古代国家はいかに形成されたか 古墳とヤマト政権 (文春新書 36)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600366

感想・レビュー・書評

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  • 近つ飛鳥博物館に来館した際に館長さんの著書を購入。
    邪馬台国近畿圏説の重鎮とは知っていたけれど、その論拠を知ろうという気持ちもあった。(僕は、邪馬台国北九州説を信じている。)

    流石、学者の書くものは論理が明快だなと思う処と、そんなズブズブの見解どうなの、と呆れる部分がある。

    古墳時代前期まで日本では鉄の生産が殆どされておらず、鉄資源を大陸からの輸入に頼っていた。これが広域の部族連合の形成を齎し、最終的には玄界灘沿岸地域と瀬戸内海沿岸地域の対立に収斂したという論は納得。つまり、邪馬台国が魏に朝貢した時点では、瀬戸内連合に軍配が上がっているということ。
    箸墓古墳が卑弥呼の墓という仮説のもと、卑弥呼の呪術的権威の後に部族連合の体制が確立してからの造営との見解も説得力がある。

    しかしながら、濃尾平野に前方後方墳丘墓が幾つかあるからと、狗奴国に比定するのはどうだろう。狗奴国が邪馬台国の南とあるのは、中国が当時、日本の方位を誤っていたからという理由付け含めて、ムリヤリ感いっぱい。まして、濃尾平野の勢力とヤマトがずっと敵対関係ではなかったとか、濃尾平野勢力を牽制するため、ヤマトは関東に進出したという見解には呆れるしかない。

    「やまと」は東日本への交通の起点という意見も納得し難い。竹ノ内街道を歩いたことあるけど、奈良盆地の隅で、西国からのアプローチには不便。まして伊賀を経て伊勢に至る交通路なんて信じられない。

    という訳で、邪馬台国近畿説に鞍替えするのは至りませんでした。
    正直、邪馬台国が何処にあろうと、どうでもいいように思っています。それより何故、纏向に各地の氏族が集まったのかという方が重要じゃないかなと。鉄の輸入のため同盟がされたという見解は興味深いものでした。この同盟のもとに、大陸の国の存在が部族の集結、原二ホン国の誕生に繋がったのかなと読後に考えています。

    追記。河内王朝への交代はない。婿取りはあっただろうという見解。しかし、事実はその中間ではないだろうかと素人は考える。100%の白黒しかないと考えるのは、おかしくないだろうか。

  • 高校地理歴史科の教員免許の参考図書として購入しました。図も多く、受験生にもわかりやすい古墳の入門書だと思います。
    出土品による考古学的な考察よりも当時の政権との照らし合わせがされているところも興味をそそられるところです。古墳時代は生徒が興味を持たない割に受験では必ず一問は出るので参考資料として役に立ちます。

  • 古墳造営から当時日本に存在したヤマト政権の様子を伺い知ろうという本。私にとっては文体が少し読みにくかったため、星を一つ落としたものの、内容自体は面白い。

    ヤマトと邪馬台国との関係にはっきりとした意見を述べてくれてるのが良い。おそらく学者にとってはセンシティブな話題であるため、言及は避けられるのだろうが、例え間違ってたとしても、素人にはありがたい。

  • 弥生時代から古墳時代、そしてヤマト政権の成立経緯をしりたくて読んでみようと思った本です。
    あとがきにあるのですが、列島各地における古墳の出現を、古墳の伝播というような、歴史的に何ら説明したことにならない評価でお茶をにごしてきたそれまでの考古学による古墳研究を厳しく批判されたのが、東アジア古代史の故西嶋定生しだったという。
    そして、古墳の造営を連合政権としてのヤマト政権の政治秩序との関連で捉えられたことを学生時代に感銘を受けた著者が著したのがこの本であります。
    内容ですが、
    序章 古墳とは何か
    第1章 古墳と邪馬台国
    第2章 古墳と初期ヤマト政権
    第3章 巨大古墳の世紀
    第4章 ヤマト政権の変質
    終章 古代国家への道
    あとがき 
    となっています。
    納得した文章です。
    河内・大和が瀬戸内海航路の終点であり、また広大な東日本への交通路の起点であるという、物資と人の流通・交流システムの要の位置を占めていたことによるものであろう。
    狭義の大和、すなわち「やまと」の地は、まさに大和川(初瀬川)を溯り、伊賀をへて伊勢に至る交通路の起点の位置を占めている。
    継体大王とヤマト政権の関係も解りやすかったです。

  • 古墳の種類の変遷や伝播の跡をたどって、古代日本の勢力図がどう移り変わっていったのかを説き明かす。
    同時期に読んだ『「神と鬼のヤマト」誕生』でも手がかりとして取り上げられていた前方後方墳(円じゃなくて)の解釈が、ここではまた違うのが興味深い。

  • 古墳とは、権力者からのメッセージである。それがこの本から得た教えだ。そのメッセージをどう読み解くか、当時の勢力図、時代状況や外交関係を駆使して推理する。文献のない古代を探るには、古墳を調べることが一番だということがよく分かった。

  • 邪馬台国からヤマト政権への移行時期に当たる古墳時代を古墳の分布、規模等のデータを元に考察すると言った感じの本。

  • 古墳を通して弥生期の終わりから古墳時代のヤマト政権の成立過程を考察している。昔ながらの古墳自体や副葬品の形体からの時代考察に加え炭素同位体年代測定や年輪年代法により、古墳からの文献批判に説得力が増している感じがした。
    もう一度じっくり精読したい本である。

  • [ 内容 ]
    ヤマト政権が成立したのは、果して三世紀か、五世紀か、七世紀か。
    最新の発掘成果をふまえて古代史最大の謎・この国のルーツに迫る。

    [ 目次 ]


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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 一応読了のステータスとしましたが、ほとんど理解で来てません。もうちょっと勉強して再度トライします。でも、狭い視野、行動範囲、時間感覚しか持っていなかった僕には刺激的な本。狭い地域でだけ捉えていては見えないものがあるのだな。
    同時並行で読んだ「邪馬台国論争」とは例えば古鏡の検討などを照らし合わせて読めばもっと面白かったのにと反省しています。

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著者プロフィール

1938年、大阪府生まれ。1968年、同志社大学大学院博士課程単位取得退学。奈良大学教授、大阪府立近つ飛鳥博物館館長などを歴任。現在、国立歴史民俗博物館・総合研究大学院大学名誉教授 ※2022年9月現在
【主要著書】『古墳と古墳群の研究』(塙書房、2000年)、『倭国誕生』(日本の時代史1、編著、吉川弘文館、2002年)、『考古学からみた倭国』(青木書店、2009年)、『古墳からみた倭国の形成と展開』(敬文舎、2013年)

「2022年 『東国の古墳と古代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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