芥川賞全集 第十八巻

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  • Amazon.co.jp ・本 (434ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784165072805

作品紹介・あらすじ

昭和十年の創設以来、世紀を越えて日本文学の本流をリードしつづける「賞の中の賞」の名作を完全網羅。

感想・レビュー・書評

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  • 2015.04.22読了 「蔭の棲みか」玄月著
    主人公ソバンは三十年間、大阪の朝鮮街に住み続け、様々なことを見守ってきた。人生と共に街の発展と噛み合う様が良かった。それにしても、村社会というのは時処を越えて怖い、と思った。

    2015.04.23読了 「夏の約束」藤野千夜著
     マルオは同性のヒカルと付き合っている。街でばったりオカマのたま代と会い、夏にヒカルの友人菊江とその友達のぞみと一緒に、キャンプに行く約束をして分かれる。また、階下に住む岡野と知り合う。日常の細いつながりを描いた作品。
     芥川賞全集に移り、初めて柔らかい筆致の作品だと思ったら、女性だからだろうか。でも、テーマは重い。

    2015.04.25読了 「日蝕」平野啓一郎著
     十五世紀のフランスを舞台とし、一人の若い僧侶がピエエルという錬金術師に会い、様々なことを目のあたりにする。
     多少は読書体力がついたと思っていたが、今回やはりないことが判明した。漢語表現や口語体についていけなかった。だから、開き直ってファンタジーとして読み始めたらおもしろく通読できた。
     余談だが、両性具有者(アンドロギユノス)の処刑場面を読んでいるとき、たまたまムソルグスキー「はげ山の一夜」が流れていて怖かった。

    2015.04.26読了 「ゲルマニウムの夜」花村萬月著
     舞台がカソリック系教護院とあって清楚な内容かと思いきや、暴力と性が散りばめられていた。ただ読んでいる最中は嫌悪感だらけなのに、読み終えてからイヤな気持ちがなくなっていた不思議な小説。作品全体アプローチの仕方が実に巧妙だったのも印象的。

    2015.04.29読了 「ブエノスアイレス午前零時」藤沢周著
     都落ちした主人公カザマは、ダンスホールのある温泉旅館で働いている。仕事は主に温泉卵を茹でることと、たまにダンスで人員が足りないとかり出される。
     ある日、社交ダンスクラブ・サルビア会がやってくる。館内を迷子になっていた老女を助け、奇妙な交流を描く。
     ラストのタンゴを踊るシーンとタイトルの噛み合わせが絶妙。見たことのない光景が広がった。

    2015.0429読了 「水滴」目取真俊著
     突然、徳正の足がふくれ水が滴り落ちる場面から始まる。この奇病は嘘をついて生きてきた報いなのか、それとも? 沖縄戦を背景に描いた作品。
     戦後七十年という節目の年に読むにふさわしいと言えよう。
     それにしても、ウシさんは典型的な沖縄のおばぁでよかった。

  • 記憶に残りそうなのが二作。
    「水滴/目取真 俊」
    戦争で生き残ってしまった沖縄のおじいさんのお話。生き残って「しまった」が伝わって悲しかった。
    「蔭の棲みか/玄月」
    在日朝鮮人街のおじいさんのお話。偏屈だけど憎めないじいさんが
    現実に受けてそうな話が悲しかった。

    選評がかなり面白かった。
    小説って、芥川賞って大変なんだなと思った。

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著者プロフィール

1960年、沖縄県今帰仁村生まれ。琉球大学法文学部卒。
1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞。
著書:(小説)『目取真俊短篇小説選集』全3巻〔第1巻『魚群記』、第2巻『赤い椰子の葉』、第3巻『面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)』〕、『眼の奥の森』、『虹の鳥』、『平和通りと名付けられた街を歩いて』(以上、影書房)、『風音』(リトルモア)、『群蝶の木』、『魂込め』(以上、朝日新聞社)、『水滴』(文藝春秋)ほか。
(評論集)『ヤンバルの深き森と海より』(影書房)、『沖縄「戦後」ゼロ年』(日本放送出版協会)、『沖縄/地を読む 時を見る』、『沖縄/草の声・根の意志』(以上、世織書房)ほか。
(共著)『沖縄と国家』(角川新書、辺見庸との共著)ほか。
ブログ「海鳴りの島から」:http://blog.goo.ne.jp/awamori777

「2023年 『魂魄の道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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