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Amazon.co.jp ・本 (416ページ) / ISBN・EAN: 9784163919096
作品紹介・あらすじ
ロシアの計算によれば、そう遠くないある日、ウクライナ軍はキエフ政権とともに崩壊する。
戦争は〝世界のリアル〟を暴く試金石で、すでに数々の「真実」を明らかにしている。勝利は確実でも五年以内に決着を迫られるロシア、戦争自体が存在理由となったウクライナ、反露感情と独経済に支配される東欧と例外のハンガリー、対米自立を失った欧州、国家崩壊の先頭を行く英国、フェミニズムが好戦主義を生んだ北欧、知性もモラルも欠いた学歴だけのギャングが外交・軍事を司り、モノでなくドルだけを生産する米国、ロシアの勝利を望む「その他の世界」……
「いま何が起きているのか」、この一冊でわかる!
・ウクライナの敗北はすでに明らかだ
・戦争を命の安い国に肩代わりさせた米国
・ウクライナは「代理母出産」の楽園
・米国は戦争継続でウクライナを犠牲に
・米情報機関は敵国より同盟国を監視
・NATO目的は同盟国の「保護」より「支配」
・北欧ではフェミニズムが好戦主義に
・独ロと日ロの接近こそ米国の悪夢
・ロシアは米国に対して軍事的優位に立っている
・モノではなくドルだけを生産する米国
・対ロ制裁でドル覇権が揺いでいる
・米国に真のエリートはもういない
・米国に保護を頼る国は領土の20%を失う
・日独の直系社会のリーダーは不幸だ
・日米同盟のためにLGBT法を制定した日本
・NATOは崩壊に向かう 日米同盟は?
エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年)で「アラブの春」を、さらにはトランプ勝利、英国EU離脱なども次々に予言。著書に『エマニュエル・トッドの思考地図』(筑摩書房)、『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』『シャルリとは誰か?』『問題は英国ではない、EUなのだ』『老人支配国家 日本の危機』『第三次世界大戦はもう始まっている』『トッド人類史入門』(いずれも文春新書)『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文藝春秋)など。
みんなの感想まとめ
現代の国際情勢を鋭く分析したこの一冊は、特にウクライナ戦争を通じて見えてくる西洋の現状を浮き彫りにしています。著者は、アメリカを中心とした西洋が孤立しつつあること、そしてロシアの戦略的な準備が進んでい...
感想・レビュー・書評
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この著者は常に冷静に世界情勢を分析しており、この本は現代の日本人にとって必読の書だと思う。というのも日本においてウクライナ戦争は、プーチンが狂った独裁者が時代錯誤の侵略行為を行なったものとして扱われており、ロシアは世界中の多くの国が経済封鎖に協力するので、遠からず破滅することになると思われている。
しかし実は世界で孤立しているのは、アメリカ中心のいわゆる西洋であり、その他の世界はロシアを支持する勢力が多数派となっているため、経済制裁は効果をあげていないのだ。そして2023年のイスラエル・ハマス間での戦闘再開によるハザ地区での住民虐殺に対するヨルダン決議案「即時かつ持続的な人道的休戦」に対しアメリカが拒否権を発動したことは、多くの国をロシア側に追いやったのだ。
なにしろこの案に反対したのは、イスラエル、アメリカとトンガやマーシャル諸島、ミクロネシア諸島等14カ国のみで、120カ国は賛成し、日本やイギリス等の西欧諸国45カ国が棄権したのだ。
我々日本人は、見たくないものは見ない、都合の悪いことは話してはいけないという言霊信仰に囚われてしまっている。だから米国の敗北や日本の財政の破綻やロシアとドイツの接近などは信じたくないため、話してはいけないことなのだ。しかし戦前の大本営発表ではないが、不吉なことは話さなけれな実現しないということではないのだ。特に世界情勢は日本人からの発信にだけに頼っていては間違うのだと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
オーディオブックで。ソ連邦の解体後に西洋社会は絶頂を迎えた。しかし敵を無くした国々は、徐々に「金だけ」の社会へと変容していき、格差の拡大や、民主主義理念の形骸化、国内産業の脆弱化と、いわゆる「その他の国々」との相対的な差がなくなっていく。その事態に気づいてない西洋諸国は、今でも自分たちは世界のリーダーで、憧れの対象だ、と思っているが、ウクライナ問題に味方する国が少ないことが、その現状を物語っている。さて、世界はこの先どうなりますかね?「今だけ金だけ自分だけ」の方向に行かないよう祈り、動きたいものです。
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フランスの歴史人口学者、家族人類学者である著者が世界情勢を考察する世界各国で発売されている一冊。
歴史人口学、家族人類学という分野は初めて触れますので、このような考え方で見ると、世界はこう見えるのか、という個人的には衝撃的な内容だったと感じました。それだけに、各国の歴史、家族観、宗教観に加え、民族扮装や革命など大小の出来事を把握していないとなかなか理解できず、難解な印象を受けました。たまたまですが、同著者による『西洋の敗北と日本の選択』を同時進行で読みましたので、こちらを先に読んでからのほうが理解が進むと感じました。
本書は、ウクライナ戦争から考察を始めています。そのなかで、乳児死亡率、自殺率などが減少し、エンジニア人口の拡大などのデータから、現在のロシアは想像以上に安定化していること、ウクライナは歴史的に地域の意識差が大きいことなどから、ロシアの勝利を断言しています。それ以外にもヨーロッパ各国の状況などを考察し、アメリカを含めた西洋の影響力の低下の状況など、マスコミが語るものとは違う世界を見た気がしました。
現在のイランの状況を見るにつけ、著者が指摘した内容が真実味を帯びてきます。さまざまな視点を持つことの重要性を改めて感じました。
<目次>
序章 戦争に関する10の驚き
第1章 ロシアの安定
第2章 ウクライナの謎
第3章 東欧におけるポストモダンのロシア嫌い
第4章 「西洋」とは何か?
第5章 自殺幇助による欧州の死
第6章 「国家ゼロ」に突き進む英国ー亡びよ、ブリタニア!
第7章 北欧ーフェミニズムから好戦主義へ
第8章 米国の本質ー寡頭制とニヒリズム
第9章 ガス抜きをして米国経済の虚飾を正す
第10章 ワシントンのギャングたち
第11章 「その他の世界」がロシアを選んだ理由
終章 米国は「ウクライナの罠」にいかに嵌ったかー一九九〇年ー二〇二二年
追記 米国のニヒリズムーガザという証拠 -
西洋の敗北 日本と世界に何が起きるのか
著:エマニュエル・トッド
訳:大野 舞
出版社:文藝春秋
読み終わって、まず、感じたことは、日本とは、いまだ、GHQの支配下にあるという錯覚だ。
意図しない戦争に協力させられ、そのために、米軍が国内に長期駐留している。
だが、それは、ドイツも同じだ。
東の体制が崩壊した後も、日独伊は、いまだ、友好同盟国ではなく、米国の支配下にある植民地であるという幻想だ。
本書のいう西洋とは、米国とその同盟国をいう。
狭義の西洋は、米英仏、市民革命を経験した国々。これがコアだ。
そして、本書の西洋である、広義の西洋は、米英仏日独伊、米軍事同盟である
露は、ウクライナがNATO化するのを容認しないと警告していたにもかかわらず、米は、NATO化を促した。
首都モスクワから、600Kmたらずにあるウクライナは、軍事的緩衝地帯であり、黒海への航路の確保を含め地政学的要所にあたる。このため、中立は許容しても、NATO化は容認できなかった。
トッド氏は、驚愕したのは、こうした背景にもかかわらず、ウクライナ戦が始まったことだ。そしてそれは、露と米の代理戦争であることだ。
傲慢で身勝手な西洋は、BRICS からは、距離を置かれ、反ロシア連合は破綻した。
自らが優秀で文化的に高いとかんがえているのは、もはや、西洋のみであり、世界は嫌悪しているのだ。
本書では、西洋以外の地域を、「その他の地域」といっている。BRICSはその中心である。
露を経済封鎖で短期的に戦争を収拾しようとした西洋は、BRICSには賛同を貰えず、露のエネルギ資源は西欧市場とば別の市場を確保した。一方、露の天然ガスに依存していた西欧は、供給源を断たれて、米国の経済的支配をつよくうけるようになった。
露としては、祖国を守るための重要な戦争であるに対し、米は、他国の戦争であり、その利益はわずかなものであった。しかし、戦争が長期化するにつれ、米への経済への影響がでてきた。ウクライナは米にとって負担となっているのである。
トッド氏は、こうした要件から、ウクライナ戦は、露の勝利に終わると予測する。これが「西洋の敗北」である
さらに、トッド氏は、彼我を分析する
米露の比較 安定している露に対し、疲弊している米の対立の構図が浮かび上がっていく
新生児の死亡率、技術教育 などのパラメタは露が高く、農産物や、工業品の生産についても自給率は低い米の産業は、外部から依存した状況に陥っている。
さらに、かつて多様性を認めていた米は、いまや、ポピュリズムと、エリート主義におかされ、異なる考えを容認できないほどに、寛容性を失っている。このことが、他国の紛争に関与し間接支配しようとする、覇権主義を生み出している
また、プロタンティズムは、これまで、教育と経済の発展を促してきたが、民主主義の変容とともに失われてきた。西洋は同時に、三派によってなされてきた、脱キリスト教の最後の洗礼を受けている。
プロタンティズムは、「人間は平等でない」との弊害を内包しており、米では、白人と黒人+インディアンなどの差別を容認してきた
ウクライナについても、辛辣な分析は続く。
破綻国家であり多元国家であり、もともと国家として必要とした中流階級の存在はなかった。
そして、ウクライナで民主主義が機能することはなかったと断言している。
東部、南部:親露、ロシア語圏、中核は、露へ移転していってしまっている。「アノミー的ウクライナ」
中央部:キーウを中心とした、「無秩序なウクライナ」
西部:農民のウクライナ、カトリック、核家族でナショナリズムの中心地
元来、露は、東部、南部を制圧して、戦争を終わらせようとしていたが、ウクライナの反撃により長期化をよぎなくされている
中央部と西部のウクライナの主要部分を特長づけているのは、「ロシア嫌い」である。露はそのことをみあやまっていた。
他、東欧諸国に関する分析などが、続く。
目次
日本の読者へ 日本と「西洋」
序 章 戦争に関する10の驚き
第1章 ロシアの安定
第2章 ウクライナの謎
第3章 東欧におけるポストモダンのロシア嫌い
第4章 「西洋」とは何か?
第5章 自殺幇助による欧州の死
第6章 「国家ゼロ」に突き進む英国―亡びよ、ブリタニア!
第7章 北欧―フェミニズムから好戦主義へ
第8章 米国の本質―寡頭制とニヒリズム
第9章 ガス抜きをして米国経済の虚飾を正す
第10章 ワシントンのギャングたち
第11章 「その他の世界」がロシアを選んだ理由
第12章 米国は「ウクライナの罠」にいかに嵌ったか―一九九〇年‐二〇二二年
追 記 米国のニヒリズム―ガザという証拠
日本語版へのあとがき 和平は可能でも戦争がすぐには終わらない理由
ISBN:9784163919096
判型:4-6
ページ数:416ページ
定価:2600円(本体)
2024年11月10日第1刷発行
2025年03月20日第8刷発行 -
『西洋の敗北』を読み終えました。長かった…そして本当に難しかった…。ページによっては、見開き1つ読むのに5〜10分かかることもあって、読み終えた時には「やっと…!」という気持ちが正直なところです。自分の知識では追いつかない部分も多く、理解できたのは全体の3分の1くらいかもしれません。
それでも、読み進める中で「世界の見え方が少し変わる」瞬間が何度かありました。特に印象に残ったのは、欧米が迷走している間にロシアが着々と準備を進めていたという指摘。2022年の侵攻直後、SWIFTから締め出されたニュースを見て「すぐ終わるのでは」と思っていた当時の自分を思い出しました。でも本書では、2014年のクリミア以降、ロシアはいつSWIFTが使えなくなってもいいように備えていたと書かれていて、なるほど…と驚かされました。
さらに、「アメリカが中東で迷走している間にロシアが復活した」「ウクライナでの目的が達成されれば、アメリカにとって最大の懸案である独ロの和解が起きてしまう」という指摘も強烈で、読みながら何度も立ち止まる場面がありました。
もちろん、一人の学者の見方として距離を置きつつ読んだのですが、“西洋はすでに負けている”というタイトルの重さがじわじわ効いてきます。理解が追いつかない部分も多かったけれど、今の世界をどう捉えるか考えるきっかけには十分な一冊でした。 -
こういう見方があるのか、と興味深く感じる点が多数。宗教、特に西洋ではプロテスタントの崩壊が、社会と国家を変えていると。教育の進歩が教育にとって好ましい価値観の消滅を引き起こしたという矛盾、という見方にも驚く。日本では宗教による変化、というのは違うとしても、人々が共通の考え方を持てなくなった、というのは同じだと感じた。
昨年6月に読み終えていたが、書き留めたメモが消えてしまい、あらためて図書館の予約を半年待って再読。
西洋の敗北、宗教面、教育面、産業面、道徳面において西洋は崩壊。日本は近代的な西洋に属していて、同じく危機に直面している、と日本版発行にあたって著者が述べている。
2023年夏に発表され、日本語版の発売は2024年7月。ロシアによるウクライナ侵攻は2022年2月、その時のアメリカ大統領は民主党のバイデン。2026年1月現在、まだ戦争は続いている。トランプ2期目は、2025年1月から4年間。「大統領になったら一日で戦争を終わらせる」と豪語していたトランプは、それはジョークだったと言い訳している。 -
普段ニュース等で聴いているのと違う視点で、戦争に対する見え方が少し変わった。
コメディアンが大統領になるウクライナの状況に納得。 -
ロシアのウクライナ進攻が始まって随分経つ。ヨーロッパもアメリカも内的崩壊が進んでいる。
そのような中で、女性総理率いる日本はどのように舵を切っていくべきなのか。深く考えさせられた。
似たような主題の本が多い中で、信頼できる内容だと感じた。 -
序章だけでも示唆に富む。トランプ再選前の書だが、世界の情勢に遅れをとっている私には、特にウクライナ戦争の始まりと背景、各国の対応の解説について大変理解しやすく、しかも面白く読めた。帯にあるアメリカと欧州が自滅した、の意味が知りたい方は必読。
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オーディブルだったので、基本的にはながら聞き。しかし内容量が多いので文字では挫折していたかも。
2024年11月発行で作家はフランスの人類学者。人口統計と家族累計型から、人類のあり様を思考している。
ロシア×ウクライナ戦争は、当初はロシアの戦車はボロだとか西側はウクライナの味方だとかでやたらと勢いが良かったが、なかなか収まらない。そもそもこの戦争は避けられなかったのか。妥協点は見いだせなかったのだろうか。ロシアにしろウクライナにしろ戦争を始めた人たちに命の危険はなくて、市井の人々、特に子供たちが犠牲になっている。自分が聞いていた情報がどこか違っていた…というより事象はそんなに単純ではないということがわかった。
トッドさんいわく日本は「直系家族型」で、子供のうち1人が親元に残り、親は子に対して権威的で、兄弟は不平等。子どもの教育に熱心で、女性の地位は比較的高い。秩序と安定を好み、政権交代が少ない。自民族中心主義。そうね~。その通り。世間が狭い私は、世の中はそんなものだろうと思っていたが、隣接する2国は違ってた。中国、ロシアは「外婚制共同体家族型」で、息子はすべて親元に残り、大家族をつくる。親は子に対して権威的で兄弟は平等。中国やロシアはこの型で共産主義と親和性が高い。というか、そのまんまじゃない。
トッドさんの思考は多岐にわたり、なかなか追いついけてないけど、世界情勢は単純に考えないほうがいいと思った。「直系家族型」日本人の私はすぐに親分の言いなりで楽をしたがるが、多面的に情報を入れて自分で考えるようにしよう。 -
人に宗教の地盤が無くなると国が瓦解していくという論理は日本人にはわかりにくいが、わからなくもない。
ロシアへの経済制裁が欧米を追い詰めていることは理解できるが、ウクライナが親ロシア圏を手放さない限り、この戦争は終わらないとも思える結びは如何なものか。
ただ、ではどんな手があるのかと問われると答えのない、自分が悲しい。
いろいろと考えさせる本であった。
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西洋とは自由主義の国民国家。つまり欧米のこと。コロナを経て、ロシアとウクライナの戦争が膠着しつつある2024年7月に書かれた本。
文藝春秋はこの本を売るために「日本と世界に何が起きるのか」という副題をつけているが、そのようなことは何も論じられていない。むしろ、「アメリカや西欧の社会はなぜ壊れつつあるのか」といった副題のほうが正確。
ロシアは実は社会としては安定しているという分析から始まり、東欧、ドイツ、北欧、英国、米国の社会がいかにして分断、弱体化していき、ロシアとウクライナの戦争が起こるべくして起きた、という悲観的な分析がなされる。そして、西欧と米国の衰退は、キリスト教的価値感消失とシンクロしていると論ずる。
約100年前にマックスウェーバーは、プロテスタンティズムの労働を神から与えられた「天職」と捉える精神が、資本主義社会の進展を支えたと論じたが、本書は、現在その真逆の動きである「宗教ゼロ状態」が進行していると主張している。
ここでいう宗教とは一神教のこと。もとから「特定宗教依存ゼロ」「八百万のカミを満遍なく許容」している日本にはそもそも関係ない議論であるともいえる。
ロシア=悪、というステレオタイプの議論は全く異なる視点が興味深いので、彼の主張を記録する。(以下長文)
【プーチン体制のロシア】
乳児死亡率は減少し、農業生産額が増加し、経済の復興がなされ、社会は安定しているという。広大な国土に対して人口は減少傾向。著者は、ロシアには領土拡張の意図は無いと分析している。
【ウクライナ】
ソ連時代から東部はロシア語話者が多く、ウクライナ語圏は西部地域となっており、この分断は21世紀になっても解消することはなかった。しかし2014年以降、西部と中央部を核としてナショナリズムが勃興。東部のロシア語話者つが国外に移動していったという。著者の認識は、ドンパスとクリミアは「ロシア語圏」ではなく「ロシア」であるというもの。
もはやウクライナは単独国家としては存続しえず、現在の「戦時下のウクライナ」は、税収に基づく国家財政運営がなされているのではなく、西洋国家のドルとユーロの資金援助により動き続ける軍事装置であるとしている。
【「西洋」の定義】
広義ではイギリス、アメリカ、フランス、イタリア、ドイツ、日本。狭義ではイギリス、フランス、アメリカ。日独伊はナチズム、ファシズム、軍国主義を経て「今は変わった」とされているという。「西洋」を生み出したのはプロテスタンディズム。
プロテスタンティズムの二面性は、教育と経済の発展と良い面がある一方、人間は不平等という考え方があることが悪い側面。つまり、我こそは神に選ばれし者という自己認識の人を出現させたこと。これらの社会では、もともとキリスト教が社会の基盤を構成しているが、宗教が崩壊するかわりに政治イデオロギーの形をとった集団信仰が勃興。
著者は宗教価値観の社会への浸透度合いを、活動的状態、ゾンビ状態、ゼロ状態に分類し、同性婚の法制度化がなされた時点をもって国家の宗教価値観が「ゼロ」となった時点であるとしている。
【ドイツ】東欧国家を取り込み再組織化。東欧諸国は「ロシアの思想的・政治的衛星国」から「ドイツの経済的・人口的衛星国」へと移行。2012年のノルドストリームパイプラインの開通により、ドイツはアメリカの軍事的保護に頼りながらも、エネルギー面ではロシアと密接なパートナーシップを開始。つまり、ロシアとの関係においては、ドイツはエネルギー面かつ経済面での自国の利益を放棄。一方で、ウクライナ戦争においては米国に追従。ドイツの指導者たちは、ウクライナとの連帯が免罪符となるという行動か。ドイツの矛盾した行動を、著者は「自殺幇助による欧州の死」と表現。
【英国】著者の観察では、イギリスは「国家ゼロ」状態に向かって突き進んでいる。
最近の大きなイベントであるEU離脱は、イギリス国民の内部崩壊から生じた。EU 離脱にはイングランドとスコットランドの分離問題も関係する。
UKすなわちUnited Kingdomは1707年のイングランドとスコットランドの合同によって誕生。UK/イギリス国民誕生は、プロテスタンティズムという共通のアイデンティティに基づく。
現在のイギリスの政界は急速に最上位レベルで有色人種化が進む。かつてはイギリスは白人のプロテスタントの国だったが、もはやそうではない。
イギリスは500万人以上の大都市はロンドンのみ。ロンドン首都圏には全人口の16%が居住。脱工業化が進み、金融業がGDPの8%を占める。米国に対して貿易赤字を抱える。
17世紀にプロテスタンティズムが浸透。識字が進んだ。プロテスタンティズムの労働倫理は労働と貯蓄を重んじるもので消費社会とは対極。19世紀には、イングランド南部とロンドンではイギリス国教会が支配的となる一方、イングランド北部やウェールズではメソジストなど非国教徒のプロテスタントが主流に。
20世紀初頭に、この2つのプロテスタントが共に崩壊。プロテスタンティズムに替わってナショナリズムが台頭。著者はこの状態を「プロテスタンティズム・ゾンビ」社会と定義。亡霊のようなプロテスタンティズムが戦時下の国家団結の基礎となったとする。戦後、1960年代以降、火葬率の高まり、同性婚の合法化とともに、キリスト教的な価値観が衰退していく。
ブリグジットの議論が本格化した2014年は、宗教ゼロ状態の出現と時期が同じ。EU離脱を支持した「中等教育までしか受けていない層」と、残留を志向した高等教育を受けた層の間の断絶が顕在。
プロテスタンティズムの国として、かつては宗教と国家が緊密に結びついていたが、宗教が衰退したことが「国家・ゼロ状態」となっている。
【北欧】
ウクライナ戦争以降、ヨーロッパ北部のプロテスタント地域に、好戦的な政治勢力が出現。フィンランドとスウェーデンがNATO加盟要請。
デンマークとノルウェーは以前からNATOに加盟済み。デンマークは米NSAの盗聴拠点として、NSAによるメルケルの盗聴にも関与。
スカンジナビア社会でプロテスタンティズムが消滅していくことで、国民が帰属先を求めている。
フィンランドとスウェーデンがNATO加盟要請に至った原因は、ロシアから守られたい、からではなく、どこかに帰属したい、からなのだ。
【米国】
米国は東西を大海に囲まれ、南北の国境は大国ではないカナダとメキシコと接しているという点で、地政学的には「離島」だが、世界経済への依存度は高い。しかし、アメリカ社会は内部において衰退が進行している。
プロテスタンティズムが崩壊したことにより、アメリカ社会の価値観がネガティブなものに変化。
白人中年男性の死亡率が上昇。その死因は、アル中、自殺、オピオイドのOD。また、アメリカは先進国で唯一、平均寿命が低下している国であり、乳児死亡率はロシアよりも高い。対GDPに占める医療費が他国よりも高いが、その医療費の一部はオピオイドによる社会の破壊に費やされている。
WW2のあとにルーズベルト政権がとったニューディール政策は、富裕層に増税し、組合を制度化したという意味で左派的だった。アイゼンハワー政権下では、退役軍人に高等教育をうける機会を与える政策がとられる。この時期の米国は、内政的には宗教的な盛り上がりが最高調に達し、外交的には共産主義との対決が鮮明に。当時の負の側面としては①南米諸国が実質的に米国の属国であったこと、②黒人に対する人種差別が制度として残っていたこと。
つまり、アメリカの自由民主主義では、インディアンと黒人を劣等人種として不平等に扱うことを固定化していた。プロテスタンティズムは人の不平等を制度化するメカニズムを有しており、黒人問題は宗教的な側面を内包している。
時を経て米国においてもプロテスタンティズム及び宗教全般が衰退が進行中。著者は、出生率の低下、ホモセクシャリティを容認する人の増加、同性婚を容認する人の増加に結びつけている。キリスト教、ユダヤ教、イスラム教はいずれもホモセクシャリティを非難し、同性婚を無効とする。したがって同性婚が法制度として成立する時が「宗教ゼロ」の状態であり、米国においては2015年がその年である。さらに現在は一歩すすんで現在のトランスジェンダーや性自認に関する議論は、本来は変更することが出来ない生物学/遺伝学的な性別を変更可能とする。これは、「虚偽を肯定、崇拝」するニヒリズムであるとする。
プロテスタンティズムの衰退は、結果として黒人の解放ももたらしてきた。しかし黒人への不平等は、白人間の平等を機能させてきたが、黒人の解放はアメリカの民主主義の混乱をもたらした。
労働者階級消滅に伴い中流階級は衰退。銃乱射事件は激増中。肥満疾患をもつ国民の割合は他国対比で群を抜いて増大。
戦後の高等教育の大衆化は、それまでWASPのみがアクセス可能だった高等教育をSATの成績次第で誰でも(特にユダヤ人)に解放した。しかし結局、このメリトクラシーは衰退し、現在では最富裕層のみによる寡頭制の不平等社会となっているとする。
アメリカの経済的な強さは、情報技術の進歩と豊富なエネルギー生産能力があることに裏打ちされているが、製造業は衰退。工作機械はもはや自国では生産できず、エンジニアになる大学卒業者の割合は激減。科学と技術分野においては、他国から労働者を大量に輸入しないと成立しえない。
【西洋圏ではない、その他の国々】
ウクライナに侵攻したロシアを非難している国はアメリカの同盟国か軍事的保護国。これら西洋圏は世界人口では12%に過ぎない。非難していない国には、ブラジル、インド、中国、南アフリカ、サウジ、トルコ、アルゼンチン、イランが含まれる。
現代の経済対立を、西洋vsその他、と捉えると多くの国はロシアに対して「2度目の脱植民地化」を期待しているといえる。
消費社会のグローバル化により、現代の西洋社会のプロレタリアートは、新興国の低賃金労働者に依存することで生活水準を維持している。西洋先進国は、いわば社会全体がバングラデッシュの児童労働を利用している。
ウクライナ戦争の本質は、ロシアvs米国(と同盟国)の戦いであり、グローバル化の第一段階が低コスト国への生産移転だったとすると、第二段階は低コスト国に戦争を肩代わりさせているといえる。
これら「その他の社会」が父系制の家族構造を維持しているが、アメリカは性別を否定するニヒリズム社会となっている。しかし、米国の「虚偽を肯定する価値観」は、重要な政策ですら一夜にして変わりうることを示唆する。日本はアメリカに追随するためにLGBT法案を通しているが、中国との有事の際にアメリカが軍事保護を行わない可能性さえある。
【冷戦後のアメリカ】
著者はソ連崩壊後のアメリカの行動を4局面に分けている。
第一段階はソ連崩壊後数年間、平和が続くという見方から軍事費を削減。ロシアを見下していた。
第二段階は2008年まで。アメリカは世界の支配者を目指して軍事費は増大するも、イラクとアフガニスタンでの軍事行動は失敗に。一方ロシアでは、1999年にプーチンが政権を握りロシアの再興に着手。同年チェチェン人によるモスクワでのテロ発生を制圧するも、チェチェンに自治を認めることでロシア社会への取り込みに成功。チェチェン連隊はウクライナ戦争でロシア軍で主要な役割を果たすまでになる。
第三段階は、オバマ政権下での軍事退却の時期。
アメリカが中東から撤退することができるようになったのは、天然ガス生産量が増大し、エネルギーの自立を確立したため。東日本大震災によりドイツは脱原発を宣言し、2012にはロシアとの間にノルドストリームが開通。ロシアは2008年にはジョージアの南オセチア共和国紛争に介入し同国を収奪。2014年にはウクライナのクリミアに侵攻。2015年にはシリアに介入するがいずれもアメリカは動かず。
そして現在の第四段階は、「現実逃避」のフェーズ。一貫性をもたない外交政策の第一期トランプ政権を経て2020年にバイデン政権がスタート。アメリカはアフガニスタンからは2021年に撤退するが、ウクライナではナショナリズムが勃興。警戒を強めたプーチンがついにウクライナに攻撃開始。アメリカの指導者たちが合理的に行動しないことは、今後のアメリカの方向性を不確実にしている。著者はアメリカが指針を失っていることを「宗教ゼロ状態」と形容。
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ロシア、米国、ヨーロッパの状態をウクライナ戦争を元に解説する。ちょっと難しいところもあるが、ロシアは経済制裁を受けても見た目ほど悪い状態ではなく、準備をしっかりした上での軍事侵攻だったようだ。そして、ヨーロッパは米国の属国かのように落ちぶれ、すでに西洋は支配的な立場ではないらしい。実感はないが、著者の説明で納得するところも多い。そして、西洋が敗北した後には中国や中東の姿が見えそうだ。本書を読んで、ロシアの見方が変わった。米国の危うさも分かった。ヨーロッパは他人事にできるのならしたいくらい心配だ。
宗教において、「活動的」段階から「ゾンビ」段階に、そして「ゼロ」段階になるとの分析が頭に残った。活動的段階はミサに行って心から宗教を信じる段階、ゾンビ段階は形式的に宗教儀式をする段階、ゼロ段階は宗教に関係ない生活を送る段階と言ってよいだろう。そして「無」を崇める「ニヒリズム」となることで、国は自滅していく。日本は宗教が全面には出ないが、国民はニヒリズムの感情を持っている人が多いように感じた。これはかなり危険な兆候であり、日本の政治を「なんかつまんないことやってんなー」としか思わないような、先は暗闇しか見えないようなものだ。 -
西洋の敗北とは、権威主義国家など他世界に対する敗北ではなく、民主主義国家自体が内部崩壊していくこと示し、すでに西洋は民主主義でも国民国家ですらも無くなってしまっているとの激しい主張。宗教ゼロの状態がエスタブリッシュメントのモラルや道徳を無くし、そこからさらに進んで現実を否定して暴力的な衝動を持つニヒリズムの傾向を見出す。ちなみに生物学的に染色体で雄雌は決まるのだからトランスジェンダーを認めることはニヒリズム的ということになるらしい。アメリカのパワーバランスによって安全保障を成り立たせている国は非常に多いはずであって、筆者が言うように本当にアメリカ自体が経済的にも軍事的にも衰退しているとすれば、日本にとっても死活問題となる。本書の中心はウクライナ戦争にあるが、ウクライナ自体すでに崩壊した国(代理母が産業になるなど恐ろしい現実を知らされた)とされ、ロシア系住民の排斥から、クリミア含め南部地域を保護するロシアの立場に理解を示す論調となる(黒海へのアクセスなど軍事的な意図は当然ながら) この場合、ナチスがドイツ系住民を保護する名目でズデーテン地方に武力侵攻したことへの正当性も認めねばなるまい。主権を尊重するロシアも自己矛盾を抱えているわけで、当然ウクライナを主権国家とはみなしておらず、アメリカに従属する日本もEUも主権国家とはいえない→が無限に広げられることになる。 そもそも安定した先進的な社会には都市間ネットワークを繋げる教育の行き届いた中流階級の充実が必要で、ウクライナではそれを担っていたロシア系住民などがすでに離脱した状況で、国力を上げることは不可能との指摘。これはもっともなことで、世界帝国スペインが没落していった理由もここにある(カトリックに固執しすぎてユダヤ/イスラムの重要な人材を喪失した) そしてロシアへの経済制裁にはロシアの富豪個人の資産も含まれ、これは一部の富豪が国を牛耳る中進国・途上国すべての多くの国に西洋への不信を抱かせることになる。そしてソ連崩壊で地獄の有様だったロシアを安定させ成長させたプーチンは今でも国民に支持されている。そもそも、より深層にある重要なポイントは、アメリカが最も嫌がるのはロシアとドイツの接近だとここでは想定されている。そのためアメリカとその前哨国家ノルウェーがノルド・ストリーム破壊を工作し、ドイツをロシアと引き離すためにウクライナ戦争が仕掛けられた、という大局的なシナリオである。
平均寿命や新生児の死亡率、犯罪発生率を統計で見るとロシアの安定が確かに見えてくる。戦争を限定的にし、動員を極力少なくするためロシアは最小限の軍隊編成とした。今は北朝鮮から兵士を買っている由々しき状態だ。戦争の当事者となってさすがに平均寿命などもこれから減ってしまうのか。確かにミンスク合意以来ロシアが準備してきたこととアメリカに同調しない国が多くあって経済制裁は効果を発揮できていない。ガザも含めていつまで非道な戦闘を続けていくのか。
ところで家族形態をベースに社会や国家のあり方を提示する手法は非常に刺激的で面白いが、地政学の基本となる地理的要素も含めないと全て説明するのは難しく思われる。そもそも宗教ゼロの状態に近づくから出生率が下がるというのはおかしい、「産めよ増やせよ」を実践しようとする人は古今東西いないだろう。宗教ゼロの状態、とくにプロテスタンティズムの終了が学力と道徳を低下させ、今アメリカの中枢部は多様化されていて賞賛されるべきどころかむしろブロッブ化されていて国としての方向性が無い状態だという。WASP統治時代がとくに優れていたとは思わないが(統治者が道徳的に優れていた時代などあるのか?五賢帝とか?)高学歴者はみな高所得が期待できる金融や弁護士に頭脳移転し、軍事産業を支えるエンジニアや工業が疎かにされているのはアメリカもイギリスも共通している。まさにドルしか生産していない(実質何も作っていない)虚構の国になりつつある。そしてアメリカは同盟国を守らないことが明らかになりつつある中で、台湾有事や韓国・日本はどうなってしまうのか… -
西洋の敗北っていうタイトルが気になって読んだ。
まず第一に情報量がマジで多い。十分に噛み砕けなかった。
正直どこまてが、正しくてどこまでが自論要素が高いのか判断できない。トッドさんが博識すぎて言葉が多すぎるというのもあるが、自身がアメリカとかヨーロッパやロシアについてどれだけ考えてなかったかが分かる。
こういう視点があるのだなと感じた。
自分が見えていた目線とは全然違った。
色んな視点で捉えなければならない
<エッセンスメモ>
- アメリカ、西洋は、空洞化してきている
- 資本だけが膨張し、産業がなくなってきている。
- 富裕層に富が集中していく現代
- WASPエリートの存在は消え、アジア系インド系が台頭している。政治はカオスに近づいている
- ウクライナ戦争で顕になった。西洋のカリスマのなさ。
- ブレグジットは、EUの拒絶というより自国民の消滅の副反応
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名作。思考軸の設定が独自だと思う。
単純化しすぎるきらいがあるがそれでも画一的なもの見方に一石を投じる。
日本向けアレンジがあるのでそこは注意 -
今までの常識がひっくり返される様な書籍ですね。米国を中心とする英語圏で本書が訳されていないのは、親ロシア派とも取れるトッド氏への嫌悪感もあるかもしれませんが、不都合な真実をある程度含んでいるからと考えるのが妥当かと思います。
エンジニアの数や出生児死亡率から国力を測るという人類学者らしいアプローチは納得感がありますし、米国の国力がGDPの規模が表すほどは強国ではないというのはその通りかもしれません。それに加えてトランプ氏の混迷と欧州のパワーダウンが明らかであり、西洋の敗北とは歴史的にも象徴的なタイトルですね。だからこそ本書は売れてるだと思いますが。分かりにくい部分は多々ありますが、本書で触れている論点と主張は大変興味深いです。 -
ウクライナ戦争の驚き
1.ヨーロッパで戦争が起きた
2.アメリカ対ロシア 中国ではなく
3.ウクライナの抵抗
4.ロシアの経済的抵抗力
5.ヨーロッパの主題的な意思の崩壊 =フランスとドイツ
6.イギリス 反ロシア派の台頭
7.ノルウェーとデンマークのNATO加盟
8.アメリカの軍事物資供給不能 GDPと物資不足は関連がない
9.西洋の思想的孤立 ロシアへの支持
10.西洋の敗北 自己破壊 ロシア死活問題・アメリカの利益小 →ロシアが勝つ
主権はアメリカ、中国、ロシアのみ 共通の文化と中流階級による経済的自立
プーチン政権 生活の安定化 経済的自立
10万人当たり 殺人率4.7人(6分の1) 自殺率10.7人(4分の1)へ改善
1000人あたり乳児死亡率4.4人(アメリカ5.4人)
食料自給自足 農産物、武器、原発 輸出
出国の自由 反ユダヤ主義の不在 エンジニアの率はアメリカを超える
低出生率1.5 1.46億人
ウクライナ
代理母出産ビジネス世界の25%
ロシア寄りの都市の多い東/南部 ロシア嫌い
農村で中流階級の少ないナショナリズムの西部と無秩序な軍事主義の中央部
西洋の危機
プロテスタンティズム=教育と経済の発展・不平等(白人至上) 集団意識
→ 宗教ゼロ=国家ゼロ 状態へ
EU NATOの背後にアメリカ 同盟国の監視と支配インターネットは全てを記録する
ドイツ 軍事をアメリカに頼り エネルギーでロシア密接に 機械社会
1999~2001 ロシアのチェチェン制圧、統一ドイツ貿易黒字化
2004 東欧諸国NATO入り EUへも
イギリス 好戦主義 孤立への恐れ 白人のプロテスタントの国が官僚の有色人種化
高等教育は白人よりも黒人、アジア系 医師新登録は他国出身半数
新自由主義=民営化 倫理の欠如 アメリカにつながりある超富裕層が支配
北欧のNATO加入
デンマークとデンマークから独立したノルウェー アメリカの支配への統合
スウェーデン 2017年 徴兵制復活 自国のために戦う 帰属したい要求がNATOに
アメリカ 離島 自国のために戦ったことがない 外交政策は内部の退行から
空虚さ 金 権力 ニヒリズム 乳児死亡率上昇 GDPは空虚 教育成果低下
能力主義の放棄 リベラル寡頭制
産業基盤欠如 真の実力?西欧州を下回る? GDPの大半は対人サービス
エンジニアリング専攻は7.2% 高収入の法学 金融 経済学へ
貿易赤字拡大 労働者輸入 財よりも貨幣を生産するほうが簡単
合理的な予測が不可能な国に
その他の世界=非西洋 と西洋の対立 ロシア周囲には多数の非敵対国 中国 インド -
フランスの歴史学者であり人類学者であるエマニュエル・トッド氏によるウクライナ侵攻の地政学分析書。15ヶ国以上で翻訳されているベストセラーにも関わらず、英語圏では未出版という曰く付きの書籍。奇しくも2025年8月16日の米トランプ大統領と露プーチン大統領の会談の日に読む。予測の正確性と的確さに驚かされる。
ウクライナ侵攻とは単なるロシアによる侵略戦争ではなく、ロシアの一貫した政治的態度に対する脆弱化した西洋の敗北であると著者は主張する。西洋側にいるとロシア₌絶対悪かつ不利な立場の報道を日々受け取るが、実態はロシアは国家として安定しており、NATOに対する脅威から2014年のクリミア半島併合問題が起こり、その間にウクライナは実質的な国家崩壊(代理母出産の25%が同地など)が進行し、7年のときを経て2021年に満を持してロシアは侵攻したことが分かる。そして盤石かつ一貫したロシアに対し、方針がぶれ続け一枚岩とはなれないEUと米国が駆逐できようはずもなく。著者はそれらを「西洋の敗北」と称し、「プロテスタンティズム・ゼロ状態」による衰弱化と説く。我々はついつい「西洋の論理」で物事を見てしまうが、中国やインド、中東、トルコが必ずしもロシアを拒否しない、裏を返すと西洋に賛同しない理由が読めてくる。
ウクライナのオレンジ革命とマイダン革命を通じた、新ロシアと非ロシアの変遷と、ロシア自身の危機感。自己否定と自己浸食を続けた結果のウクライナが、侵攻という存亡の危機に際してアクターとして世界の舞台に登場することになろうとは何とも皮肉なことである。武力による国境変更は決して許されるべきではないが、米大統領(トランプーバイデン-トランプ)とEU各国首長の悪手の数々を見ると、「元の鞘に収まる」にはかなり分が悪いと感じる。
分析書としては第9章の計算の粗さや、GDPは疑うのにほか統計は検証なく採用したり、フランス人特有のエスプリの効いた(あるいは回りくどい)表現が多かったりと、色々と問題は感じるものの、ロシア・ウクライナ問題とそれに伴う西洋の没落と非西洋の台頭が理解できる一冊だ。
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