人名の世界地図 (文春新書 154)

制作 : 21世紀研究会 
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166601547

作品紹介・あらすじ

バーンスタイン、カラヤン、ニュートン-私たちがふだん何気なく聞きながしている人名のなかには、民族、宗教、英雄伝説の長い歴史が眠っている。またときには、「醜い頭」「曲った鼻」というあだ名が、なぜかそのままケネディ、キャメロンという姓になってしまうこともあった。音楽家のバッハはどうして「小川さん」なのか、シャガールという姓にこめられた秘密とは何か?三千年にわたる人名の謎を解き明かすタイムカプセルが、いま開かれる。

感想・レビュー・書評

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  • 日本人の名前の呼び方の変化を知りたくていくつか読んだので、その流れで世界の人名の本を読みました。
    名前にはそれぞれの民族の文化や歴史や固有の伝統が現れ、そしてまさに名前の地図が民族移動や力関係の地図になっています。
    新書「世界地図シリーズ」は他の方のレビューで知りました。私は実用書をほとんど読まないのですが、楽しく興味深く読めました。ありがとうございます。m(_ _)m



    【キリスト教の命名】
    ✔クリスチャン・ネーム:異教徒を回収させる時に改めさせた名前。
     ヨーロッパでキリスト教が浸透したため、受洗・改名というプロセスが不要になった。もともと幼児洗礼により協会から与えられた名前が初めから本名になっていった。
     クリスチャンネームは、他に、ファースト・ネーム、ギヴン(洗礼により与えられる)・ネーム、バプティスマル(洗礼)・ネーム、パーソナル(個人名)・ネームと言われる。
    ✔成人名をつけるのは、命名という概念が社会で共有される記憶やイメージだった。
    ✔キリスト一番弟子のペテロ(岩)の場合、英語ピーター、ドイツ語ペーターやペトリやペトルス、フランスではピエール、イタリアではピエトロ、スペインポルトガルではペドロ、ロシアではピョートルとなる。
     「戦争と平和」の主要人物の一人ピエールは、本名ピョートル(たまにその表記があった)だが、フランス風ピエールを使っていますね。

    【欧米の姓】
    ✔ヨーロッパ文化は、ユダヤ・キリスト教のヘブライズムと、古代ギリシアのヘレニズムをという地中海地域の文化を二大中心に形成されている。
    ✔地理的特徴:ウッド(森)、ブルックやバッハ(小川)、クリフォード(流れの早い浅瀬)、フランクリン(自由土地所有者)
    ✔父祖の名前:マッカーサー(アーサーの息子)、ジョンソン(ジョンの息子)、ウィリアムズ(ウィリアムの息子)
     ロバート→ロバートソン、ロバーツ、ロビン、ロビンソン、ホッブス、ロビンス…などに派生。
    ✔民族、出身地:イングランド、ブレット、ホランド、フランシス。
     姓は民族の特徴が出るので、先祖の出身地がわかることもある。
    ✔職業:スミス(鍛冶屋)、フォークナー(鷹匠←なんだこれ、かっこいい)
    ✔渾名由来:ブラウン(褐色の髪)、キャメロン(曲がった鼻)、ドゥーリトル(ほとんどなにもしない、怠け者←私この名前にしようかな(笑))
    ✔他にも、渾名、添え名、異名の意味の「サーネーム」がある。

    【スラブ圏の姓】
    ✔ロシア:個人名+父称+姓
     長年フィギュアスケートファンやってる私にはけっこう得意v(^^)
    ✔男女で接尾辞を使う。他には古代北ゲルマン民族、中世スウェーデン、中世スカンジナビア三国もそうだった。

    【古代ローマの名前】
    ✔ローマ神話について。ローマ人の先祖は、インド・ヨーロッパ語族に共有の原初的な神話を持っていたと言われるが、ギリシア文化の影響で、徐々にギリシア神話と同一化していった。ゼウスがユピテルなど。
    ✔古代ローマ貴族男性は、個人名+氏族名+家の名前だった。「ガイウス・ユリウス(ローマ神話のユピテルの子孫、という意味)・カエサル」
    ✔どの一族のどの家族でどの行政区か…を洗礼名に入れたため、長くなっていった。(現在では洗礼名は一つ)

    【愛称の作られ方】
    ✔欧米では、愛称が公的にも通用する。
     ビル・クリントンなど。
    ✔同名の人物が増えた時に、区別するために愛称が生まれた。
     キリスト教の洗礼名から名前をつけると、人気のある名前は一族で何人もいるので、区別が必要となり。愛称も増えていった。(愛称や変化型が多いエリザベスやマリアなどの名前は、非常に人気があった)
     接辞をつける:ジョン→ジョニー
     音節部分で切って短縮:ウィリアム→ウィリー
     名前の綴りから1文字以上の文字を抄訳して短縮。エリザベス→リズ
     韻を踏んで変化:ロバート→ロブ→ホブ→ノブ→ボブ→ホプ
     音を和らげる:マイケル→マイク
     転訛:キャサリン→可憐
     母音で始まる名前の最初の音節にN:エドワード→ネッド
     ↑組み合わせ:エドワード→ネッド→韻を踏んでネッド

    【ミドル・ネーム】
    ✔ロシアのミドルネームは父称。戦争と平和「アンドレイ・ニコライエヴィチ・ボルコンスキー」ボルコンスキー家のニコライの息子アンドレイ。
    ✔英語圏の場合はなにをつけても構わない。
     母方の姓:ジョン・F・ケネディ
     先祖の名前:ディズニーのミドルネームは祖父の名前
     アルファベットの一文字:トルーマンのミドルネームは「S」
    ✔スペイン語圏の場合は、個人名+父方の姓+母方の姓。
     省略する場合にはその人それぞれ。正式には個人名+父方の姓が多いけれど、パブロ・ピカソの場合はピカソは母方の姓、ガルシア・マルケスのマルケスは母方の姓。

    【子供の命名】
    ✔両親が自由につけて良い:日本、プロテスタント系のアメリカ、カナダ、イギリス、ドイツ
    ✔近年は自由になってきた:フランス(1950年代までは、つけて良い名前が決まっていたり、綴り方検閲があった)、イタリア(洗礼名は聖人名をすすめるが、あまりこだわらな唸ってきた。長男長女に先祖の名前をつける風習も廃れている)
    ✔教会推奨:スペイン、デンマーク、ハンガリー、ギリシア、チェコ、ロシア。
     教会のリストから選ぶ。
    ✔欧米の名前はその時時に流行りはあるけれど伝統的なものがやはり人気。

    【国の渾名】
    その国に多い名字が、その国の人の愛称になる事がある。英語圏の人がつけた他の国の渾名だが、「○野郎」というようなからかう意味合い。
    ✔アイルランド人:マイケルから発生した、「ミック」「ミッキー」アイルランド系移民が差別を受けていたため悪口に使われたり…。アイルランド系に警官が多かったので、「パディ(パトリック)」は警官の俗語。
    ✔イギリス人:ジョン(ヨハネ)から「ジョン・ブル」雄牛のように頑固で無愛想
    ✔オランダ人:ヤン(ジャン)から「ヤンキー」。この言葉じゃ徐々にアメリカ北部住民、さらにはアメリカ人全体を指す俗称となった。
    ✔スコットランド人:ジョック(ジョンの愛称)から騎手の「ジョッキー」になった。
    ✔ロシア人:「イワン・イワノビッチ・イワノフ」典型的なロシア人名というちょっとからかう意味合い。なおこの名前は「イワノフ家のイワンの息子のイワン」という意味。
    ✔アメリカ人:アンクル・サム。「U.S合衆国」の頭文字から。

    【キリスト教の聖人名】
    ✔中世のカトリック教会では、洗礼名として聖人の名前を使うという決まりがあった。
    ✔聖人崇拝を認めないプロテスタント教会は、聖書由来の名前を選ぶ傾向があった。
    ✔キリストの弟子たち、殉教者、聖列された聖人、民間伝説信仰など、キリスト教由来の名前、そして名字に転じた例は多い。
    ✔救難聖人とは、危険に合った時にその名を呼ぶと紙に救いを求めてくれる聖人。
     「クリストフォロス」旅の安全、疫病
     「バルバラ」雷除け、消防士の守護
     「マルガレタ」不潔なものを清浄にする。
    ✔バイキングの航海により、聖人名は北に伝わっていった。
    ✔キリスト教由来の名前は、ヘブライ語、ギリシア語、ラテン語を起源としている。ゲルマン民族やスラブ民族の言葉も、キリシア語やラテン語を取り入れて豊かになっていったので、名前も取り入れられた。

    【女性の名前の歴史】
    ✔地中海文明を中心とした女性名は、男性名の語尾を変えたものが多い。「ポール→ポーラ」など。最初から女性名だったのは、エヴァ(旧約聖書のイブですよね)、マリア、ヘレンなど。
    ✔近代以降に考案された新しい名前は女性名が多かった。家名を継ぐ男性には伝統的な名前をつけるが、女性の名前はそれよりは自由につける余地が合った。
    ✔自由につけられた名前は、花や宝石の名前など。なお、「マーガレット」という名前はヒナギクではなく「真珠」を由来としている。←知らなかった!!
    ✔シェイクスピアの作った名前。ヴェニスの商人の「ジェシカ」、ヴェローナの二紳士より「シルヴィア」、リア王より「コルデリア」(赤毛のアンが憧れた名前でしたっけ。「私のことはコーデリアと呼んで〜」)、あらしより「ミランダ」など。
    ✔その他文学作品より生まれた名前。デカメロンより「エミリア」、アエネイスより「カミラ」など古い文学より。ジャングル・ブックからは「キム」だがこれは女性名として定着。その他「パメラ」「フィオナ」など。
     日本で文学作品だと「ナオミ」でしょうか。もともと聖書に乗っていた女性名ですが、谷崎潤一郎がヒロインに新しい名前をつけたいとして出してそこから日本に定着しましたよね。
     ✔マリア由来で「マリー、マリア」などは、男性にも用いられる。フランスの大統領「ジャルル・アンドレ・ジョセフ・マリー・ド・ゴール」「フランソワ・モーリス・マリー・ミッテラン」←これはフランス歴史物を読んでいるとたまに見かけて、なぜ男性にマリー?と不思議だったのだが、定着しているのですね。

    【ケルトの名前】
    ✔ケルト文化は、地中海地域のヨーロッパ文化(ヘブライズムとヘレニズム)以外でヨーロッパで脈々と受け継がれてきた。
    ✔ケルトの意味は「石斧」。古代ギリシア地理学者が、アルプスの北、ヨーロッパとイベリア半島に住んでいる異民族に対して命名。ローマ人は、ケルト人を「ガリア人」と呼び、スペインのガリシア地方の名前のもとになった。
    ✔「ロンドン」「ウィーン」「アルプス」「ドナウ川」などは、ケルト語に起源を持つ地名。
    ✔ケルト系のブリトン人→ブリテン、ケルト系のボイイ人→ボヘミア、ケルト系のパリシイ人→パリ
    ✔ケルト民族と、ローマと、ライン川西方のゲルマン人は三つ巴で争いを繰り返していた。そして紀元前一世紀のカエサルがガリア遠征してケルト民族を統合した。ケルト民族は文字を持たなかった。ケルト民族の歴史は、制圧者であるローマ人たちの「ガリア戦記」などで知られる。
    ✔ケルト系の人名の元は、ケルト神話、アーサー王伝説、地名から伺える。
    ✔ケルトの神話や宗教は、キリスト教徒同一視されてゆき、中世キリスト教布教時にも溶け込んでいった。

    【ゲルマン民族】
    ✔ゲルマン民族集団は、デーン人やノルマン人の北ゲルマン(ヴァイキング。現代のスウェーデン、ノルウェー、デンマークを築いた)、サクソン人やフランク人の西ゲルマン(現在のイギリス、ドイツ、フランス、イタリアを建設)、ゴート人やヴァンダル人の東ゲルマンの三大グループに大別される。そのため、ヨーロッパ諸国の名前は互いに入り混じり、古いゲルマン語に起源を持ったりしている。
    ✔古代ゲルマン諸族は、2つの名前を組み合わせて新しい名前とする習慣が合った。エドワードは、エド(財産)とワード(守護者)で富の守護者。
    ✔ガリア北東部のカロリング朝の統治国は、イタリア、西フランク王国、東フランク(ドイツ)になっていった。

    【ユダヤ人の名前】
    ✔ユダヤ人は世界中に散らばり、行く先々で迫害されたが、それは名前にも現れている。
    ✔国を持たないユダヤ人の定義とは、「ユダヤ人の母親から生まれた者、ユダヤ教に改宗し他の宗教に帰依していない者」ユダヤ人の母から生まれたものがユダヤ人としているが、生まれた子供は父の姓を継ぐ。
    ✔特徴的な姓。
     末尾に「スタイン」「スターン」など。
     フリードマン(平和の人)、レヴィ(ユダヤ教指導者補佐) 
    ✔子供には、名前をつける儀式がある。男の子なら割礼を行い、名付け親から名前をもらう。旧約聖書由来が多い。
    ✔ユダヤ人の名前は改名も多い。病気になった時などに改名し祈願したり。
    ✔十世紀にイスラムが栄えた時、イベリア半島のユダヤ人は、アラブ風の名前を名乗りながらユダヤ教のまま共存していた。
    ✔十三世紀のキリスト教の国土回復運動(レコンキスタ)により、反ユダヤが高まり、名前を変え宗教を変えて溶け込むか、国外に逃げるかしかなかった。しかしキリスト教社会で生きていくにも姓の所有は禁じられた。ある時期から姓の売買が行われるようになったが、植物名と鉱物名に限られた。
     ローゼンタール(薔薇の谷)、ボールドシュタイン(金の石)など優雅な姓もあったが、
     グラーゲンシュトリック(絞首台のロープ)、タシェングレガー(掏摸)などの差別名前や、
     出身地や職業が姓になったりした。
    ✔ユダヤ伝統姓を残したい場合は、一部を取り入れたりする。セガール(レヴィ族の代理人という意味を隠し持つ)からシャガールに変形したり。
    ✔宗教が世の中を支配していた時代なら、ユダヤ教を捨ててキリスト教回教すればヨーロッパで生きられたが、むしろ近代になり社会的成功者のユダヤ人はたとえキリスト教徒であってもユダヤ民族ということで差別が続けられていく。
    ユダヤ教徒のままで名前をヨーロッパ風に変えたり、ユダヤ名を残したり…現在でも様々。

    【中国の名前】
    ✔昔は、名前には呪術が宿っていると言われたり、生前の名前を死後使うことは憚ったりしていた。
    ✔実名敬避のため、本名以外にいくつもの名前を持っていた。
    ✔幼いときは「小名」→成人になると「字あざな」→死んでからは「諡号しごう」と、名前画素の人の状態を表し、名前の多さは社会的地位を表した。
    ✔古代中国では、「姓は上において統べる、氏は下において別ける」。
    ✔姓は身分上位の人が持っていたため、「百姓」とはもともとは貴族階級のことだったが、姓が庶民にも広がり、庶民という意味になっていった。ふーーん。
    ✔古代中国は母系制社会だったので、そもそも「姓」という字が女偏だったり、女編の姓が多かった。不形成社会に変わってゆく過程で、同性のグループの中の有力者がその族柄を表すために「氏」が称された。
    ✔氏:諸侯の領土名、地位名。
    ✔漢民族以外の民族も多く、かつては名前飲みだった民族もいるが、現在では中国風で姓+名になっている。
     トールン族:父子連名制、母子連名制:父の名+子の名というふうに、しりとり風。
     チベット族:ラマ僧に命名してもらうこともある。
     イスラムの回教徒:漢族の姓名もあるが、イスラム名もある。
     香港:漢名以外にイングリッシュ・ネーム。李小龍→ブルース・リーなど。

    【朝鮮半島の名前】
    ✔父系血族の証として、同じ姓を持ち同じ本質を持っているとして、姓はとても大事。
    ✔高麗時代に姓を持つことが一般化し、姓名制度が確立したのは李朝時代。
    ✔本来は、名前は代々続く自分の血族の流れとしていたため、有名人にちなむなどの風習はなかった。(近年ではそうでもないようだ)。そのため、血族に受け継がれてきた序列を意味する文字が入り、同じ一族で同じ世代の者には、「木火土金水の五元素」が組み合うように同じ文字が使われる。
    ✔幼名→成人して字や号など、成長して名前が増えていった。幼名は、乳幼児死亡が多かった時代に、健康に育つことを願った名前のため、災いを避けるためにわざと悪い名前をつけることもあった。
    ✔日本の植民地時代は、日本の氏姓に変えることが強要された。
    ✔女性の名前はそもそもつかなかったり(男性名+関係とか)、伝わらなかったりしている。
    ✔北朝鮮では、漢字は「植民地時代の残滓」として禁止。名前もハングル表記。そのためにほんで北朝鮮の人の名前を漢字表記しているけれども間違ってる場合もある。(←カタカナじゃいけないの??マスコミの約束ごとかな?)
     余談ですが、私はフィギュアスケートの大ファンでして、その経緯で中国人、韓国人の選手名読み方のルールを知りました。日本と中国のマスコミの間では「自分の国の読み方で発音する」として、日本と韓国との間では「相手の国の読み方で発音する」のだそうです。
     毛沢東を「もうたくとう」というのは日本の発音。だから中国で日本人名を言う場合は中国の発音になっているそうです。
     韓国の大統領を「金大中きむでじゅん」「李い」「文むん」というのは韓国の発音。そのため韓国で日本人を発音する場合は日本の発音らしい。
     北朝鮮はどっちなんでしょうね。「金日成きんにっせいキム・イルソン」両方あるような。その場合に相応しそうな発音を日本のマスコミが判断しているのでしょうか。


    【アジア・アフリカ】
    ✔アラブ諸国は、伝統的には姓、つまり氏族名や加盟ではなく父祖の名を連ねることにより出生を表した。
    ✔アジア、アフリカ、オセアニアでは、姓がなかったり、同じ家族でも違う姓だったり、個人名が何度も変わったりする。名前に関する法律がない国もある。
    ✔アイヌ族:赤ん坊の頃は呼び名があるが、正式な名前は4,5歳になり命名された。乳幼児死亡が多かったので、固有の名前をつけるということで子供を人間として存在させるという意味合い。赤ん坊の呼び名は魔物避けで悪いものだったり、死者が出ると生者が名前を変えたりしていた。同名は避ける傾向のため、固有の名前もその子の性格や出来事にちなんで命名され、アイヌ民族を代表するような名前は存在しない。日本の戸籍に載せるために日本名に改名させられた。
    ✔ミャンマー:姓はなく名前しかない。「アウン・サン・スー・チー」は全部で一つの名前。命名は、生まれた場所や時間により、占星術に従ってつけられる伝統がある。守護動物や守護要素などが入る。
     フィリピン:スペイン植民地時代に、伝統的な名前からキリスト教的名前になり、姓も使用されたが、規制がなかったため同じ家族でも姓が違ったり、同じ町ではみんな同じ姓だったりした時代もあった。現在では、フィリピン固有の姓を組み合わせたり、中国系の名前など。
     タイ:法律上は姓と名前を持っているが、姓は日常的にはあまり使わないらしい。名前はサンスクリット語由来が多い。本名より愛称で呼ぶことが多いが、乳幼児死亡が多かった時代の「精霊信仰」により、愛称は奇妙なものもある。
     ギニア:フランス語が公用語、イスラム教徒が多い。先祖の名前が姓のようになっている。
     ベナン:ポルトガル、フランス統治下から独立。フランス語が公用語で、フランス語の洗礼名と姓を持つ人が多い。
     その他色々アフリカ民族:双子には決まった名前を与える、双子の次の子には決まった名前がある、何番目の子供かを示す、曜日などを入れる。

    【イスラムの名前】
    ✔祖先や出身地、宗教など+損傷、ニックネーム、職業
    ✔↑複雑なため、パスポートでは「本人の名+父の名+祖先などの出身地」
    ✔神そのものを名前には使わない。アブドゥル・アジーズ(神の僕)などはOK。
    ✔「モハメット、ムハンマド」は、神の言葉を受け取った仲介者のため、「褒め称えるべきもの」という意味で命名に使われる。

    【黒人奴隷につけられた名前の歴史】
    ✔ヨーロッパでアフリカ黒人が奴隷とされ、名前も奪われた。本来の名前を名乗る権利はなく、白人が適当な名前をつけた。
    ✔イギリスの地名、海洋用語などが使用された。また奴隷船で最初に乗船させられた男女どれがそれぞれアダムとイブと名付けらるような習慣があったりした。
    ✔白人の皮肉な命名により、古代ローマ人や、神々の名、プリンスなどといった名前を与えられた人達もいる。(悪趣味)
    ✔所有者の物、という意味で、所有者名+奴隷名と命名。
    ✔奴隷同士では本名で呼び合っていたらしい。
    ✔奴隷解放時には、平凡な名前を選ぶことが多かった。
    ✔「サンボ」とは「1/4白人」という意味。黒人と、純正白人と純正黒人の混血第一世代との混血の名称から。

  • 欧米人のファーストネームは
    聖書に登場する人物に由来するケースが多いのは知っていたが、
    男性のための名を語尾変化させて女性名とするパターンを
    打ち破って登場した、花や宝石に纏わる女性の名前あれこれ――
    などを興味深く読んだ。
    巻末の「おもな欧米人の名前」事典は
    創作の資料としても価値アリ。

  • 雑学本、と片付けることもできるのだろうが…
    聖マルタンの伝説に関わる話など面白かった。
    キリストに分け与えた法衣(カペル)がそれを収める聖堂の呼び名となり、やがてそこで歌われる(ア・カペラ)無伴奏の歌の謂いになる。
    その一方、カペルがスペイン、ポルトガルに渡り、やがて近世の日本に渡ってカッパになる・・・。
    言葉とものが長い長い旅をしていく様が垣間見られる。
    そういうこともあるから、読書はやめられない。

    本書は欧米の名前がメイン。
    中国、韓国については一章ずつ。
    東南アジア、中東、アフリカはまとめて一つの章で扱われていた。
    これらの地域についての詳しい続編が出たらうれしい。

  • NHK番組「日本人のお名前」の世界版ともいうべき内容。欧米の名前が聖書、聖人たちから来たものが多いことは予想されている通りだが、ギリシャ・ローマの名前、ユダヤ系の名前、ケルト人の名前、そしてバイキングが運んだゲルマン、ノルマン人の名前。スコットランド、アイルランドの名前は今でも明確であり、彼らのルーツはそこから分かる。そして花や宝石から来た女性の名前、が多いことは成程である
    そして中国、韓国、ミャンマー、アフリカ諸国の名前、アラブ・イスラム諸国の名前と世界中を網羅しているこの本は今後も辞書的に用いると外国人の出自を考えていく際に面白そうである。いずれの国においても名前が持つ神がかり的な重要性があったとことが現在に繋がっていることは共通している。
    カラヤンはアルメニア人の末裔であること、ピカソは実は母系の名前であり、父系ではルイスであること、鄧小平は実は元の本名が鄧先聖だったことなども雑学的に知ることが出来た。

  • 食の世界地図を読んで、ノリで読んでみたら、食の~よりだいぶおもしろかった。雑学のオンパレードなのは食の~と同じ。”へぇ~”度合いがだいぶこちらの方が高い。そして、おおげさにいえば世界の人たちとコミュニケーションをとるときに役に立つかもしれない。
    【印象に残った3大”へぇ~”】

    ①「ヤンキー」とはオランダ人である
    →ジョンJohnのオランダ読みはヤンJan。 ニューイングランドに入植したオランダ人をイギリス人がからかってYankey(オランダ野郎)と読んだのがヤンキーの由来らしい。

    ②マッカーサーはアーサーの息子
    →ヨーロッパの名前の多くの頭かお尻は、~の息子という意味。
    セルビア~vic→Stojko-vic,.Savice-vic,Stanko-vic
    スコットランド~Mac→Mac-donald,Mac-arthur
    イギリス~son→John-son
    スペイン~ez→Gonzal-ez,Elnand-ez,
    フィンランド~nen→Litoma-nen,Aho-nen
    ルーマニア~escu→Pop-escu,Luc-escu

    ③韓国では同じ性同士では結婚しない
    ~儒教的なしきたりで同じ性同士は結婚しないのが一般的らしい。ちなみに韓国の中の「金」率は全人口の22%、「李」は15%、らしい。金さんと李さん恋愛の選択肢狭いな。。

  • ユダヤ人の姓の由来調査の為 借りる。実際 一般的なユダヤ人の姓をもてた時代からの流れを知るのには良い文献だ。何か悪い事があると姓を改名する癖があることなど興味深い。NYの有名な指揮者Leonard Bernsteinが昔 収容所に入れられない為にユダヤ性の琥珀という意味である姓を英語のAmberに改名してた事などだ。このユダヤ人関連の第七章だけをよむとこれらの姓を持っている者は全てユダヤ人と解釈してしまう読者も少なくないと思う。その点でもう少し詳しく記してもらえたらな。。と思った。

  • 欧米人とキリスト教ってのは本当に切っても切れない縁というか軛というか、まぁアラブ人とイスラム教もきっとそれ以上なんでしょうけども、宗教ってのは凄いです。<BR>
    日本人はそのへんは大変曖昧で、命名にとっても然り。親の文字から一文字拾うってのは、表意文字であるところの漢字文化の特徴ですかね。まぁでも、大概自由につけますよな。<BR>
    その点、欧米人にしろアラブ人にしろ、名前は「つける」もんじゃなく「選ぶ」もの。どんな名前にしようか、じゃなくてどの名前にしようか..って感じなんですね。だから、その選択肢には当然地域性や宗教にまつわる謂れがあるわけで、名前からルーツがたどれるっていうのは日本人には目からウロコというか。<BR>
    日本にも田舎にいくと村の8割が田中さんとか。他にもそれぞれご先祖様ののルーツはあったりしますが、あまり知られていませんし。<BR>
    <BR>
    ただもうちょっと情報を整理して欲しかった感は否めませんし、欧米に偏りすぎてるきらいがあるかも。語感的にアタシの好きなタガログ語やタイ語圏、アジアやトルコなどは僅かしか触れていませんし。<BR>
    人名の「世界地図」にしては少し範囲が狭いような気も。<BR>
    入門書としては良いのかも知れません。<BR>

  • 第1章 名前にこめられた意味
    第2章 聖書がつくった人名の世界地図
    第3章 ギリシア・ローマ 失われたものの伝説
    第4章 花と宝石に彩られた女性名の反乱
    第5章 コナー、ケヴィン ケルト民族は生きている
    第6章 ヴァイキングたちが運んだ名前
    第7章 名前でも迫害されたユダヤ民族
    第8章 姓氏でわかった中国三千年史
    第9章 先祖の名とともに生きる朝鮮半島の人たち
    第10章 アジア・アフリカの人名地図
    第12章 黒人奴隷に押しつけられた名前

  • 世界を知ると、日本の名前の自由さ豊富さが分かります。

  • 貸したら4年ほど、返ってこない。
    韓国でキリスト教は一定程度普及しているからヨハンって名前も時に見るよ、っていうのが衝撃だった。

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