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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784163919423
作品紹介・あらすじ
植物や花、虫やさまざまな生き物が乱舞する、色鮮やかで心躍る「子供の世界」へ!
二人の少年が川原で拾った、怪我をした犬の命運は。(「心臓」)
子供が飲み込んでしまったスモモの種はいつ出てくるのか。(「種」)
「穴」で芥川賞を受賞して以来、独自の小説世界を築いてきた小山田浩子さん。近年では海外に招かれる機会も多く、「日本発のマジックリアリズム」の旗手として注目を集める著者が、言葉の奔流のような文体と、顕微鏡をのぞきこむような高精細な描写で「子供の世界」に挑む9篇。
子供の世界へ身体ごとダイブし、子供が見るように世界を見る、唯一無二のカラフルな小説集。
感想・レビュー・書評
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帯に「色あざやかな子どもの世界へ」とあるのだけど、私には懐かしいセピア色に感じられた。…表紙の色の影響?
色あざやかというより、瑞々しいというのかな。とにかく五感が刺激されるの。あと、言葉そのものに湿度を感じる。
小山田さんの著書は初めてだったけど、この唯一無二の世界観は、ぜひ極めていってほしいな、などと勝手に思ったりした。
独特の文体というか、改行がなくて文字がびっしり。だから、ページ数少なめの割には読みごたえがあったなぁ。ある短編に関しては「。」すらなくて、けっこう衝撃を受けた。
息継ぎはどこでしたらいいの?これは誰の台詞?と、ときどき戸惑いながらも、独特の雰囲気が魅力的で、惹き込まれるようにして読んだ。
頭の中の言葉をそのまま書き起こしたかのような文章、瑞々しい描写に、子どものころのリアルな感覚が蘇る。なかなかおもしろかった。芥川賞受賞作『穴』もぜひ読んでみたいな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いつも難解な芥川賞作家の作品、しかも苦手な短編集。案の定、句読点ゼロ、文の途中で突然年を取っていたり。が、わかりやすく読みやすいのもあった。子供がスモモの種を飲み込んで、母親がものすごく心配する話は、私のことか?
他のも読めるかも -
短編集。
最終話であの犬が、ハツ、という名前をもらって元気にしていたのが嬉しかった。
全体的にそうなのだけど特に「おおしめり」は「。」が無く「、」も最小限で呪文を読んでいるかのようだった。 -
最近なかなか小説を読む気が起きなかったが、この人のならと本作を手に取った。
これも連作短編小説で、現実を凝視することでそれがだんだんとデフォルメされていき、しかもいろんな声が聞こえてくる小説集だった。
では本作の特徴は何かといえば、「苛立ち」だろうか。
夫への苛立ち、母親への苛立ちなど、他者との分かり合えなさへの苛立ちがところどころささくれのように現れてはぎょっとさせられる。
以前の作品では、聞こえてくる他者の声をただそういうものとして語り手は受け入れていた。しかし本作では違う気がした。いくらか拒否する姿勢がある。
それからめずらしく最後の短編「ものごころごろ」は、とてもまとまった物語で、思春期の男の子たちの心のすれ違いを描いていた。こういうことってあるよなあとしんみりさせられた。 -
小山田浩子は好きな作家です。でも、まあ、なかなか微妙なんですね。「書く」ということをめぐって、単なる描写を越えて書きたいというか、読者に伝えたいことがあるのでしょうが、実験的な取り組みは理解できますが、それで、何を書こうとしているのかはうまく伝わってこないんですね。だから、感想とか、どう書いていいかわからない。でも、七転八倒しているかの姿は好もしいのです(笑)。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202505090000/ -
著者初読み。
9編の短編集。
といっても、どれも独特で濃厚な物語である。
「心臓」と「ものごころ」は連作になっていて、幼少期の微妙な友達との機微が自分事として伝わってきた。
子どもの頃の記憶をたどるとこんな世界だったのだと、代弁してくれているようでなんだかうれしいような、くすぐったいような気分。 -
小山田さんの書く文章はいつもクセのある文体で好き嫌いが激しく分かれそうと思っているけど今回ほもっとクセ強になってきましたね
文中の会話文が「」で書かれず普通の本文中に流れるように会話が入ってきていて、すごく戸惑うのですが、慣れてくるとそれもまた入り込めちゃうから不思議
会話が放流されている感じがします -
久しぶりに小山田浩子の短編集。個人的に初期の『穴』『工場』がとても好きで、『小島』くらいからはちょっと作風変わったなと思っていたんですが(プライベートの影響か子供の日常的な話が増えたり)、こちらは『小島』の延長線上にありながら、研ぎ澄まされた完成度の高さを感じました。(えらそう)どれも面白かったです。一番インパクトがあったのは「種」かな。好きだったのは幼馴染男子二人が主人公の「心臓」「ものごころごろ」。以下個別に備忘録メモ。
「はね」
中学1年生の僕は、従兄の妻のホナミさんに家庭教師をしてもらうことになる。ホナミさんはメダカやヤゴを飼っていて、ヤゴが羽化すると僕を呼び出して一緒に観察したりする。羽化したトンボは翅が1枚奇形だった。僕が帰宅し自転車のカゴからリュックを出すと、気づかず潰してしまったトンボの死体がくっついていた。やがてホナミさんは妊娠し、家庭教師は打ち切りに。子育てに忙しいホナミさんはもうメダカも飼わず、ヤゴの抜け殻の標本なども捨てられていた。
お母さんってどうしてみんなおっちょこちょいなんだろうねという話題から、子育てで忙しいから、となり、最終的にそう話していたホナミさん自身もお母さんになり子育てで忙しくていろんなものを手放してしまう。
「心臓」
小学5年生のエイジと宏は幼馴染。ある日、怪我をして走っている犬をみつけて追いかける。倒れた犬をエイジは動物病院へ運ぼうと言い出し、通りすがりのタシロのおっちゃんとその若い妻なっちゃんを巻き込んで、動物病院へ。犬の怪我は大したことはなく獣医さんも良い人で、お金はタシロのおっちゃんが出してくれたが、回復した犬を誰が引き取るかというと当てがなく、宏は勢いでつい自分の家で飼うと言ってしまうが…。
宏のお母さんが理路整然としすぎてて怖い。家庭は裕福じゃないけどわんぱくでのびのび育ったエイジと、中学受験を控えている真面目な優等生の宏のコンビが可愛い。犬の名前はエイジが勝手に決めちゃうけど、宏もこの先ちゃんと自分の意見を言って生きていける大人になれるといいなと思う。
「おおしめり」
大学生の私は一人暮らしを始めたばかり。窓から見える公園の水たまりに、ある晩月が映っているのを見る。さらに自分の姿も水たまりに映っていて、でもそんなところに水たまりはないはずだし自分が映るのも変だなと思っていたらどうやら夢だった。近所の小学生の家庭教師をしたり、その家族にすすめられた中華料理屋でご飯を食べたりした帰り道ふと時空がずれて彼女は子供のために雨の日に通学の見守りをしているお母さんになる。公園には水たまりができていて、自分の姿が水面に映る。
読点がほとんどない金井美恵子みたいな文体でどんどん起こることが羅列されていくのが悪夢ぽく、途中でするっと時空を超えちゃうのが鮮やか。彼女が見たのは未来の自分の姿だったのか。
「絵画教室」
コロナ下で子供のために図書館に絵本を借りに行った僕は、そこで展示されていた小さなサークルの絵画展で、見覚えのある石をみかける。それは少年時代に通っていた絵画教室で先生が顔を描いた石と同じものだった。そこにいた女性(先生の娘)と話し、先生がすでに亡くなったことを聞く。その話を母親にすると、絵画教室で描いた子供時代の絵を探して持ってきてくれた。それを眺めながらのとりとめのない回想。
「海へ」
コロナ下でどこにも遊びに行けない子供のために磯遊びに出かけた家族。しかし満潮で磯は見えなかった。
「種」
仕事のため子供を祖父母に預けたら、スモモの種を飲んでしまったと連絡が来る。医者に聞いてもネットで調べても、とくに支障はなく排便されるとわかるが、もし種のとがった部分で内臓が傷ついたら、もしどこかでつっかえてしまったら、と母は怖い想像ばかりし続け、しかも子供は便秘。最終的にやっと子供が出したうんちを、母は素手でつかみ中に種があるか確認、種を洗ってポッケに入れる。
これを狂気的とみるか、母親なら当たり前、と思うか。自分ならどうするだろう。やっぱり同じことしちゃうかも? それくらい大丈夫という夫との意識の違いなどがリアル。
「ヌートリア過ぎて」
コロナ下、道端で偶然再会した同級生の女性二人。一人が河を泳ぎ渡るヌートリアの写真を見せる。学生時代の思い出のいくつか。
「蛍光」
子どもが友達と蛍を見に行くことになり、母親は蛍にまつわる大学時代の思い出を回想する。子供は無邪気に母親を傷つけ、たまに遊んでくれるだけの優しくて機嫌のよい父親にばかり懐く。夫もまた無自覚に妻を傷つけている。誰も悪くないのにしんどい。
「ものごころごろ」
「心臓」の宏とエイジの後日譚。お受験に合格し無事エリート中学生になった宏は、エイジと疎遠になっていく。エイジは自分が助けた野良犬ハツが宏の家で飼われることになっても、頻繁に会いに行き、散歩をしたがり、勝手に餌を与えたりして、無邪気だけど空気が読めない。宏の母はもちろんそれをよく思わず、宏に友達を選ぶよう助言。エイジの母のほうも、宏の母からの苦情厭味電話で辟易、もう宏の家に行ってはいけないと言う。どちらの気持ちもわかるので辛い。可哀想なのは子供たち。しかし自然と彼らの暮らす世界もすれ違っていく。切ない。 -
「最近」に続くコロナ禍の生活を細かく描写している。小山田文学の真骨頂。改行がなく油断すると思考の主体が入れ替わっているので混乱することもあるが、視点、思考、時間、場所が自由に浮遊する感覚は、慣れると心地よい。
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お母さんの存在感、半端ないです。
子供がスモモの種を飲んじゃった話で、心配してたまでは普通だったのに。
そうする?!! -
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いる。こんな子。
この作品の中で子供が生きている。
なにより、視点も人物も情景もシームレスに移ろい続ける文体は読んでいて最高に気持ちがいい。
「小山田さんだー」とゆかいな気持ちになってくる。 -
懐かしい気持ちに何故だろうと思いながら読む。パンデミックや携帯も登場するのに昭和を読んでいるような。短編なので読みやすいが段落がないので長編だったらしんどいだろうなぁ。
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息も継がせぬ文体に気圧される。句点一切なしの『おおしめり』は頁一面余白なし。カギ括弧や改行も省略。くどさを感じつつも、読み難くないのが不思議。『心臓』と後日譚の『ものごころごろ』が良かった。
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独特の文体。読んでいて迷子になりそうになる。でも、そこがクセになる。
自分の子ども時代を思い出させてくれる作品です。 -
リアリズムっていうのか?見たまま聞こえたま思ったままを、隔たりなく連ねていく描き方はおもしろいけど。登場人物が特別深く考えてるわけでもなく、ものすごい妄想をしてるわけでもなく、日常を淡々と、SNSにあげるみたいにとりとめなく脈略なく相手に伝えようとするでもなく、って感じ。
特に「おおしめり」は、苦手。一気に読めるのはいいけど、何も残らないな… -
デビュー作「工場」から変わらずの、改行ほぼ無し·情報量マシマシが大変心地快い
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短編集。「はね」「ハツ」の2作品を読んで断念。
改行のない(と思ってよくみたらあった、から、
少ないというべきか)長い文が読みにくくて、少し苦痛。芥川作品にこういうの多いよなぁ、と勝手な偏見。「はね」があまりに不穏で、そこでやめようかと思ったが、次の「ハツ」が犬の話だったので読み進めた。(犬好きなので)また、変な結末だったら、と畏れたけど、まぁ、良い結末で安心した。ふー! -
2025/8
借りたけど読み切れず
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