翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)

  • 文藝春秋
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本棚登録 : 896
レビュー : 79
  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166603305

作品紹介・あらすじ

サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の新訳を果たした村上春樹が、翻訳仲間の柴田元幸と共にその魅力、謎、すべてを語り尽くす。ホールデン少年が語りかける「君」とはいったい誰なのか?村上が小説の魔術(マジック)を明かせば、柴田はホールデン語で、アメリカ文学の流れのなかの『キャッチャー』を語ってのける。永遠の青春文学の怖さ、ほんとうの面白さがわかる決定版です。「幻の訳者解説」併録。

感想・レビュー・書評

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  • これは面白かったです。サリンジャーという人の詳しい経歴を知らずにいたので(晩年は隠居してしまったとかそれくらいしか知らなかった)、これを読んでキャッチャーという物語が生まれるにあたっての経緯がわかったような気がしました。わたしは野崎訳のキャッチャーを読んだことがないのでぜひ読んでみたいです。原書でも読んでみたい。わたしならどう訳すか?考えてみたくなる一冊でした。
    最後に収められている柴田さんの「Call me Holden」は、ホールデンの心を代弁した語り口調の小話。柴田さんの文章はよくポール・オースターの訳で読んでいます。優しくも快活でリズミカルな文章で、村上訳のホールデンとはまた違った雰囲気ですが楽しめました。

    村上さん柴田さん二人の対談と、二人がそれぞれ独自に書いた文章が入っていますが、二人の中でのホールデン像が共通しているので、全体を通して違和感なく読めました。

  • 2019/5/29 読了

  •  『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(以下、この本に沿って『キャッチャー』と呼ぶ)の翻訳を手掛けた村上春樹と、彼の翻訳仲間である柴田元幸が、翻訳者という視点からサリンジャー及び『キャッチャー』について縦横無尽に語る本。

     小説について作家が語る本を読むのは、おそらく初めてだと思う。読書ガイドとして書評集を買うことはあったが、どれも一冊につき2~3頁程度で語られており、こうして一冊の本としてガッツリ語られたものを読んだことはなかった。 読むことになった理由は、『キャッチャー』を読んだ時の印象が、普段読む多くの青春小説に比べ非常にもやもやした感覚が残ったため。
     青春小説というと、例えば主人公に好きな人がいて、その女の子(男の子)とのロマンスがある。で、相手を愛したり憎んだりいろいろして、結ばれたり結ばれなかったりする。そして、そこで様々な経験を通じ、物語が始まった時より少しだけ大人になっている。そんな物語が圧倒的に多い。古くは夏目漱石の『坊っちゃん』とか、私の愛してやまない『文学少女シリーズ』とか、最近なら『君の膵臓をたべたい』とか、アニメ『宇宙よりも遠い場所』とか。
     こうした「物語を通じた若者の成長」という枠に、どうしても『キャッチャー』がしっくりこなかった。元々大反響を呼んだ小説だということはもやっと聞き及んでいたので、この違和感の正体を垣間見たくて、この本を読むことにした。

     この本で語られている限り、やはり主人公の成長というよりは、ホールデンは永遠の16歳であり、「そこにしっかりと留まり、読者の心のひとつのありかとして機能することを宿命づけられた小説」(p.220)なのだそうだ。
     また、同時に米国の、しかも60年代の小説ということもあり、出版当時教育界などからヒステリックなまでのバッシングがあったこと、今でも一部では有害図書として扱われていること、ある凶悪殺人犯がこの小説をバイブルの如く扱っていたこと、当時は(日本もそうだろうが)社会・世間の繋がりが非常に強かったので、説教や世間に当て嵌めるような教育が今以上に重視されていたこと、など、小説を読んだだけでは気付けなかったものも多数あり、作品の理解(?)に大いに役立った。
     あとは、サリンジャーがホールデンのように、あるいはホールデン以上にイノセンスな世界にのめり込んでしまい、隠遁生活を送るようになるという解説のくだりはやはり印象的だった。前にも後ろにも進めないホールデンの閉塞感が悪い方向に向かってしまったような(そりゃ社会から隔絶された隠遁生活が悪くも何ともないと言えばそれまでだが)、汚いとも取れるノット・イノセンスの世界を拒絶するということがどういうことか、
    突き付けられている気もする。

  • 買って読んでない「キャッチャー・イン・ザ・ライ」、そろそろ読んでみよう。

  • 1

  • かゆいところに手が届くサリンジャー解説。
    村上春樹の新訳につける予定だった解説は、サリンジャー自身がどんな人だったかもよくわかってとても良かったです。

  • 著者2名の名が並んでいるにしては各々による翻訳の手法やこだわり、もしくはライ麦の批評にしても語りが浅いというか、どれも盛り上がる前に尻切れとんぼに終わっていてあまり新鮮な知識に触れることができなかった。

    柴田氏(竹内氏)が、接触は悪であるという暗黙のルールを破るとイノセンスが壊れる。アントリーニ先生はルール違反をしたからだめだったのだ。との主旨を述べているが、個人的にはライ麦という作品はそこまでアレゴリーが張り巡らされた構成ではないと感じているので、この解釈は腑に落ちなかった。
    そもそも触れたらだめ・イノセンスではないというルールを設けてしまったら、親愛のスキンシップをしているフィービーやジェーンとの関係はイノセンスではなくアックリーとの関係こそイノセンスである、という結論に至ることとなる。ホールデンがアントリーニ先生を肯定的に見る一因となっている、自殺した生徒の遺体をまっさきに抱きあげたというエピソードでもアントリーニ先生は生徒に触れている。しかしこういった接触禁止説に当てはまらない数ある描写はことごとくスルーされている。
    つまり接触を主眼に考察を行うのは非常に無理があるように思う。もちろん作品の解釈は千差万別なので間違っていると断言できるものではないが、このような書籍に載せられるほど強度のある解釈とは思えなかった。

    最後のホールデンの二次創作のようなものは途中までしか読んでいないが、小説家であるサリンジャーと翻訳家は当たり前だが別畑の人種であるということがまざまざと感じられた。

  • 翻訳夜話2 サリンジャー戦記 (文春新書)

  • 小説家であり翻訳もこなす作家の村上春樹と訳書をいくつも出版している柴田氏の対談。翻訳夜話という新書の2にあたる。
    タイトルにあるように作家サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の翻訳にまつわる様々なエピーソードなどを対談形式で送る本。

    文学や翻訳に興味がない人はまったくおもしろくないだろうが、そういうのに少しでも手を付けている人はなかなか興味深く読めるとおもう。

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著者プロフィール

村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市芦屋市育ち。早稲田大学第一文学部映画演劇科卒。大学在学中にジャズ喫茶「ピーター・キャット」を国分寺・千駄ヶ谷に開店していた(1981年、店を人に譲渡)。1979年にデビュー作の「風の歌を聴け」で群像新人文学賞を受賞。谷崎潤一郎賞、読売文学賞、朝日賞など数々の受賞歴がある。2006年にフランツ・カフカ賞、2009年にイスラエルのエルサレム賞受賞。ノーベル文学賞に最も近い作家の一人と言われており、毎年発表時期に日本国内でニュースになる。事実、村上春樹作品は全世界で翻訳されており、アメリカ・アジアでの評価がとりわけ高い。フィッツジェラルドやレイモンド・カーヴァーなどの作品の翻訳も手がけ、翻訳家としての仕事も高い評価を受ける。翻訳と創作活動を交互に行うことで、作風を変化させ、作家としての成長を続けている。新作が発表されるたび大きな話題となるが、近年は特別番組「村上RADIO」にてラジオDJも務め(不定期放映)、数々の名言も注目を集める。代表作に『風の歌を聴け』『羊をめぐる冒険』『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『ノルウェイの森』『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』。2019年7月31日に『神の子どもたちはみな踊る』が舞台化。2019年8月7日発売の『文学界』でロングインタビュー「暗闇の中のランタンのように」掲載。アメリカのサックス奏者スタン・ゲッツの伝記翻訳を2019年8月末に刊行予定。

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