僕たちの保存

  • 文藝春秋 (2024年9月25日発売)
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  • 本 ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163918983

作品紹介・あらすじ

メモリ16KBの青春がよみがえる。史上最短のロードノベルにして大人の青春小説!

語り手“ゲンさん”「胃袋だけは十年前と同じで老けてないのかな」
年上の友人・武上さん「クラウドってのは、なんなの。なんか、たまに聞くけど」
その引きこもりの甥シンスケ「昭和のオタクは、足だけは丈夫なんです」
人気漫画家の亀谷さん「すごくいい話ですね」

――新幹線、自転車、バス、テスラに乗って、おかしな一行は旅に出る。

震災被害者の形見のMSXパソコンが過去と現在をつなぎ、思いもよらぬ光が未来を照らす。
イーロン・マスクやホリエモンにはならなかった、あのとき無数にいた「僕たち」の物語。

千葉雅也氏推薦!
「何かが残る。残らないものもある。忘れられたものが回帰する。歴史とは、「どのように保存するかの歴史」だとも言えるし、文学もそのメディアのひとつだ。長嶋有の新作は、情報とモノの置き場が劇的に変わっていったこの約半世紀、すなわち「パソコン以後の世界」の本質を、静かに描き出そうとする。」

感想・レビュー・書評

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  • 大人のロードノベル。
    懐かしい、と何度感じただろう。

    ゆったりとした流れのなかで、やんわりと進んで行く…トゲトゲしさがまったく無い、ただただ過去と現在を繋いでいくと言ったらいいのか。

    ちょっとした旅とでもいうのか、いわないのか…

    とにかく移動が車・「そこにある場所」新幹線・「運ばれる思惟」バス・「シーケンシャル」自転車「ゴーイースト車「ぼくたちの保存」といろいろな乗り物を利用して、物を運ぶ=思い出を運ぶのである。

    その思い出にさまざま感情がくっついてくる。
    それもいい味となっていて、自分の過去の記憶も蘇ってきた。



  • 著者の長嶋有さんは同年代だ。
    みゆきやレコードプレーヤーがカバーにプリントされているのでそんな予感がした。

    共感できたのは、[メモリの容量が不足しています]のところかな。なんか、うわってなるよなぁって。無料で使わせていただいているのに。

    目に見えないもの。その実体はどこに存在するのか?
    昔はファクス、今はクラウド、、、?
    便利だから仕組みをわかったふりして利用してますが、何か?

    実体が無いようなものでも保存には限度がある。人の記憶も保存容量が関係しているのかな。最近保存先がなかなか見つからないことが増えてきたかも。

  • アナログ世代にはわかりずらいかも知れない内容だけれど、長嶋有先生の芯は私もやっぱり同じなのかも!と思わずにいられない。

    あらゆる場面での言葉の選び方、感情表現の仕方が丁寧でこちらも丁寧に読み込んでしまう。連作短編集なのかも、という形を取ってはいるけれど全て繋がっていることに意味があり、登場人物たちも笑っちゃうほどイキイキしている。うっかりそこいらへんですれ違ったらわからないけど、彼らの会話を聞いたりしたら十年来の友人を装って声かけてしまいそう。
    専門用語わからないにしても、雰囲気だけはわかったつもりになって相槌打つ自分が見える気がする。笑われそうだけど。
    毎回、新刊のたびにベクトルの向き方が一緒と考えているけれどおこがましいにも程がありますが、楽しみにしていた新刊、またじっくり眺め回してます。

  • 非日常な出来事がいくつもでてくるのに、なぜか淡々とお話は進む。

    新旧織り交ぜたブルボン小林寄りの話も興味深く、テスラまで網羅しているとは、なかなかに勉強になった(笑)

    著者らしい作品、なんだか心が和み、休まったのでした。

  • マガジンハウス系の雑誌のコラムっぽい。オシャレと泥臭さのセンス。距離感も東京っぽいなぁ。
    パソコン黎明期をやった時代。ノスタルジーと一言で片付けるのには生々しく軽い記憶の断片。人とも記憶とも絶妙な距離の取り方が心地よかった。空気感がすごい。

  • 5作から成る短編集。ずっと昔に登場したグッズや社会現象の記述が懐かしかった。最後はテスラ迄出てきて、乗ってみたいと思った。

  • 独特のふわっとした印象のロードノベル。
    さくっと読める感じ。

  • 爽やかな読後感だった、の様に表す事が少し憚られるが…、私がその様に(爽やかだったと)感じるのは、自分が概ね主人公と同世代で、就いた職種こそ違えど時代ごとの同じ様なモノ、コト、に興味を持ち、同好の士と集い、語らい、…という経験を経て来ているからであろう…

    私が「憚られる」と書いたのは、主人公とその周りの人物がいずれも「オタク」的な視点、生きがい、興味の対象、を持っている事が生き生きと描かれているからかもしれない。その生き生きとしたさまに多いに頷かされるのだが、果たしてこの楽しさを自分の身の回りの人(非オタクが多い)にすべからく上手く伝えられるか?、と言うと疑問ですらあったからである。

    ただ、作者が創作した登場人物は全て愛すべき、「オタク」達である。また、同世代ばかりで無く、少し上の世代、はたまた今どきの若者世代までの広く、友好的な反応を楽しめる事も作品としての優しさを感じる。

    …実は装丁を見た時からわくわくしていた。だいたい知っているもの達のコラージュであったので。ただ、1、2枚だけ「オタク」とは場違いなスポーツカーの画像が挿し込まれており、疑問を感じていたのだが…、最終章まで読み終えて納得した。

  • 「みゆき」‼︎
    おお〜

  • ニッチすぎて読んでみて、と他の人にオススメはできないけど、とても好きな本。相変わらず固有名詞がたくさん出てきて、私信を読んでいるような気分になる。私、何を読んでいるんだろうなーとぼんやり見失いそうになりそうなとこに後半ハッとするような展開があって静かに感動したりと、メリハリのある作品。

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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