中国人の歴史観 (文春新書)

  • 文藝春秋 (1999年12月15日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784166600779

みんなの感想まとめ

中国の歴史観と外交に関する新たな視点を提供する本書は、著者が自身の経験を通じて描く「以夷制夷」の戦術に基づく中国外交の実態を解説しています。上海事変を起点に、中国がどのように世界の中での立ち位置を変え...

感想・レビュー・書評

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  • 1982年に東大に留学し、その後も本邦で研究活動を続けている著者が1999年に刊行した書。

    中国外交は一般に言われる中華思想に基づくものではなく、より伝統的な弱者の戦術である「以夷制夷」であると説く。

    諸外国を敵か、友か(、それ以外か)に分類する二元論に基づき、上海事変で世界の最強国から最弱国に転落した同国の弱者・被害者意識も根底にあるという。

    その他、上海事変から現代(二十世紀末)に至る対米、対日意識の変遷を中国人の立場から総括する。

    本書が書かれて以降の歴史をみても頷ける点は多々あるが、習近平の一人独裁政権による戦狼外交が未だに弱者意識によるのか、中華思想に基づくものかも含め、本書の改訂を期待したい。
    本書のあとがきにある「いつまでも『五千年の文明と百年の屈辱』といった議論を繰り返しても何の役にも立たない」との認識の上での行動なのか、依然として引きずっているのかという問いでもある。

  • 中国人の著者なりの見解はあるだろうが、こちらの想像を出るものではない。そりゃそうだろうという文章ばかりが目立つ。しかし、中国人が阿Qから脱却しつつあるというのは、少し眉に唾。

  • 15年前のものだから、現状とは違って当たり前だけど、この当時、まだ中国は発展途上感満点だった様子は伺える。そういえばそうだった。現在とは隔世の観があるけど、意外に根っこのところは変わってないのかも、とか思ったり。親日ではなく知日ってのも納得。

  • 筆者の主張のポイントは、中国外交は「弱国の外交」であるということ。平成11年の本なので、急激に変化している現在の中国にも当てはまらない部分もあるだろうか。今は大国的な外交にシフトしつつあるかもしれない。
    ・「弱国の外交」の典型例は、友と敵とを分け「以夷制夷」するということ。古くは三国干渉、30年代の「欧米派」、果ては90年代後半江沢民の歴史問題持ち出しによる日米離間策。でもこれ、中国特有というより、後に出てくる古典的パワー・ポリティクスじゃないかな。もっとも、19世紀西欧の影響ではなく、中国では春秋戦国時代からこれがあったということだそうだけど。
    ・中国では日本の侵略に一貫した意思があったとみなし、31年柳条湖事件からの「十五年戦争論」や「田中上奏文」が受け入れられやすい、東京裁判でもこの史観とのこと。以前の中国人とのやりとりはまさにそうだったな。日本では、私も含め、軍部の独走によって泥沼化したという認識が一般だと思うけれど。
    ・中国外交を評して「中華主義」「パワー・ポリティクス」と両方使われるけど、筆者は両者が相容れないとして後者の考え方を採る。自分も考えなしに両方使ってきたけど、深く考えなければいけないな。前者は米国的、後者は欧州的?
    ・99年の在ユーゴ大「誤爆」後の反米デモは、政府がコントロールして整然と行われ、ひいては政権の正当性と社会の安定に資する由。今読むと、05年春の反日デモにもそっくり当てはまりそうだ。
    ・民国期は対日「一面抵抗、一面交渉」であり、戦後は対米「一面闘争、一面改善」、主権原則を強調する一方で実は柔軟で、78年以降ソ越同盟と経済建設のために鄧小平は対米接近が必要となり譲歩したとのこと。この分析に異は唱えないけれど、歴史観というより普通の外交術じゃないか?それに、日本に対しては中々柔軟になってくれないなあ。
    ・対米観は「友好国」「友好には裏がある」が同居・混沌、更に状況に合わせイメージを修正。一方対日観はそれほどバラエティに富んでおらず、特に「非知日派」では誤解に基づくものが多いとのこと。自分に何かできるとすれば、「知日派」でない人とも意識して接触するということだろうか。

  • [ 内容 ]
    複雑な日、米、中三国関係のなかで、日本とアメリカが共通した「悩み」をもっている。対中国外交の難しさである。
    台湾問題、人権問題、歴史認識の問題、貿易問題などをめぐる米中、日中間の緊張関係は、今後も長期間続くだろう。
    最大の理由は、「社会主義体制の中国が読めない」、である。
    しかし、中国の世界戦略は、「社会主義」のイデオロギーのみによって策定されたものではない。
    いまこそ、「社会主義の中国」という固定観念を捨てて、「重い過去」を抱えている中国の現代を歴史のなかで見つめなおす作業が求められているのである。

    [ 目次 ]
    はじめに 歴史のなかの現代中国
    第1章 敵か友か―中国的「弱国外交」
    第2章 歴史認識―中国外交の思想的根拠
    第3章 主権の絶対性―中国外交の性格
    第4章 「一面抵抗、一面交渉」―中国外交の手法
    第5章 アメリカ観と日本観―中国人の対外認識
    おわりに 責任ある大国外交のすすめ

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 最近、近隣諸国との様々問題が取りざたされている中で、かの中国人がどのような歴史観を持っているのかというのが興味があり本書を手に取りました。どれほどのフィルターがかかっている本書かは分かりませんが、中国人の思想の一部が分かった気がしました。

  • 皆さんは中国人をどう見ているでしょうか。中華思想とはなんでしょう?外交においても中国の態度に世間は「世界の中心の国だから中国なんだ。周りの国なんて所詮属国だと思っているんだ。」と騒ぎ立てますが果たしてそうでしょうか?確かに中国は昔はアジアの中心としてその栄華を誇ってきました。しかし今はどうでしょうか?
    作者の劉傑氏は北京生まれの中国人でありながら早稲田大学の助教授を務める秀才。中国人に偏るでもなく、日本人に偏るでもない、そのまったく新しい見解に私の中国に対する見方はまったく違った一面を持つようになりました。これを読まずに「中国人は・・・」と言うのはいささか浅はかというものだと思います。

  • 「中国が読めない」、これは社会主義だからというわけではない。歴史へのこだわり、歴史観を理解しなければ中国は理解できない、と、歴史の角度から冷静に中国を切っていると思う。
    研究が歴史であり、現代中国でないが故に、各種外部圧力にあまり左右されずに意見を述べていると思う。
     この本を中国で売って、どれだけ中国人が冷静にこの本を読めるか。とても興味深い。

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著者プロフィール

1962年北京に生まれる。1993年東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、早稲田大学社会科学総合学術院教授。主要著書に『中国の強国構想』(筑摩書房、2013年)、『対立と共存の歴史認識』(共編、東京大学出版会、2013年)などがある。

「2022年 『超大国・中国のゆくえ1 文明観と歴史認識』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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