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Amazon.co.jp ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784163919300
作品紹介・あらすじ
★2026年本屋大賞第3位!
★ダ・ヴィンチ BOOK OF THE YEAR 2025 小説部門 第1位!
「どうしても、直木賞が欲しい」
賞(prize)という栄誉を獰猛に追い求める作家・天羽カインの破壊的な情熱が迸る衝撃作!
♦あらすじ
天羽カインは憤怒の炎に燃えていた。本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに、直木賞が獲れない。文壇から正当に評価されない。私の、何が駄目なの?
……何としてでも認めさせてやる。全身全霊を注ぎ込んで、絶対に。
みんなの感想まとめ
賞を獲得することに執着する作家の情熱と、出版業界の裏側を描いたこの作品は、読者に深い感銘を与えます。主人公の天羽カインは、ベストセラー作家でありながら直木賞を手に入れられず、その執念が物語を引き立てま...
感想・レビュー・書評
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あなたは、『直木賞』を獲りたいでしょうか?
(^_^;)\(^。^。) オイオイ..
このレビューを読んでくださっている方の中に『直木賞』を目指している作家さんがいらっしゃるどうかは分かりませんが、私を含め圧倒的大半の方は、『直木賞』発表のニュースを見ることはあっても、まさか自分がその対象になるなどと考えたことはないと思います。
一方で、本好きな方には『直木賞』や『芥川賞』を選書をする時の参考にされる方は多いと思います。かく言う私も近年の『直木賞』受賞作のほぼほぼ全てを読んできました。このように賞を受賞するということは読者に認められることでもあります。しかし、読者に認められるという視点であれば『本屋大賞』という賞があります。その賞が本屋の書店員さんの投票によって選ばれることを考えると、より幅広い層に支持される作品の証という考え方だってできると思います。
しかし、作家さんの中にはどうしても『直木賞』でなければ…と強いこだわりを持つ方もいらっしゃるようです。
さてここに、一人の『ベストセラー』作家を主人公とした作品があります。今年48歳になるというその作家はこんな思いを吐露します。
『直木賞が欲しい。他のどの賞でもなく、直木が』。
この作品はそんな作家が『直木賞』を獲るために執念を見せる物語。そんな作家を影ながら支える担当編集者の心の内を見る物語。そしてそれは、『身体じゅうの全細胞が、正当に評価される栄誉に飢えて餓えている』という作家の思いの果てを見る物語です。
『このあと・午後五時より・八階のイベントスペースにおきまして・天羽(あもう)・カイン先生の・サイン会が・開催されます…』と『天井に埋め込まれたスピーカーから』案内が流れる中、『天羽カイン先生 新刊発売記念サイン会』と『大書された横長の看板』の下で『長テーブルの端に飾られた盛り花を見つめ』るのは『南十字書房』で担当編集者を務める緒沢千紘(おざわ ちひろ)。『腕時計を覗けば、四時二十分。五時までまだ間があるのに、エスカレーター脇にはすでにけっこうな長さの行列ができている』のを確認した千紘は『上階の喫茶店』の奥の個室へと向かいます。そこには、『狭いテーブルに自著を積み上げ、書店用に五十冊のサイン本を作っている』カインの姿がありました。『ライトノベル作家の登竜門〈サザンクロス新人賞〉』でデビュー、『三年後には初の一般小説を上梓し、同作品でその年の〈本屋大賞〉を受賞』して、『ベストセラー』作家となったカインは、『長野県軽井沢市に暮ら』しています。『直木賞にも二度ノミネートされ』たことがあるというカイン。そんなカインに『お客さんたち、もう大勢並んでらっしゃいましたよ』と報告する千紘に『そう、よかった』と微笑むカインは、『こういうイベントばかりは何回やってもドキドキするよね』と続けます。そして、時間となり会場へと向かうカインと千紘。
場面は変わり、『いつものこと』という『サイン会』『終了後の食事会』の場には『文芸担当の原田専務と小説誌「南十字」編集長の佐藤、そして宣伝部と販売部からそれぞれ部長の上野と山本が先に来て待ってい』ました。『部長たちもぜひ一緒にと』『作家本人』に言われ参加した面々は『先生、どうもお疲れさまでした!』、『いやあ、いつもにも増して盛況でしたね』と言葉を口にします。『白身魚と薬膳の蒸し物、器からはみ出しそうなフカヒレのスープ、と続いて、いよいよ北京ダック…』と料理が供され盛り上がる中に『じゃ、佐藤編集長。今のうちに終わらせときましょうか』、『反省会』と語り始めたカインに『全員の顔から表情がかき消え』ます。『あのですね。私、いつも同じことを、ほんとに同じことだけをお願いしてるはずなんだけど…』と切り出したカインは、『銀のサインペン』の一本の『ペン先が潰れて』いたこと、飾られていた花が『下品なピンク色』だったこと、『ツーショット撮影』に手間取ったこと等不満を並べます。そんな言葉に、もう一人の担当編集者である藤崎新(ふじさき あらた)とともに『…すみませんでした』と頭を下げる千紘。『今回の「月のなまえ」、初版は三万部でしたよね。なんでそんなに絞ったんですか』と次は部長に不満を語り出すカイン。『すぐに二刷、三刷と重版をかけていくほうがかえって宣伝になる』と反論する部長ですが、『アマゾンでも品切れ。ネットでずいぶん不満が出てましたよね。ご存じでした?』と詰め寄るカインは、『この秋に、文春から新刊が出る予定なんですけど』、『初版は最低でも五万部から、と申し入れてあります。それ以外だったら出すつもりはないので』と続けます。『南十字さんのことは実家みたいに思ってるんです。「サザンクロス新人賞」でデビューさせてもらわなかったら、今の私はなかったんですから』と『艶然と微笑む』カイン。
再度場面は変わり、東京駅から新幹線の『グランクラス』へと乗り込んだカインは『月のなまえ』の『見本が上がってきた時』のことを振り返ります。『ね、今度こそいけるよね?』と千紘と新に訊くカイン。『え?』という返事に『直木賞』と返すカインは『ー もちろん!』『ー 絶対ですよ!』『という返事しか予想していなかったから、二人の目が揃って泳いだことにびっくりし』ます。『一拍以上おいてから、「そうなるよう、全力で読者に届けます」』と言う千紘、『これほどの作品なんですから、覚悟はきっと伝わるはずですよ』と言う新に対し、『そんな言葉を聞きたいのではなかった。二人には、せめて直接の担当者であるこの二人にだけは、〈絶対この作品で獲りましょうね!〉〈これの値打ちがわからないような奴は大馬鹿野郎だ!〉と『言いきってほしかった』と思うカイン。そんなカインは、『私の、何が駄目なの?』と『心にそうくり返すたび、奥歯がすり減』り、『胃の底がじりじりと焦げて炭化しそうにな』ります。そして、『軽井沢の〈別荘〉』に着いたカインは『デビュー以来、書店員の選んでくれる「本屋大賞」以外は獲っていない』、『こんなに世間から支持されているのに、どうして獲れないのだろう。自分の作品のどこがいけないのか、文学賞を受けるのに何が欠けているのかわからない』と改めて思います。『直木賞が欲しい。他のどの賞でもなく、直木が』と思うカイン。そんなカインが『直木賞』を獲りたいという思いを募らせていく日々が描かれていきます。
2025年1月8日に刊行された村山由佳さんの最新作でもあるこの作品。”発売日に新作を一気読みして長文レビューを書こう!キャンペーン”を勝手に展開している私は、2024年11月に寺地はるなさん「雫」と南杏子さん「いのちの波止場」の二冊、そして12月には瀧羽麻子さん「さよなら校長先生」と、私に深い感動を与えてくださる作家さんの新作を発売日に一気読みするということを毎月一冊を目標に行ってきました。そんな中に、登場人物たちの細やかな心理描写を得意とし、切ないストーリー展開に定評のある村山由佳さんの新作が出ることを知り、これは読まねば!と発売日早々この作品を手にしました。
そんなこの作品は、内容紹介にこんな風にうたわれています。
“ライトノベルの新人賞でデビューした天羽カインは、3年後には初の一般小説を上梓、その作品で〈本屋大賞〉を受賞。以来、絶え間なくベストセラーを生み出し続け、ドラマ化・映画化作品も多数。誰もが認める大人気作家である。しかし彼女には何としてでも手に入れたいものがあった。それは〈直木賞〉という栄誉。 過去に数度、候補作入りするものの、選考委員からは辛口の選評が続いた。別居する夫には軽んじられ、まわりの編集者には「愛」が足りない。私の作品はこんなに素晴らしいのに。いったい何が足りないというの?”
少し長い引用となりましたが、この作品の大まかな内容が上手くまとめられていると思います。そうです。この作品は、今年も間もなく発表される『直木賞』を”何としてでも手に入れたい”と願う一人の女性作家の強い思いを生々しく描く物語なのです。はい、ここで先に書かせていただきますが、この作品、間違いなく面白いです。読書が好きな人なら知らぬ人などいない『直木賞』を目指す作家の執念を見る物語が面白くないはずがありません。しかもそれを書くのは直木賞作家の村山由佳さんです。ご自身も長野県軽井沢市にお住まいであり、どこか微妙に村山さんご自身を映しとっているようでもあり、それでいて『直木賞』の受賞の有無が違うという主人公と村山由佳さん。さまざまな読み方ができていく分、面白さもひと塩です。では、まずはこの作品で主人公となり光が当てられていく作家・天羽カインがどんな人物かを見ておきましょう。
● 天羽カインってどんな作家さんなの?
・本名: 天野佳代子、48歳
・筆名: 『天使の羽根の儚く白いイメージに、旧約聖書に登場する人類初の殺人者 ー 弟ばかりが神に愛されることに嫉妬して殺した兄 ー の名を組み合わせた』
・『ライトノベル作家の登竜門〈サザンクロス新人賞〉において、史上初めて最優秀賞と読者賞をダブル受賞してデビュー』。
・『三年後には初の一般小説を上梓し、同作品でその年の〈本屋大賞〉を受賞』。
・『以来絶え間なくベストセラーを生み出し続け、ドラマ化・映画化作品も多数』。
・『出す小説がことごとく十万部を突破する』
・『ここ五年以内に限っても、吉川英治文学新人賞、山本周五郎賞、大藪春彦賞、それに直木賞にも二度ノミネートされている』
・『夫とはもう何年も、東京と軽井沢に離れて暮らしている』。
おおよそのイメージがお分かりいただけたかと思います。そして、そんなカインは『無冠の帝王』とも呼ばれています。それこそが『出す本は売れるのに名のある文学賞を獲れない』という今のカインが置かれた状況です。それこそがカインのこんな思いに繋がっていきます。
『直木賞が欲しい。他のどの賞でもなく、直木が』
なんとも生々しい心の叫びです。物語を読む読者はカインの思いの先にある『直木賞』に否が応でも興味が湧きます。
このレビューを読んでくださっている方の中に『直木賞』を知らない方はいらっしゃらないでしょう。しかし、それは賞の名前であったり、受賞された作家さんの名前だったりするのではないでしょうか。そもそも『直木賞』とはなんなのか?この作品では、そんな『直木賞』について、ええっ!そうなの!と驚くほど詳細な記述がなされていきます。実際に『直木賞』を受賞された村山さんが語られる分説得力は絶大です。あまりに多岐にわたる内容はとてもこのレビューでご紹介し切れるはずがなく、是非実際にこの作品を手にとっていただきたいと思いますが、少しだけご紹介しておきましょう。
● 『直木賞』ってどんな賞なの?
・『大正の終わりから昭和の初めにかけて活躍した、直木三十五という作家』に由来。
※『当時は非常に有名』、『大衆時代小説で大ヒットを飛ばしたり、彼の原作で映画になったものが五十本くらいある』
・『昭和九年、直木三十五が四十三歳で病没』したことをきっかけに菊池寛が『親友たちの名を冠した二つの文学賞の設立を決意』
・『将来的に「文藝春秋」という会社がなくなったとしても賞の運営が存続』するように『「日本文学振興会」という別組織を作って管理を任』せた
・『芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学を対象としていて、当初はどちらも無名の新人に与えられる賞だった』が、『今では直木賞のほうはすでに活躍している中堅の作家に贈られることが多くな』った
・『直木賞の発表は年に二度。上期は十二月から五月までに発表された単行本が選考対象となり、候補作は通常六月半ばに発表され、七月に選考会、翌八月に贈呈式が行われる。いっぽう下期は六月から十一月までに出た作品が対象とされ、選考会は翌年一月だ』
作品では、こういった『直木賞』の大前提となる一般知識の他に『文藝春秋』自身のこんな豆知識にも触れられます。
『自社本については、どれほど優れた作品が集まったとしても、最大二作までしか候補に入れないという暗黙のルールがある』
これは全く存じあげませんでした。出版社としての『文藝春秋』と賞を運営する側としての『文藝春秋』の線引きはきちんと意識されているようです。さらには、選考過程に関するこんな記載も登場します。
・『「オール讀物」から四名、出版部十名、文庫部六名。そこに振興会から二名が加わった合計二十三名で予備選考を進めてゆく』
・『すべての作品に〇△×をつけ、〇は1点、△は0.5点、×は0点と計算する。得点の低かった作品から順に議論してゆく』
なんだかとてもリアルです。ほとんど名前しか知らなかった私には次から次へと語られる『直木賞』に関するあんなことこんなことが兎にも角にも新鮮であり、そんな記述を追うだけでもこの作品を手にした甲斐があると感じました。『直木賞』に興味があるという方にはもうそれだけの理由で手にしていただいて間違いのない作品であると断言したいと思います。
そして、この作品はそれ以外にも言及しておきたい要素が多々組み込まれています。レビューが長くなりすぎるのでここでは簡単に三つあげておきたいと思います。
①小説内小説が登場する
→ 小説の中に登場人物が記した小説が登場する”小説内小説”は私が大好きな構成です。この作品では主人公のカインの作品が複数登場します。その一つが「月のなまえ」です。こちらは朧げながら概要が語られるのみですが、村山由佳さんのファンの方には「雪のなまえ」という村山さんの作品を想起させる方もいらっしゃると思います。また、それ以上に大きく取り上げられるのが「テセウスは歌う」という作品です。こちらは、なんと本文の一部がそのまま小説内に記されているのです。
『第一章
「テセウスの船」と呼ばれる有名な思考実験がある。古代ギリシャの英雄テセウスがクレタ島から帰還した時、船には三十本の櫂があった。誉れ高き船は、後の世まで長く保存されることになった…』
そんな風に記されていくこの作品は村山由佳さん「PRIZE」の一部ではありますが、位置付けとしては天羽カイン「テセウスの船」という他の作家の作品であり、空気感も全く変化します。これは面白いです。これから読まれる方には、この”小説内小説”を読み流すのではなく、じっくり味わっていただければと思います。
②天羽カインの言葉を通じて村山由佳さんという作家さんの内面を垣間見ることができる
→ 上記もしましたが、カインは軽井沢に暮らすなど村山由佳さんを想起させる要素が多々な登場人物です。新幹線の『グランクラス』の捉え方、愛車としてアウディのセダンを選んだ理由、そしてラフマニノフのピアノ協奏曲の演奏の選択など、これは作ったものなのか、それとも村山由佳さんご自身の嗜好なのか等考えながら読むとなかなかに興味深いものがあります。また、この作品には馳川周という人物が登場します。これに関してリアル世界のX上で作家の馳星周さんとの間でこんなやり取りがなされています。
馳星周さん: ”オールのゆかっちの新連載に明らかにおれがモデルの作家が登場するとタレコミがあった。モデル料徴収すっからな。”
村山由佳さん: “「馳川周」って名前を見て、モデルが馳兄ィだなんて思う読者はまさかいないと思うけどなあ。”(リポスト)
馳星周さん: “モデル料、おれの場合めっちゃ高いからな。”
村山由佳さん: “え、モデル?はて?”
なんとも興味深いやりとりです。ちなみにこの作品「PRIZE」はもともと「オール讀物」に2023年9・10月合併号から2023年9・10月合併号に渡って連載されていたものです。馳星周さんのツィート”オールのゆかっち”の”オール”とは「オール讀物」を指しています。
③担当編集者の”お仕事小説”でもあること
→ この作品の中心となるストーリーは『直木賞が欲しい。他のどの賞でもなく、直木が』と強く思うカインを描く物語であることに違いはありません。しかし同時にその舞台裏で作家と共に作品を作り上げていく出版社の人たちの”お仕事”を垣間見せてくれるものでもあります。その中心となるのが『南十字書房』でカインを担当する緒沢千紘の存在です。
『何があろうと自分だけは、作家・天羽カインのためにとことん奉仕すると約束したのだから』。
カインと『二人三脚』で作品を作り上げていく千紘はカインとの関係性を意識する先にカインに強く寄り添い向き合っていきます。作家さんと担当編集者さんとの実際の関係性は外野な私には知る由もありませんが、この作品に描かれるそんな舞台裏は非常に興味深いものがあります。これから読まれる方には、この展開にも是非ご期待ください。
ということで、単行本384ページという作品の中に読みどころがこれでもか!と盛りだくさんに詰め込まれたのがこの作品です。村山由佳さんならではの読みやすく巧みに構成されていく物語はあっという間に読み終えてしまう魅力に満ち溢れています。
そんなこの作品は兎にも角にも、『出す小説がことごとく十万部を突破する』という『ベストセラー』作家・天羽カインの日常が全編に渡って描かれていきます。物語は『南十字書房』から出版された新作「月のなまえ」の刊行記念の『サイン会』の場面からスタートします。整理券が足りなくなったという報告に『上限なんか設けなくていいよ』、『お客さんがいちばんですから。なんなら整理券なしの飛び込みだって、列の後ろにさえ並んでもらえるなら私は全然』とお客さんのことを大切に思うカインの姿が描かれますが、一方で終了後にはスタッフを集めて厳しい口調で『反省会』を主導する姿も描かれていきます。この辺り、有名作家の裏の顔を見る思いに一瞬囚われますが、物語を読み進めれば読み進めるほどに、そんな思いが自分の中で少しずつ変化していくのを感じます。それこそが、どこまでも真摯に自らの生み出す作品に向き合っていくカインの素顔です。しかし、そんなカインはどこまでも『直木賞』に執着します。
『ー 私の、何が駄目なの?心にそうくり返すたび、奥歯がすり減る。胃の底がじりじりと焦げて炭化しそうになる』。
そんな風に『直木賞』が獲れないことに忸怩たる思いを抱くカインは一方で、『ベストセラーリストの一位に長く君臨する』状況を思い、余計に自身がどうすれば良いのかわからなくなっています。
『こんなに世間から支持されているのに、どうして獲れないのだろう。自分の作品のどこがいけないのか、文学賞を受けるのに何が欠けているのかわからない』。
物語では、『直木賞』を獲ることに強い思いを抱くカインが描かれていく一方で、そんなカインを支える担当編集者の千紘にも光が当てられていきます。
『担当作家に発破をかけることはできても、自分がかわりに書けるわけではない。一のものを十にすることと、ゼロから一を生み出すのとはそれぞれ別の能力だ』。
担当編集者という自らの立場のあり方を自問しながらカインに寄り添っていく千紘を描く物語は、上記した通りまさしく担当編集者の”お仕事”の深い部分に踏み込んでいきます。小説というものは、作家さん一人の力で生み出せるものではなく、あくまで作家と担当編集者の『二人三脚』で作り上げられていくものであることを強く認識させてくれる物語がそこに描かれていきます。そして、そんな物語が至る結末、数多張り巡らせられた伏線が絶妙に回収されていく結末には、まさかという思いの先に、物語を深く読んできた読者には極めて納得感のある物語が描かれていました。
『直木賞が欲しい。他のどの賞でもなく、直木が』。
そんな思いの一方で、『ベストセラーリストの一位に長く君臨する』という相反する状況に悩みを深める天羽カイン。この作品にはそんなカインが”どうしても、直木賞が欲しい”という獰猛的な欲求を満たすべく”破壊的な情熱”を迸らせながら、担当編集者の緒沢千紘と手を携えて突っ走っていく姿が描かれていました。『直木賞』のあんなことこんなことがよく分かるこの作品。一つの小説が誕生する舞台裏にどのような葛藤があるかもよく分かるこの作品。
ええっ!そんな風に展開させるの!とあっと驚くまさかの結末に、村山由佳さんの上手さを改めて感じた素晴らしい作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読んだ後、本を大切にしたい、なるべく書って読みたい、と思った。
改めて、多くの人が一冊の本を作るために関わっていることも。
超売れっ子女性作家の賞への剥き出しの欲求、賞レースの選考方法や、出版業界の裏側を少し垣間見た一方、小説が時代を経て多様化する娯楽としても、エンタメのジャンルを超えて文学として、本当に必要なのか、必要とされているのかを考えさせられた。
人との距離も同じく。
ラストまで高まる、女性編集者の狂気に似た作家への思いと、救い。
と同時に、既存の作家やモデルだろうとされる作家もたくさん現れ、とても面白かった。
この作家、本当にいたらいいなぁ、とも。
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何このリアルっ!?この重厚感!?
ずっとこっち(読んでいる私)が緊張しっぱなしで、フィクションとノンフィクションの間を行き来しているような凄まじい作品でした!!
実際に裏で繰り広げられている事実は分かりませんが、読者に『想像させること』の深みを知りましたわ。色んな小説を読み漁っていると「説明が足りないな」とか「くどいな」とか思うところは沢山あるけれども、作者が伝えたいそのままの想いや形で私たちの手元に届いている。全てがそうではないことは承知ですがこれは尊いですよ。この作品は本好きな人にこそ読んでいただきたい! -
村山由佳さん著「PRIZE」
作者の作品を読むのは今作が初めて。
話題作でもありずっと気になっていた。ブックオフに他の本を買いに行った際、たまたま売っていたので買ってしまった。
読了後にこの作品は中古で買ってはいけなかったであろう作品だったと強く反省。
作家さんや出版社の気持ち、並々ならぬ努力と情熱が描かれており新刊に対する熱い姿勢が綴られている。
どの本もそうなのだろうが、この本に至っては物語の内容から特にそう思わされた。
申し訳ない。書店で買うべきだったと、そうしたかったと反省。
物語は直木賞の成り立ち、直木三十五という人物の名前の由来、賞という名誉の表側と裏側がよく読み取れる作品で色々と勉強になった。かなり面白かった。
芥川賞と直木賞の賞の持つ意味合いは過去の受賞作から推移すればその傾向は分かりやすく自分が想像していた通りだったが、直木賞ノミネート作が○△✕の基準で採点していること等は全く知らなかった。
過去に好んで直木賞受賞作を何作も読んできたが、そういう手順を踏んでの受賞作品だったと思うとその価値がまた一味さらに加わった感覚を覚える。
その「直木賞がどうしても欲しい」という天羽カインという女性作家が物語の主軸。
一癖二癖あるキャラだが作家として自身の作品に対してのポリシーとプライドは目を見張るものがある。とても素敵な作家さんに感じられる。
中盤以降の物語展開は圧巻。
作中作「テセウスは歌う」が大きく関係してくる物語展開。
その展開の中に天羽カインのプライド、ポリシー、誠実さが全て詰まっていた。その立ち振舞いが見事。
そして問題の一文。考察を少し書きたい。
『すべてはここから始まるのだと、あの頃は二人ともが思っていた。
似てはいても違っていた。あれは、すべてが終わる始まりだったのだ。』
この二行には二人の関係性とその後の未来が投影されており、文の意味の如くの内容。カインと千紘に置き換えられた現実と未来が表わされているではないか?
わざわざ~線を添えて「トル」と強調しているのには2重の意味を含ませているのだろう。
後ろの文章は二人で同意して省いた、その文章の意味の否定。カインも千紘もすべてが終わる始まりだったとは思っていない。
その後、前の文章を千紘は加えた、その文章の意味を千紘は肯定した。千紘はこの作品からカインという作家に特別な感情を抱き始めている。カインにとっての唯一無二の存在なのだと自己陶酔していくように錯覚しそれを疑わなかった。その時はカインも同じ気持ちだったかもしれないが。
そうして最終的に直木賞を辞退してまでその千紘が足した文章を省いた、再度カインはその文章の意味を否定した。
当然だ、作品はあくまでも作家のものであり、作品の始まりは二人のものではない。カインはどこまでいこうが小説家の天羽カインでありたかったのだろう。
千紘への編集者としてのその思い過しに対しての否定だろう。
恐ろしく文学的で感動すら覚える。
そして終章、秀逸なのが千紘に送ったチョコレートに添えたポストカードの件。
たった一言、
「あなたを、許さない」
これは…深い。
途中で二人で議論を交わす台詞、「あなたを許したわけではない」という台詞。修復の光、「兆し」の話の引用。
カインが千紘に宛てたのは断定的な「許さない」という言葉、「兆し」のない言葉。
それを読んだ千紘の反応…
青ペンで書き付けているのだが、千紘に関係性の修復のえんぴつを入れさせたかったからあえて「兆し」を見せなかったのでは?
後にカイン自ら赤ペンを入れる為に。
そう読み取りたい。
カインなりのメッセージ、作家としての自分の下に編集者として戻ってきなさいという愛なのではないだろうか?
千紘はカインのその意図を察し、それを宝物として大事にいつまでもと…
しかしいつかいつでもえんぴつを入れられるように涙で滲ませないように歓喜の涙…
深すぎる…感動的で文学的、そうしてなぜか官能的な興奮が覚めない。
そして最終盤にカインが電話で受けた賞はノーベル文学賞なのだろう。
カインの直木賞辞退という誠実さと正直さが加味されて、作品に対しても、天羽カインという作家に対してもの名誉授与なのだろう。彼女の作家としての信念に対しての受賞決定報告。
これ以上ないであろう「PRIZE」
最高すぎる。素晴らしい。
この後この作品の他の方々のレビューや作者のインタビュー等も読みながら他の読者がどう感じ、どう読みとったのか?凄く気になる。早速調べたい。
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ドングリさん、いいねとコメントありがとうございます。
いつも自分もどんぐりさんのレビュー興味深く拝見させて頂いてます。
この「PRIZE」...ドングリさん、いいねとコメントありがとうございます。
いつも自分もどんぐりさんのレビュー興味深く拝見させて頂いてます。
この「PRIZE」、素晴らしかったですね。2ヶ月くらい前に読了しましたが、今でも鮮明に覚えています。カインと千紘の関係性のプロットが抜群で、二人とも大胆な行動をとるわりに、繊細さ滲みでていて凄く人間らしく描かれていましたね。
カインが直木賞の最終選考で受賞できなかった時に「全てを言葉で描いてしまっている」との酷評。
本作品では著者はそれを対比するように、説明を避け、読者に考えさせる場面がいくつもあったように感じられました。
読み込まないと腑に落ちない箇所が多く、自分の考察力をも試されているような作品にも感じました。
今後もよろしくお願いします2025/08/23 -
こんにちは。
この作品、なんか読み解けない感でモヤモヤしてたのですが、NSFMさんのレビューを読んですべてがスッキリしました〜
素晴らしい解...こんにちは。
この作品、なんか読み解けない感でモヤモヤしてたのですが、NSFMさんのレビューを読んですべてがスッキリしました〜
素晴らしい解説!
文庫化の時はあとがきにしてほしいくらいです。2025/12/13 -
2025/12/19
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軽井沢に夫と別居して暮らしている作家の天羽(あもう)カイン48歳。
ライトノベルでデビューし三年後、本屋大賞を受賞します。
そして直木賞に二度のノミネートをされますが、受賞はできませんでした。
P295より
けれどもう、欲しいのは富ではない。栄誉だ。賞だ。堂々と直木賞を獲って世間に認められたい。
天羽カインはのどから手が出るほど欲しかった直木賞を果たして獲ることができるのか…?
この作品を読んで感じたのは「この作品どこかで読んだ気がする。既読感がある」でした。
考えてみると私は過去に日本で一番講師陣の豪華な小説の講座に十年くらい(たぶん)通っていました。
私は特に小説家になりたいとか、小説を書きたいとかいう気持ちは全くなく、読むのが好きで趣味の一環として通い、運営のお手伝いをさせていただいたりもしていました。
なので、この作品に出てくる文学界の裏話的な話は何度も聴いたり読んだりしてきたことばかりでした。
作者の村山由佳さんも講師としてお招きしたことがあったような気がします。(あまりに著名な作家さんが毎月一回いらっしゃるのでうろ覚えなんですが)
軽井沢に住んでいらっしゃる作家さんらしき似た名前の作家さんも出てきますね。その中の藤田宣永さん小池真理子さんご夫妻、馳星周さんは講師にお招きしています。
レビューから脱線した話になってしまいましたが(その講座の話はもう何度も聞いたという方ごめんなさい)
今もその講座は続いていてコロナの影響で、オンライン開催もしていますので全国、海外からの参加もできるようになりました。ご興味のある方は講座ホームページを覗いてみてください。
今までにお招きした講師の先生(思いつく限り)。
伊坂幸太郎・石田衣良・阿部和重・中村文則・あさのあつこ・熊谷達也・京極夏彦・大沢在昌・堂場瞬一・村田沙耶香・角田光代・江國香織・井上荒野・北村薫・三浦しをん・佐藤多佳子・桜木紫乃・打海文三・穂村弘・馳星周・小池真理子・藤田宣永(他、多数、敬称略)。
http://yamagatakouza.fanbox.cc
豊崎由美さんの書評講座もあります。
私が通っていたときは受講料は1回千円と格安だったのですが、今年から値上がりして二千五百円になってしまったのが残念です。-
わー❣️そのような経験があったのですね。
私は、村山由佳さんを好きな時期があって、よく読んでたのですが、この本を発見して、今、読み始めました...わー❣️そのような経験があったのですね。
私は、村山由佳さんを好きな時期があって、よく読んでたのですが、この本を発見して、今、読み始めました。
素晴らしい読書量ですね。
自分が読んだ本や、これから読みたい本などの感想を、読ませていただいています。
(*´ー`*人)
2025/08/25 -
さっちゃんさん♪
フォローありがとうございます。
レビュー、読んでくださりありがとうございます。
村山由佳さん、お好きだったのですね!
この...さっちゃんさん♪
フォローありがとうございます。
レビュー、読んでくださりありがとうございます。
村山由佳さん、お好きだったのですね!
この本は、ブク友の皆さん高評価です。
村山由佳さんには講座の講師としていらっしゃった時にお目にかかったと思います。
その時は確か『おいしいコーヒーの淹れかた』を読んで予習していきました。
2025/08/25 -
さっちゃんさん♪
読書量は、ブクログ歴が6年ほどなので。
もっと凄い方たくさんいらっしゃいます♪さっちゃんさん♪
読書量は、ブクログ歴が6年ほどなので。
もっと凄い方たくさんいらっしゃいます♪2025/08/25
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★5 今、出版業界が熱い!直木賞に執着した作家の承認欲求と業の深さに慄け #PRIZE #プライズ
■あらすじ
書けば売れるエンタメ作家の天羽カイン、彼女は映像化された作品も多数、本屋大賞にも輝いたことがある人気作家。しかし直木賞だけはいつも評価がされずに受賞を逃していた。頑強な想いで賞の獲得を目指す彼女は…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 直木賞作家の先生に上手いも何も失礼すぎるんですが、さすがの筆致でしたね。読ませる読ませる、読書が止まらない。そしてエンタメ力が強すぎますね、大満足お腹いっぱいです。
まず何より主人公、天羽カインが破壊的でしたね。読者と作品のためなら究極まで突き詰めないと許さない。それは自分だけではなく、他人にも求めるんです。そして承認欲求と業がブラックホールより深い、不用意に近づいたら抜け出せなくなるという… こわっ
でもこういった自分の思い正直な人こそ、人を感動させたり、その結果世の中にも影響をあたえることができるんですよね。こういうのをみると、やっぱり私みたいな凡人では売れっ子作家になんてなれないなーと痛感しちゃいますね。
そしてもう一人の主役、出版社でカインの担当を務める千紘ですよ。一見どこにでもいそうな女性なんですが、いろんな思いがあって出版社に勤務しているのです。さらには人間関係にも苦心し、心の休まるところがない。現代社会にどこにでもいる未来世代の若者のひとりなんですよね。
そんな彼女がカインと交流を深めることによって、自身の価値観を磨き上げていく。少しずつ心が解き放たれていく…というか、もはや毒されているのかもしれない。それでもこの千紘の変化がめちゃくちゃ力強くて大好きなんです。
さらに新人作家市之丞もクソ生意気でイイ! もし続編がでるなら、彼が文芸界に革命を起こすような物語が読んでみたいと思いました。
また本作は出版業界の裏側が垣間見れて興味深かったですね。文学賞っていっぱいあるんだけど、文藝春秋が主催する芥川賞と直木賞は別格ですよね。話題性が違います。
携わってる出版社、日本文学振興会、審査員の皆さんが、どれほどプライドをもって運営や審査にあたっているかが良くわかりました。これは確かにプレッシャーがかかりますね。読者としては、毎期毎期お祭りを楽しませてもらってるばかりで、ありがたいことです。
物語の終盤では、直木賞受賞について審査について、ある一定の基準が示される。もちろんそれが全てではないでしょうが、これまでカインをみてきた読者としては十分に受賞の価値はあると思えるでしょう。今年を代表するドエンタメな作品ですね、面白かった!
■ぜっさん推しポイント
執着って何だろうか?
本作に出てくる登場人物は、みんなそれぞれ自分の価値観に執着している。特に出版社に勤める千紘の同僚である藤崎は、誰よりも嫉妬心が強く、信念を曲げないんです。
人は不安や欠落を埋めるために執着するのでしょう。失うことへの恐れや未練が心に残り、手放すことが難しくなるのです。それならば、一度やれるだけやり切ることでレベルアップができるはずです。同じ場所で居座り続けるのではなく、もっと大きな舞台で踊りだすのが良いのだと思いました。 -
終始ヒリヒリしていた読書時間でした。
お願い!もう彼女に賞をあげてーーーと、心の中で叫んでしまうほど。
売れっ子作家の天羽カイン、出す本全てがベストセラーになるけれど、何度も候補に上がっても直木賞は獲れない。どうしても直木賞が欲しい。その執念が凄まじい。そして、天羽カインのキャラが強烈すぎて、同じ職場にいたら近寄りたくない人ナンバーワンです。
天塩にかけて育てた作品、それは我が子のようなもので、そこまで固執する気持ちはとても理解できました。そして、小説は作家一人で作り出すものではなく、編集者の力も大いに関係あるものだとも。
仕事とは実に不思議なものです。考えてみると、睡眠時間を除くと家にいる時間よりも職場にいる時間の方の長かったりします。となると、家族よりも職場の人と過ごす時間の方が長いということになります。でもやっぱり職場の人はあくまでも仕事仲間であって友だちではないのですよね。そのラインを間違えてしまうと、やはりあまりよろしくないことになる気がします。
そんなことを考えさせられる読書でした。
好きなことを仕事にできるのって幸せなことだけれど、苦しいこともありますね。
……今回の芥川賞、直木賞、共に該当作なし……今作を読み終わった後だけに、ズンとなり、うーむ、と唸ってしまいました……
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シン様、同い年なのですねー
年齢とか出身地が近いと親近感わいちゃいますよねー(о´∀`о)
村山由佳作品、ほぼ同じ読んでいるとは!すごい!
...シン様、同い年なのですねー
年齢とか出身地が近いと親近感わいちゃいますよねー(о´∀`о)
村山由佳作品、ほぼ同じ読んでいるとは!すごい!
8月にNHKBSで、『風よあらしよ』の再放送をやるらしいので、観てみようかなー?なんて思ってます。2025/07/19 -
2025/07/19
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うわー(>_<)
そうなると、『風よあらしよ』も読みたくなるー(>_<)
時間が足りないーーー。゚(゚´Д`゚)゚。うわー(>_<)
そうなると、『風よあらしよ』も読みたくなるー(>_<)
時間が足りないーーー。゚(゚´Д`゚)゚。2025/07/19
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オーディブルで聴きました。ストーリー的にはなんていうことはない展開なのですが、飽きさせずに最後まで聞かせるのは著者の筆力だと思います。直木賞をどうしても取りたいという流行作家を題材にした小説なので、まるで著者の本心をのぞいているような不思議な気にさせられました。それだけに冗談ぽいリアリズムがあって面白いと感じました。
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2025/07/10
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「いいね」ありがとうございます。
村山由佳さんの作品ですね。
オイラも好きな作家さんの一人です。
でも、しばらく読めてないなぁ。「いいね」ありがとうございます。
村山由佳さんの作品ですね。
オイラも好きな作家さんの一人です。
でも、しばらく読めてないなぁ。2025/07/13
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村山由佳さんの作品を読むのは初めて。
読む前は「直木賞を取りたい!」という単純なエンタメ小説なのかと思っていたけど、予想のつかない展開にどうなるのだろうと引き込まれた。
作家・出版社・書店員が一冊の本を生み出すまでに注ぐ情熱や葛藤、直木賞の選考方法や出版業界の裏側までが、作家自身の視点から描かれていて、それだけでもとても興味深くて面白かった。
村山さん自身が直木賞の受賞者だからこそ、賞の光と影、裏側の空気までもがリアルに伝わってくる。
フィクションでありながら、村山さんの本音や体験が巧みに織り込まれているのでは…と思わせるようなリアルさがある。
どこまでが本音で、どこからがフィクションなのかと想像させる、その曖昧さが絶妙。
作家・天羽カインの横柄で激昂しがちな性格は全く好きになれない。
でも、ちょうど同時期に読んでいた有吉佐和子さんのエッセイにも、「小説創作中につまらない話をされたことで激昂し、人間関係を滅茶苦茶にしてしまったことが何度もある」とか、「一度怒ったら最後、自分でも持て余すほど執念深く復讐心が強い」といった記述があり、その内容を思い出した。
ゼロから物語を生み出す作家の才能の裏側には、想像力が豊かすぎるがゆえの、普通には理解しがたい苦悩や強烈な感情があるのかもしれない。
そう考えるとカインの激しすぎる性格にも、どこか納得できる気がした。
想像以上の奥行きの深さと、先の読めない展開、ブラックなぶっちゃけ感、読者に考えさせる余韻も残っていて、今までにない読み心地で面白かった。
Audibleにて。 -
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村山さんは2冊目くらいで、あまり手にしたことのない作家さん。
おいしいコーヒーの入れ方シリーズのイメージがあって優しい、温かい作風のイメージだったのでこちらを読んでびっくりしました
まず天羽カインという作家が面白い
直木賞への執念がすごいのはもちろん
サイン会などでも細かな気配りを周囲に要求する。そしてその要求がなかなか高度で、その後反省会という名の地獄が待っている、、、
それだけ天羽カインの作品をたくさんの人に届けたいという気持ちが強いということですが
読んでいるとこちらまで怒られているような気持ちになり、胸が痛くなってきます
でも心の中を覗けば本に対する愛、そして焦りからくる厳しさであるとわかり、天羽のことを愛おしく感じてしまうのです
、、、めんどくさいけど。
前半はそんなドロドロネチネチで進む一方
出版業界の裏側についても詳しく描かれています
これがすごい興味深い!
作品がどのように作られていくか、直木賞の仕組みや選考基準についても知れて勉強になったし、そこでのやりとりもとてもリアルでそれを直木賞作家が描いていることそのものに面白さを感じました
ひとつの小説に対してや、その作家に対しての印象や思いが、
作家、担当編集者、別の会社の編集者、書店員
と立場が違うと
こうも意見が違うのかというのが印象的でした
自分が今手にしている本も
作家が我が子のように育てた作品で
あの文章、あの一言に魂を込めているんですね
そしてその後ろにはたくさんの人の想いが乗っていて、汗と涙と血と肉の結晶で、、、
改めて本を抱きしめたくなります
手元に面白い本を届けてくれてありがとうと頭が下がります
この作品を読むと
先日の該当なしとなった直木賞について考えてしまいますね、、、
作中にも何度か該当なしにはしたくないというような文がありました
これだけ人の人生を変えてしまうような賞なのに
作家の皆さんはどんな思いだったのか、、、
序盤から十分に面白いですが
終盤の展開で星を増やしました!
とりあえず夫ムカつくー\\\٩(๑`^´๑)۶////-
2025/08/23
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村山さんの作品はほぼ読んでる!同い年やしね。
早く順番来ないかなぁ。
そして、ムカつくという夫に寄り添いたい!村山さんの作品はほぼ読んでる!同い年やしね。
早く順番来ないかなぁ。
そして、ムカつくという夫に寄り添いたい!2025/08/23 -
2025/08/24
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ベストセラー作家・天羽カインの強烈な個性と行き着く先を、固唾を飲んで見守っていました。そして、惜しげもなく語られる出版業界、直木賞選考の逸話や秘話など、とても興味深い読書体験でした。
異常なまでに直木賞へこだわり渇望する天羽カイン。サイン会では微に入り細に入り準備、お客様へも神対応をし、その後の食事会も和気藹々…と、一転して突如反省会が始まり、誰彼なしにキツ〜い毒舌でダメ出しのオンパレード! 半端ない怒りと承認欲求に、周囲は腫れ物を触るような扱いです。
その後、若手女性編集者とタッグを組み、伴走しながら物語は進み、「小説」「直木賞」の魔物に取り憑かれた作家と編集者二人の、頂点を目指す怒涛の展開になります。
作家が全身全霊で書き、その託した想いを編集者と共に情熱をもって磨き上げ完成する作品は、改めて愛おしいものだと理解できます。編集者の実情も含め、陰の努力と裏側を知ればこそですね。 「作家はたいへんに業の深い生きもの。生身の自分自身の中に棲んでいる化けものと、格闘の果てに折り合いをつけなければならない」という作中の大学教授の言葉が、妙に的を射ている気がしました。
ラストも納得。本好きの方は絶対楽しめる一冊だと思います。作家さんには、今後も誰かを慰め寄り添う物語を提供してほしいものです。-
きたごやたろうさん、ご丁寧にありがとうございます!
全くの想定外のことでした。
ほぼ、抽選で義理チョコ当たった感?
本作も「PRIZE」だけ...きたごやたろうさん、ご丁寧にありがとうございます!
全くの想定外のことでした。
ほぼ、抽選で義理チョコ当たった感?
本作も「PRIZE」だけに、考えさせられます…
今後ともよろしくお願いします♪2025/02/12 -
アワードの先輩である おびのりさんにお褒め
いただき、全く痛み入ります!
今後ともよろしくお願いします(^^)アワードの先輩である おびのりさんにお褒め
いただき、全く痛み入ります!
今後ともよろしくお願いします(^^)2025/02/12 -
No Book & coffee No LIFEさんへ
実力!実力!
見てる人はちゃんと見ているってことですよ!!No Book & coffee No LIFEさんへ
実力!実力!
見てる人はちゃんと見ているってことですよ!!2025/02/12
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本屋大賞ノミネート作品。
この本もブクトモの皆様のレビューから読みたくてたまらなかった本。
初期は店頭であまり見かけることが出来ず、なかなか購入出来なかったのですが、本屋大賞ノミネートになった途端、あちこちの書店に平積みされるように*( ᵕ̤ᴗᵕ̤ )*
やっと購入出来ました(*´꒳`*)
主人公は売れっ子作家・天羽カイン。
女性作家さんです。
読み始めからこの作家さんの自己中心的な振る舞い、言葉遣い、超気になりました。
が、それがこの人物の魅力なのか、全然好きなタイプじゃないのに目を離せなくなります^^;
それからこのカインの旦那がクソ過ぎて(ー ー;)
蹴っ飛ばしてやりたくなったり。
カインもこのクソ旦那を蹴っ飛ばしてやれば良かったのに(-。-;
年度末の3月、今週も本を読める時間が全然捻出出来なかったのですが、ほんの10分とかの隙間でも、一気に物語の中に入り集中して読めてしまいました。
凄い魅力的な本だなって、読み始めて直ぐに感じられました(∩ˊᵕˋ∩)・*
直木賞の選考について考えたこともありませんが作家さんの気持ちがかなりリアルで、これからの直木賞発表の時はこれまでとまた違った思いでドキドキワクワク出来そうです。
この文章がここに効いてくるのかぁ!と思うような伏線が楽しく、ミステリ好きの私にも楽しめる作品でした (๑˃̵ᴗ˂̵)و
この作品もめっちゃ面白かったですが、今の所本屋大賞、私の1番は殺し屋の営業さんだな(*´艸`*)
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今日は旦那がゴルフなので娘とデートです (๑˃̵ᴗ˂̵)و
久々にレストラン『さわやか』に来ています。
何年か前からめっちゃ流行ってきてしまい、県外からもお客さんがわんさか押しかけてきて、開店時間に入ったのに1時間以上待ってます(~_~;)
お腹すいたー(ㆀ˘・з・˘)-
シンタローさん
相性大事ですね(∩ˊᵕˋ∩)・*
1番大事なのはお互いを思いやる心でしょうか♪シンタローさん
相性大事ですね(∩ˊᵕˋ∩)・*
1番大事なのはお互いを思いやる心でしょうか♪2026/03/22 -
噂のカインだ!星も満点!!
さわやかって店名が良いですね!店員さんは皆さん爽やかなんだろうか(o´艸`)
僕は今、大阪で友達と別れて疲れて本...噂のカインだ!星も満点!!
さわやかって店名が良いですね!店員さんは皆さん爽やかなんだろうか(o´艸`)
僕は今、大阪で友達と別れて疲れて本屋付近で座ってダラダラしてます^^;
でもアシックス行かないとー。2026/03/22 -
雪さん
噂のカインは私には合っているようでした♪
店員さん、鬼のように忙しくて、多分かなり辛いと思いますが、みなさん笑顔で頑張ってお...雪さん
噂のカインは私には合っているようでした♪
店員さん、鬼のように忙しくて、多分かなり辛いと思いますが、みなさん笑顔で頑張っておられましたよ。教育が行き届いているのだろうなって思いました*( ᵕ̤ᴗᵕ̤ )*
本屋さんダラダラ最高です!
本屋さんに何時間か居たいですっ!
アシックス、靴かな?
いいもの見つけて来てください (๑˃̵ᴗ˂̵)و2026/03/22
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直木賞がどうしても欲しい作家と、その作家から全幅の信頼を置かれた編集者が、二人三脚で直木賞をものにするまでの物語で、二人の絆から生まれた渾身の小説は、直木賞を取れたのか…。
…という話に、のめり込んで読んでいたら…。
まさかあんな結末が待つまでいるとは、想像できなかったです。
是非読んでみてください。
実際の描写がリアルで、本当にあってもおかしくない話だなと思いましたが、本当にカインがいたらまわりは大変だろうな。
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人気作家 天羽カインの唯一無二の望み、それは、
「どうしても、直木賞が欲しい」!!
本を出せばたちまちベストセラー、映像化になった作品も多数、本屋大賞にも輝いた。
なのにどうしても直木賞が獲れない。
いつも候補作にはあがるのに、最終段階で落とされてしまう。
自分の作品の何がいけないのか、審査員は正当に評価しているのか。
どうしても自作を認めさせたいカインと担当の女性編集者とが手を取り合い、直木賞受賞を目指す。
いや〜噂には聞いてたけどスゴかった〜\(ᯅ̈ )/
ここまで1つの賞に執着するなんて、作家さんにとって直木賞とはそんなに権威のある賞なのか〜。
正直言うと、芥川賞も直木賞も発表されたら へぇ〜とはなるけど、個人的にはそこまで感心はないかも。
個人的には本屋大賞の方が興味あるなぁ(•ᴗ•; )
出版業界の裏話や作家さんの思いとか、知らなかった事もたくさん書かれていて面白かった!
それにしてもこの作家さんのキャラ、強烈だったな〜
わがまま放題っていうのとはまた違う気がするけど、自分の欲求をストレートに言い過ぎて 周りを振り回す感じ。そして圧が凄い〜。
これは担当する編集者も大変だな〜( > < )
若手女性編集者が彼女を担当するのだが、その距離感の難しさもこの小説のポイントになっていた。
この本の中で 関係者が文学賞に於いて1番避けたいのが「該当者なし」という結果になってしまう事だと書かれていて、この作品の刊行後、今回まさに芥川賞、直木賞ともに27年振りの該当者なしという結果になった事にめちゃくちゃ驚いた。
これにはきっと著者の村山さんも驚かれただろうな〜!
作家さんが作家の世界を描いた作品、面白かった〜!!
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ゆきさ〜んo(^▽^)o
作家さんにとっては やっぱり直木賞ってそんな重みのある偉大な賞なんですねΣ( ̄。 ̄ノ)ノ
じゃあもしかしたらリアル...ゆきさ〜んo(^▽^)o
作家さんにとっては やっぱり直木賞ってそんな重みのある偉大な賞なんですねΣ( ̄。 ̄ノ)ノ
じゃあもしかしたらリアルに 天羽カインみたいな作家さんがいるのかも!(。・о・。)ワオ
2025/08/23 -
2025/08/23
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しんさまー (*・ェ・*)ノ~☆コンバンワ♪
え〜なんか上から目線というか、ほんとやな感じの旦那さんですよ〜⤵⤵
しんさまは寄り添えるかな...しんさまー (*・ェ・*)ノ~☆コンバンワ♪
え〜なんか上から目線というか、ほんとやな感じの旦那さんですよ〜⤵⤵
しんさまは寄り添えるかな?いつか読まれた時の楽しみにしとこ♪2025/08/24
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「本屋大賞」は受賞している人気作家にも関わらず、直木賞には2度候補になるも受賞できずにいる女性作家、天羽カイン。天羽と担当編集者 緒沢千紘の直木賞への道。天羽の、周りの関係者には傍若無人だが、作品、読者に対する真摯な態度がいい。作家と編集者との関係など興味深い。エンディングも良かった。
イベントで「直木賞とは?」と問われた大御所(南方権三)が話した内容(P.341)が印象的でした。南方権三=北方謙三ですよね。 -
天羽カイン本屋大賞にも輝いた天羽カインの欲しいもの、それが直木賞。売れっ子で直木賞候補にあがるのに、直木賞が獲れない。
何としてでも文壇に認めさせてやるという情熱。ヒステリックなほどの情念に周囲はたじろぐ。自分だったら近くに寄りたくない。バサリと斬られそうで。
でも、天羽カインに憧れ、推す編集者がいた。それが、緒沢千紘。
カインに信頼され、公私の区別が曖昧になった千紘はだんだん作家と編集者の敷居をこえていく。閉じた世界の怖さ。もう一人俯瞰者がいればきっとちがうはずなのに。
「あなたを許したわけじゃない」と「あなたを許さない」では意味あいが違う。
閾を超えてしまった編集者と
作家のプライド
インパクトのある物語だった。
初めての作家さん。心理描写に圧倒された。
背景を流れるクラシック音楽もよかったな。-
2026/02/28
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アールグレイさん、こんにちは。
千紘はこの世界に復帰するまで時間がかかりますよね。
でも、もう一度編集者として頑張ってほしいとおもっちゃいま...アールグレイさん、こんにちは。
千紘はこの世界に復帰するまで時間がかかりますよね。
でも、もう一度編集者として頑張ってほしいとおもっちゃいました。天羽とはダメでも。2026/02/28
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ダ・ヴィンチのBOOK OF THE YEAR 2025 小説部門 第1位。
2026年本屋大賞ノミネート。
ということで、本屋大賞発表前に読みたかった。
主人公の天羽カインは本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに、直木賞が獲れない。文壇から正当に評価されない。私の何が駄目なのかと憤怒の炎に燃えていた。何としてでも認めさせてやる。全身全霊を注ぎ込んで、絶対に…
とにかく承認欲求の塊であるカインの熱量たるや半端ない。直木賞を獲るためには自分に妥協しないのはもちろん、他人にも妥協はしない。やれることは全部やるし、それを周囲にも求める。完璧なパワハラ気質。
カインの作品に対する情熱は尊敬に値するけれど、正直カインの言動がどうしても受け入れられず、振り回される周囲の人に同情しかない。
華々しい直木賞の、壮絶な裏側を見てしまった気がする。 -
オモロー!こういうドロドロ大好き。NN(何が何でも)直木賞の作家と編集者の話。ここまで来ると、欲望も清々しく感じる。
それに編集者って、殆ど本を書いているようなものでない?とも思ってしまった。社会人になって数年で務まるものなのか? -
直木賞を題材にした作品ということで気になって本作を手に取りました。個人的には本作がどういうラストを遂げるのか、最後の最後までわからなかったこともあって、ドキドキしながら楽しく読むことができました。
以下あらすじです。(Amazonより引用)
天羽カインは憤怒の炎に燃えていた。本を出せばベストセラー、映像化作品多数、本屋大賞にも輝いた。それなのに、直木賞が獲れない。文壇から正当に評価されない。私の、何が駄目なの?
……何としてでも認めさせてやる。全身全霊を注ぎ込んで、絶対に。
まず、主人公である作家の天羽カインが典型的な厄介者の作家さんイメージで、現実にいたら嫌なヤツだけど、キャラとしてはどこか憎めず、愛くるしさまで感じさせるくらい魅力的に感じました。
また本作はとても緊迫感があって、主人公たちの焦りや、ままならない気持ちが沸々と伝わってくるだけでなく、どことなく不穏な予兆も感じられ、先行きが分からないこともあって最後までストーリーから目が離せず、とても惹きつけられるストーリー展開だったなと思いました。
著者プロフィール
村山由佳の作品
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