芥川賞全集 第十七巻

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  • Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784165072706

作品紹介・あらすじ

昭和十年の創設以来、世紀を越えて日本文学の本流をリードしつづける「賞の中の賞」の名作を完全網羅。芥川賞選評・受賞者のことば・年譜収録。

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞を読むにあたって、全集が便利かなと思い
    利用してみました。良い点は、選評が載っていること
    悪い点は…物理的に重い。持ち運びしづらい。
    『タイムスリップ・コンビナート』と『おどるでく』は
    二回読みました。

    『タイムスリップ・コンビナート』笙野頼子
    夢を言葉の魚拓で綺麗に写し取ったような作品。
    夢の中の自分はちゃんと理解できてる会話でも
    書き起こしたらこんな感じなんだろうと納得。
    「マグロとの恋愛に凝ってしまっている」あたりから
    ぐいぐい引き込まれました。恋愛に凝る、って。
    海芝浦駅って不思議な場所だなぁ。

    『おどるでく』室井光広
    ロシア語の表音で書かれた日記の中の「おどるでく」に
    ついて考察しつつ、過去の出来事を回想する、という内容
    ロシア語というチョイスはとてもいい、英語だとみんな読めるし
    フランス語だとオシャレ過ぎ、イタリア語だときっと明るい
    雰囲気に包まれてしまう、ロシア語、キリル文字なら日本人には
    なじみが薄くて薄暗い雰囲気が感じられる
    内容は日本語だけどそれをローマ字で書けばどんな内容でも書ける!という
    啄木のローマ字日記に倣ってロシア語で書いてみた、らしい
    ただし内容は難解すぎて、どうしたらいいのか…とお手上げでした
    そもそも小説なのか、という疑問が。人間関係の回想部分がなかったら読み物として面白かったかも。

    『この人の閾』保坂和志
    前の2作からいきなり爽やかな小説。感想があまり出てこない。。ちょうど20年前(平成7年)、書かれた時には斬新な内容だったのか?と思い立ち、1995年の小説を
    調べると、あの『失楽園』が出てきました。うーん。。
    小説も生ものということでしょうか。

    『豚の報い』又吉栄喜
    作中の沖縄の風習について間違いらしきものはあるらしい
    ですが、ダントツで面白かった、真面目に書かれたドタバタ道中記

    『蛇を踏む』川上弘美
    1行目から違和感なくすっと入っていける。梨木果歩さんの『家守奇譚』を思い出しました。

    「家族シネマ」柳美里
    設定を詰め込み過ぎてとっ散らかっている気がした。
    設定の説明で物語が進んでいく。登場人物全員が
    始終イライラ、キーキーしている印象。

    「海峡の光」辻仁成
    『冷静と情熱のあいだ』以来。こちらのテイストのほうが
    好きです。男性の苛めは女性とはまた違う陰湿さがありますねぇ。。

    巻末の選評が作品をぶった切っていて、ゾクゾクしました。
    「受賞には反対した」「読みにくかった」「何か勘違いをしている」
    「格別の感想はない」「リアリティがない」などなど。

  • 「海峡の光」辻仁成著
    2015.05.01(金)読了
     かつて自分を苛めた同級生花井修が受刑者としてやってきた。主人公斉藤は刑務官となった今、じわじわと仕返しをしようと試みるが・・・。
     読みようによっては、若干BLちっくな作品だと思った。

    「家族シネマ」柳美里著
    2015.05.04(月)読了
     俳優である妹の呼びかけにより、ドキュメントタッチの家族映画を撮ることになった。家族関係を再構築しようとするも、結局は絵に描いた餅にしかならない。
     ヒロイン素美も家族には一切を求めず、仕事で出会った陶芸家深見清一に求めるが・・・。最後の最後まで救いがなく寂しく感じた。

    「蛇を踏む」川上弘美著
    2015.05.05(水)読了
     主人公が蛇を踏んで、物語はスタートする。ある種の寓話的な作品かと思ったが、いにしえよりの信仰を含んでいるようにも思われる。
     一文事態はさらりと読める。しかし全体はねとねとしていて、自分の脳内に蛇がいるのではないかと錯覚を持った。

    「豚の報い」又吉栄喜著
    2015.05.07(木)読了
    行きつけのバーに一頭の豚が迷い込んだのが、きっかけで真謝島へ行くことになってしまった正吉。そんな彼もじつは父親の遺骨を拾いに行く目的があり・・・。女三人と男一人の珍道中を描いた作品ではあるが、みなそれぞれ心に闇を抱えて生きている。沖縄の青い空と、登場人物の苦しみとのコントラストがよかった。

    「この人の閾」保坂和志著
    2015.05.08(金)読了
     出張で小田原にやってきた三沢だったが、約束をすっぽかされ、大学時代の友人真紀さんを訪ねる。素朴な話だが、登場人物たちの会話か心地よい。二人のほかにもゴールデン・リトリーバーのニコベエ、真紀さんの子供洋介君との交流もとてもよかった。

    「おどるでく」室井光広著
    2015.05.09(土)読了
     いきなりロシア語が出てきて、読み通せるか不安だった。小説というよりも、論文を読まされているような感覚に陥った。中盤に差し掛かり、ダジャレ的な表現だったことに気づき、それからはおもしろく読めた。

    「タイムスリップ・コンビナート」笙野頼子著
    2015.05.11(月)読了
    いや-、おもしろかった! いきなりマグロとの恋愛(夢)話から、最後のオチまでツボでした。
    以前、岸本佐知子さんのエッセイを読んでから、ずっと笙野さんは気になっておりましたが、この作品を読むまではガマンしてました。
    見事にどぼん! とはまったので、読みます。

  • 柳美里「家族シネマ」のみ読了。

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著者プロフィール

笙野頼子(しょうの よりこ)
1956年三重県生まれ。立命館大学法学部卒業。
81年「極楽」で群像新人文学賞受賞。91年『なにもしてない』で野間文芸新人賞、94年『二百回忌』で三島由紀夫賞、同年「タイムスリップ・コンビナート」で芥川龍之介賞、2001年『幽界森娘異聞』で泉鏡花文学賞、04年『水晶内制度』でセンス・オブ・ジェンダー大賞、05年『金毘羅』で伊藤整文学賞、14年『未闘病記―膠原病、「混合性結合組織病」の』で野間文芸賞をそれぞれ受賞。
著書に『ひょうすべの国―植民人喰い条約』『さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神』『ウラミズモ奴隷選挙』『会いに行って 静流藤娘紀行』『猫沼』『笙野頼子発禁小説集』『女肉男食 ジェンダーの怖い話』など多数。11年から16年まで立教大学大学院特任教授。

「2024年 『解禁随筆集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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