翻訳夜話 (文春新書)

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 1500
レビュー : 160
  • Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601295

作品紹介・あらすじ

roll one's eyesは「目をクリクリさせる」か?意訳か逐語訳か、「僕」と「私」はどうちがう?翻訳が好きで仕方がないふたりが思いきり語り明かした一冊。「翻訳者にとっていちばんだいじなのは偏見のある愛情」と村上。「召使のようにひたすら主人の声に耳を澄ます」と柴田。村上が翻訳と創作の秘密の関係を明かせば、柴田は、その「翻訳的自我」をちらりとのぞかせて、作家と研究者の、言葉をめぐる冒険はつづきます。村上がオースターを訳し、柴田がカーヴァーを訳した「競訳」を併録。

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳の裏話が非常に興味深かった。実際にこの講義を生で聴けた学生が羨ましい。

  • 何度めかの再読です。
    前の感想を読み返してみたら、うんうん、そうなんだよ!なんて、自分に自分で頷いてしまうのが恥ずかしいんだけど、新たな感想の文を無理矢理にひねり出すのもなんか不自然でそれも恥ずかしいような気がするので、そのままにしておくことにしました。

    あ、でも、言葉にはならないけど、今までで一番春樹さんのお気持ちがストンと来たような気がする、とだけ。(*^_^*)

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

    再読です。
    で、やっぱり面白い!(*^_^*)

    なぜ、村上春樹は現役の小説家でありながらこんなにたくさんの翻訳をしているのか?
    エッセイなどでよく小説に傾いた頭のバランスを取るため、と言っておられるのがこの対談ではより私たち読者にわかりやすく語っておられ、なるほどね~~と。
    小説は自分の世界に深く深く入っていくものなので、ある意味危険な作業なのだけど、翻訳は常にテキストが外部にあるからこつこつとやってさえいれば論理的に問題が解決できる、とか、
    また、その翻訳作業により、自分の文体の練習(好きな作家のものしか訳さないので)になるし、小説はどんどんシンプルな日本語で書きたいと思っているところに、華麗な文体のフィッツジェラルドなどを訳すとそこでカタルシスが得られる、とか、なるほどねぇ~~。(*^_^*)

    春樹さんは好きな小説を読むだけなら、ただ英語で読めばいいわけで、イチイチ日本語に直さなくてもそのまま英語で理解しておられるのだろうから、その「横のものを縦にする」過程が大事なんですね、きっと。

    柴田元幸先生との三度の対談(一度は東大の講義で、二度目は翻訳学校で、三度目はプロの翻訳家たちの前で)で、お二人ともホントのことしか言っておられないんだろうな、という誠実なお話がとても嬉しい。また、同じ短編をそれぞれが訳されていて、原文も載っているのでその違いをじっくりと楽しむことができた。
    柴田先生が春樹さんの訳を、段々直訳になってきてますね、と指摘されているのも、春樹さんの目指しているものが伝わってくる気がしたし。

    それにしても、御自分の小説を、自分の文体の癖が気にかかってしまってそこがイヤだったりする、みたいなお気持ちをお持ちなのに、翻訳されたものも、読者から見れば、まぎれもなく村上春樹の色がついているのはどうなのか・・。私たちには嬉しいことなんですけどね。(*^_^*)

  • ジュンク堂でやっていたフェアから掘り出す。
    そういえば、この間も『翻訳するということ』という本を読んだばかり。

    村上春樹は、フィーリングの合う作家を「選び出して」その文章を翻訳することから学ぶという話をしていた。
    良い文章を真似て書くといいと聞いたことがあるし、言葉にすれば暗唱にも繋がるのかもしれないけど、独特の呼吸や言いまわしというのを身に付ける第一歩ってそこなんかな。

    ただ、村上春樹の翻訳は村上春樹だな、という声を聞く。
    私は小説は何作も触れたけど、翻訳はまだ読んだことがない、というか多分よほどのことがなければ、今後も読まないと思う。
    でも、村上春樹が勧める本は読む。
    先日は『ゴールドフィンチ』四巻一気読みしました。良かった。

    それはよく言われるけど、意図してはない、とのこと。
    日本の美文に触れて学べという話題で、二人とも難色を示していたのだけど、読んでいて、自分の中に在る語彙がベースになるんだから、そりゃあその人が出て来るよなぁと思った。
    もちろん、作品に合わせて言葉を選ぶだろうけど、それだって自分という世界にないものから取ってくるという訳ではない。

    そうすると、学生がやっている和訳は、確かに直訳で画一的なのも面白いけど、ある程度のまとまりを持った文章を、各自がどんな風に読み解くか、というのは面白い試みなんじゃないかと思う。

    ちなみに、この新書には「ものすごい」ことに、レイモンド・カーヴァーとポール・オースターの短編を、村上春樹と柴田元幸訳バージョンでそれぞれ味わうことが出来る。
    正直すごいし、面白すぎる!
    二人の違いを見るのも面白いけど、二人が同じところに傍点を打ってたりすると、ドキドキする。

    「読み」を深めなければならないとか、慣れに任せ過ぎずにテキストに立ち返る必要性とか、翻訳から離れている人間も学びのある一冊でした。
    ジュンク堂のフェア組んでくれた方のおかげです。

    ところで。
    登録した際に見えた、「2」の字。
    マジか。読むしかないですね。

    「でもなおかついちばん大事なのは、この文章の骨の髄みたいなのを自分が摑んでいるという確信ですよね。今のところまだそれをうまく訳せないとしても、それは大した問題ではないと思うんです。努力すればいつかできることなんだから。でも、本当の意味をつかんでいるという確信がなければ、どれだけ語学力があっても、どれだけ文章がうまくても、どれだけ努力しても、ほとんどどこにもいかないんじゃないかな。」

    ……厳しいっす。

    「一つは、テキストがいちばん大事であるということ。テキストのみを読みこむことによって、その作家像とかいろんなものを自分の想像力のなかで再構築していく。もう一つは実際的な調査を行なって、この作家はこういう人で、こういう人生を送って、というようなバックグラウンドを頭に入れて、それでその作品のトーンを考証的に割り出していく。両方の方法があるし、僕はべつにどっちでもいいと思うんですよ。どっちがより正しいとは言えないと思う。」

    「たいていの人は技術的な問題であるにもかかわらず、なぜか人格の問題として捉えちゃってね、翻訳って。間違いをすっと認めるということがたいていの人にはなかなかできなくて」

    この二つは、自分の今の仕事に関わる部分があって、ストンと落ちた。
    指摘が、技術的なことか人格的なことか、というのは、なるほどむしろ「そう思っていいのか!」と思わされたなー。

    最後に、翻訳の賞味期限について。
    特に引用はしないけど、ここ、難しい。
    原典の時間は変わらない訳で。
    でも、これもテキストに沿って考えれば2018年の読み方ができる訳で。
    (もちろん、時間設定上、偽ってはいけないけれど、語彙の選択上ね)
    池澤夏樹の現代語訳シリーズなんて、まさにそういう意味の味わいを目指したものなんじゃないかと思う。
    面白いのは、一方で名訳は普遍性を持ち得るということでもある。

  • 村上春樹と柴田元幸が、翻訳についてのあれこれ(技術・愛含む)を楽しく語る一冊。カーヴァーとオースターの短編を、それぞれに訳して並べているのが面白かった。同じ短編を訳しているんだけど、村上さんのほうを読んでも意味がよく分からないの。「難解だなあ不条理だなあ、でもそれが味、雰囲気は絶品」みたいな。で次に柴田さんのほうを読むと、すんなり理解できる。「それほど不条理でもないじゃん」って。ああー、村上春樹ってそういうことなのかも、と思った。絶対ないけど春樹作品を柴田さんに翻訳してみてほしい、日本語にw

  • 読んでいて一番に感じたのが、
    柴田・村上両氏の、感じた事を「素早く正確に」言葉に置き換えて発言できる能力。
    今この程度のレビューを書くだけでも全く思いをまとめられず、
    あーでもないこーでもないとグダグダしてしまっている私には、
    そんな両氏の頭の回転の速さに何より憧れてしまうのでした。

    リズム・グルーヴ、技術より愛情、見えないものを感じ取るセンス。
    これは翻訳業のみならず何においても言える事なのではないかなあと。
    異業ながらも共感する部分が多々あり、とってもとっても面白かったです。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「見えないものを感じ取るセンス。」
      そのセンスを自らのモノにするには、日々何をすれば良いのでしょうね、、、
      「見えないものを感じ取るセンス。」
      そのセンスを自らのモノにするには、日々何をすれば良いのでしょうね、、、
      2014/05/01
    • naminecoさん
      やっぱり「フォース」ですかねぇ
      目指せ☆ジェダイマスター!ってな感じで(え?)
      やっぱり「フォース」ですかねぇ
      目指せ☆ジェダイマスター!ってな感じで(え?)
      2014/05/18
  • 作家兼翻訳家の村上春樹さんと、教授兼翻訳家の柴田元幸さんによる翻訳座談会の3回分をまとめたものです。
    私は、村上さんの翻訳は多く読んでいるのですが、柴田さんの方はポール・オースター「ティンブクトゥ」くらいしか経験がありません。そのせいか、お二人がカーヴァー(村上さんの十八番)とオースター(柴田さんの十八番)を訳し合った企画では、両方とも村上さんの文体のほうがしっくりきました。
    この企画を読む前に、一応自分なりに翻訳してみたのですが、お二方とは読みやすさが全然違いました。私の訳は、日本語にも英語にもなりきれないまま流産してしまった悲しい胎児のようです。うう。翻訳の難しさが身にしみたところで、だからこそ熱く語られる翻訳論に共感できました。

    翻訳小説は、翻訳する人の技量によってその国での評価が左右されます。翻訳家にのしかかる重い責任や、際限なく行く手を阻む言語・文化間意識のズレ、膨大な調べ物。そういう大変な仕事を「でも好きなんだ」とやってのける翻訳家の皆様に頭が下がる思いです。海外文学愛好家として、とても勉強になりました。

  • すっごく面白かった!期待以上です。二人の競訳でカーヴァーとオースターが読めるなんてうはうは過ぎる。しかも探さなくても原作付。これは私も訳してみるしかない!と思わせますね。仕事とか生活とか抜きにして、もっと深い部分で翻訳に対して欲求を感じるようなお二人に僭越ながら、これだよこれ!と思ってしまいました。もっと理解したくて、理解して欲しくて、伝えたくて、もどかしくて、もがくような思いでいま英語と向き合っています。はい。

  • 春樹の大ファンで柴田さんも大好きなわたしとしてはくらくらするほどすてきコラボ!という訳でとても楽しく読めました。わたしって単純な子なのですごく翻訳したくなった…競訳も違いがくっきりわかっておもしろかったなあ。柴田さんの方が端正な文章で春樹はもうちょいくだけてる印象。どっちも好きですよ!

  • 競訳。英語の授業でもなければ、なかなか2つの訳を読み比べることはないので、それだけでもとても面白かった。まして、翻訳の大御所と言われるこの御二方でも、こうも原文の雰囲気の捉え方が異なるのかとわかり、驚き。それほど、本は作者の手から離れたあとは誰のものでもないということだ。そして、翻訳の際は文章の声にひたすら耳を傾けている、と、村上氏。身に染みます。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。
1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴があるが、芥川賞は候補に留まっただけで受賞しておらず、賞に対する批判材料となっている。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年の発表時期は日本国内でニュースになっている。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。
フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけており、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家として成長を続ける。
代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。

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