ローマ教皇とナチス (文春新書)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784166603640

作品紹介・あらすじ

地上におけるキリストの代理者、使徒の頭ペトロの後継者として、全世界のカトリック教徒から崇敬を集めるローマ教皇。だが第二次世界大戦中、モラルの体現者ともいうべき教皇は、人類史上未曾有の犯罪であるナチスのユダヤ人虐殺を知りながら止めようとはしなかった。当時の教皇ピウス十二世-エウジェニオ・パチェリは、なぜ"沈黙"してしまったのか。その理由を、彼の人生だけでなく、ヨーロッパ文化の基層にまで遡って探る。

感想・レビュー・書評

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  • ドイツ出身の教皇
    ナチスのユダヤ人虐殺への批判声明は出せなかった
    バチカン文書は公開されていない
    戦争により 世界が間違った方向に動いた時代

  • ローマ教皇ピオ12世(在位1939~1958)とナチス、ヒトラー、その最も典型的かつ巨大な犯罪であるホロコーストについての考察がなされた書籍。ピオ12世の生い立ちからはじめ、あまり私は詳しくないカトリック、ヴァチカンの制度やローマの事情なども冒頭は多少触れつつヨーロッパ情勢が第二次世界大戦へ向かっていく様とピオ12世の即位そしてその後の沈黙の理由などを多角的に探る。
     個人的には連合国側と同じくホロコーストに殆ど避難をせず沈黙した教皇に怒りを覚えた。ドイツへの愛着や反共意識ゆえに許される立場ではない。
      一方、軍事力をもっていながらそれをホロコースト阻止に行使しなかった連合国側との対比で軍事力を持たないヴァチカンに何ができたのかとも筆者は記述するが、より下位の司教や司祭は個人の命をなげうってナチ・ドイツの蛮行に抗議、抵抗して安楽死作戦を(公的には)停止させたガーレンなどがいたことを記されているので、言論に力があったことは否めない。ゆえに諸事情があろうとも全世界5億人のカトリック教徒の頂点に立ち「神の代理人」たる影響力を持つ教皇が激しく直截的にナチの蛮行を非難していればより多くの命を救えた事は疑い得ない。
     また前任者のピオ11世は人種差別に反対し死の床に伏せながらナチ・ドイツを糾弾していたのであり、そして戦後もナチ・ドイツの蛮行の犠牲者に謝罪しないなど(ピオ12世の後継者は即位後すぐにそれを行った)優柔不断で行うべき責務を放擲することを、良心の葛藤などととらえる度し難いナルシストがピオ12世という男だったのではないか、という読後感が残った。

  • 本書を読む限り、戦時の教皇ピウス11世とバチカンの判断、行動に批判があるのは当然ではあるが、自分ならどうであったかと考えるとただ指弾する立場にいるのも難しいと感じた。

    声を上げるべきときに、迷わず声を上げられるか。
    自分の置かれた立場、属する組織や政治的、思想的な見解といった、種々の事象に囚われることなく、その時の最善の判断を下すことができるだろうか。

  • 第二次大戦中、ローマ教皇ピウス12世はナチスによるユダヤ人虐殺を知りながら止めようとしなかった。沈黙の理由を彼の人生に探る

  • この本を見て気づいたけど
    ナチスの行いにローマ教皇は何をしたのか?
    存在しなかったはずないもんね。
    大国はアウシュビッツ収容所をなぜ爆撃しなかったか?
    利益にならないことだからかなとか。
    正義とか、仁義とか、存在していない感はある。
    損得勘定抜きで何もしない。


    ヒトラーは戦争前から
    ユダヤ人の絶滅を言っていて
    ユダヤ人以外にも政敵、精神障害者をはじめとする非健常者、ジプシー系住民を抹殺していった。

    ドイツ側のイタリア
    水や電気の全てをイタリアに依存するヴァチカン

    ドイツびいきの教皇
    ユダヤ人だけでなく協会関係者が拷問殺害されても沈黙を貫くって身内を守ろうとすらしない。
    それで許されようとか甘すぎ。

    ドイツ赴任中に大使館へ侵入してきた赤軍兵に自動小銃を押し付けられたことその時のユダヤ人への嫌悪が、
    キリスト教に元々ある反ユダヤ思想的なものに加わったっぽい。
    そんな経験してもドイツびいきって、変だよ。

    にしても重い。

  • 黙認という形であれ、結果的にはナチスの暴走を許し、ユダヤ人の虐殺に手を貸すこととなったピウス12世の生涯。残念だったのは、ストーリーが専ら大戦前の話に終始していたことか、大戦後も長く教皇を勤め、ナチス戦犯の逃亡にすら関わったという噂などについての考察も知りたかった。

  • ユダヤ人の迫害はナチスだけの犯罪ではなくてヨーロッパ社会全体の犯罪だという主張に納得。あまり深く考えたことがなかったけどあれは宗教戦争だったのか。■冒頭ではパチェリが素晴らしい人だったという風に書かれているけど最終的な結論と結び付いていなくて、そこだけが欲求不満。

  • 第二次世界大戦時、カトリック教会は極めて難しい立場にいた。拠点はファシズム全盛期のイタリアの中心部にあり、東からは教会宗教最大の敵ボリシェヴィズムが勢いを増し、その抵抗勢力として唯一の頼りのナチスは因縁浅からぬユダヤ教徒を虐殺する。その時代、時のローマ教皇ピウス十二世は何をしたのか。本書はピウス十二世の一生を追うことでその心中を慮る。
    個人の視点に立つことで歴史はかくも面白く見えるのだということを思い出させてくれる良書。歴史の教科書のつまらなさに辟易した人にこそ、このようなジャンルを読んでほしい。歴史は個人のドラマの積み重ねの結果。
    (メモ:各司教の言葉でナチスが従わざるをえなかったものと無視できたものの違いが不明瞭)

  • カソリック総本山のバチカンは、無神論の共産主義国家ソ連に対抗しうる勢力としてナチス政権を支持したと、おぼろげながらに記憶してました。このうる覚えがすっきりすることを期待して、手に取った本です。

    ローマ教皇ピウス12世の生立ちより、共産主義者への深い拒絶があったであろうことがうかがわれます。

    ナチスの迫害が続く中、結果的に教皇は、第二次世界大戦の戦時下という大きな流れの中で、その事実について沈黙したに等しかったようです。教皇のホロコーストに抗う義の行いは小さく、そのの声は弱かったため、迫害を受けた人、迫害した人にその声は届かず、沈黙していたと見なされたのだと感じました。神の使者としての教皇は、影響力のある人物の一人であるがゆえに、当時のふるまいへの批判がつきまとうのでしょう。

    沈黙を破っていた場合、迫害は回避されよい方向に変化していたか、何も変わらなかったか、若しくは全てを失っていたかは、わかりかねます。

    現在でもたまに、イスラエルとバチカンの間にある見解の相違みかける時、その歴史的背景を理解するのにすごく役立ちました。

  • [ 内容 ]
    地上におけるキリストの代理者、使徒の頭ペトロの後継者として、全世界のカトリック教徒から崇敬を集めるローマ教皇。
    だが第二次世界大戦中、モラルの体現者ともいうべき教皇は、人類史上未曾有の犯罪であるナチスのユダヤ人虐殺を知りながら止めようとはしなかった。
    当時の教皇ピウス十二世― エウジェニオ・パチェリは、なぜ“沈黙”してしまったのか。
    その理由を、彼の人生だけでなく、ヨーロッパ文化の基層にまで遡って探る。

    [ 目次 ]
    第1章 生い立ちの記
    第2章 ドイツ時代
    第3章 ファシズムの陰で
    第4章 教皇登位と第二次世界大戦の勃発
    第5章 沈黙する教皇
    終章 「沈黙」をめぐる論争

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