- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784166601349
感想・レビュー・書評
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はきはきとした文体で読んでて楽しい。
マスコミによって少子高齢化は悪だというイメージだけが蔓延しているようにも思えるがそれ自体に善悪は当然ない(しいて言えば急激な少子高齢化は悪であるが)。
むしろ人類が直面している問題は世界的な人口増加なのに。
まあ国としては合計特殊出生率が1.38というのがいやなのはなんとなく分かるが。
でも日本は5000万人くらいが最適人口なんじゃないかと思う(なんとなく)。そのくらい減ってもいいような気がするなあ。
思ったのは、年金制度の欠陥の話。信じられないような欠陥だけど、国民が認めたものなんだよな。。
マスコミが良く分からずに少子化反対っていって、それを信じ込むような民度の低さになれば、またわけ分からん制度が成立しかねない気もする。その国民があってその政府がある、といったのは福沢諭吉なわけだけど、まさにそうなりかねない。
少子化は現行の制度では避けられないし、現在のところ全く避ける必要はない。だから、日本としては、どうやって人口減少社会を理想的なものとするかに取り組むべきであって、そこで模範となればよいのではないかと思います。
出版社/著者からの内容紹介
少子化と高齢化がピークに達する21世紀社会は、本当に住みにくいのか。世界有数の老人大国日本の歩むべき道を提示する画期的論考
内容(「BOOK」データベースより)
あと数年で世界一の高齢者大国になる日本。少子化が社会を支える人たちの減少を招くのではと恐れるあまり、老後に不安を感じる人が多いのも確かだ。しかし、生物学的にみれば「少子」は「少死」の結果であって、人類という種の宿命なのだ。すでにヨーロッパが経験しているように、生存の基礎条件さえしっかりしていれば、社会の高齢化を恐れることはない。……
目次
第1章 人口減少社会へのキーワード
第2章 生物寿命モデルと少子化問題
第3章 日本の将来の社会構造はどう変わるか
第4章 子供はなぜ生まれなくなったか
第5章 世界最初の人口減少社会・日本の将来
第6章 日本の社会変革を妨げていた既得権
第7章 成熟社会への羅針盤
終章 「尊敬される国」への選択
内容まとめ
p6 本書は、暗いイメージの覆い小しか社会の問題点を指摘するよりむしろ、人間という種が成熟に達したときに到達する、安定した満ち足りた社会はどのようにして作られるかということを探るために書いたつもりである。
第一章
・超人格モデル・・・全国民をただ一人の超人格とみなす
p22 結論は簡単である。成長期と引退期を豊かに暮らすには、最大50%の資本移転が必要である。
・スウェーデン・モデル…社会民主主義、失業者の保護ではなく彼らを国家が雇用、超人格モデルを採用、政府が管理、受領額と拠出額が等しいと説明
・等身大モデル
第2章
p38 戦争を政治目的実現の一手段であると喝破したクラウゼヴィッツの理論が支配していた時代は、人口は兵力として直接的な国家資源であり、生産の手段としても重要視された。二十世紀を通じてもこの考えがおかしくなったのはかなり後期に至ってからで、人口こそ国力なりとする考え方の亡霊はまだはびこっている。
・少子危機論者の偏見を暴く
・・将来人口推計…「老年人口だけが増える」?
・・消費・投資…市場収縮・不景気到来?→地球資源の温存、他国からの資源購入も少なく済む。
・・国内総生産…経済成長至上主義・地球破壊
・・年金・医療…出生率回復なら負担減?→超人各モデルでみれば負担は扶養・受給と同額
・・看護・介護…要因不足・質の低下?→雇用創出
・・社会的影響…
・・受験・交通…学校は淘汰・公共交通機関は利用人数に左右されない使命
・・全国的過疎化…
第3章
p51 「少産・少死から起こる人口減少は文明国の基本理念であって、その結果安定した成熟社会が生まれる」
・1995年の人口と合計特殊出生率1.38→2015年に高齢化率25%、2050年に33%で安定
・1995年の人口と合計特殊出生率1.21→2015年に高齢化率25%、2050年に37%で安定
・1995年の人口と合計特殊出生率2.0→2050年に22%で安定
p64 実は、2000年から2030年にかけて起こる高齢化率のオーバーシュートは、日本が第2次世界大戦中に「産めよ増やせよ」と出生をあおりたてた結果、対戦中から直後にかけて著しい高出生率を示したことに起因している。
どこの国でも世界大戦の後に出生率の上昇があり、ベビーブーマー世代の存在は多かれ少なかれあるが、わが国では、発展途上国並の4以上の合計特殊出生率が1945年を中心に10年間近く続いたため、きわめて特殊な形態をしているというところに原因がある。現在の日本人人口構造にある大きな二つのピーク、いわゆる「団塊の世代」と「その子供たちの世代」の人口が極めて多いという現象である。
第4章
・地球人口も73億程度でピークに…現在(2012年)ですでに70億、予想では2040年で100億から80億人に。
・人工中絶で人口増加を抑えた高度経済成長期時代(1955~1970年代)
p88 この時代人工妊娠中絶数は出生数の6割を超え、それを加えてもし合計の仮想出生率を計算してみると、人口転換出生率より高いという時代が続いた。
第5章
・30年後には年金体制が変わる…公的年金の給付額が高額すぎる、現在生きている世代内で所得移転が完結するシステムが必要
・高齢者が増えると介護老人だらけ?→80歳程度で死亡したひとのうち半数以上の人は3日月前までは
自立した生活
第6章
p130 すでにパラサイト症候群と呼ばれる世代が目立つようになり、フリーターとよばれる正規の就職をしていない若い人たちが500万人を越えたという1999年の労働者の統計がある。しかしそれとても、少なくとも自分の意志で自分にあった職業を選択しようという意識がようやく市民権を得始めたばかりなのかもしれない。それを可能にしうる社会状況があるのは日本の社会が成長し、経済的な余力を持ち始めたからであるという認識も必要だろう。
p141 人口減少社会では、土地は資産にはならない。
・人口の減る静かな町や村をどう維持するか
・教育は変わる・予備校は潰れる
・日本こそロボティクスを基幹産業に
p134 わが国ばかりでなく海外にも、日本はやがて労働力不足が起こると考える人は多い。ニューズウィーク誌やタイム誌でもこのことがしばしば取り上げられているが、しかし、人口減少社会になると労働力が減少し労働力不足になるということと、消費が低迷して設備投資が少なくなり、産業が衰退して失業者が増えるという現象とは、どう考えれば両方の説明がつくというのだろうか。失業者が増えるのならば、労働力不足はないとみなせばよい。西欧先進諸国での今までの問題は、この二つをうまく調整しなかったから起こったに過ぎない。
終章
・日本の年金制度に隠された欠陥設計
p191 当時の厚生省は「将来の経済成長は最も悲観的にみて0%とし、利子率は最も悲観的にみて5.5%とする」という前提を立てた。ここから算出された保険料は不当に低い結果となる。利子は経済成長に見合って支払われる。つまり経済成長なくして利子は生み出せない。このことはバブル崩壊を経験した日本では、預金利子が0%という無残な現実から誰も我慢だ。しかし経済復興に沸き、右肩上がりの成長を信じていた当時の役人にも、経済専門家にも、この意味を理解した人はほとんどなかった。
・年金崩壊は少子化のせいではない詳細をみるコメント0件をすべて表示