還ってきた台湾人日本兵 (文春新書)

  • 文藝春秋 (2003年3月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784166603084

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  • 台湾の原住民族である高砂族と聞けば、太平洋戦争時に日本軍の一員として米国と勇猛果敢に戦った一族である事は広く知られている。主にジャングル地帯へ派遣され日本兵と共に、寧ろ日本兵よりも勇敢に戦ったとされる。飛行場奪取を目指した日本軍が、同兵士を乗せた飛行機を敵前に胴体着陸させ、飛行機を飛び出して米兵と斬り合い戦った話などは高砂義勇兵の勇猛さを物語るの話として非常に有名である。当時の台湾は日清戦争に勝利した日本が下関条約により中国(清国)から割譲(1895年、明治28年)した土地であり、それから日本が太平洋戦争に敗れる1945年までの間、日本の一部として統治していた。よって高砂族は日本人として太平洋戦争に参加した台湾人という事になる。
    本書はその台湾人日本兵で、戦後30年以上もインドネシアのモロタイ島のジャングルに潜んで戦い続けた中村輝夫氏(民族名:スニヨン、中国名:李光輝)の発見にまつわる話を中心に描かれる。ジャングルから発見された日本兵と言えば小野田寛郎氏や横井庄一氏も有名だが、中村氏は出身が台湾であることから、当時中国(中華人民共和国)との国交正常化、そして台湾(中華民国)との国交断絶という微妙な外交関係にある中、報道で大きく取り上げられることもなく、日本人でも中村氏の事を記憶する人は多くないようである(無論私は生まれていないので記憶にあるはずがない)。
    本書に描かれるのは中村氏の潜伏時代の記録というより、中村氏の発見に際しての周囲の反応、及びその後の高砂族に対する日本の対応を中心に描かれる。戦後日本はアメリカの占領を受けながらも高度成長を遂げ、経済的には世界のトップクラスにまでのし上がった。一方で戦争中に犯した罪の償い(補償問題)に於いては、その充分性について議論が大きく分かれる。中国に対してはODAという形で長きに渡り国家に対する支援はしたものの、慰安婦問題を始めとする個人への賠償、本書に描かれる様な台湾原住民に対する補償については、果たして充分になされてきたのだろうか。後者については全くの不充分であった事が本書全般を通じて訴えられている。
    一方で台湾原住民への取材の中で明らかになる日本に対する感謝や統治時代の懐かしむ気持ちも描かれており、当時を知る人々へのインタビューから得られた話は、読んでいて非常に胸が心が痛む。今を生きる日本人の大半が自分達の世代で為してきた事ではないから、実感が湧く人などいないだろう。だが高砂族という台湾に於いても少数派で小さな集落に暮らす人々にとって、日本語教育も日本人に対する気持ちものちの世代に引き継がれていくのは必然と言える。戦後も長く子供の名前に日本人のような名前をつけ、老人たちは当時の日本の軍歌を口ずさむ。戦争や支配の罪深さを感じざるを得ない。確かに日本時代がなければ教育やインフラ整備、農業技術の導入は遅れたかもしれないが、現地で平和に暮らす彼らが求めずして、ある日突然降り注いだ事は事実である。明治から始まる統治に対して悲惨な抗日事件も多数起こってきた。それら乗り越えながらも日本人として生まれ日本人として戦った中村氏。最後はジャングルの生活とは全く正反対の生活に浸り病を患いながら亡くなっていった。
    人気の観光地として私個人も何度か台湾を訪れた事がある。夜市の煌びやかさや美味しいものを求めての街歩きだけでなく、風光明媚な景観と温泉など小さな島国ながらもコンパクトに楽しめる台湾。今は中国との関係が緊迫し安心して訪問できるとは言い難いが、機会があればまた訪れたい土地だ。そんな台湾との深い関係を持つ日本が果たしてこれから先、どのような歴史上の関係性を築いていけるかは、過去の出来事を知り、反省し、二度と戦争のような悲劇を起こさない事は絶対である。先ずは本書などでその歴史の一部に触れ、知ることから始める必要がある。先の大戦で命を落とされた、台湾や中国、朝鮮半島やアジア各国の人々のことを想いながら読むと良いだろう。

  • 【目次】(「BOOK」データベースより)
    第1章 聖地モロタイ島/第2章 元空軍中尉スパルディ/第3章 待っていた悲劇/第4章 血書したため志願兵に/第5章 インドネシアの激戦地で/第6章 逃亡兵の汚名/第7章 霧社事件とその後の人々/第8章 日章旗はためく慰霊碑

  • 昭和四十九年暮れ、終戦から約30年を経てインドネシアの密林で発見された台湾高砂族出身の元日本兵 中村輝夫氏を中心とした関係者へのインタビューをまとめた一冊。

    発見後、日本に受け入れられることなく台湾へ帰された中村氏と、今なお日本の軍歌を忘れることのない人々の日常、真摯な青春時代への回顧を通じて、歴史のひだに埋れかけた感情に触れることができる。

    筆者自身が述べるところには及ばずながら、かつて日本であった台湾を、こんなにも知らない日本人である自分が恥ずかしいと感じた。

  • 数人(40代)に聞いてみても知っている人はいなかった。自分もインターネットサーフィンで知るまでは横井伍長、小野田少尉のほかにも戦後数十年たって発見された日本兵がいたことは知らなかった。昭和49年と言えば小学校2年生?、長嶋の引退試合は記憶しているから、本書にあるようにあまり報道されなかったのかもしれない。

    台湾の古い世代が日本植民地時代の教育を受けて日本語を話せることは知っていたが、

  • [ 内容 ]
    昭和四十九年暮れ、インドネシアの密林で元日本兵中村輝夫が発見された。
    しかし、敗戦も知らず約三十年間も孤独に生き抜いた中村は、台湾の高砂族出身であったがゆえに、日本国からは日本人とは認められなかった。
    戦前、日本人として教育され、日本兵として出征したにも拘らず―。
    日本語でものを考え、自らを日本人だと信じていた中村は、その後どうしたか。
    今、高砂族の人々は日本にどんな想いを抱いているか。
    丹念な取材で綴る忘れ去られた現代史。

    [ 目次 ]
    第1章 聖地モロタイ島
    第2章 元空軍中尉スパルディ
    第3章 待っていた悲劇
    第4章 血書したため志願兵に
    第5章 インドネシアの激戦地で
    第6章 逃亡兵の汚名
    第7章 霧社事件とその後の人々
    第8章 日章旗はためく慰霊碑

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    [ 参考となる書評 ]

  • ドキュメンタリー映画”台湾人生”でその存在を知る所となった、日本兵としてインドネシアで一人70年代までジャングルで生き延びた台湾人の話。日本人の精神を持ち続けたものの、時代の流れで日本には帰れず、台湾に帰国したら妻が再婚しており、(もっとも再婚相手が、義理より情けを取れと諭し、元夫の元に戻ったそうだが)結局帰国してから4,5年で亡くなってしまったそう。不憫だ。

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