- 本 ・本 (344ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163918808
作品紹介・あらすじ
鬼才ルメートル、最後のミステリー。
意地悪に、ブラックに、酷薄に、
最・悪・の・事・態が加速する!
『その女アレックス』『悲しみのイレーヌ』『死のドレスを花婿に』……
ミステリーランキングを制覇し、フランス最大の文学賞ゴンクール賞も獲得。
鬼才ルメートル、最後のミステリー。
夫を亡くして独りで暮らすマティルド、63歳。殺し屋。戦争中は冷血の闘士として知られ、戦後は凄腕の殺し屋として仕事を請けてきた。だが彼女には認知症が少しずつ忍び寄りつつあった。それに気づいたのは、彼女に殺しを依頼している戦中からの同志アンリ。マティルドの殺しが必要以上に過激になっていたのだ。一方マティルドの中では、かつて抱いていたアンリへの恋心が甦り、暴走は加速してゆく! 最悪の事態が雪ダルマ式にふくれあがる! マティルドを愛していたアンリは、そして事件を追う真面目な刑事ヴァシリエフは、彼女を止められるのか?
アタマからラストまで、ひたすら加速する「最悪と意地悪のスパイラル」。その果てに待つラストのサプライズは、笑ってしまいそうに衝撃的で電撃的で残酷で、まるで私たちの運命のようなのだ。
「多くの読者は気に入った登場人物がひどい目に遭うことに抵抗を感じる。だが現実の人生はどうだろうか。恋人が突然心筋梗塞で命を落としたり、友人が脳卒中で倒れたり、近親者が交通事故に遭ったりと、理不尽なことが次々起こる。なぜ小説家は現実の人生よりも手加減しなければならないのだろうか?」――ピエール・ルメートル
感想・レビュー・書評
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★5 認知症の症状が出始めた凄腕の女殺し屋… 純真無垢な彼女の恐ろしい犯罪小説 #邪悪なる大蛇
■あらすじ
63歳の女殺し屋であるマティルドは、かつては冷酷非道の凄腕であったが認知症の症状が出始めていた。昔ながらの上司アンリから指示を受けながら仕事を続けるも、徐々に捜査の手が及び始める。アンリはマティルドを心配するが、肝心の本人はアンリへかつて抱いていた恋心が蘇ってしまい…
■きっと読みたくなるレビュー
人間だれしも元気で健康的な生活を続けたと思ってる。しかしながら時間というのは残酷で平等、着実に老化や寿命はやってくるんです。社会の裏側で生きていた殺し屋が、認知症を患うとどうなってしまうのでしょうか。
恐ろしくもユーモラスに、全ての読み手に救われない感情を突きつけてくるという… 残虐性の中にも悲しみが果てしなく押し寄せてくる犯罪小説です。いやー凄かった。
本作一番の読みどころは、主人公の女殺し屋マティルドの魅力。そう、表紙でこちらを睨んでいる彼女です。銃をむけないでよ、こわっ
でも彼女は素直にまっすぐな性格で、ワンちゃんを愛する心根の優しいマダムなんです。(絶対に近寄りたくないけど)
しかしそんな彼女は、認知症で既に短期記憶が曖昧になり始めている。殺し屋の仕事なんて、誰がターゲットなのか、凶器は処分したのか、仲間との連絡方法はどうするのかなどなど、理解していないと、殺しの仕事なんてこなせないよね…
何が怖いって、本人は何も問題ないと思っており、女学生のように天真爛漫にロマンスすら期待している。それでも殺気の嗅覚や殺戮のテクニックは超一流で、身体が覚えてるんです。こ、こわい… 物語だから面白く読めるけど、これ現実だったらマジでイヤなんだけど。確かに殺し屋に定年制度なんてないよなぁ。
そんな彼女が恋心を抱くのが、若かりし頃からの仕事仲間のアンリ。彼女に仕事を依頼する立場なんですが管理する側としては心配なはず。それでも彼は紳士的で優しいんすよ~、これがモテる中年ですね。メモしなきゃ ...〆(。_。*)メモメモ
彼女とこのナイスミドルがどう絡んでいくのか、本書一番の痺れポイントですよ!
さて物語が進むにしたがって、それはもうハチャメチャになってきて、どんどん読んじゃうんです。怖くて悲しい、でもこんなにも面白いエンタメがあるのかってくらい。さすがはルメートル先生、読者を楽しませるプロですね。終盤の緊迫感と怒涛の展開もお見事で、読み応えも抜群でした。
■ぜっさん推しポイント
誰しも年齢を重ねていくと、次第に衰えて弱っていく。この頃私も目が見えづらくなり、メガネの度数を変えました。いつまで読書を楽しめるか心配です。みなさん身体は大事にしましょうね。
三つ子の魂百までと言いますが、人間の本質ってのは変わらないし、変えられない。自分の知識や経験、学んできたことっていうのは、体の中に沁みついているものなんですね。一日一日を大切に生きたいと思わせてくれる一冊でした。-
『災厄の子供たち』三部作のスタートになった『天国でまた会おう』が個人的に好みではなく...
まぁ、『その女アレックス』の衝撃の後だったので余...『災厄の子供たち』三部作のスタートになった『天国でまた会おう』が個人的に好みではなく...
まぁ、『その女アレックス』の衝撃の後だったので余計にそう感じたのかも知れませんが(> <。)
なので、積読になっている『監禁面接』を大事に読みたいと思ってます。2024/08/25 -
自分も読まなきゃいけない本でいっぱいなんですよね
監禁面接もよまなきゃ
めいっぱい楽しんでくださいね!自分も読まなきゃいけない本でいっぱいなんですよね
監禁面接もよまなきゃ
めいっぱい楽しんでくださいね!2024/08/25 -
2024/08/25
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続いてもワタクシの第二の故郷おフランスから
フランスが産んだ鬼才ピエール・ルメートルの最後のミステリーと銘打たれた『邪悪なる大蛇』です
「最後の」って言っていますが、実はルメートルが最初に書いたクライムノベルということです
晩年歴史小説に軸足を移したルメートルがファンからもうクライムノベルは書かないの?ってしつこく言われて、そういえばタンスの中にひとつ仕舞ってあったなと思い出し、ちょっと直して出版したという代物
まぁ言わゆるタンス預金ですな(違うわ!)
物語を一言で言い表すなら、(解説にあった通り)「残酷な喜劇」ということになるんでしょうな
初期の認知症を患った凄腕の殺し屋のおばあちゃんが主人公
認知症と凄腕という相容れない状態が混乱を加速させる中、物語は進みます
途中、まだらな記憶の中に巻き込まれた関係ない人たちも殺しまくります
ダメなのよー
「残酷」だめなのよ基本
そこを上回ってくれるぐらいの驚きのストーリーを展開してくれればそっちが勝つんだけど
「残酷」の時点で「喜劇」成立しないのよ
何がおもろいねんって思っちゃうのね
分かりますよ
仕立てとしてはね
そこにおかしみを見出すっていう作りはね
でもダメ「残酷」だけが残っちゃうの
悲しすぎて思わず笑っちゃうって感情は理解できるんだけど苦手なんよね
ならクライムノベルなんて読まなきゃいいんだけどね
悪に憧れる気持ちもちょっとあるのよ-
2024/10/14
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2024/10/14
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2024/10/14
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面白かった〜
まさかこんなラストだなんて。:゚(;´∩`;)゚:。
そして何より、読みやすいのが嬉しい。
海外ミステリーって、初心者の私にはちょっとハードル高めだったりするの。
でもこれは全く問題なし!
ブク友さん達のレビューから、絶対に読みたかった一冊。
もちろん私はピエール・ルメートル作品初読みです。
63歳の殺し屋マティルドは、体重78kgで厚化粧www
そして、認知症…
その症状に気付いたのは、マティルドに殺しを依頼しているアンリ、70歳。
二人は旧知の仲だ。
マティルドの暴走をなんとか止めようとするが…
作中何度も〝太った高齢女性〟の描写が出てくるが、いざ標的が現れると秒でマグナム弾を正確にぶち込む!
それは美しく無駄のない動き。
冴えわたる五感。
こうした動きは身体が覚えているのだろう。
その場面は、若く美しい殺し屋の姿かと錯覚してしまう。
また、マティルドのアンリに対する少女のような恋心が滑稽で悲しい。
愛しいアンリのもとへ業務用バンを走らせるマティルドの頭の中は、走馬灯のように様々な思い出が巡る…
あぁ、それにしてもいったい何人死んだのだろう。
人はこんなにもあっけなく、この世から消えていくのだ。
その直前まで抱いていた希望や何気ない日常は、パタンと終わりを告げる。
制御不能の殺し屋
恐ろしすぎる
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2025/01/18
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2025/01/18
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2025/01/18
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63歳の現役凄腕の殺し屋マティルドに少しずつ認知症の兆しが見え始める。
覚えていないことが増え、殺しも必要以上に過激になっていく。
彼女に殺しを依頼しているアンリは危機感を抱くのだが、マティルドはかつて抱いていたアンリへの恋心が甦り、暴走は加速してゆく。
最初から最後までマティルドから目が離せない。
残酷すぎる殺しも躊躇わずに成し遂げるのは、やはり凄腕だからなのか…
冷酷さと殺しの技術を兼ね備えた彼女に誰も敵わないのか…
刑事すらものともせず、この暴走を止められる者はいるのか…と。
いた…死を恐れていない人間が、死の意味がわからない人間がいた。
ラストの惨劇は衝撃的であり喜劇ですらあった。
言葉を失くすとは…このことかと実感。
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せっかくレビュー見てくれたのにごめんなさいねー
一度、このレビューを閉じて本の表紙を見てください
……
……
……
……、見てくれました?
どーもm(_ _)m
バアさんがいましたよね
彼女の名はマティルド、63歳
それなりの歳ですからシワは仕方ないです
体重もかつての倍になってしまったそうです
それでも若かりし頃の美貌は凄かったそうです
美貌と冷酷で知られるレジスタンスの闘士だったそうです
そんな彼女の殺しの腕前は今も昔も変わらず健在です
マティルド、63歳は今も凄腕の殺し屋なのです
しかも、ただの殺し屋ではないのです
凄腕の…、じゃなかった!
いや、凄腕は凄腕なんだけど…
凄腕の殺し屋でも敵わないものが彼女に迫っているのです
それは、認知症!
マティルド、63歳は凄腕で認知症の殺し屋なのです
ちぃーとボケ始めてる殺し屋なんてめちゃくちゃこぇーよ!
だって、ターゲットを殺すときにマグナム弾をぶちこんじゃうんだよ!
あそこに!
股間に!
あぁー、こぇーこぇー!
マティルド、こぇーこぇー!
どこかの奥様よりこぇーこぇー!
( ゚∀゚)・∵. グハッ!!-
2024/10/11
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ultramanさん
昔は美しい美貌の持ち主だったそうですよ
今は…、今は今です!w
いろいろな63歳がいます!ultramanさん
昔は美しい美貌の持ち主だったそうですよ
今は…、今は今です!w
いろいろな63歳がいます!2024/10/11 -
2024/10/11
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ピエール・ルメートルは「その女アレックス」以来で
どんなスタイルの作家だったか忘れてしまっていたんだけど、まあ〜おもしろかった!
ラストは痛快すぎて、声を出して笑ってしまったほど。
ありゃ、こんなこと書いたら不謹慎で物騒な人間だと思われるかも?
何せ全編通して残虐で残酷。だけど根底にはユーモアが漂っている。
認知症を発症した63歳の女殺し屋という設定が
最初は無茶過ぎない?と思ったけど、
その心配はいらなかった。
前に読んだ本のテーマがバイアスだったのだけど、
今回もまさしくそれと同じ。
老人だから何もわかってない、何も出来やしないだろうという偏見を、鼻で笑うかのごとく危機をかいくぐっていく主人公が
同年代である自分には頼もしく思えた。
最近ほんとにいろんな場面で衰えを感じ、
自分に自信をなくしていたところなので。。
そしてこの作品には
もう1人の隠れた主人公がいる。
このお方にも拍手。
老いることが何?
深刻にならないで
今自分が出来ることをやろうよと言われてるようで
ちょっと勇気をもらえた。
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「僕が死んだあの森」で、筆を折ったと言われていたルメートルが、最後のミステリーとして出版した「邪悪なる大蛇」。ルメートルファンにとっては、涙が出るほどに嬉しいサプライズ!!
「現実の人生では理不尽なことが次々と起こるのに、なぜ小説家は手加減しなければならない?」と言うルメートル。そんな手加減なぞ俺様がするわけがない、とばかりに、この作品はカバーにあるとおり「アタマからラストまで、ひたすら加速する最悪と最速のスパイラル」だ。酸鼻の極みのルメートルミステリーでありながら、彼らしい喜劇性も含まれる。
あー、これで本当にルメートルミステリーとはお別れなのだな。たまらなく寂しい。
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えーっ!読み終わって絶叫してしまった。序文によれば今作は1番始めに書いた作品らしい。それが最後に出すなんて。
主人公は老いた殺し屋のマティルド。ミステリーでもなくマティルドがひたすら殺人を犯すストーリー。読んでて楽しかったが私は、以前のアレックスやイレーヌの様な作品を読みたい。
ピエール・ルメートルの作品





