

    責任を取りたくないから当たり障りのない意見が溢れているし、自分はそんなこと全然気にしないよっていう意見も、当事者にとっては慰めでもなんでもなくて、逆にその無関心さに腹が立つ人もいるんだろうなと思った。でも知りたいっていうのもお節介だという。こういうのはアイヌ民族に限らずだけどね。じゃあどう接したらいいんだって向き合うことを放棄する人もいるだろうけど、答えがない難しい問題だからこそ、向き合い続けることがある意味答えなんだと改めて思った。

    という当たり障りのない感想しか書けない自分がいることに気づく。登場人物たちと一緒だ…。

  • 桜木紫乃さん それを愛とは呼ばず - 本好きナースマン(2019/03/07)
    https://kitanoatuo.hatenablog.com/entry/2019/03/07/121956

    作家の読書道 第118回:桜木紫乃さん - 作家の読書道(2011年9月21日)
    https://www.webdoku.jp/rensai/sakka/michi118_sakuragi/

    吉實 恵(@megumi_yoshizane) • Instagram写真と動画
    https://www.instagram.com/megumi_yoshizane/

    吉實 恵 MEGUMI YOSHIZANE Illustration
    https://www.yoshizane.com/

    『谷から来た女』桜木紫乃 | 単行本 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163918556

  • 北海道出身の桜木紫乃さんならではの作品ですね。

    アイヌの血をひくアイヌ紋様デザイナー赤城ミワに関わった人たちの目線で描かれる6編の連作短編集。

    最初の『谷から来た女』では大人の恋愛が描かれており、赤城ミワという才能もあり、頭も良い凛とした女性にとても惹きつけられました。

    アイヌの事は詳しくないですが、アイヌ民族として生まれ生活していくことに誇りを持ちながらも、生きにくさもあった民族であることを感じ取れました。

    赤城ミワの描くアイヌの紋様がとても魅力的に思えて、この目で見てみたいと思いました。モデルとなった女性はいるのかしら?

  • やっぱり大好きです桜木紫乃さん。
    冷たくもとれる言葉の紡ぎ方がたまらない。
    特に強い女の人に痺れます。
    でも、強いって褒め言葉じゃなかったんですね…

  • 初めての作家さん。 
    赤城ミワと言うアイヌ出身の女性をメインに彼女と関わる男女6人の人生の一コマを描いた連作短編集。思想的な事があるかはわからなかった。各章のミワさんが素敵過ぎて一気読み。6話目が大失速の元凶かな。

  • 北海道に暮らしていた時期があり、地名にアイヌ語が多く使われていたことを思い出した。
    ウポポイができる前の、ポロトコタンという施設だった時に訪れたことがあるけど、自然と共存する文化、響きが優しいアイヌ語の子守唄が印象に残っていて、今回の話にもすっと入ることができた。
    静かで深い話。

  • 2024/06/05リクエスト 1

    アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワ。
    ミワが近くにいたら、どうやって付き合っていいかわからなくなると思う。
    冷静沈着、自らのアイヌ民族であることを隠すことなくプライドを持って誇り高く生きる姿はきっと同性から見ても眩しすぎる。
    20-30年後のミワを見てみたい。

  • アイヌの血を引き、新進デザイナーとして活躍する若い女性・赤城ミワを主人公にした連作短編集です。
    主人公の祖父が二風谷ダム訴訟(アイヌ民族の先住性を問う契機となった事件)の原告の一人という設定です。ですからアイヌの問題(私はこの領域に関しては全く無知なので、調べつつ読み進める事になりました)は出て来ますが、それについては極端に偏ることは無く、主人公(モデルになった人が居る)の言葉を介して淡々と重い事実が語られる感じです。むしろ、物語の焦点は凛として生きる主人公や彼女を取り巻く人々の生き様を描くことに重点があるように思います。
    それにしても、どんどん上手くなりますね。読み始め”酔いを片手にひとりにされると、再び面倒な心もちへと転がり落ちそうである。”なんて文章が出て来て「格好良いなぁ」なんて付箋をつければ、たちまち付箋だらけになってしまって断念。
    ただね~、余りに文章が格好良すぎて登場人物の心の動きがすっと入ってこない所が有って、少々閉口しましたが。。。。

  • アイヌ紋様デザイナーの赤城ミワに関わった人たちの目線で描く連作短篇集。6篇の短篇で構成されている。収録作の1篇「無事に、行きなさい」は、アンソロジー『二周目の恋』にも収録されていた。
    6篇はそれぞれ時代設定も異なるため(最初と最後だけが近い)、その年齢に応じたミワの言動が興味深い。1篇だけ、ミワが生まれる前の話も含まれているが、これはこれでよかった。
    アイヌの血を引くことを誇りにするミワを他者の視線から間接的に語らせることで、よりリアルな姿が明らかにされていく巧みな構成に唸った。

  • 6編の連作短編集。
    久しぶりに桜木さん節を楽しめた。
    中でも「ひとり、そしてひとり」が印象的だった。
    それにしても、何とも言えない感じで漂ってくる男の頼りのなさはなんだろう。
    ミワと出会った男はなぜか下を向いているような気がしてくる。
    女である千紗や幸生はそれとは対照的だ。
    そういうとこがなんかツラかった(笑)

  • アイヌ紋様デザイナー・赤城ミワと関わりがあった6人の男と女。彼女の生き方を目の当たりにして自分自身を見つめる彼らの内面を描く6つの連作短編。

    桜木さん独特の温度の低い文章が心地よい。
    アイヌ民族であるミワの誇りと強さが際立つ作品だけど、彼女のセリフが観念的すぎてわかったようなわからないような。いまいち心に刺さらなかったのが残念。

  • 桜木さんの直近作。
    存命の人物をモデルにしてフィクションとして描いた作品だなあというのが正直な印象。配慮があるよなあと。

    出自、民族や差別というとても敏感なところを作品の背景にしているためもあり、若干主人公をカッコよく描きすぎかなあ。もちろん彼女を含め、関わる人々が背負って来た苦渋や困難は手荒に扱っていいものではないことは承知の上で。

    周囲の人々からの侮蔑や孤立を単に『被害者』という立ち位置から描かずに、余計な価値観や思想をばっさりと排除した桜木さんの筆には敬意を持ちつつも、主人公のミワがかっこよすぎなんだよなあ。
    それに比して、彼女に惹かれていく関わった人々の傷の具合についての描写は期待通りの桜木さん。「どうしようもないこと」感満載。善悪を弾じない。

    短編の中で描かれるその「どうしようもなさ」と主人公ミワの振り切れたカッコいい生き様のバランスが今ひとつというのが正直な印象。

    存命の人をモチーフに描いた桜木さんの作品であれば、『緋の河』の方が好み。

    有吉佐和子や遠藤周作、山本周五郎など昭和の文豪の作品を読み続けていると、差別用語や倫理上問題のある表現や行為など満載だけれども、「人間臭さ」や人間の本質的な部分を容赦なく描いていて、答えの出ない複雑で曖昧模糊の有り様に考えを巡らせることができる。
    一方、最近の作品は事の善悪を明快にしすぎ、倫理や多様性への過剰な配慮が時代柄求められ、誰も傷つかない作品、分かりやすい単純さを表に出した作品が多いなという物足りなさを感じている。そんなことも考えた1冊でした。

  • 桜木さん独特のひんやりとしたお話、

  • 1人のアイヌの女性をめぐり時代ごとに人々が翻弄され、成長する物語。
    上手にアイヌの文化が盛り込まれていると感じた。
    登場人物たちが作品と出会った時の感動を読者である私もヒシヒシと感じた。

  • 現代におけるアイヌとは何か、に対する答えが、この中に見え隠れしている。それはアイヌに少しでも関心がない人には見えてこないかもしれない。

    シサムの間に入っていても見かけがアイヌらしくないからと言われる、デザイナーの赤城ミワ。アイヌ紋様をモチーフにしたデザインを手がけて世界に知られるようになるが、伝統的なものを踏まえつつ、自身でデザインをオリジナルにしていく。

    アイヌとして育ち、アイヌの文化をもつミワのバックボーンは、シサムの男にはない。彼らはミワにある種の怖れを抱くが、それは彼らの自信を喪失させるし、自尊心を奪っていく。

    女たちは違う。専門学校で一緒だった千紗、九州から文通相手に会いに北海道へやってくる時江。彼女たちは自分の身ひとつで生きていく。その運命に関わってくるのがミワだ。

    ミワもシサムの間に自分の居場所を見出せない。
    谷に帰っていくミワは、ある一つの答えを見つけ出す。

    守られているのではなく、守るのは自分自身。

    「谷」で生まれ、故郷がダムに沈んでもそこが生まれたところであり、自分が帰るところであり、死ぬ場所だという。
    たとえ水が濁り、腐っていても、そこが自分の最後の場所であることにかわりないと。

  • アイヌ民族の赤城ミワと関係する人々の物語。時系列バラバラに連作短編としてまとめられた1冊。
    時系列を探りながら、赤城ミワはどんな人なのか考えながら読み進めた。
    民族を背負う事の意味も大変さも私には想像しかできないけれど、赤城ミワは誇り高く強い人だと思った。関わる人がみんな弱く見えてしまうほどに…
    「谷へ来る女」で語られた両親の物語が印象的だった。

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著者プロフィール

一九六五年釧路市生まれ。
裁判所職員を経て、二〇〇二年『雪虫』で第82回オール読物新人賞受賞。
著書に『風葬』(文藝春秋)、『氷平原』(文藝春秋)、『凍原』(小学館)、『恋肌』(角川書店)がある。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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