本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784163919263
作品紹介・あらすじ
わたしたちは、いつまで人間でいられるのか?
新しい暗号通貨、分断のないSNS、超小型人工衛星……
宮内悠介が迫る、8つのテクノロジーの新時代!
★掲載作品
「暗号の子」
「偽の過去、偽の未来」
「ローパス・フィルター」
「明晰夢」
「すべての記憶を燃やせ」
「最後の共有地」
「行かなかった旅の記録」
「ペイル・ブルー・ドット」
★宮内悠介・プロフィール
1979年、東京都生まれ。少年時代はニューヨークで過ごす。早稲田大学高等学院、早稲田大学卒。2010年、「盤上の夜」で創元SF短編賞選考委員特別賞(山田正紀賞)を受賞。2012年のデビュー作『盤上の夜』が直木賞候補となり、注目される。2013年、『ヨハネスブルグの天使たち』で日本SF大賞特別賞を受賞。2017年、『彼女がエスパーだったころ』で吉川英治文学新人賞を受賞。同年、『カブールの園』(芥川賞候補作)で三島由紀夫賞を受賞。2018年、『あとは野となれ大和撫子』で星雲賞(日本長編部門)を受賞。2020年、『遠い他国でひょんと死ぬるや』で芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。2024年、「ディオニソス計画」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。同年、『ラウリ・クースクを探して』で高校生直木賞を受賞。
感想・レビュー・書評
-
書かれた時期も掲載誌もバラバラな8つの短編をまとめたアンソロジー。
名前は知っていたが、読んだことがなかった作家さん。パソコンやシステム用語が普通に出てくるため、半分は言葉の意味を想像しながら読む事になった。中にはAIに9割以上書かせたという作品もあった。今ってこうなってるの〜?の世界。
最後の「ペイル・ブルー・ドット」が一番読みやすく、感情移入できた。ワクワクがない仕事はつまらない、という結論には深く納得。
他の作品も読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮内悠介の本は3冊目。短編集「国家を作った男」では各作品で判断が分かれ、「スペース金融道」では最悪の評価を下した。そして本書、やっぱり宮内悠介には期待してしまうんだな。他の本を差し置いて発売されるのを待って早速読み始めた。本の題名となった初っ端の「暗号の子」を読んで私の選択は間違っていないことを確信した。やはり、予想通り宮内悠介は本物だった。最後ページに著作リストが載ってあったので、早速明日から本探しの旅に出かける予定。今のところ、全18冊のうち手元には8冊しかない。頑張って集めまくる。
そして詳細は後述するが、一番最後の「ペイル・ブルー・ドット」、この作品に出合って本当に良かった。もう、宮内悠介に感謝しかない。私の文章を読んで絶対に「ペイル・ブルー・ドット」を最初に読まないで欲しい。順番通り最初の「暗号の子」を読んで感動し、「行かなかった旅の記録」まできちんと読んで、そして最後の「ペイル・ブルー・ドット」で号泣して下さい。もう、これは全部読んだ人へのギフトです。あのーーー、次の新刊書はいつ出るのですか?
〇 暗号の子
序盤はひきこもりの話だったので、こりゃあちょっと重いなと感じていたが、主人公は普通の(普通というのがどういう定義なのかは不明)ひきこもりの生き方とはちょっと違うようだ。その違う面から話が急に拡大し始め、予想もつかない展開となり徐々にこの作品に引き込まれていった。気がついてみれば、一気に終盤に突入して感動の結末を迎えた。これが良い作品に共通な特徴。宮内悠介の構成力・文章力にまんまと乗せられてしまった。素晴らしい作品だった。
〇 偽の過去、偽の未来
僅か8ページ。内容はこの前の「暗号の子」をギュッと凝縮した感じ。お父さん、可哀そう。頑張れ!
〇 ローパス・フィルター
結城佳宏は本当に自殺したのか。ある目的のためにアプリ・プログラムを開発するも予想外の効果が出る弊害、こうなる原因の一つに教師あり機械学習がある。教師が違えば自ずと結果が異なる。機械学習に限らず、食わせるものが異なると別の体格・別の人格へと移行する。これが、教師なし機械学習、強化学習、ついにはディープラーニングへと進むにつれてブラックボックス化も進む。制御不能・予想外の特性を持つプログラム、恐ろしい。知らないで使う方がもっと恐ろしい。なんとかなりませんかね。
〇 明晰夢
イーロン・マスクのXをドロップアウト、政府機関から解雇される前に混乱のどさくさで大量のデータを持ち出す。来年以降、恐ろしい社会が訪れる予感がする。ガイキチを政府内に入れちゃあいかんよ。コンピュータ・ウィルスが正面玄関から堂々と入ってくる感じ。もう絶望的。人間が人間をオンラインで殺す代わりに、コンピュータが人間を殺す場面が訪れるのが早まりそう。あともう一つ言いたい。今まで悪者呼ばわりされてきた合成麻薬がルーシッドに勝つなんて痛快極まりない。化学の力は偉大だ。まだまだ化学は行けるぞ。これまでも人類は副作用を極力抑える薬を沢山開発してきた。体に影響を与えない合成麻薬ですって?パラダイス!人間をコントロールできる薬物をどんどん開発しよう。でも、それも怖いね。
〇 すべての記憶を燃やせ
短い作品だけど、文字がかかれてあるのだけれど、この作品は何が言いたいの?確かに日本語なんだが、文字が体を通り抜けていく。それが狙いなのか?
〇 最後の共有地
確かに優秀な人が集まる秘密クラブは確実に成果が出る。IMG、笑っちゃった。禅問答って嵌ると一気に信頼関係が出来ちゃうね。でも、この作品で特筆すべきは、トラストと言う言葉が負・ゼロ・正で場合分けしたフレーズ。私もハッとしたね。でも、人と人との信頼は三つの場合の根底に共有していると考えた。有田に即答したかったな。
〇 行かなかった旅の記録
この作品に限った事ではないが、主人公は一癖も二癖もある考え方を持つ。だから小説として成り立つのだ。普通の人が主人公ではつまらない作品になってしまうと考えたが、本当に普通の人って世の中に沢山いるのか?一癖を個性と捉えれば普通の人ってマイノリティーではないのか?この本でずーーーっと個性的な人の話を聞かされると、その様な考え方に行きついてしまうのではないか。さて、最後の作品を読もう。
〇 ペイル・ブルー・ドット
これ短編だけど、中編くらいに膨らませて欲しかった。いや、短編にしたから感動が高まったのかもしれない。やっぱりSF作品は感動する、私の心をガバっと鷲掴みする。いいよいいよ!最後の最後に登場したこの作品、読み終わってからもう言葉が出なかった。ラストに近づくにつれて眦(まなじり)から徐々に涙が溢れてきた。決して号泣ではない。静かな感動、これが30分くらい続いた。心臓の鼓動もなかなか収まらない。こんな作品に出合ったのは本当に久し振りの事。陽太君、これ太陽を逆にした名前だよね、本当にいい名前。この作品に相応しい名前だ。敦志と彩矢との関係も心に残る、糸引くように残る。他の登場人物の設定も心地良い。こんな会社本当にあるの?針生もなかなか良い味、出してる。
素晴らしい作品に出合ったら、次回作品に大いに期待するのは当然の事。いいよ、第四ノンシリーズ短編集、早急にお願いします。でも、条件を一つ。いろんな所に書いた作品を寄せ集めても全く構いませんが、本の最後に持って来るのは現在絶好調の宮内悠介の書き下ろしを掲載して下さい!宜しくお願いします! -
こてんぱんにやられた感。
難解ではない。でもどの話もむずかしく、自分にはついていけない。特に感情面が追いつかない。なぜかどんどん暗い気持ちになっていく。
そんななかでもタイトルの『暗号の子』はわりとすんなり読めた。
AIによる執筆の『すべての記憶を燃やせ』が興味深かった。 -
2024年10月号文學界暗号の子、2021年9月KaguyaPlanet偽の過去,偽の未来、新潮2019年1月号ローパス・フィルター、群像2023年4月号明晰夢、SFマガジン2023年6月号すべての記憶を燃やせ、2021年9月WIRED日本版VOL.42最後の共有地、文學界2021年12月号行かなかった旅の記録、トランジスタ技術2024年12月号ペイル・ブルー・ドット、の8つの新テクノロジー世界をテーマにした短編を2024年12月文藝春秋刊。小学生が衛星を作るというトラ技に掲載されたというペイル・ブルー・ドットが底抜けに楽しい。全編に渡っての技術やそれを内包する世界に対する宮内さんの見通しが興味深く面白い。
-
SFと純文学が合わさったような短編集で、AI技術やSNSの問題など、近い将来、現実に起こりそうな話ではある。
自分は理系の人間かつこじらせタイプの人間なので、表題の「暗号の子」や「ローパスフィルター」なんかは非常に自分ごとのように読んでしまった。
そして、「ペイル・ブルー・ドット」は、主人公と少年の、心の交流による、孤独からの開放と、未来あるラストが沁みた。 -
「暗号の子」
ネット空間で居場所をみつけたわたし。その空間では同じような仲間が集っていたが、ある日その一人が現実の社会で無差別殺傷事件を起こすと、仲間は散ってゆき私の住所も突き止められてしまうが・・ 後半では父や母の出会った頃のことが父によって話され、ああこの父にしての私だったのかとなるが、父は父で折り合いはつけている。私はどうするのか、でも希望が見える終わり方。
「暗号の子」『文学界』2024.10月号
「偽の過去、偽の未来」『Kaguya Planet』2021.9月号
「ローパス・フィルター」『新潮』2019.1月号
「明晰夢」『群像』2023.4月号
「すべての記憶を燃やせ」『SFマガジン』2023.6月号
「最後の共有地」『WIRED』日本版2021.9月発売号
「行かなかった旅の記録」『文學界』2021.12月号
「ペイル・ブルー・ドット」『トランジスタ技術』2024.12月号
2024.12.10第1刷 図書館 -
短編集。理系?の専門用語が多くて、私には少し難解でした。
ただ、新しい革新的な技術の怖さとそれに対する希望を感じられて、読後感はよかったです。 -
表題作「暗号の子」
自分にとって居心地の良いコミュニティなんて、存在するのだろうか。
本当に小さな他者との関係性以外に、自分が安心して委ねられた場所なんて、ないような気がする。
だから、地域にしても、国にしても、空間を守りたいと必死になることの意味が、私にはイマイチ分からないような気がする。
クリプトクリドゥスという仮想空間そのものに、というより、その空間を「在る」ものにさせたレゴラスに対する想いが、クリプトクリドゥスを「守りたい」という想いに繋がったような気がする。
そして、仮想空間であれ、名を付けることは、大きいことなのだと思う。
それも、「守りたい」の根拠にあるのかもしれない。
自分にとってかけがえのない人が生きる場所であり、自分が名付けという意味でコミットした場所だから、彼女は自分を攻撃の的にしてまで、場を守る行動ができたのだろうか。
もう少し、考えないといけない気がする。
「ペイル・ブルー・ドット」
ペイルブルーという言葉を、どこで聞いたんだろう。
懐かしさを感じながら読み始めた。
宇宙を目指す人たちのお話。
ここに、社会には上手く馴染めないながらも、ある種の特異な能力を認められる子どもの姿が描かれる。
こういうのを、ギフテッドというのだろうか。
ここでも、少し違和感を覚えるのだ。
結局のところ、特異な能力を秘めた彼らを見出す(利用する)のもまた、社会なのではないか。
ある場面では拒絶され、ある場面では重宝される。
どこまでも窮屈な世界から、逃れる術が、クリプトクリドゥスであり、宇宙であり、旅なのだ。 -
AIとか暗号資産とか、新しいテクノロジーに私の頭がついて行けてなくて、楽しめなかった部分あり。最後の2作品「行かなかった旅の記録」と「ペイル・ブルー・ドット」なら私的には星4つ。
-
近い未来…いや、もう現代かもしれない暗号通貨、SNS、VR、AIなどをテーマにした8編のSF短編集。
専門用語が多用されており現代の話なのに理解が難しい(汗)SFに強い人に向いている作品。
「暗号の子」「ペイル・ブルー・ドット」がまだ理解しやすい雰囲気かな? -
-
※
プログラミング、システム用語が多数で、
合わせてSNSやAI、思想的な要素も絡んでいて
馴染みにくい部分が多く読み進めにくかった。
この分野が得意な人なら、自分とは違って
きっともっと面白く読めるはず。
近未来的な話でありながら、歴史の変遷まで
組み込んでくるところが奥深くてにくい。
『暗号の子』からは、近い将来像を見せられた
気がします。
ーーーーーーー
暗号の子
偽の過去、偽の未来
ローパス・フィルター
明晰夢
すべての記憶を燃やせ
最後の共有地
行かなかった旅の記録
ペイル・ブルー・ドット
-
短編集だった。プログラミング、暗号通貨、VR、精神病、など、扱うテーマがあらかた似通っていて、最後は飽きてしまった。「ラウリ・クースクを探して」が良くて期待していただけに、期待に届かず残念。
-
短編集。
プログラミング等の用語が出てくるので、馴染みのない私としては、少し読みにくかったです。ネットが普及し、見知らぬ相手とも繋がれるようになった社会においての、他者との繋がりや関わり方がこの作品のテーマなのかな?と思いました。
いくつかの作品に共通して出てくる針生というキャラは、何だったのか気になりました。 -
なかなか読み辛い話ばかりでした。
デジタルに関する用語はわりと分かるほうですが、これは分からない事ばかりでした。
「暗号の子」と「ペイル・ブルー・ドット」は面白かったです。 -
ITって、お金に結びつくイメージが最近は強いけど、ロケットの話は、心があったまる。
こういう技術の使い方がいいな -
テクノロジーの最先端にいる天才たちの物語。それって人類の最先端ってことだよね。ど文系の私にもわかって面白かった。最近のAIは私のような末端まで届いてて、生活が変わっていくだろう予感がある。後書きに書かれていたように、科学技術に対する姿勢は山の尾根に立って右にも左にも滑落することなく歩いていくしかなんだと思う。(時に立ち止まることも必要だと思うけど、立ち止まれないことも恐怖を煽るよね。)
-
【愚か者どもの言うことは、すべて無視しろ!】暗号通貨、SNS、小説執筆AI……不愉快なテクノロジーのもと、それでも生きようとする人間の「優しさ」を見つめる作品集。
-
宮内悠介さん、3冊目だけどやはり面白い。テクノロジーにまつわる短篇を集めた本作、『国家を作った男』でも感じたことだけど、どの作品からも「倦んでいる」感じが漂ってきてそこが独特の持ち味になっている。今回その「倦み」がSNSまわりの言論に向けられたものが目についた。「Turn on,Tune in」が副題(というのか英題というのか。これはヒッピーの標語みたいなもので、以前仕事でかかわった本の章題にも使われていたから、解像度上がって嬉しかった)の「明晰夢」、AIに執筆させたという、それゆえか絶妙に狂っているというかズレているというか、そこがクセになる「すべての記憶を燃やせ」あたりが印象的。最後の「ペール・ブルー・ドット」には図らずも胸が熱くなった(「世にも奇妙な物語」で観た「トランジスタ技術の圧縮」が宮内さん原作だって知らなかったよ!この短篇にチラッと出てきて、あれ?この言葉聞いたことあるぞ、ってなった。一度聞いたら忘れがたい謎のインパクト…)。表題作「暗号の子」には「未来は俺等の手の中」の一節が、「行かなかった旅の記憶」はネパールが舞台でそこはかとなくブルーハーブ。
次は長編にも挑戦したい。 -
ウラリ・クースクを探しての作家さんなので借りてみた。テクノロジーの必要性を私があんまり大切だと思ってないため共感できず。
-
どこか突き放したような、乾いた筆致がテクノロジーの話とうまくマッチしている。
ただAI作の話は全然面白くなかった。
著者プロフィール
宮内悠介の作品
本棚登録 :
感想 :
