揺れるユダヤ人国家: ポスト・シオニズム (文春新書 87)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600878

作品紹介・あらすじ

「ユダヤ人論」が好きなわりに、われわれ日本人はその実際をよく知らない。「ユダヤ陰謀説」などは論外としても、ユダヤ人といえば、みな熱心なユダヤ教徒で一枚岩を誇る民族、と思いがちだ。しかし例えば、建国半世紀のイスラエルは、百余国からのユダヤ人移民をかかえるマルチ・エスニック社会であり、ヨーロッパ系とアジア・アフリカ系の対立も激しい。世俗化、脱宗教化が進む一方で、宗教回帰現象もおきている。中東和平に対する考えも一様ではない。拡散するアイデンティティに揺れるイスラエルの行方を探り、現代における国家と民族、宗教の問題を考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 2度目の読了。ニュースでは伝えられない、イスラエルのユダヤ人の多様性に光を当てる本です。

    イスラエル・パレスチナ問題は外から見るとどうしてもユダヤ人vsパレスチナアラブ人の対立構造へと単純化されてしまいますが、実はそうではありません。イスラエル国家のあり方、和平交渉や二国家共存への姿勢、さらにユダヤ人とは何かにわたるまで、ユダヤ人の中にも様々な派閥があり、多様な価値観があることを、この本はとてもわかりやすく説明してくれます。

    ユダヤ・アイデンティティの多様性に加え、この本では、現代(2000年当時)の世俗化し多様化・断片化するイスラエル社会がいかに変わってきているのかについて、政治や宗教、過去の記憶などからもアプローチしています。

    ただ、2000年の本なので、イスラエル・パレスチナの和平構築プロセスに関してはやや古い印象が否めません(それゆえ星4にしました)。今はネタニヤフ政権のもと大イスラエル主義が再び台頭し、二国家共存への道は現実的にかなり険しいものとなっています。20年を経て、イスラエルの政治がまた大きく変わっているのだと強く感じました。

  • 11/28読了

  • 中東系ユダヤ人は労働党などシオニスト主流派によって作られたイスラエル社会への入場を拒絶され、リクード党の過激なナショナリズムにすがりイスラエル国民としての一体感を得ようとした。リクードの政治手法としてナショナリスティックなシンボルを全面に押し出し、イスラエルの外敵との対立を強調する。

  • あとがきによると、本書の執筆理由は3つある。
    1.イスラエルをユダヤ人のアイデンティティという視点から検討する。
    2.ユダヤ教徒やユダヤ人の多様性に触れる。
    3.ナショナリズムと宗教の関係を論ずる。
    決して「わかりやすく」書かれた本ではないが、イスラエルの多様性については漠然と掴むことができた。

  • 2008年65冊目

  • 日本ではあまり報じられることとの無いイスラエルの多様性。シオニズムによって建国されたイスラエルは、現在ポストシオニズムの時代を迎える。イスラエル内部の現状をとらえ、複雑なエスニック・グループで構成されているイスラエルの人々のアイデンティティにせまる。

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著者プロフィール

防衛大学校名誉教授、(一財)日本エネルギー経済研究所客員研究員。中東現代政治。在イスラエル日本大使館専門調査員、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)職員、(財)中東経済研究所研究主幹、防衛大学校総合安全保障研究科・国際関係学科教授などを歴任。主な著書に『ユダヤとアメリカ――揺れ動くイスラエル・ロビー』(中央公論新社、2016年)、『エルサレム』(新潮社、1993年)、『イスラエルとパレスチナ――和平への接点を探る』(中央公論新社、1989年)、『中東政治学』(有斐閣、2012年、共著)、『中東の予防外交』(信山社、2012年、共著)など。

「2018年 『イスラエルを知るための62章【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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