高橋是清と昭和恐慌 (文春新書)

  • 文藝春秋 (1999年10月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784166600663

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  • タイトルは絶対『高橋是清と井上準之助』にすべき。この2人を対比させながら金本位制を軸にした国際通貨体制と昭和初期の日本経済を描いている。ではなぜタイトルに井上準之助の名前がないかというと、著者はどうやら国際金融家として高橋是清の方を評価しているよう。井上準之助が金解禁を断行した理由は主に3つ。?当時は金本位制こそが国際基準となっており、世界の潮流に乗り遅れまいと考えたこと。?1929年にBISが設立され、参加資格に金本位制を採用している通貨安定国であるという条件があったこと。?当時の強力な金解禁論者に浜口雄幸がおり、雄幸に金解禁を任されたという形での入閣だったこと。しかし解禁のタイミングは最悪で結果として世界恐慌の荒波の中に放り出さることに。でも興味深いのは当時井上は世界恐慌に対してかなり楽観的だったこと。ポンドやドルが減価すれば円との金利差は縮小し、正貨が海外に流出することがなくなると逆に喜んでいた。しかし実際は輸出財価格が大幅に下落し昭和恐慌に突入。井上は高橋に蔵相の座を譲る。高橋は直ちに金輸出を再禁止、その結果株式市場は高騰し為替市場は暴落、円安が進んだことで輸出が促進して経済は一気に回復した。ここで明暗を分けたのは井上と高橋の柔軟さの違い。井上には「金解禁を行うのは自分しかいない」というプライドと、金本位制こそ「世界標準」という安易な思い込みがあったため、後戻りできなくなってしまった。それに対して高橋は自国経済と金本位制の仕組みをよく理解した上でそれが日本にとって有益か無益か損益の計算をしていた。「世界標準」に踊らされるのではなく「自分の頭で考えろ!」。これこそグローバルな現代を生き抜く上で身に着けておくべき哲学である。 というような内容です。ふー。

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著者プロフィール

木村 昌人(きむら・まさと):1952年横浜生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科(政治学専攻)博士課程修了、法学博士(慶應義塾大学)。博士(文化交渉学、関西大学)。株式会社三井銀行勤務後、スタンフォード大学およびハーバード大学各客員研究員、ミズーリ州立大学客員教授、文京学院大学教授、公益財団法人渋沢栄一記念財団研究部部長および研究主幹、神田外語大学非常勤講師を歴任。現在、関西大学客員教授。主な著書に、『渋沢栄一 日本のインフラを創った民間経済の巨人』(ちくま新書)、『日米民間経済外交1905-1911』(慶應通信)、『渋沢栄一 民間経済外交の創始者』(中公新書)、『財界ネットワークと日米外交』(山川出版社)、共著『グローバル資本主義の中の渋沢栄一 合本キャピタリズムとモラル』(東洋経済新報社)ほか。

「2023年 『民間企業からの震災復興』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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