昭和史の論点 (文春新書 92)

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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166600922

感想・レビュー・書評

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  • ワシントン体制から戦争責任・賠償まで新書一冊だから、一つ一つの掘り下げが物足りないけど、安定して読めるいい本。張作霖爆殺のあたりをもっと読みたかった。あのあたりは、当時の人達が事態をどう認識していたのかよく分からないから。

    ハル・ノート受諾説は衝撃的だった。目からうろこだった。
    これについては私も、「あれはアメリカの最後通牒だよな。あんなの言われたら、そりゃ戦わなくちゃしょうがないよな」と思っていた。
    少なくとも、「このままだとジリ貧だ。座して死を待つよりも死中に活を求めん」とか言われたら反論できない、と思っていた。
    だけど、あっさり受諾してしまえば一気に大逆転! という可能性があるという指摘には、びっくりしたと共になるほどだ。
    泥沼の中国から手を引き、「満州は中国に含まれない」と満州は確保し、役立たずの三国同盟からは身を引き、それでアメリカからは石油をせしめ、枢軸、連合、共産のどことも付き合えるフリーハンドを持った大国として、第一次世界大戦と同じように振る舞う・・・ これってベストシナリオじゃん。

    ・・・まあ、こういうのを歴史のifというのだけどさ。

    あと、最終章の戦争責任と戦後補償については、そこまで含んだことは良かったとは思うけど、内容は歯切れが悪かった。

  • 昭和史研究の第一人者「坂本多加雄」、「半藤一利」、「秦郁彦」、「保阪正康」が昭和史を討論した作品『昭和史の論点』を読みました。

    ちょっと前になりますが、12月8日… 太平洋戦争開戦の日に、昭和史のことを考えたくなり読み始めました。

    -----story-------------
    日本は進路を誤ったのか、戦前は「暗黒」だったのか、ワシントン体制から戦争責任まで、いまに尾をひく諸問題を徹底討論する。

    国を鎖していた小さな国が、急速な近代化をなしとげ、しまいには世界の“一等国”を自任するまでになった。
    しかし東亜の風雲はおさまらず、軍部は独走し、複雑な国際情勢の中で、ついに未曾有の大戦争に突入していく―。
    昭和日本はどこで誤ったのか?
    戦争以外の進路はなかったのか?
    ワシントン体制から満州事変、二・二六事件、盧溝橋事件を経て、太平洋戦争、敗戦に至る過程を、昭和史研究の第一人者たちが、片寄った史観にとらわれることなく、徹底的に討論検証する。
    -----------------------

    ワシントン体制から戦争責任までの期間を、時代に沿った以下の17テーマで四人が討論している作品です。

     ■1 ワシントン体制(大正10年) ― 反英のスタート
     ■2 張作霖爆殺事件(昭和3年) ― 陰謀の発端と発言せざる天皇
     ■3 満州事変から満州国へ(昭和6年) ― 泣く子も黙る関東軍
     ■4 国際連盟からの脱退(昭和8年) ― 新聞の果たした役割
     ■5 二・二六事件(昭和11年) ― 皇道派と統制派
     ■6 盧溝橋事件から南京事件へ(昭和12年) ― 陰謀・虐殺の事実は?
     ■7 東亜新秩序声明(昭和13年) ― 自主外交の突き当たったもの
     ■8 ノモンハン事件(昭和14年) ― 北進から南進へ
     ■9 日独伊3国同盟(昭和15年) ― 4国同盟への夢想
     ■10 四つの御前会議(昭和16年) ― 戦争への道のり
     ■11 ハル・ノート(昭和16年) ― 多くの陰謀説の検証
     ■12 真珠湾攻撃(昭和16年) ― 「無通告急襲=騙し討ち」の汚名
     ■13 大東亜共栄圏 ― 「解放戦争」か「侵略戦争」か
     ■14 餓死と玉砕 ― 太平洋戦争の軍事的側面
     ■15 科学技術と戦略 ― 戦艦大和・零戦・酸素魚雷
     ■16 原爆とソ連侵攻(昭和20年) ― 聖断をもたらせたものは何か
     ■17 戦争責任と戦後補償 ― 謝るべきか、否か
     ■関連地図・年表

    昭和史研究の第一人者たち… と言っても、17もテーマがあると、それぞれに特に得意なテーマがあるようで、テーマによってリーダー的な発言をする人が異なっていましたね。


    意見が相違したり、対立するテーマもありました。
    歴史というのは、事実として判明している部分は意外と少なく、事実から類推する部分が多いので、このようなことは起こって当たり前なんでしょうねぇ… ひとりの人の意見だけを信じるのではなく、複数の人の意見を知ることにより、多面的に物事を見て、判断できるようにしないといけませんね。


    そういう意味では、歴史って、答えのないミステリーのようなものなんですよねぇ、、、

    事実と推理を組合わせて仮説をたて、それを証明できる資料や証言を探す… ということを繰り返して、真実に近づいて行くしかないけど、本当のことは当事者にしかわからないですからね。


    興味はあるけど、なかなか頭に入らない昭和史… 勉強させてもらった一冊でした。

  • ジャーナリスト2人と学者2人の4人の座談会で論点整理はされていない。各々が主観的に言いたい事を言っているだけで、実証的でもないし学術的でもないが、歴史の裏話的な情報もあり、読み物としては悪くない。総じて、日本人論に終始しているように思われるが、ジャーナリスト2人が誰がどうしたという知識披露をしているのに対し、学者2名はメタ的な史観で語っている印象を受けた。この辺が歴史認識の質的・レベル的な違いであるのかもしれない。

  • 昭和史研究の重鎮4名による討論集。
    正直昭和史そのものについてはまだ初学者なので内容をどうのと言える立場ではないが、少なくとも初学者レベルの本でないことは分かる。初学者を一歩抜け出たぐらいの人に一番適しているのではないかと思う。

    戦争関連本や昭和史の本は必ず読んでおくべきという認識が、改めて強まった。「歴史は繰り返す」という言葉があるが、戦争の歴史を繰り返さないためには、徹底的に検証・反省して繰り返さないための方策を生み出していかなければならない。特に、戦前に生まれた人たちがどんどん減っていく中で、戦争を直接知らない人たちが同じ過ちを繰り返さないこと。だから、昭和史学習は必須。

  • 今の学校教育がどの時代までかは詳しく知りませんが、少なくとも私の時代はほぼ3学期の最後のほう、駆け足でした。そういう意味でも知っておいて損はないと思います。戦国時代のほうがロマンはあるかもしれません。

  • 4人の討論形式なので読みやすい一方、内容的には物足りない

  • 昭和史におけるいくつかの重大な事件・事象をテーマに冷静に語られた対談集。中立的な立場から平易かつ簡潔丁寧にまとめられているので、非常に分かりやすい。全世代におすすめ。

  •  本書は、著名な歴史家4人による対談形式の本であるが、昭和史をわかりやすく概観できる良書であると思った。
     昭和史は、侵略と戦争の時代と平和な戦後史にはっきり分かれると思うが、戦後世代にとって戦前の昭和史は、よく知らない別世界の出来事のように思えてしまうのが実感だろうと思う。
     その戦前期の昭和史全体を鳥瞰するような本書は、興味深く読めた。
     しかし、「昭和天皇の英明」という視点だけはどうだろうかと思った。本土決戦を叫ぶ陸軍を退けて「聖断」を下した事実を取り上げた評価なのだが、「英明」な君主だったら敗戦のような事態にはならないだろうと思われる。
     しかし、本書は左右のイデオロギーに加担しない冷静な歴史認識の良書として高く評価できると思った。

  • [ 内容 ]
    国を鎖していた小さな国が、急速な近代化をなしとげ、しまいには世界の“一等国”を自任するまでになった。
    しかし東亜の風雲はおさまらず、軍部は独走し、複雑な国際情勢の中で、ついに未曾有の大戦争に突入していく―。
    昭和日本はどこで誤ったのか?
    戦争以外の進路はなかったのか?
    ワシントン体制から満州事変、二・二六事件、盧溝橋事件を経て、太平洋戦争、敗戦に至る過程を、昭和史研究の第一人者たちが、片寄った史観にとらわれることなく、徹底的に討論検証する。

    [ 目次 ]
    ワシントン体制(大正10年)―反英のスタート
    張作霖爆殺事件(昭和3年)―陰謀の発端と発言せざる天皇
    満州事変から満州国へ(昭和6年)―泣く子も黙る関東軍
    国際連盟からの脱退(昭和8年)―新聞の果たした役割
    二・二六事件(昭和11年)―皇道派と統制派
    盧溝橋事件から南京事件へ(昭和12年)―陰謀・虐殺の事実は?
    東亜新秩序声明(昭和13年)―自主外交の突き当たったもの
    ノモンハン事件(昭和14年)―北進から南進へ
    日独伊3国同盟(昭和15年)―4国同盟への夢想
    4つの御前会議(昭和16年)―戦争への道のり〔ほか〕

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    [ 参考となる書評 ]

  • 昭和の初期を4人の方が論じています。政治や軍部の裏の知らなかったことがたくさん書いてあり、興味深かったです。

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