少年犯罪実名報道 (文春新書 261)

制作 : 高山 文彦 
  • 文藝春秋
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感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166602612

感想・レビュー・書評

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  • 未成年者の凶悪事件を実名報道したことにより裁判になり大阪高裁で無罪となった原告側からの話。
    社会的関心が大きいので話題になった。
    表現の自由という旗印の下、
    メディアの横暴に市民は反証できない。
    商業ジャーナリズムには、自浄作用は働かない。
    特に被害者への配慮が必要と感じた。

    報道された記事本文も記載されている。
    事件の異常性は感じ取れる。
    弁護団による抗議文も載せている。
    マスコミのしたたかさを感じる。

  • 宮崎版新書ガイドから。これも入手は結構前。新聞も週刊誌もテレビニュースも殆ど見なかった頃の話題だから、ほぼ初めて触れた本事件の顛末。なるほど人ごとではなく、日本という国家体制に生きる以上、我が事として向き合わなければならない内容。

  •  現行の少年法が孕む問題点の中で最も重大であるのは、被害者は実名含む個人情報を報道されることが多々あるのにもかかわらず、加害者が「少年」であればそれだけで過剰に法律の保護を受けられるという点であると思う。これは柳田氏や髙山氏も鋭く指摘している点だ。

     都度考慮すべき事柄はあれども、被害者より加害者の権利が優先されるようなことはあってはならないし、ないように一般市民は願っているはずだ。しかし、現実では加害者の名は頑なに明かされないのに、被害者の実名をはじめとした個人情報がやや詳細に報道されることは未だある。人権派弁護士らは加害者である少年の権利や社会復帰には過剰に反応するのに、なぜもっと守るべき被害者のそれに気がつかないのか、はたまた気づかぬふりをするのか。被害者側であっても必要以上に個人情報を明かされ、その地域に住みづらくなったり、学校を辞めたりと社会復帰が難しい方も沢山おられる。

     そもそも、被害者の情報を事細かく公にする必要はあるのか。加害者の情報は常軌を逸しない程度であれば、裁判所の判決にもあるように知ること自体に社会的な公益性が認められる。しかし被害者の名前、職業、交友関係、学生の頃のエピソードなど報道したところで、誰にどんな公益性をもたらすというのだろう?
     上記の事柄を一切考慮せず、新潮社の行為を単に少年法違反だと断じるのは些か短絡的である。本件に関わらず、法律を忠実になぞるのみの裁判ならAIに任せておけばよいと思うし、法律には一定の解釈の余地を残しておくべきだと考える。その範囲でどう報道するのか、プロのジャーナリストの腕前の魅せ所であることは柳田氏が指摘している。
     ただ、決してこちらも忘れてはならないのがやはり罪を犯した少年含む犯罪者全員にも生まれながらにして人権をもっており、少年法は決して不要な法律ではないということである。柳田氏のいう「二人称の死」を、最も理不尽な殺害というかたちで経験した方々が「人を殺した奴に人権などない」「死刑死刑死刑」と訴えるのも普通の人間なら当然の感情であると思う。しかし、罪を犯した少年を社会復帰させ、生きて罪を償わせる、再犯を防止することこそ本来の高次な国家の役割である。人権はどんな凶悪犯罪者であっても奪われない自然な権利である。この点を忘れ、自己の人権だけを主張するのは一種の暴論である。

  •  
    ── 高山 文彦《少年犯罪実名報道 200207‥ 文春新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4166602616
     
    …… 幼時を殺した十九歳の少年の名前を敢えて書いた理由。加害者の
    生い立ちとこれからの人生を考えれば、これ以外の選択はありえない。
    (下記の巻末広告より。著者は筆名)
     
    ── 青沼 陽一郎《私が見た21の死刑判決 20090720 文春新書》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4166607065
     
     Takayama, Fumihiko 作家 19580307 宮崎 /ノンフィクション/籍=工藤 雅康
     Aonuma, Youichirou    1968‥‥ 長野 /ジャーナリスト
     
    (20091222)(20181113)
     

  • 大阪府堺市でシンナー中毒の19歳の少年が起こした通り魔事件の
    実名報道を巡ってのレポートである。

    犯罪事件では少年犯罪を含め、常に実名報道の賛否両論が巻き起こる
    が、被害者の実名報道は問題にならんのかな。疑問。

    概して少年犯罪には甘いとの評価がある著者だが、この事件に
    ついて敢えて実名・顔写真入りで記事を書いた意図がいまひとつ
    理解出来なかった。

    20歳に半年足りない犯人を少年法で守る矛盾は確かに感じる。
    しかし、著者が言うように匿名であっては事件の本質に迫ることが
    出来ぬとは思わないのだが。

    また、少年側の弁護団の訴訟理由もおかしなものだ。著者と記事を
    掲載した雑誌「新潮45」の発行元・新潮社に対し、名誉棄損として
    2000万円の損害賠償を求めている。

    その賠償金を少年が起こした通り魔事件の被害者への賠償金に
    宛てるって言うのはおかしいのではないか。

    著者及び少年の弁護側の言い分、共に説得力はない。しかし、本書に
    収録されている作家・柳田邦男氏の「意見書」には共感出来る部分が
    多々ある。

    法に携わる人たちは、これまで加害者の人権擁護ばかりに熱心になり
    被害者及び遺族のことについては放置して来た。加害者の人権を守る
    のであれば、それ以上に被害者の人権を守る手段を考えるべきでは
    ないのだろうか。

    以前、同じマンションに住まう女性を殺害し遺体を損壊した犯人の
    裁判の報道に違和感があった。公判では犯人の精神状態に異常を来す
    恐れがあるからと、遺体損壊の過程を詳細に述べないよう弁護団から
    の要請があったとか。

    死んでしまった被害者や後々まで傷を抱えて生きていかねばならぬ
    遺族より、加害者の精神状態が大切か?と感じたのを覚えている。

    犯罪被害者救済については少しずつではあるが、ボランティア団体など
    が活動を始めている。だが、法に携わる人たちがまずは行動を起こして
    欲しいものだ。

    個人的には加害者も被害者も、匿名でいいと思うんだけどね。

    柳田氏の意見書の部分だけ読めばよかったな。

  • ルポルタージュに少年の実名を出した…とだけ思うと、え…?となるのだが、書いた本人の意図(言い分?)を読める本。
    なるほどなぁ…とも思いましたが、そもそも、少年だから書いてはいけないというが、成年だって犯罪者だからといって、名前や顔を出していいのか?という部分には考えさせられる。
    新聞やテレビそのほか、何か事件があれば成年の容疑者の場合、名前も顔も出るけれど、そもそも、本当はその時点では出さない形だったはず…と思ってしまったりも。

  • 著者と同じ考えだ。
    更生とはなにかをもういちど考えて欲しい。

  • [ 内容 ]
    凶悪犯罪の加害者なら、少年でも実名を書いていいというのではない。
    成年だからといって、関係者に誰一人会わず警察情報だけから実名を報道する、あるいは被害者のプライバシーを興味本位に報道することのほうが問題ではないのか。
    「実名報道」こそは、書く側の覚悟が問われるものだ―九八年一月に大阪府堺市で起きた、シンナー中毒の十九歳少年による通り魔殺人事件の報道をめぐり、法廷のみならずマスコミ・言論界を巻き込んで行われた議論の全て。

    [ 目次 ]
    1 名前で呼ばれるべき「生」と「死」
    2 ルポルタージュ「幼稚園児」虐殺犯人の起臥
    3 大阪地裁での裁判
    4 大阪高裁での裁判
    5 裁判のあとで

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    [ 参考となる書評 ]

  • 少年犯罪実名報道の是非にはいつも賛否両論があり、難しい問題ではある。それゆえ私個人の意見に言及するのはやめておくが(長くなりそうなので(笑))さすが文春!!よく言ってくれました!!素晴らしい。しかも単なる感情論に終始することなく、論理的かつ、客観的に述べられている。さすが文春新書。岩波・朝日新書からは絶対に出ないであろう類の本。一読の価値有り。

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